ボストン美術館「華麗なるジャポニスム展」(京都市美術館)
■ここは、大阪の阪急梅田駅の近くです。足早に通路を歩いていく人たちの向こうで、かわいらしく微笑んでいる女性がいます。これは、印象派の画家として有名なクロード・モネの最初の奥さんなのだそうです。お名前は、カミーユ。そう、カミーユさんにみつめられて私は立ち止りました。壁にはたくさんの団扇、床は畳っぽいですね。そしてカミーユさんは、赤い着物をまとい扇子を片手にもって振り返っておられます。着物には、歌舞伎に登場するような侍の刺繍がなされています。19世紀後半、ヨーロッパは「大日本ブーム」になります。そのようなブームのなかで、クロード・モネの「ラ・ジャポネーズ」という作品は描かれました。このあたりまでは、高校までに美術史の知識で、多くの皆さんがご存知のことかと思います。美術の教科書にも、よくこの作品は登場しますよね。
■ところで、この大きなポスター。京都市美術館で11月末まで開催されるポストン美術館「華麗なるじゃポニズム展」のものです。調べてみると、この「ラ・ジャポネーズ」はボストン美術館で修復されたようです。科学的な分析をもとに、完璧に修復されているようです。こちらをご覧ください。すごいですね〜。展覧会の内容ですが、以下が見所とのことです。
1.傑作《ラ・ジャポネーズ》修復後、世界初公開!
2.印象派と浮世絵の華麗なる競演
3.ボストン美術館の名品150点が集結
4.ボストンならでは! アメリカのじゃポニズムも
5.《ラ・ジャポネーズ》から《睡蓮》まで…モネのジャポニスムを追体験
■これは、なんとしても観覧したいものです!!
カッコいい軽トラのCM動画!! Sambar - the Best Car in the World - Full Version
■尊敬する建築家であり、JEDI*の隊長でもある秋山東一さんのfacebookへの投稿で知りました。カッコいいですね〜。これは、スバルのサンバーという軽トラックのCMです。ただし、現在は販売されていないらしく、中古車店でしか購入できないようで。車のことはよく知りませんが、名車のようですね。ファンの方達も多いようです。
*JEDIとは、「Japan Earth Divers Institute」のことです。
月食
■今晩は、皆既月食でした。詳しいことは、こちらの「国立天文台」のページの説明をご覧ください。ということで、写真です。もう、ほぼバッテリーが死んでいる「iPhone5」で撮ったものです。見えますか?真ん中に赤っぽいものが見えますが、これが月食中の月です。なぜ赤っぽいのか。以下は、国立天文台の解説です。
皆既食では、月が本影の中に完全に入り込みます。しかし、皆既食中の月は真っ暗になって見えなくなるわけではなく、「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれる赤黒い色に見えます。
地球のまわりには大気があります。太陽光が大気の中を通過する際、波長の短い青い光は空気の分子によって散乱され、大気をほとんど通過することができません。一方、波長の長い赤い光は散乱されにくく、光が弱められながらも大気を通過することができます。これは、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由です。また、大気がレンズのような役割を果たし、太陽光が屈折されて本影の内側に入り込みます。このかすかな赤い光が皆既食中の月面を照らし、月が赤黒く見えるのです。
■なるほど、そういうことなのですね。月食はすでに終わっていますが、国立天文台のキャンペーン(?!)に連帯してシェアします。
生物多様性タウンミーティングの開催
■生物多様性に関するタウンミーティングが滋賀県の6箇所で開催されます。滋賀県庁・琵琶湖環境部・自然保護課の「滋賀生物多様性地域戦略策定に係る専門家会議委員」のメンバーというこもあり、滋賀県立琵琶湖博物館の中井さんのお手伝いのような感じで、ファシリテーターをやります。中井さんは、昔の同僚、そして生物多様性の専門家です。「生き物の賑わい」にご関心のある皆様、ぜひご参加ください。
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滋賀県では、自然のめぐみを守り、将来にわたってりようできるよう、(仮称)滋賀県生物多様性地域戦略の策定を進めているところです。
今回、県内にお住まいのみなさまから、地域の自然の特徴や、暮らしとの関わり等について、具体的なお話を伺うため、県内6地域においてタウンミーティングを開催することとしましたのでお知らせします。
1.開催日時および開催場所:
①大津 …平成26年10月23日(木曜日)18時30分-20時30分 @コラボしが21
②甲賀 …平成26年10月21日(火曜日)19時-21時 @碧水ホール
③東近江…平成26年10月15日(水曜日)19時-21時 @八日市商工会議所
④彦根 …平成26年10月16日(木曜日)19時-21時 @彦根勤労福祉会館
⑤長浜 …平成26年10月22日(水曜日)18時-20時 @長浜文化芸術会館
⑥高島 …平成26年10月26日(日曜日)15時-17時 @高島市観光物産プラザ
2.内容:
○生物多様性とは何かについてご説明します
○生物多様性地域戦略の概要について御説明します
○みなさんの地域の生物多様性に関する御意見を伺います
申し込み不要、どなたでもご参加いただけます!
