写真家・芥川仁さんのWebマガジン「羽音に聴く」39号


■写真家・芥川仁さんのWebマガジン「羽音に聴く」39号です。39号は、鹿児島県熊毛郡屋久島町久保養蜂園・屋久島ファームの久保 太さんです。

低炭素社会の実現に向けて、山間地域に暮らす。

20200311niren3.jpg
20200311niren1.jpg20200311niren2.jpg
20200311niren4.jpg20200311niren5.jpg
20200311niren6.jpg20200311niren7.jpg
■ 20年ほど前から環境経済学者の仁連孝昭先生とおつきあいさせていただいています。文理融合の研究プロジェクトでご一緒したのがお付き合いの始まります。そのころは、日本福祉大学に勤務されていましたが、その後は滋賀県立大学に異動され、定年される頃は副学長もされていました。現在は、滋賀県の環境審議会の会長や様々な団体やNPOの役職を務めておられます。今日は、その仁連先生の滋賀のご自宅に伺いました。そして、特定非営利活動法人「琵琶故知新」として取材をさせていただきました。「琵琶故知新」のサイトにはたくさんの琵琶湖関連、環境関連の記事が載っています。それらは県内在住のライターさんたちにお願いしているのですが、今回は理事長の私も同行して取材をさせていただいたのです。

■「低炭素社会の実現に向けて、できるだけ地域の中で、地域の中のモノのつながり、人のつながりを大切にしながら暮らしていこう」。そのような思いから、仁連先生は山間地域にある古民家を改造して、地域の間伐材や廃材を燃料に暮らしておられます。大工さんに指導を受けながら、ご自身で改造されました。もちろん暖房は薪ストーブ。お風呂のお湯も薪ボイラーで沸かされています。補助に太陽熱も利用されています。薪割りは先生ご自身で。寒さを凌ぐことも、お風呂に入ることも、ご自身で薪割りをしなければできません(明日は、地域の方と共同で購入した薪割り機が届くことになっているそうです)。先生は、歳をとって都会に暮らしても、身体を動かすことがないとおっしゃいます。体力が落ちていくわけですね。しかし、ここでの暮らし、薪割りをする暮らしは、結果として体力を維持することにも繋がります。

■電気代は月に1,000円ほどだそうです。電気を使うのは、冷蔵庫と照明とパソコンぐらいでしょうか。お米は地域の農家が生産したもの。残念ながら野菜は、比較的近くにあるスーパーで購入されています。というのも畑で作ってもすぐに猿に食べられてしまうからです。先生の構想では、まず畑を覆う檻を作って、その中で野菜作りをしていく…ということになっています。その野菜があれば自宅で漬物もできます。漬物桶を置くスペースも確保されています。ご自宅裏の農地で、蕎麦を栽培される予定です。生きていくために、そして暮らしていくために必要な仕事は、ここには沢山あります。私たちは、暮らしていくために現金収入を得ることを仕事と呼んでいますが、先生の暮らしではそうではないのです。近代化する以前は、人は暮らしに必要なものを自分たちの手で生み出していました。そのことを仕事と呼んでいました。そのような意味で、仁連先生は仕事をもう一度自分たちの手に取り戻そうとされています。また、そのような生き方をされる方たちとつながっていこうとされています。

第32回地球研地域連携セミナー(滋賀)「びわ湖の水草 市民がはじめる環境自治」

20200201mizukusa1.jpg20200201mizukusa2.jpg
■以下のセミナーに参加します。今回は、特定非営利活動法人「琵琶故知新」の立場から参加します。みなさんのお話をお聞かせいただいた上で、最後の総括のところで少し私自身もお話をさせていただきます。これまで市民グループ「水草は宝の山」(水宝山)の活動を中心に、ネットワークづくりに取り組んできましたが、今回は、総合地球環境学研究所のご支援のもとで、このようなセミナーが開催できることになりました。

