滋賀県ヨシ群落保全審議会のこと
■大学教員の責務として、地域社会からご依頼については、できるだけ引き受けることにしています。滋賀県や大津市の審議会や委員会、そして民間の財団等の委員会で委員を務めています。今回、2年間の予定で「滋賀県ヨシ群落保全審議会」の委員を務めることになりました。しっかり委員としての役目を果たしたいと思います。また、琵琶湖の環境保全にかかわっておられる委員の皆さんとの交流が深まればと思っています。よろしくお願いいたします。
■話は変わりますが、先月の9月末に、琵琶湖の保全と再生のため国が財政支援をする議員立法「琵琶湖再生法」が成立しました。そのことを受け、滋賀県庁では、三日月知事を本部長とする「滋賀県琵琶湖保全再生推進本部」が設置されました。これから琵琶湖の環境再生に向けて様々な事業が展開されていくことになると思います。朝日新聞の記事によると、以下のように書かれています。
本部は、副知事、各部の部長、教育長の12人で構成。会合では、計画作りや国や関係自治体などとの連絡調整に、全庁を挙げて取り組む方針を確認した。中心的な役割を担う組織として琵琶湖政策課内に「琵琶湖保全再生室」ものこの日、設置した。
▪︎計画の詳細はまだわかりませんが、とても気になるところです。今後の展開に注目したいと思います。
第4回「マザーレイク21計画学術フォーラム」
▪︎「汁なし担々麺」のあとは、第4回「マザーレイク21計画学術フォーラム」でした。いずれ議事録が滋賀県庁のホームページにアップされるとは思いますので、昨日の会議の背景等について説明しておこうかと思います。まず、滋賀県庁のホームページ掲載された、以下の「マザーレイク21計画」の説明をお読みください。
琵琶湖は、水資源としてだけでなく、豊かな生態系を育み、その周りに住む人たちによって固有の文化や景観が形成されるなど、多様な価値を持っています。
高度経済成長期を経て、私たちは安全・安心で便利な暮らしを手に入れました。
しかしその一方で、普段の暮らしの中で川や琵琶湖との関わりが薄くなり、身近な生態系の変化に気付くことが難しくなってしまいました。
こうした反省から、滋賀県では、国の6つの省庁※が平成9年度(1997年度)から2カ年にわたり共同で実施した「琵琶湖の総合的な保全のための計画調査」をふまえて、琵琶湖を健全な姿で次世代に引き継ぐための指針として、平成12年(2000年)3月に、琵琶湖総合保全整備計画(マザーレイク21計画)を策定しました。
マザーレイク21計画では、2050年頃の琵琶湖のあるべき姿を念頭に、平成11年度(1999年度)から平成22年度(2010年度)までを第1期、平成23年度(2011年度)から平成32年度(2020年度)までを第2期として、琵琶湖を保全するための幅広い取り組みを進めています。
今回、第2期の開始に当たって計画の改定を行い、2010年度までの第1期計画期間の評価をふまえて第2期計画期間の目標を設定しました。
▪︎私は、この「マザーレイク21計画」の第2期計画の策定に携わりました。その第2期計画のなかで構想されたものが、「マザーレイクフォーラム」なのです。この「マザーレイクフォーラム」については、滋賀県庁のホームページの以下の説明をお読みください。
「思い」と「課題」によって『ゆるやかにつながる場』であり、その運営はNPOや研究者などで構成される「マザーレイクフォーラム運営委員会」により運営され、滋賀県もその一員として参画しています。 マザーレイクフォーラムは、平成23年10月に改定された「マザーレイク21計画」第2期計画において、県民、NPO、農林水産業従事者、事業者、専門家、行政など、琵琶湖流域に関わる多様な主体が、同計画の進行管理および評価・提言を行う場として位置づけられたものであり、みんなで琵琶湖の現状や将来について話し合うため、毎年8~9月頃に「びわコミ会議」を開催しています。
▪︎「マザーレイクフォーラム」のなかにある、この「びわコミ会議」に、私も例年参加していますが、その「びわコミ会議」と同じく、「マザーレイクフォーラム」のなかには、専門家が学出的な視点から検討を行う「マザーレイク21計画学術フォーラム」があり、年に1回、開催されます。様々な分野の研究者が参加し、あらかじめ設定された指標等を通して、琵琶湖の環境保全や、「マザーレイク21計画」の進捗状況に関して議論を行うことになっています。私は、昨年、スケジュールをあわせることができずに欠席できませんでした。記憶に残っていることからすると、指標の整理の仕方や一般県民の皆さんへの説明の仕方等については、ずいぶん進んできたなあ…という印象を強く持ちました。担当部署をはじめとして、関係者の皆さんが頑張っておられることが非常によく伝わってきました。ただ、「マザーレイク21計画」の第2期では、「つながり」が強調されています。ここでいう「つながり」とは、流域内のつながり(秋水域・湖辺域・湖内)や、それとともにある地域社会内部のつながりです。これらの「つながり」にもっと焦点をあてる、愚直に焦点をあてていく必要も感じました。その点をぜひ改善していただくことともに、さらに前進していただければと思いました。