お米が届きました!!
■ゼミで行っている「北船路米づくり研究会」関連。指導農家である吹野藤代次さんから、研究会のメンバーであるゼミ生に「お米」が届きました。配達の予定がなくなったお米を、学生のためにと送ってくださったのです。吹野さん、ありがとうございます。いただいたお米を、郵便用の秤ではかり、二重にしたナイロン袋に入れていきました。この作業を、3年生のゼミ生たちがやってくれました。ご苦労様。テープルの上のものは、4年生に渡されるお米です。
■今回は、指導農家さんからのプレゼントでしたが、「学生とお米」というキーワードから、私は「奨学米」のことを連想しました。「奨学金を”お米”に置き換えて、農家が学生を食生活の面でサポートする」という趣旨の取り組みです。「奨学米」については、ちゃんとサイトがあります。株式会社奨学米という会社組織で運営されています。イベントの企画、運営、インターネットを利用した食品等の販売をされている会社ですが、「内閣府認定農村六起第一回ビジネスコンテスト」でも、支援対象事業に認定されているようです。さて、「奨学米」の取り組み、この会社では次のように説明しています。
奨学米とは奨学金を“お米“に置き換えて 農家が学生にお米を無償で提供し 食生活の面でサポートする仕組み。その代わりに 学生はお米をご提供いただいた農家の農業のお手伝いや地域のイベントに参加することで還元していきます。奨学米で学生・農家のつながりを創り互いの未来を育てて行きます。
VISION〝もう一つの実家をツクル”
自分は何を食べているのか、自分が食べているものはどこで作られているのか若者は自分の食事に責任を持ち始めている。真摯にお米作りに取り組む農家とこれからをつくる学生を繋ぎ、 相互理解の信頼関係を築くことで長期的に食材を購入したり、農家に遊びに行けるような、もう一つの実家を奨学米を通じて創っていきます。MISSION
-農家がお米を提供し、食生活の面で学生を支え、学生の夢や目標を支援する
-農家と学生を結びつけ、農家が真摯に作ってきた日本人のソウルフードである〝お米”の大切さを伝える
-互いの顔が見える新たなコメ文化を構築し、長期に渡り交流でき、食材を購入できる信頼関係を築く事で、〝もう一つの実家をツクル”
■「モノ」(米)と「労働」(若者の力)の「交換」をベースにしながらも、そこにあたかも「擬制的親子」の関係をつくっていくような取り組みに思えました。「擬制的親子」とは堅い学術用語ですが、一般には「親分子分」や「オヤコ」ともいわれます。実際の親子ではないのに、あたかも親子の関係を設定して、親(親方)になった年長者は子(子方)になったを若者を社会的に支援(庇護)します。また、逆に、子の方は、親にいろいろ奉仕する、そういう関係です。社会保障の制度が不十分であった時代、こういう擬制的親子は、ローカルな社会を安定させることができたのでしょう。地方によっては、烏帽子親と呼ばれることもあります。これは、ある北陸の農村の話しですが、役所が、都会の学生が研修に村にやってくるプログラムを進めようとしたところ、村人が不安がったので、「まあ、烏帽子親になってもらうようなことですよ」というと、深く納得された…という話しを聞いたことがあります。この「奨学米」の事業のなかにも、同様の発想があるように思いました。
NHKクローズアップ現代「四国遍路1400キロ 増える若者たち」
■NHKクローズアップ現代「四国遍路1400キロ 増える若者たち」。これは、今年の6月13日に放送されました。インターネットでは、過去の番組の内容についても確認できます。放送された内容が、文字化されているのです(放送まるごとチェック!)。
■この番組に登場するのは、人との付き合いがうまくできない、現代社会にうまく適応できない、そういった若者たちです。そういう若者が、歩き遍路をするなかで、自分がこだわっていたことが少しずつ崩れていき、「ありのままの自分」に気づいて、それを受け入れていくことができるようになるというのです。しかし、自分の「身体」を使って1,400kmを歩くこと自体に加えて、お遍路では、他のお遍路さんとの関係、お遍路さんほ「お接待」する地元の人びととの関係が生まれることになります。番組では、この「お接待」を次のように説明しています。
地元の人は、白装束などを身に着けたお遍路さんに食べ物などを分け与える「お接待」を行います。お遍路さんは弘法大師の代わり。訪れた若者も無条件に受け入れるという文化が、四国には残っているというのです。