■このセミナーの【事例5】では、本学農学部の玉井鉄宗(たまい・てっしゅう)先生が、「水草堆肥の農学的評価」というタイトルで報告をしてくださいます。現在、私は、玉井先生をはじめとする農学部の先生方と一緒に、この「水草堆肥」の課題に取り組む研究プロジェクト(龍谷大学 食と農の総合研究所)を始めようとしています。また、いつかそのことを報告できるかと思います。
———————————
2020年2月8日(土)13:30-16:30(開場 12:30)
[会場]コラボしが21 中会議室2(3F)(滋賀県大津市打出浜2-1)
[主催]総合地球環境学研究所
[共催]特定非営利活動法人 琵琶故知新
[後援]滋賀県、大津市、たねやグループ、NPO法人国際ボランティア学生協会(IVUSA)、滋賀SDGs×イノベーションハブ、水宝山、近江ディアイ株式会社、三井物産環境基金、その他
[概要]
びわ湖は長い時間をかけて独自の生態系と文化をはぐくんできました。その豊かな自然は、私たちの生活にたくさんの恵みをもたらしています。一方で、経済発展に伴う人間活動の影響もあり、水質をはじめ湖の環境は大きく変わりました。
近年では、南湖における水草の大量繁茂により、湖岸の景観の悪化や悪臭の発生などの問題が起こっています。自治体が水草の除去を行う一方で、急激な水草の大量繁茂の原因は完全には解明されていません。
しかしながら、このような状況の中で、市民が主体となり漂着した水草の清掃活動や堆肥化(循環利用)を進めるための仕組みづくりが始まっています。
本セミナーでは、このような地域ではじまった「小さな循環」を地域全体の「大きな循環」に広げていくことを目指して、市民・企業・行政の活動事例を報告していただくとともに、ワークショップを行います。一人ひとりが主体的かつ持続的に取り組めるような、望ましい環境自治のあり方を共に考えましょう。
[参加]
入場無料・要事前申込(定員40名※先着)
[申込方法]
お名前(フリガナ)・電話番号をご記入の上、メール・FAXのいずれかにてお申し込みください。
申込・問い合わせ先
総合地球環境学研究所 広報室
メールE-mail
Tel:075-707-2128   FAX:075-707-2106
2020年2月3日(月)までにお申し込みください。

琵琶湖の全層循環

■琵琶湖の湖水は、冬になると表層が冷えて水温が下がっていきます。湖岸近くの浅いところの湖水も水温が下がります。低温・高密度になるのです。低温・高密度になると、琵琶湖の真ん中の湖水は湖底に向かって沈んでいきます。冬以外の季節では、深度の変化とともに水温が変化する層が生まれますが、冬になるとその水温躍層が次第に深くなっていきます。湖岸近くの浅いところの湖水も低温・高密度になり、湖底の斜面沿いに沈んでいきます。そのようになると、酸素を含んだ水が底の方に沈むことにもなります。そして琵琶湖全体で湖水が混じり合い、水温と酸素の濃度が同じになります。これを、全循環、全層循環と呼びます。一般には、「琵琶湖の深呼吸」と言われる現象です。

■冬になると、多くの滋賀県民の皆さんが、この全層循環「琵琶湖の深呼吸」に注目されます。ところが、昨年は、観測史上初めて全層循環が起こりませんでした。全層循環が起こらないと、琵琶湖の底の方に酸素が行き渡らないことになります。結果として、水質や生態系に影響を与えることにもなります。そのようなこともあり、例年以上に「琵琶湖の深呼吸」のことを心配されているのではないかと思います。この全層循環のついては、「琵琶湖の全循環と『低酸素化』」という専門家の解説をお読みくいただければと思います。

■さて、先日のことになりますが、NHKの夕方のローカルニュース番組で、「全層循環が起きる条件を指標化」(01月30日18時08分)というニュースが報道されました。そのニュースの中では、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの建物の中にある国立環境科学研究センターの中田聡史さんが次のような説明をされていました。

びわ湖では通常、1月から3月の間に湖面近くの水が沈んで湖底の水と混ざり合う「全層循環」と呼ばれる現象が毎年起きていますが、去年、観測史上初めて確認されませんでした。
このため全層循環が起きる条件を解明しようと、大津市にある国立環境研究所はスーパーコンピューターを用いて、過去6年分のびわ湖の気温や風速などのデータを解析しました。
その結果、びわ湖全体にたまった熱のエネルギー量が指標となることが分かりました。
数値が1000PJ(ペタジュール)という単位を下回ると、全層循環は起きていましたが、去年は一度も下回っていなかったということです。
また、去年の気象条件を分析すると、9月から3月までの7か月間の気温がこれまでより高く、さらに湖面を吹く風速が秒速4メートルほど弱かったことがわかったということです。

