琵琶湖博物館第32回企画展示「湖底探検II―水中の草原を追う―」


▪️滋賀県立琵琶湖博物館のこの企画展、行きたいなと思っています。高度経済成長期以前、化学肥料がない時代、琵琶湖の特に南湖に生えてくる水草は大切な土壌改良剤や肥料=水草堆肥として使用されていました。この琵琶湖博物館のFacebookへの投稿に写っている道具、水草を引き上げるための藻取り道具なんだそうです。この熊手のような金具で琵琶湖の固定の水草を引っ掛けるのです。奥の方には、棒が見えると思います。これはかなり長いのです。金具に水草を引っ掛けて長い棒で引き上げるのです。それだけ、水草は貴重な資源でした。そのため、藻(水草)取りをめぐって、村々の間で争いになったこともよく知られています(藻取り相論)。

▪️湖岸の近くの地域では、水草を肥料として利用したわけですが、私自身の聞き取りでは、内湖の底泥等も肥料として使用されていました。湖東を流れる愛知川の河口にある栗見出在家という集落があります。この集落は、江戸時代に、愛知川の河口に堆積した土砂をもとにした新田開発で生まれました。しかし、新たに水田ができても肥料分が少ないことから生産性が高くないことがずっと課題となっていました。そこで、近くにあった大きな内湖・大中湖から固定の泥(ゴミと言っていましたが)を掬って持ち帰り、水田に漉き込むことが冬の大切な農作業だったといいます。現在のように外から肥料を持ち込むようなことはできなかったのです。地域にある水草や底泥といった資源を循環的に用いて農業を営んでいたのです。


▪️こちらが、この企画展のチラシです

野生の水草は一本だけで生えていることはほとんどなく、同じ種類が集まって、あるいは違う種類が集まって草原を形成します。地上の草がそうであるように、背の低い草むらや、背が高く密生した大群落まで、水中にはさまざまな草原が出現します。
企画展示「湖底探検Ⅱ-水中の草原を追う-」では琵琶湖での研究成果を中心に、水中の草原の姿や人との関わり、そして草原を構成する水草たちの生活を紹介します。

▪️企画展は全部で6つの章から構成されているようです。第1章水の中に広がる草原、第2章南湖の水草の大繁茂を追う、第3章増えすぎた水草を刈り取る、第4章昔、水草は貴重な肥料だった、第5章湖沼生態系の中の水草、第6章多様な琵琶湖の水草たち。以下の動画「江戸時代の藻とり(藻刈り)に挑戦! Harvesting water plants from Lake Biwa using a method from the Edo period.」は、第4章と深く関係しているように思います。学芸員の方が、昔の道具を再現して藻取りの実演をされています。この動画の解説も転載しておきます。

「藻採り」と「藻刈り」について
肥料目的の水草採取は、滋賀県の市町村誌や民俗調査資料では「モトリ(藻採り・藻取り)」と呼ばれています。
この例に倣って私も動画の中では「藻採り」といっています。
タイトルには「藻刈り」を併記しています。これは冒頭で紹介した琵琶湖眺望真景図をはじめ、江戸末期に描かれた水草採取の様子を描いた絵が「藻刈図」と呼ばれることに由来します。
また「藻刈」や「藻刈り船」は俳諧の夏の季語としても使われています。

▪️この動画の中でも説明されている「琵琶湖眺望真景図」に関連したものとして、大津市歴史博物館のこちらの記事「企画展 描かれた幕末の琵琶湖 -湖・里・山のなりわい-平成15年5月21日(水)~6月15日(日)」をご覧いただければと思います。この企画展を紹介する記事の中に、「藻を採る農民たち」という解説があります。

▪️会期は、7月20日から11月24日までです。

ツバメの巣

20240616swallow1.jpg20240616swallow2.jpg
20240616swallow3.jpg20240616swallow4.jpg
▪️あちこちで、頑張っているツバメたちを、応援しています‼️

ボウズハゼ(2)「日本禿頭鯊」


▪️昨日に引き続き、ボウズハゼの投稿です。台湾では、ボウズハゼを「日本禿頭鯊」と書きます。日本の禿頭のハゼという意味のようです。学名については昨日も書きましたが、魚を釣ることがお好きな方のブログを拝見すると、この名前に関して次のように説明されていました。