大日寺 真鍋俊照住職
「(お接待は)両手でもって慈悲深く迎えてあげる、そういう行為。
舞台装置みたいなものが遍路の八十八か所には必ずある。」
■番組の最後に、真鍋俊照さん(大日寺住職 四国大学教授)と福島明子さん(作新学院大学教授)が解説をされています。真鍋さんは、仏教美術の専門家ですが、ご自身、真言宗の住職をされているようです。福島さんは、心理学者です。ご自身も「お遍路」をされた経験をお持ちのようです。また、『大師の懐を歩く―それぞれの遍路物語』という本も執筆されています。私自身は、このお2人の解説を読みながら、「贈与論」的な視点から「お遍路」を理解することができるのではないか…と思いました。
お接待っていうのはこれはもう昔からありまして、そしてこれ仏教の1つの、遠くから来た人に対する、稀人(まれびと)といいますかね、そういう人を大事にしたいと。それで平等に利益、御利益を与えたいと。それはもう差別をすることなく、小さいお子さんも、おじいちゃんおばあちゃんも、全部に施すというのが目的なんですけれども。やっぱりそれは、始めた若い人なんかはすごく新鮮に感じますね。「よう来たね」っていうひと言で、もうそれでなんか感性がびびっと来るんじゃないですか。それがいわゆる来た方の所属している社会というか生活空間の中では、ないからということなんでしょうけれども、ここではそういう舞台装置が意図的に1000年にわたってあるわけですから、それが自然に出てきて、人を迎える気持ちっていうものが今おっしゃったような流れにつながるんじゃないでしょうかね。(真鍋さん)
お遍路さんは毎日40日、50日の間お接待を受け続けます。その中で1対1でお返しすることはできないんですけれども、自分がお遍路から帰ったらこれをほかの人にお返ししようという気持ちが生まれてきます。それがごく自然と、日常生活の中で困っている人を助けるとか、親切にするということができるようになると思います。(福島さん)
まずは自分の体と向き合って、体と心がつながるという経験。それから地元の方のお接待を受ける中で、地元の方とお遍路さんのつながり。それからお遍路さんどうしのつながり。さらには自然豊かなお遍路の中を歩く中で、地に足をつけて歩いて、山や川や海を歩いて、自然とのつながりというものも感じられます。そういった、さまざまなつながりを回復することができるということですね。今の社会は成果主義であったり合理主義ですので、何かができたからすばらしい、とか何かができないからもう少し頑張って、とか条件の世界ですが、このお遍路では無条件に受け入れられて、そしてつながりを回復していけると。(福島さん)
■この「クローズアップ現代」のサイトでは、過去の番組をキーワードで検索できます。「お遍路」と検索をかけてみました。すると、1995年12月8日(金)に放送されたものがみつかりました。「男55才・転機の四国遍路~八十八ヵ所1400キロの旅~」というタイトルです。内容は、「四国八十八か所めぐりのお遍路さんに、最近50歳代のサラリーマンが増えている。働き蜂といわれて日本経済を支えてきたこの世代が、今、何を思い、何を求めて遍路の旅に出るのだろうか。3人のサラリーマンお遍路さんとともに歩き、その心の旅を追う」というものです。20年近く前、クローズアップ現代は55才のおじさんたちの「お遍路」に注目していたのですね。バブル崩壊のあと、経済が低迷し、リストラが横行し…という社会状況のなかでの男55才です。しかし、福島さんのいう「条件の世界」でもある現代社会で生きること疲れ、傷ついてしまった自己を、「さまざまなつながりを回復」することのなかで再生していくという意味では、55才の男性も若者も同じなのかなと思いました。
【追記】■今年2014年は、四国八十八カ所の霊場を巡るお遍路、巡礼の道が空海(弘法大師)によって開かれてから1200年目にあたります。
おにぎらず
■「おにぎらず」というのをご存知ですか?この「おにぎらず」の話題をfacebookで偶然にみつけました。普通は、「おにぎり」ですから、手でご飯を握るわけですが、これは握りません。だから「おにぎらず」。つくり方は簡単。大きな海苔をひろげて、ご飯と「具」を乗せます。四角くなるように海苔でつつみます。しばらくすると、ご飯の湿気で海苔も柔らかくなります。