▪︎「マザーレイク21計画学術フォーラム」のあとは、深草キャンパスに移動しました。私が担当している研究部には、いろんな無理難題が毎週のように「流れ着いて」きます。困りました。昨日は、事務職員の方たちと協議して、とりあえず見通しをたてたり、決着をつけたりと…、こような状況が一斉休暇直前まで続き、休暇明はまたすぐにこんな感じ慌ただしい状況に戻るのでしょうね…。
滋賀県庁で意見交換
▪︎今日は、一日、移動の日でした。移動の連続でしたが、充実した一日だったように思います。午前中、大津市役所で「市長と都市計画審議会との懇談会」が開催されました。都市計画審議会の審議会会長や、大津市都市計画マスタープラン案策定専門部会部会長のお二人と一緒に、市役所で越直美市長と懇談をしてきました。私は大津市の都市計画審議会の委員で、同時に大津市都市計画マスタープラン案策定専門部会の部会長職代理者という仕事をしているためです。市長との懇談は、30分の予定が1時間に延びました。大津市の将来像に関して有意義なお話しができたと思います。市長との懇談を終えたあとは、市役所内で、都市計画課の皆さんと一緒に、来月開催される都市計画マスタープラン案策定専門部会の打ち合わせを行いました。
▪︎午後は、滋賀県庁に移動しました。まずは、今年の夏に行う社会調査実習に関連してご挨拶をするために、農林水産部農村振興課を訪問しました。社会調査実習では、東近江市で取り組まれている「魚のゆりかご水田」事業に関してひとつの農村で聞き取り調査を行いますが、同時に、農村振興課の職員の方には、「魚のゆりかご水田」を推進する滋賀県の政策に関してお話しを伺わせていただくことになっています。農村振興課のあとは、琵琶湖環境部の琵琶湖政策課に移動。琵琶湖政策課のヨシ帯保全に関する会議に関して簡単な相談。そして、三番目には琵琶湖環境部の森林政策課を訪問しました。私が参加している総合地球環境学研究所(大学共同利用機関法人・人間文化研究機構)の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」に関連して、意見交換を行うためです。私が森林政策課に伺ったときには、すでにプロジェクトリーダーの奥田さんや、研究員の浅野さん、そしてプロジェクトメンバーである京都大学の大手さんがすでに到着されていました。また、自然環境保全課の職員の方たちも集まっていました。意見交換は、1時間半におよびましたが、プロジェクトの趣旨をご理解いただくとともに、連携関係を模索していくことにもなりました。ありがたいことです。
▪︎滋賀県庁のあとは、深草キャンパスに移動。「2015年度前期「5長推進会議」集中審議 部局ヒアリング」が行われたからです。「5長」とは、龍谷大学の「第5期長期計画」のことです。この長期計画を推進するのが「推進会議」。大学の理事の皆さんから構成されています。今日は、その理事の皆さんから、「第5期長期計画」の後半期(第2期中期計画)の研究部の検討課題について、いろいろヒアリングを受けました。30分という短い時間でしたが、研究部の考え方について、理事の皆さんにご理解いただけたかなと思います。と、同時に、さらなる課題も見えてきました。ヒアリングのあとは、部課長の皆さんと、ヒアリングのさいの内容に関して意見交換をしました。そして、昨日の最後の移動です。こんどは、瀬田に移動になります。最後の仕事は、ゼミ生との「飲み会」=コンパです。今日一日の最後の仕事を楽しみます。
平湖柳平湖の「つながり再生構築事業」の協議会
▪︎昨晩は、草津市の琵琶湖湖岸近くにある志那町にお邪魔しました。志那は、平湖・柳平湖という内湖のそばにある集落です。志那町では、この内湖の環境を復活させようと、長年にわたり様々な取り組みをされてきました。昨日は、自治会舘である志那会館で、平湖柳平湖の「つながり再生構築事業」の協議会が開催されました。この「つながり再生構築事業」では、「魚道を生かした在来魚の郷づくり」、「淡水真珠の復活」…地域の夢を共有しつつ、少しずつその実現に向けて取り組みが進もうとしていますが、私は、その取り組みの進捗をお手伝するために、滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課の職員のみなさんと一緒に、この協議会に参加しています。昨日は、草津市農林水産課の職員の皆さんも参加されました。来年度からは、総合地球環境学研究所で私が参加している研究プロジェクトも、在来魚の復活に関してモニタリングをさせていただく予定です。