■この解説を読むと、琵琶湖の全層循環が起きるかどうかは、気象条件や温暖化の問題とつながっていることがわかります。毎年のように大規模な台風が列島に襲いかかり、甚大な被害が発生しています。感覚的にも、地球温暖化の問題を日常生活から遠く離れたところの問題ではなく、身近な問題として捉えるようなってきているように思います。琵琶湖もそのような温暖化の影響を強く受けつつあるのです。今から43年前、琵琶湖の富栄養化の進行とともに赤潮が発生し、大きな社会問題となりました。その時、富栄養化を促進させるリンを含んだ合成洗剤を条例によって規制し、「合成洗剤を使用せず石鹸を使おう」という県民運動=石けん運動が展開しました。もちろん、その後の下水道の急速な普及が富栄養化を抑制していくことになるわけですが、条例や県民運動のような取り組みも、社会の意識、政策の方向性を変えていくとともに、一定の効果を生み出しました。あの時は、温暖化と比較するとローカルな環境問題であるわけですが、この「琵琶湖の深呼吸」に関しては、私たちは何ができるのでしょうか。滋賀県では、温暖化につながる二酸化炭素の排出を抑える低炭素社会づくりに取り組んでいます。環境と経済の両立を目指して2011年3月に「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」が制定されました。そのことに伴い、「事業者行動計画書制度」も定められています。このあたりのことは、私はあまりよくよかっていません。きちんと勉強しないといけないといけませんね。

■ところで、知り合いに老舗の鮒寿司屋さんの若主人がおられます。私がfacebookでこのNHKのニュースを取り上げたとろ、「自然相手のことだから…と言ってしまえば終わりですが、びわ湖の環境が死活問題の自分からすると不安で仕方ないです」とのコメントをいただきました。とても切実に感じておられます。

「ビワマスフォーラム 2019-20 in 野洲」

20200113biwamasu.jpg
■仕事でお世話になっている滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの研究員・佐藤祐一さんが、facebookを通してシェアを歓迎されていたので、私のfacebookだけでなく、こちらのブログの方でもシェアさせていただきます。

【令和元年度ビワマスフォーラムやります!】(シェア歓迎!)

川遊びが大好きな皆様、お待たせしました!今年もやります、ビワマスフォーラム in 野洲!

今年のテーマは「滋賀の小さな自然再生」。滋賀県大・瀧さんの基調講演の他、家棟川(野洲市)のビワマス、新大宮川(大津市)のアユ、吉川川(守山市)のホタル復活にかける人々の熱い報告を聞いて交流し、さらに小さな自然再生の輪を広げていきましょう!恒例のあめのいお(ビワマス)ご飯の試食もありますので、ぜひぜひお越しください。事前申し込みが必要ですので、以下の連絡先までお願いします。
———-
「ビワマスフォーラム 2019-20 in 野洲」
テーマ: 集まれ!滋賀の小さな自然再生
とき : 2020年(令和2年)2月8日(土) 13:30 ~ 16:00
ところ: コミュニティセンターひょうず 大ホール

入場無料 定員100名(先着順、要申込)

滋賀県・家棟(やなむね)川のビワマスのほか、アユ、ホタルといった多様な生きものをみんなの力で呼び戻す「小さな自然再生」活動についてたくさんの方々に知ってもらい、またさらに広げていくため、フォーラムを開催します!

【講演・報告】
●基調講演
「みんなでできる!いい川づくり〜川づくりで地域づくり・まちづくり〜」(瀧健太郎(滋賀県立大 准教授))

●滋賀の小さな自然再生の活動報告
(1)家棟川におけるビワマス遡上・産卵環境の再生活動(佐藤祐一(琵琶湖環境科学研究センター)、木村實(生態調査委員)、TOTO株式会社滋賀工場)
(2)新大宮川におけるアユ遡上のための魚道復活(山本克也(新大宮川を美しくする会))
(3)守山の中心市街地(吉川川)でほたるが自生できる河川環境づくり(根木山恒平(NPO碧いびわ湖))

【体験イベント】
ビワマス(あめのいお)ご飯の試食会
(特別公開:紙芝居「ビワマスをもどそう」(一円重紀)

【全体意見交換】
小さな自然再生をさらに広げていくためには?