■気になったものですから、先日,自分でも作ってみました。残念ながら、冷蔵庫のなかには、この「おにぎらず」の具になりそうなものは、卵とウインナーしかありませんでした。ちょっと残念ですが、この卵とウインナーで「おにぎらず」を作ってみました。トップの写真です。食べやすいように、半分に切ってあります。ご覧のとおり、ヘタクソです。ひとつは、ご飯の量が多すぎたことです。これではすくないんじゃないの…程度でちょうど良いかなと思います。まあ、海苔の大きさにもよりますが。それと、包丁で半分に切るとき、ウインナーの断面が見えるようにするべきでした。切り方の問題ですね。
■「おにぎらず」だけでは寂しいので、「スープポット」でスープもつくってみました。昨日の洋風の煮物を入れて、オニオンスープの元を入れて、あとは沸騰したお湯を注ぐだけ。この「おにぎらず」と「スープポット」があれば、昼食はバッチリです。ちなみに「おにぎらず」、最初は、漫画「クッハングパパ」で紹介された…と聞いています。
「小流域」の土石流(岸由ニ)
■ネットの「日経ビジネス」に「秋も台風直是期、天気予報も行政もアテにならない時代が来た 広島県安佐南区の土石流災害は回帰できたか?」という記事が掲載されていました。インタビュー記事です。インタビューを受けているのが岸由ニさんだったので、丁寧に読んでみました。土石流災害を、流域の視点から説明されている点に新鮮さを感じました。岸さんには、まだ私が40歳頃に、参加していた「流域管理のプロジェクト」に対する評価でお世話になりました。そのとき、自分たちの研究を励ましていただいた記憶があります。ちなみに、このブログでも、「岸由ニさんの本」をエントリーしています。
■さて、この記事のなかで、岸さんは、次のように語っておられます。
地質以上に地形なのだと私は思っています。山間の土石流災害にしても、河川氾濫にしても、名古屋で起きた地下鉄駅の水没にしても、水害は地形によって起きるのです。じゃあ、その地形とはなにか。「流域」です。(中略)今の日本で起きている水害は、「なに」で起きているか。天から降ってきた大豪雨によって起きます。でも、「どこ」で起きているか。それは、それぞれの場所が属している「流域」の地形で起きているのです。
■今回の広島の土石流災害はどこでおきているかというと、「すべて山の斜面に広がっている「流域」の出口に当たる部分」なのです。
水は必ず高いところから低いところに流れます。そして流れ落ちる水は地面のより柔らかいところを削りながら流れます。雨が降って地面に落ちてきた雨水はこの2つの法則に沿って、地面を削り、低い方へ低い方へ流れ、川になって、その川がどんどん合流して最後は海にたどり着きます。こうやって雨水が削ってできた地形が「流域」です。
山に降った雨は、斜面から谷へと落ちて川に流れ込みます。山の一番高いところをつないだ「尾根」に囲まれたエリアに降った雨は、すべてこの谷を走る川に流れこみます。尾根の向こうは別の流域になります。自然の地形のほとんどは、このように流域がパズルのように組み合わさってできています。土地は、ほとんどの場合、雨水がつくった「流域」のかたちの中に収まっているんです。
今回の広島の災害は、山の斜面の、100ヘクタールにも満たない小さな流域が山から平地にひらかれる扇状地のような場所で起こっています。土石流災害が起きた扇状地のような場所は、原理的に考えれば、大雨がふれば必ず水と土砂が集まる場所です。そこに人が集住していなければ、土石流は大雨に対する流域の自然な反応であって災害にはなりません。しかしそこが居住地になっていれば、豪雨の規模に応じて、大きな土砂流がおき、限度をこえれば大災害になる。自然のメカニズムでいえば、当然のことなのですね。
■今回の災害がおきた流域のことを、岸さんは、仮に「小流域」と呼んでおられます。「流域は尾根で区切られて入れ子状になって」おり、「大流域の中に中流域、中流域の中に小流域が組み合わさって」できているのです。岸さんは、今回の災害のばあいは、「流域が上流域に広い集水面積をもち、下手で絞られる形をしている」ことが大きな災害を生み出していると指摘されています。しかも、その上、流域の森林においてこまめな管理されておらず、山の保水力が極度に低下しているため(モヤシ林で下草もはえない…)、豪雨の際には森林ごと流されて、倒木により小さなダムがうまれ、それが決壊したときにさらに大きな被害を生み出すというのです。
