湖西の小河川

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▪︎夏期休暇に入り、大学の研究部の仕事からも解放され、やっとこのサイトの名称に相応しい(?!)内容のエントリーが続くようになりました。なんだか本来の自分を取り戻しているようで嬉しいです。そのような状況になったところで、参加している総合地球環境学研究所の若い研究者(PD研究員)の浅野さんから、「湖西に、魚好きの家族と一緒に魚釣りにいくんですが、一緒に行きますか?」とお誘いを受けました。もちろん、学術的な調査などではなくて、純粋の息抜きに行きませんかというお誘いです。私自身は、魚釣りよりも、「魚好きの家族」の方に惹かれて、参加してみることにしました。

▪︎昨日、12日の朝9時。集合場所は、JR湖西線の北小松駅でした。そこからは、浅野さん以外の研究員、上原さん、石田さん、そして中一のお嬢さんとお母さんの親子ペア=「魚好きの家族」、合計6名で、北小松駅の比較的そばにある、小河川が注ぎ込む砂浜に移動しました。トップの写真は、その砂浜から撮ったものです。この日は、幸いにも「ぴーかん」の快晴ではなく、少し曇りがちな天気でした。8月の真夏真っ只中、私のようなおじさんの身体には優しい天気でした。写真は、南向きです。湖西の山々のシルエットが順番に確認できますね。琵琶湖の水温は「緩い」という感じでしたが、それに対して流入する小河川の水温はかやり「冷たい」感じがしました。湖西には、ほとんど平地がありません。山から流れてきた水はすぐに琵琶湖に注ぎ込むことになります。北小松には水泳場があります。そのような水泳場や私たちの目的地である砂浜の砂も、湖西の、このような小河川が山から運んできたものかと思います。花崗岩に由来するものでしょう。小河川を歩いてみると、足の裏が痛くなります。砂礫が、まだ磨かれていないのです。そのような砂礫の小河川に、琵琶湖から小鮎やハスが遡上していました。
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▪︎最初は、若い研究員の3人は、琵琶湖で釣りをしていたのですが、すぐに関心は小河川の方に移りました。「魚好きの家族」のうち、中一のお嬢さんも含めて、みんなでタモなどで魚を捕まえ始めました。また、追い詰めたハスを手づかみで捕まえていました。若い方たちは、動きが俊敏ですね。私などのおじさんには、とても魚を素手で掴むことなどできません。研究員の浅野さんが手で捕まえた魚は、コイ科の仲間の「ハス」です。魚食性の魚です。この魚の特徴は口にあります。口の形が横からみると「へ」の字型になっています。小鮎などを捕食するために、口が、このような形に適応したのではないか…といわれています。私自身は、琵琶湖から一歩小河川に入っていくと、こんな別世界が待っていることにちょっと感動しました。

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▪︎昼食は、若いみなさんが捕まえた魚を塩焼きにしていただきました。「魚好きの家族」のお嬢さんも、包丁でハスのお腹をさばいて塩焼きの下ごしらえをしておられました。素晴らしいですね〜。このお嬢さん、そして彼女のお母さんは魚が大好きです。食べるのはもちろんですが、小河川で「ガサ入れ」をするのが好きなのだそうです。「ガサ入れ」とは、通常、警察が証拠を確保するために建物等に立ち入ることを言います。しかし、「魚好き」(淡水魚愛好家)のあいだでは、「ガサ入れ」とは川岸の水生植物の生えているあたりにタモ網を「ガサガサ」と突っ込み、タナゴのような小さな魚を捕まえる行為のことをいいます。「魚好き家族」の親子のお2人は、この「ガサ入れ」が大好きなのです。

▪︎若い研究員の皆さんが、魚に夢中になっているあいだ、私はお母さんに少しだけライフヒストリーをうかがってみました。お母さんは、八日市の田園地帯のなかでお育ちになりました。学校の行き帰り、いつも気になっていたのが、水田の水路にいる魚たちのことでした。もちろん、典型的な女の子の遊びをしないわけではありませんでしたが、お母さんは、弟さんと一緒に、魚とりに出かけて遊んでいたといいます。お母さんの魚好きは、大人になって、ご結婚されてからも続きました(ここが素晴らしい…)。今では、お嬢さんと一緒にで「ガサ入れ」に出かけておられます。そうやっているうちに、「ガサ入れ」仲間も増えていきました。魚好きの「おっさん」たちです。そのような、魚にワクワクしている大人たちと一緒に過ごしていると、お嬢さんにもそれが伝わっていくことになりました。「文化」とは、こうやって伝承されていくものなのだと思います。

▪︎以前、「自然が大好き、魚が大好き」だという親子の皆さんにお話しを伺ったことがあります。あるお父さんは、こう語っておられました。「子どものときに滋賀県に家族でキャンプにいきました。手でつかんだ魚のヌルッとした感覚やそのときの匂いを、今でもありありと思い出すことができます。そのとき、めちゃくちゃ感動しました。その感動を子どもたちに伝えたくて、家族でアウトドアを楽しむようになりました」。そのような内容の話しでした。魚を手でつかんだときの経験が、このお父さんの「自然観」を形成するうえで大変重要な契機になっていることがわかりました。

▪︎こうやって遊びを通して、流域に「深くかかわっている」方たちがたくさんいればいるほど、流域の環境は保全されていく可能性が高まっていくことになる…、私はそう確信しています。もちろん遊びだけでなく、いろんな「アプローチ」から、そしていろんな「立場」から、「深くかかわっている」人びとが大勢いることが大切なのです。問題は、「深くかかわる」とはどういうことなのか…ということでしょう。それについては、また別の機会に述べたいと思います。

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