▪︎昨晩の協議会では、地元の皆さんから、地元の思い(希望・夢)として、来年度の取り組みに関して、以下のようなご提案がありました。4月には、在来魚の産卵状況を確認することになりました。地元の言葉では、湖岸の浅瀬にきて、マコモ等に在来魚が産卵することを「魚がセル」といいます。この「魚がセル」状況を確認しようということになりました。そのためには、内湖の水位等も調整しなければなりません。5月には、地元の方たちが講師役となって、地元の小学校の生徒さんたちにを対象に、内湖の環境を題材とした環境学習を実施されます。田植えの後は、内湖に面した水田に孵化した仔魚を放流し、一定生育した段階で内湖に移動させる作業を行います。来年度は、琵琶湖から内湖に在来魚が遡上させるための魚道の設置も検討中です。6〜7月にかけては、淡水真珠養殖の復活を目指した活動が行われます。3年目のイケチョウガイから淡水真珠の玉を取り出す作業を行うようです。このような取り組みについては、草津市役所農林水産課や草津市にある立命館大学等が支援されているようです。また、在来魚の生態調査等も行います。ここには、すでに述べたように総合地球環境学研究所の研究プロジェクトが参加させていただく方向で検討させてもらっています。7月には、外来魚の駆除をかねた地元の子どもたちも参加する「釣り大会」が開催されます。ここには、滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課が支援させてもらうことになっています。秋には、他の地域の内湖復活の取り組みを視察にいくことや、内湖の浅瀬にシジミをまくことが予定になっています。非常に盛りだくさんですね。でも、すべて地元の人たちの手作りの取り組みです。そこに、行政や専門家が、側面から支援するということになっている点が重要かと思います。あくまで主体性といいますか、イニシアチブは地元側にあり、内発的に生み出された地元の思い(希望・夢)を、側面からゆるやかに行政や専門家が応援していく…という感じでしょうか。
▪︎その他にも、たくさんの個人的なご意見をお聞かせいただきました。
暮らしが内湖とともにあったこの地域の文化を次世代に継承していくために、身の丈にあった(自分たちで維持管理ができる)ビオトープがつくりたい。/ 昔は、農作業にいくときに必ず内湖を通った。今は、暮らしと切り離された遠い存在になってしまっている。ビオトープは集落のそばにつくりたい。/ 現在、内湖の維持管理の作業が大変。維持管理することが、少しでも集落にとって経済的プラスになるような仕組みをつくりたい。/ かつては、内湖に釣にくる人たちを対象に、駐車場やマッチの販売等をしてこずかいを稼いでいた。励みになっていた。/昨年、ラムサール条約の関係で、全国から子どもたちがやってきて、田舟に乗ったり、淡水真珠やイケチョウガイをみてとても感動していた。このような感動を地元の子どもたちにも味合わせたい。/ 50歳ぐらいから下の人たちは、田舟の艪をこいだ経験がない。河川改修、圃場整備等で、水路で移動することがなくなってしまったから。艪こぎの競争とかできたら、盛り上がるのでは。田舟を使った遊びもできたらいい。/ 夢を実現していくためにも、ひとつひとつ取り組みの成果や効果を確認していく必要があるのでは。
▪︎平湖柳平湖の今年度の協議会は、これが最後になります。いよいよ、具体的な取り組みを始めてくいことになります。このブログでも、取り組みの様子や成果等をご報告できるようにしたいと思います。
▪︎昨日は、できあがったばかりの『志那町誌』を購入させていただきました。写真は、そのなかにあるかつての平湖柳平湖の地図や絵図です。河川改修や圃場整備が行われる以前の姿を確認できます。田舟なしには生活できなかった当時の様子を想像できるのではないでしょうか。
野洲で「つながり再生モデル構築事業」の協議
■野洲の田園地域にある施設から撮った写真です。夕日のなかで比叡山の美しいシルエットがくっきりと確認できました。夕日のなかに浮かぶ筋状の雲が、シルエットをさらに魅力的にしていました。比叡山は、眺める方向によって姿を変えます。草津から北の方では、山頂がとんがって見えます。
■昨日は、14時から「つながり再生モデル構築事業」の協議会が開催されました。この事業は、滋賀県琵琶湖環境部琵琶湖政策課が実施しており、今年の春、県内の3地域の団体の提案がモデル事業として採択されました。私はその選定のさいの委員長だったのですが、選定後も、この事業の行く末を見守りたく、自分の意思でずっと参加させてもらっています。今日は、その3地域のうちの1つ、野洲市の「NPO法人家棟川流域観光船」との協議会でした。NPOの皆さん(5名)が、環境政策課の職員の皆さん(4名)、滋賀県のその他の関係部局の皆さん(2名)、野洲市役所からは環境課の職員の皆さん(2名)、滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの研究員のSさん、そして私、15名の参加で協議会が開催されました。