倒木や土砂による小さなダムは、斜面に複数できていることが多いものです。決壊したミニダムは、次々に勢いをまして、その下にあるミニダムを決壊させます。倒木と土砂がミニダムを崩壊させながら谷へ向かって滑り落ちていきますから、物凄いスピードと破壊力を持った土石流になるわけです。
広島でも、大島でも、被害の発生した小流域では、このようなことが起きたのではないかと想像されます。次々とミニダムを決壊させて勢いを増すカスケード型の崩壊は本当に怖いんです。
■岸さんは、動画も紹介されています。以下のものです。「流れの先端は倒木や石だらけ」です。「温暖化豪雨時代」、「森林管理不在時代」の現在、このような小流域が大災害をもたらす時代になっていると警告されています。また、流域の考え方を防災に取り入れる必要性があると強く主張されています。地域住民は、自分たち自身でそのことを確認する必要があるのです。『「流域地図の」作り方』の著者らしい主張です。
■岸さんは、最後にこうアドバイスされています。
安佐南区の災害が起きた八木地区の地名は「八木蛇落地悪谷」でした。豪雨があれば、大量の土砂の流れ落ちる流域であると、昔の人は良く知っていたのでしょうね。自分の住んでいるところが危ないとわかったら、地域住民で協力して裏山の森の手入れをするなどというのも良い対応かもしれません。谷に溜まっている倒木の処理をするだけでも、きっと被害を小さくすることができますよ。
『野生動物管理システム』(梶光一/土屋俊幸 編)
■私は、これまで「流域管理」の学際的研究に取り組んできました。そのような私が、他の分野の専門家と議論しながら、環境社会学の研究蓄積をベースに、それらを組み立て直し、再構成しつつ、提案してきた概念に「階層化された流域管理」があります。この「階層化された流域管理」の考え方の元になった素朴なスケッチは、脇田(2002:342-351)のなかで示してあります。その後、総合地球環境学研究所のプロジェクト「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」に取り組むなか、脇田(2005)において「階層化された流域管理」という考え方にまとめることができました。それらは、谷内茂雄・脇田健一・原雄一・中野孝教・陀安一郎・田中拓弥 編(2009)のなかの脇田(2002)で、さらに詳しく説明しています。この「階層化された流域管理」の概念は、研究プロジェクトを統合する「柱」としての役割、そして異なる分野の研究者が相乗りするための「プラットホーム」のような役割を果たしました。
■今回ご紹介する『野生動物管理システム』(2014)は、先月、東京大学出版会から出版されたばかりの研究書です。エゾジカの研究で有名な梶光一さんを中心に実施された研究プロジェクト「統合的な野生動物管理システムの構築」の成果をまとめたものです。本書の「はじめに」では、次のように書かれています。「異なる行政・自治上の階層の統合、異なる空間スケール(ミクロ・メソ・マクロスケール)の統合、社会科学と生態学を統合することによって、深刻な農業被害をもたらしているイノシシに焦点をあてて、統合的な野生動物管理システムの構築を目指した」。このような考え方は、梶さんが「1.3『統合的な野生動物管理システム』の構築に向けて」の中でも述べているように、私たちの流域管理から生まれた「階層化された流域管理」の概念を、野生動物管理へと応用展開しているものなのです。こうやって、流域とは異なるテーマの研究のなかで応用していただけたことは、空間スケールに着目したこの「階層化された流域管理」という概念が、汎用性をもっていることを示しているともいえます。私たちの研究を、きちんと引用し応用展開していただいたことに、心より感謝したいと思います。
■本書の目次は以下の構成になっています。
I 総論編
第1章 野生動物管理の現状と課題(梶 光一)
第2章 地域環境ガバナンスとしての野生動物管理(梶 光一)
第3章 野生動物管理システム研究のコンセプト(梶 光一)II 実践編
第4章 研究プロセスと調査地(戸田浩人・大橋春香)
第5章 ミクロスケールの管理――集落レベル(桑原考史・角田裕志)
第6章 メソスケールの管理――市町村レベル(大橋春香)
第7章 マクロスケールの管理――隣接県を含む(丸山哲也・齊藤正恵)
第8章 イノシシ管理からみた野生動物管理の現状と課題(大橋春香)