<申し込み・問い合わせ先>
野洲市役所 環境経済部 環境課(對馬)
〒520-2395 滋賀県野洲市小篠原2100-1
TEL 077-587-6003 FAX 077-587-3834
E-mail kankyou@city.yasu.lg.jp

主催:家棟川・童子川・中ノ池川にビワマスを戻すプロジェクト/野洲市/滋賀県

NHK「クローズアップ現代+」「世界中の海からプラスチックをなくす」


■NHKの「クローズアップ現代+」で放映されたものです。こういう若者の行動力。すごいなと思います。とても素敵です。
·

25歳のボイヤン・スラットさんは、長さ600メートルの巨大な装置を作って、海のプラスチックごみを回収したいと挑戦しています。
クラウドファンディングなどで44億円(!)を集め、装置を載せた船は世界で最も多くのごみが集まるとされる”太平洋ごみベルト”へ…

https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0008/topic019.html

「琵琶故知新」の法人登記

20191229biwakotishin.jpg
■設立の準備を進めてきた特定非営利法人「琵琶故知新」、先日、事務局の藤澤栄一さんのところに、滋賀県庁から認証書が届きました。そこで、藤澤さんと一緒に、26日の午前中、大津市にある法務局で法人登記をすませました。何も問題の指摘がなければ、ぎりぎり令和元年の設立ということになります。そのことは、正月明けにもわかるようです。この日、藤澤さんから、NPOの名刺を渡されました。いよいよですね。年末のドタバタでまたまたメニエール病のめまいがしているのですが、無理のない範囲で頑張ります。みなさん、私たちの「びわぽいんと」の活動にご賛同ください。また、応援してください。よろしくお願いします。

■「びわぽいんと」は、市民団体「水草は宝の山」(水宝山)のメンバーで琵琶湖汽船社長である川戸良幸さんが報告されたアイデアから生まれました(川戸さんは、「琵琶故知新」の副理事に就任されます)。この「水宝山」から、今回の「びわぽいんと」のような新しいアイデアが、また出てくれば良いなあと思っています。

「『激減した赤トンボ』が見事復活した地域の秘密」という記事

20191008akatombo.png ■ネットで「『激減した赤トンボ』が見事復活した地域の秘密」という記事を読みました。ジャーナリストの河野博子さんの記事です。記事を読んでいると、仲良くしていただいている宮城県大崎市の齋藤肇さんが記事の冒頭に登場されていました。こういうのって、嬉しくなりますね。記事では、8ヘクタールの田んぼで無農薬栽培に挑戦している齋藤さんの喜びのコメントが掲載されていました。

「落水とは、稲が成長したときに、あえて水を落として乾燥させて根を張らせること。7月の上旬に行います。だいたい、それにあっているんですよ、生きもののサイクルは。(トンボは)落水する時期を見込んで、その時期にあわせて羽化する」

■落水のことを、滋賀県では中干しというと思いますが、いったん水田から水を抜くころ、つまり水田から水がなくなり幼虫(ヤゴ)として生きていけなくなる頃に成虫のトンボになるというわけです。大変興味深いです。私は生物学者でも生態学者でもありませんが、人間の営農のサイクルと、トンボの生活史がシンクロしているように思います。しかも、成虫になったトンボの数が半端ない。それらのトンボは、齋藤さんの無農薬の水田でウンカなどの害虫を食べるのです。

■齋藤さんは、とっても面白い人で、彼の家で話を聞いていると聴き飽きることがありません。非常にユニークな方です。私は、ご自宅の中二階にある民俗資料館で館長の齋藤さんからいつも話を聞きます。様々な民具や古文書の研究もされているのです。記事の中では、「江戸時代の古文書も読み込んで、自然の中での農業技術を磨いている」とありますが、これは本当のことです。どうして齋藤さんが、このような生き方をされているのか、それは記事をお読みいただきたいのですが、自然保護活動をされている方たちとの交流があったからです。その内のお一人、お知り合いになった舩橋玲二も記事に登場されます。齋藤さんが農業を営む蕪栗沼は、世界農業遺産に認定されている「大崎耕土」の一部ですが、舩橋さんたちは、生き物の多様性を調査することの中で、世界農業遺産に認定された農業の支援する活動もされています。以下は記事からの引用です。

今年秋から、世界農業遺産というシールが貼られたブランド認証米もデビューする。その認証を得る必須要件の1つとなっているのが、トンボ類からカエル類まで9つの指標生物群をそれぞれの農家が調べる「田んぼの生きものモニタリング」だ。

NPO法人・田んぼをはじめとする農家や市民の活動が、地域全体を「底上げ」する礎を築いた格好だ。

■舩橋さんとは、滋賀県でも世界農業遺産を申請しているけれど、認定されたらこちらの「田んぼの生きものモニタリング」のようなことが滋賀できたらいいのに…というお話をしていました。すっかり、そのことを忘れていましたが、この記事で思い出しました(情けない…)。また、蕪栗沼に遊びに行って、勉強させてもらわねば。