台湾では「日本禿頭鯊」と書く。
読んで字のごとく「日本のハゲ頭のハゼ」である。
怒ってはいけない。私も最近すっかりうすくなってきてるから気持ちは分かる。
が、台湾の人たちに日本に対する好意や尊敬はあったとしても悪意があるわけではないのだ。
学名と標準和名がいけんのんである。
Sicyopterus japonicus が学名で、Sicyopterus 属をボウズハゼ属と
japonicus の種名が「日本の」ということになるわけですね。
ほんでもって坊主頭が特徴で、それを中国式に書くと禿頭になったということ。
南方系のハゼだから北日本や日本海側の人にはあまりなじみはないだろうけど
東アジア太平洋岸に広く分布していて、
台湾では全域に渡って通し回遊魚の中でもっとも高密度に分布しているそうだ。

▪️この「日本禿頭鯊」、台湾では大変人気があるようです。トップの動画をご覧いただくとわかりますが、一般の方達が手作りのサデ編を持参して、一生懸命この「日本禿頭鯊」を獲っておられる様子がわかります。おそらく、大変美味しいのだと思います。動画の後半では、この「日本禿頭鯊」を使った料理が紹介されています。私は、台湾語も中国語(北京語)もわからないので、意味はよくわかっていないのですが、美味しさについては画像から伝わってきます。動画をいくつか拝見しましたが、このボウズハゲが河川を遡上しているものもありました。吸盤でしっかり岩に張り付き、岩の壁面を登っていました。また、岩についた付着藻類を口を突き出して食べている様子もわかりました。

ボウズハゼ(1)


▪️台湾の国立台東大学に勤務する友人の游珮芸(ゆう・はいうん)さんの投稿をシェアします。游珮芸さんは、このブログでも紹介した『台湾少年』の著者です。この投稿に埋め込んだのは、Facebookに投稿された游のものです。朝、海岸を散歩されている時に撮った写真のようです。この人たち、頭にライトをつけて、サデ網を使って魚を獲っておられます。游さんによれば、獲っているのはボウズハゼの稚魚とのこと。

▪️この魚、渓流の石に付着する藻類を餌にしているようです。この魚、河川で産卵し、幼生や仔魚は川を下って海で成長し、あるサイズになると再び川を遡上します。両側回遊と呼ぶのだそうです。アユの友釣りをしていると、アユではなくてこの魚が釣れることがあるそうです。アユも川で生まれて海 へと下り、河口域や沖合の表層といった沿岸域で成長を続け、川の水温が温かくなる春に川へと俎上します。これも、両側回遊。今回、初めて知識としてこの言葉を知りました。

▪️ボウズハゼは、ハゼのグループですが、形はヨシノボリに似ています。分類上はどうなんでしょうね。

【ボウズハゼ】スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ボウズハゼ亜科・ボウズハゼ属・ボウズハゼ。
【ヨシノボリ】スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ゴビオネルス亜科・ヨシノボリ属に分類される魚の総称とのこと。

▪️では、日本でよく釣りの対象になるマハゼはどうなんでしょう。

【マハゼ】スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ゴビオネルス亜科・マハゼ属・マハゼ。

▪️どうなっているんでしょうね。今度、琵琶湖博物館で学芸員の方に尋ねてみたいです。これは専門家に聞いてみないとわかりません。とはいえ、勉強になりました。さて、ボウズハゼ、日本では食用としてはどうなんでしょう。ヨシノボリは食べられているようですが、ボウズハゼを食べている地域あるんでしょうか。調べてみました。あるようですね。たとえば、宮崎県の日南市。

▪️游珮芸さんの投稿のコメント欄で、調理した写真を拝見させていただきました。台湾料理です。台湾では、美味しく召し上がっておられますね。朝から、台湾のボウズハゼ漁の写真を拝見して、ちょっとワクワクした気持ちになりました。