第9章 学際的な野生動物管理システム研究の進め方(中島正裕)第III部 政策編
第10章 北米とスカンジナビアの野生動物管理――2つのシステム(小池伸介)
第11章 野生動物の食肉流通(田村孝浩)
第12章 統合的な野生動物管理システム(土屋俊幸・梶 光一)おわりに(土屋俊幸)
■目次のなかにはっきり現れていますが、野生動物の管理をめぐる階層性に注目されていることが理解できます。梶さんは、このように書かれています。
野生動物管理の階層を考えた場合、これらの階層は国、都道府県、市町村、集落といった行政・自治上の単位(階層)に相当する。そこには、様々な行政のほか、農林業、酒量者、NGO、研究者などマルチスケールの階層がかかわっている。これらの野生動物管理にかかわる関係者(アクター)の協働によるボトムアップの取組と管理計画によるトップダウンの調整が必要である。
さらには、野生動物管理に求められている個体数管理、生息地管理、被害防除についても、空間スケールと行政・自治上の単位に関係するので、異なる社会構造における階層間の連携が野生動物管理には不可欠である。問題は、それをどう築き上げるかである。
■このあたりの梶さんの考えかは、テーマは違いますが、私たちの「階層化された流域管理」とも共通する問題意識でもあります。まだ、読了していませんが、現在取り組んでいる流域管理のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」で、梶さんたちの研究の成果を、こんどは逆に応用展開させていただけるのではないかと思っています。
・脇田健一,2002 ,「住民によ環境実践と合意形成の仕組み」『流域管理のための総合調査マニュアル』京都大学生態学研究センター 未来開拓学術研究推進事業 複合領域6:「アジア地域の環境保全」 和田プロジェクト(JSPA-RFTF97100602)編.
・脇田健一,2005 ,「琵琶湖・農業濁水問題と流域管理―『階層化された流域管理』と公共圏としての流域の創出―」『社会学年報』No.34(東北社会学会).
・谷内茂雄・脇田健一・原雄一・中野孝教・陀安一郎・田中拓弥 編,2009,『流域環境学 流域ガバナンスの理論と実践』和田英太郎 監修,京都大学学術出版会.
・脇田健一,2009,「『階層化された流域管理』とは何か」『流域環境学 流域ガバナンスの理論と実践』和田英太郎 監修/谷内茂雄・脇田健一・原雄一・中野孝教・陀安一郎・田中拓弥 編,京都大学学術出版会.
おうみ映像ラボ 遠足 ~映画『ワキノタン』の撮影地・高島市朽木針畑を訪ねて~
■知り合いの女性が、今春友人4名で「おうみ映像ラボ」というチームを立ち上げられました。滋賀県下のドキュメンタリー映画や記録映像を発掘するチームなんだそうです。素敵ですね〜。そのチームて、今週末に、朽木・針畑への遠足(上映会+撮影地の体験)にいく日帰りミニツアーの企画をたてられました。ということで、私は申し込みをさせていただきました。
■日曜日、JR湖西線・堅田駅から滋賀県高島市朽木針畑へバスで向かい、そこでドキュメンタリー映画「ワキノタン」を鑑賞します。作品は、「朽木針畑で40年間にわたり集落に暮らす人々の生活の中にある『暮らしの知恵・思い・カタチ』を記録映像として撮影してきた針畑生活資料研究会(主宰:丸谷彰氏)」によるものです。大変楽しみです。ドキュメンタリーを鑑賞したあとは、「朽木を散策し、針畑の山菜採集など食文化の体験を、生活文化に触れ」る予定です。
説明
映像を媒介にして、地域に引き継がれた技術や知恵、地域性・共同体の姿などの「暮らしの周縁」にあるものの価値を再認識する「共感の場」を創出することを目的としています。映像上映会や映像づくりなどを通じてネットワークを形成し、地域の人・技・文化・景観をアーカイブ化していきます。
この活動により、視覚・聴覚、また関わりの深い人のお話を通じて滋賀の恵みを再認識し、次世代に繋いでいこうと考えています。
ご関心のある方、映像記録の情報をお持ちの方、ご連絡いただければ幸いです。
「おうみ映像ラボ」どうぞ宜しくお願い致します。・2014年度 滋賀県「美の滋賀」地域づくりモデル事業 受託
所有者情報
メンバー:大原歩(大学非常勤講師・成安造形大学附属近江学研究所研究員)、大藤寛子(にぎやかし1)、藤野ひろ美(にぎやかし2)長岡野亜(映像作家)【五十音順】
【追記】■残念ながら、このイベント、台風のために延期になりました。