■さて、記事では、いろいろ批判されているネオニコチノイド系農薬と昆虫との関係について説明が行われています。加えて、水田の圃場整備による大きな環境変化についても。記事には、こう説明されています。

国立研究開発法人森林研究・整備機構の主任研究員、滝久智さん(43歳)(森林昆虫研究領域)らが茨城県のそば畑で2007~2008年に調査を行った結果、畑から100メートルの範囲内に森林と草地があるかどうか、3キロメートル圏内に森林があるかどうかで、そばの実の付き方に差が出た。

そばは、「他家受粉生物」で、花に来る昆虫の手助けにより受粉する。畑周辺の土地利用の変化が、管理されたミツバチや野生の昆虫の生息や活動に影響し、ひいては収穫量に影響することがわかった。

■そばの収穫量は、そば畑だけでなく、周囲の自然環境の土地利用状況、そして生態系と大きく関係しているという研究結果があるようです。人間にとって関心のある一部の環境を切り取って論じてもダメだということになりますね。自然の摂理の中で展開している関係性の総体を視野に入れる必要があるということになります。

グレタ・トゥンベリさんへの中傷や揶揄について

■米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、各国の指導者たちに対して、怒りと涙で訴えたスウェーデンのグレタ・トゥンベリさんのことは、多くの皆さんがご承知でしょう。また、ネットで、彼女のことを批判したり中傷する記事も見かけます。ましてtwitterでは、ものすごい数のtweetが…。とても残念です。

■このことについて、社会学者の上野千鶴子さんが、雑誌『AERA』のインタビューに答えて、次のように説明されています

「女性、子どもの声を『無力化』『無効化』する対抗メッセージはいつでも登場します。それをやればやるほど、そういうことをやる人の権力性と品性のなさが暴露されるだけです」

上野さんは4月の東大入学式の祝辞で、痛烈な性差別批判をした。祝辞では「しょせん女の子だから」と足を引っ張ることは「意欲の冷却効果」と説明し、ノーベル平和賞を受けたマララ・ユスフザイさんの父が「娘の翼を折らないようにしてきた」との発言を紹介した。

「同じメッセージを権威のある男性が言えば、聞かれるでしょうか? 繰り返されてきたメッセージに『またか』の反応があるだけでしょう。グレタさんのスピーチは、世界の要人が集まっても、いつまでたっても、何の進展もない現状に対するまともな怒りをぶつけたものです」

上野さんはこうも指摘する。

「環境問題は『未来世代との連帯』と言われてきました、が、その『未来世代』は死者と同じく見えない、声のない人びとでした。その『未来世代』が当事者として人格を伴って登場したことに、世界は衝撃を受けたのでしょう」

■上野さんの指摘は、ジェンダーの問題と環境倫理の問題に関連したご指摘です。以前、滋賀県で展開された合成洗剤に替えて石鹸を使おうという運動、石けん運動の研究をしていたことがあります。運動の中心は、主婦や母親という役割を担う女性たちでした。インタビューで明らかになりましたが、この石けん運動の現場においても、女性の声を「無力化」「無効化」する対抗メッセージは多数ありました。そのような対抗メッセージは、時には、男性のパターナリズムとともになされることもありました。私はそのことを思い出します。環境倫理の問題については、これは面白いご指摘ですね。子どもは存在していても「声のない人びと」でしか扱われてこなかったのに、グレタさんは世界に対して怒りをぶつけた、それは指導者と言われる人たちには想定外の出来事だったのでしょう。このことに関連して、ネット上で面白い記事を見つけました。「グレタ・トゥーンベリ『大人は世界観を脅かされると子供をばかにする』」という記事です。

トランプ大統領をはじめ、グレタさんを嘲笑してきた大人について尋ねられると、「おそらく、気候変動対策を求める積極的な行動によって、自分たちの世界観や利益が脅かされると感じているのでしょう」と16歳の活動家は言う。

カナダのトルドー首相との面会を終えたグレタさんは、「私たちの声がとても大きくなり、扱いにくくなってきたのでしょう。私たちを黙らせたいと思っているのです。批判の声も賛辞だと受け取ろうと思います」とモントリオールで開催された抗議集会で話している。