「未来ファンドおうみ助成事業」のヒアリング

20240607biwako.jpg
▪️今年の3月3日は、「公益財団法人 淡海文化振興財団」の2024年度「未来ファンドおうみ助成事業」のプレゼンテーションの日でした。私たち特定非営利活動法人「琵琶故知新」からは、事務局長の藤沢栄一さんが、現在、「琵琶故知新」で進めようとしている地理情報システムを基盤に置いた「デジタルマップ」事業に関してプレゼンテーションを行いました。理事長の私も補足の説明を行い、審査員の皆さんからの質疑に答えました。

▪️この「デジタルマップ」が、広く琵琶湖や地域の環境保全活動に関わる団体や個人(たとえばMLGsの団体)、そして広くまちづくりや地域の活性化につながっている団体や個人(たとえばデジタル地域コミュニティ通貨「びわこ」)が相互につながりコミュニケーションを促進していくための基盤になればと思っています。

▪️ところで、審査の結果なんですが、満額で助成していただけることになりました。今日は、申請書やプレゼンテーションだけではわかりにくい、さらに細かな点や、背景の事情、そしてその後の進捗状況に関して丁寧にヒヤリングをしてくださいました。大変納得していただくと同時に共感もしていただきました。財団としても大いに期待してくださっていることがひしひしと伝わってきました。頑張らなくてはですね。7月1日の「びわ湖の日」に、この「デジタルマップ」が公開される予定になっています。小さく産んで、みんなで育てていきます。7月中に、官民合同のワークショップも行う予定です。

▪️琵琶湖や琵琶湖流域に関わって仕事をしてきました。8年前からは、長年暮らした奈良から滋賀に転居し、滋賀県民になりました。「琵琶故知新」というNPOの活動も行うようになりました。日々、琵琶湖を眺めて、琵琶湖を感じながら生活するようになりました。写真は自宅近くから数日前に撮った琵琶湖です。琵琶湖大橋の向こうに沖島、さらに伊吹山が見えています。

▪️ヒアリングの後は、午後から研究室に篭り、明日、守山市での講演会の準備をしました。ちょっと疲れました。明日は、「世界農業遺産・琵琶湖システム」に関してお話をさせていただきます。

朽木の「タネカラプロジェクト」

▪️「タネカラプロジェクト」という取り組みがあります。1人の女性が代表となって取り組まれています。「自生種の種子採集と地域性苗木の育苗、そして山への植樹を」多くの皆さんの「参加」のもとで進めておられます。詳しくは、「タネカラプロジェクト」の公式サイトをご覧いただきたいと思います。

▪️このような活動も、私は「世界農業遺産」の大切な要素だと思っています。もっともっと評価されるべきだと思っています。だって、世界農業遺産に認定されたのは、「森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」ですから。

「ぼてじゃこトラスト」のこと!!

20240513botejako_trust.jpg
▪️「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」第26条第2項の規定に基づき、次の保護増殖事業を認定しています。その条例に基づき、指定希少野生動植物種の繁殖の促進や生息地保全を行う保護増殖事業について、県以外のものが行う場合に、県で定める指針に適合して適正・確実に行われるものであることを認定することになっています。このたび、「ぼてじゃこトラスト」さんの「イチモンジタナゴ」の保護・増殖の活動が認定されました。認定団体第1号です。長年にわたる活動が評価されたのでしょうね。素晴らしいです。おめでとうございます。

「指定希少野生動植物種、保護増殖指針、保護増殖事業について」

オタマジャクシ

20240507otamajakushi.jpg
▪️娘から、親戚のLINEグループで写真が送られてきました。連休中に、娘の家族がやってきた時に、孫達と一緒に採集したオタマジャクシです。大津市の堅田にある湿地に、たくさんのオタマジャクシが泳いでいたのですが、そこから2匹だけ採集しました。その2匹を、孫たち(小2のひなちゃんと保育園4歳のななちゃん)は奈良の自宅まで持ち帰り観察しながら飼育しています。