■グレタさんが私と同じ年齢になった時、私はこの世にいません。確実に。もし生きていても、私は100歳を超えています。ほとんどあり得ない話です。私の孫はグレタさんよりも14歳幼い2歳ですが、孫が後期高齢者、84歳になった時、世界は22世紀を迎えます。最近、気候変動や生物多様性の劣化等の問題、さらには世界各地での社会紛争・国際紛争を見ていると、その時、本当に人類は生き残れているのか…最近、すごく不安になります。グレタさんの怒りは、私の孫の怒りでもあります。グレタさんがいうように、私たちは約束を守らねばならない。一人一人にできることは限られているけれど、「自分には関係ない」と「他人事」でスルーするのではなく、「自分事」として受け止める方たちと連帯することはできます。小さいことでも、「一隅を照らす」ように活動をすることはできます。歳をとり、環境問題は語ったり説明したりするものではなく、取り組むものだと一層思うようになりました。孫が老人になった時に、「ちゃんと」生きていけるように。

『再考ふなずしの歴史』

20191002funazushi1.jpg20191002funazushi2.jpg
■私は、今から22年前、1998年3月まで同僚琵琶湖博物館の勤務していました。博物館の開設準備室の時から合わせると7年間、博物館づくりの仕事をしてきました。先日のことです、その時の同僚であった橋本道範さんと、京都駅の近くでばったりと出会うことがありました。橋本さんとは、昨年の12月に琵琶湖博物館で開催した総合地球環境学研究所の地域連携セミナーが開催された時に少しお会いしましたから、9ヶ月ぶりにお会いしたことになります(たぶん…最近記憶力が悪くて…)。せっかくなので、少し時間をとってもらって、知り合いのお店で少しお話をさせていただくことにしました。

■その時、橋本さんは、ご自身が取り組んでこられた鮒寿司に関する研究のことを熱心に私に話してくださいました。その中身が大変興味深く、私の方からも色々質問をさせていただくなど、鮒寿司談義で話が盛り上がりました。知人であるお店の店主さんも、「面白そうな話をされていますね〜」と言ってくださいましたから、これは多くの皆さんにも関心を持ってもらえることなんじゃないかと思います。いろいろ話をしてくれた最後の方でしょうか、琵琶湖博物館開設準備室の頃に取り組んでいた「総合研究」の基本にある考え方を今でも大切にして研究を続けてきたと話してくれました。その時の研究のアイデアは、以下の文献に書いています。書いた本人も、忘れかけているのですが、橋本さんは、きちんとそれを継承発展させてくださっていたのですね。嬉しいですね〜。

・脇田健一,2001,「21世紀琵琶湖の環境課題とはなにか」『月刊地球 総特集21世紀の琵琶湖―琵琶湖の環境史解明―』第264号(海洋出版株式会社).
・福澤仁之・中島経夫・脇田健一,2001,「21世紀の琵琶湖―琵琶湖の環境史解明と地球科学―」『月刊地球 総特集21世紀の琵琶湖―琵琶湖の環境史解明―』第264号(海洋出版株式会社).

■橋本さんからお聞きした話は、橋本さんが編集された『再考 ふなずしの歴史』にもまとめられています。皆さんも、ぜひお買い求めください。以下の内容の本です。出版元であるサンライズ出版さんの公式サイトからの引用です。

内容紹介
日本最古のスシと言われているふなずし。でも本当にそうなのかという疑問を解くため、中世・近世のふなずしに関する文献をつぶさに調べた研究者達。それだけでは納得せず、アジアのナレズシ文化圏の論考から、現在のふなずしの漬け方のアンケート調査、ふなずしの成分分析結果まで収録。ふなずしと聞いただけで、あのにおいと味を思い出す人にはたまらない、まるごとふなずしの本。

目次
まえがき                石毛 直道
アジアのナレズシと魚醤の文化      秋道 智彌
「ふなずし」の特殊性と日本のナレズシ  日比野 光敏
室町時代の「ふなずし」         橋本 道範
江戸時代の「ふなずし」         櫻井 信也
近世の「ふなずし」の旬         齊藤 慶一
俳諧・俳句とふなずし          篠原 徹
現代「ふなずし」再考          篠原 徹
現代に伝わる「ふなずし」の多様性    藤岡 康弘
「ふなずし」の成分分析と嗜好性     久保 加織

コラム
幸津川すし切り神事           渡部 圭一
「ふなずし」の歴史をめぐる議論に思う  堀越 昌子
「ふなずし」を通して伝えたい「ふるさとの味と心」中村 大輔

■橋本道範さんからは、この『再考ふなずしの歴史』とともに、野洲市歴史博物館の企画展「人と魚の歴史学」に関するご案内もいただきました。こちらも、ぜひ観覧させていただこうと思います。

Admin area