▪️オタマジャクシの成長は早いですね。あっという間に、まず後ろ脚が生えてきて、今は前脚が伸びてきました。これって、どういう仕組みになっているんですかね。体の中であらかじめ形ができて、それが外に出てくるんですかね。写真を見ると、左側のオタマジャクシは前脚が出ていますが、右側はまだ出ていません。でも、左よりも右の方が体は膨らんでいるような気もします。体の中に前脚が作られているのかな…妄想ですけど。不思議です。で、カエルになったら、2匹をまた滋賀に回収し、元の湿地に放すことにしています。家人が奈良にいく予定があるので、帰りに回収するのです。これで、いいのかな、たぶん、生物多様性的には。個人的には我が家の庭にいてくれてもいいんですけどね。ご近所は迷惑ですかね、やはり。

20240509nihonakagaeru.jpg【追記】▪️このオタマジャクシのことをfacebookにも投稿しました。そうしたところ、滋賀県立琵琶湖博物館の学芸員をされている大塚泰介さんがコメントを投稿してくださいました。

1枚目の写真で背側線が既に生じていて、それが眼の後方からまっすぐ後ろに伸びているので、ニホンアカガエル確定で良いと思います。

▪️ありがたいですね。さすが、プロは違いますね。ということで、娘にカエルの名前をLINEで伝えました。ニホンアカガエルは、里山のような場所にいるようです。たしかに、このオタクジャクシを捕まえた場所は、元々は、里山の谷間にあった水田をビオトープとして整備した場所でした。普段は、里山や草原のような場所で暮らして昆虫を食べているようですが、産卵の時期は以下のような特徴があるようです。

繁殖期は地域により異なりますが、早春(2月から3月)の最初の降雨で始まることが多いと言われます。繁殖期間は1週間程度から、1ヶ月くらい続くこともあります。水が浅く溜まっていれば、どこでも産卵しますが、おもに水田を産卵場所とオタマジャクシの生活場所としています。
(http://kaerutanteidan.jp/index.php/database/2014-03-27-17-42-12/22-rana/65-ranaj)

▪️もう少しすると、尻尾がなくなっていくのでしょうか。その時がやってきたら、今は奈良にいるこのカエル達も故郷の大津に里帰りすることになります。

長浜市早崎の「魚のゆりかご水田」

▪️今日、長浜市早崎の農家、松井賢一さんが、ご自身で営農されている「魚のゆりかご水田」にコイとフナが遡上したと投稿されていました。春です。

第4回滋賀県環境審議会自然環境部会

20231214biodiversity_shiga_strategy.jpg
▪️昨日、木曜日は授業がありません。学外での仕事が多くなります。今日は滋賀県庁で開催された「令和5年度第4回滋賀県環境審議会自然環境部会」に出席しました。

▪️私は、環境審議会の委員ではありませんが、3月に策定予定の「生物多様性しが戦略2024」に関して、専門委員という立場で出席しています。ですから、昨日の自然部会の複数の議題のうち、一番最初の「(仮称)生物多様性しが戦略2024 の原案について」の時だけ出席させていただきました。先月の16日に第3回の審議会では「素案」だったものが今回は「原案」にバージョンアップしました。素案については、すでにネット上に発表されています。近いうちに原案も発表されるのではないかと思います。あとは、環境審議会への答申やパブリックコメントの段階に進んでいくのかなと思います。「生物多様性しが戦略2024」は、生物多様性関連の条約や国際的な枠組み、国の法律や計画、そして滋賀県の条例や計画とも連動することの中で策定されていきます。職員の皆さんが相当頑張って原案を作成されてきたことがわかりました。ご苦労様でした。

▪️で、こんなことを言うと叱られるのかもしれませんが…。「戦略」が策定されたら、次は「作戦」や「戦術」が必要になり、それを支える「兵站」も必要になってきます。ふざけているわけではありませんよ。「戦略」に書かれていることを実現していくためには、市町や民間の企業や団体と連携していく具体的な仕組みが必要だと思います。それが、「作戦」や「戦術」にあたるのかなと思います。。一番細かなレベルで言えば、プロジェクトのレベルかな。その辺り、「原案」の中にある「行動計画」で少し垣間見えるわけですが、この「原案」をもとに、さらに具体的なそして深い個別的な議論も必要だと思います。また、それを支えていくための資金・情報・技術も必要になります。これが「兵站」。今後の展開に注目したいと思います。

管理者用