■昨日の協議会では、4つの議題がありました。NPO側から提案された事業を進捗させていくためには、法律や制度との調整をきちんとしていく必要があります。そこでは様々な「知恵」が必要となります。昨日の協議会は、それぞれの立場から、現場の「知恵」を出し合うことで、事業を前向きに進捗させていこうとする良い雰囲気にあふれていました。一般論として、多様な視点で、現場の抱える課題について議論する「場」をつくっていくことが大切なわけですが、それに加えて、その「場」のなかで展開される「コミュニケーションの質」が問題になってきます。昨日の協議会は、そのような点からしても有意義なものとなりました。笑顔、そして心に希望をもって会議を終えることができました。まあ、そういうこともあって、比叡山の夕焼けのシルエットが余計に美しく見えたのかもしれません。
■下の左は、会議風景です。ここからは、よくわからないかもしれませんが、昨日の協議会は、とっても良い雰囲気でした。なんといいますか、そのような雰囲気が皆さんのコミュニケーションのなかから「醸され」るといったらよいのでしょうか。右は、NPOの代表理事の方からご紹介いただいた資料です。「NPO法人家棟川流域観光船」の活動を紹介している産経新聞の記事と、家棟川を遡上するビワマスの写真です。新聞記事、かなり大々的にNPOの活動を取り上げています。写真は、ビワマスの産卵風景です。家棟川では、ビワマスが遡上してきます。しかし、河川の土木工事等により、その遡上が難しくなっている場所があります。そこに、魚道を設置したいというのが、今回のNPOの皆さんの提案のひとつなのです。これについては、なんとか見通しがたってきました。
■昨日の会議では、NPOの代表の方から、「今年は、いろんな団体が見学に来られた」という紹介がありました。そして、県内の琵琶湖流域で活動している様々な団体が、お互いに交流することの大切さも強調されていました。これもとても大切な視点だと思いました。「知識」からではなく「経験」にもとづいて、おっしゃっておられるのです。そういう、環境自治のネットワークが県内に拡大していくと、本当に素晴らしいなあと思います。
「つながり再生モデル構築事業」第4回協議会
■昨日は、たいへん忙しい一日でした。朝から、兵庫県にある老母の生活介護にでかけました。まあ、たいしたことはしていませんが、母親が求めるものの買い物や、生協への食料品の宅配注文など、いつもの仕事をすませて瀬田キャンパスに向かいました。昼食をとる時間もなく、大阪から乗った新快速電車のなかでオニギリをたべ、4限の3年生ゼミへ。ゼミのあとは、来年に備えて大学院社会学研究科のいろんな仕事をすませ、晩は、草津市に出かけました。
■草津市の湖岸に近い農村にいきました。「つながり再生モデル構築事業」の第4回協議会が、草津市志那町にある「志那会館」で開催されたからです。平湖・柳平湖の暮らしと内湖の「つながり再生」に向けて、地元の志那町の皆さん、滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課の皆さんと話し合いを進めました。昨晩は、草津市役所からも職員の方が3名参加されました。
■この日は、「つながり再生」に向けて、地域の方達一人一人から素晴らしい意見が出され、少しずつ盛り上がってきました。先日、交流会ということで、この事業のもうひとつのモデル事業である「NPO法人家棟川流域観光船」を訪問し、皆さん良い刺激を受け止められたようです(3つめのモデル事業は、高島市の松ノ木内湖です)。個人的な意見ですが、将来は、内湖や内湖の魚たちと結びついたコミユニティビジネスが始まればと思います。今、頭のなかでは、いろんなアイデアが醸し出されています。ちょっと、ウフフ…といった感じなのです。今晩の協議会のことを早速facebookにアップしたとろこ、いつも「いいね!」をくださる草津市の市議会議員の方がコメントをくださいました。この事業に強い関心をもってくださったようです。「近いうちに、南草津で懇親会をしましょう!!」ということになりました。いろいろ「ご縁」が広がっていきます。
家棟川での現地交流会
■滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、草津市の平湖・柳平湖の再生をめざす草津市志那町の皆さんと一緒に、野洲市の「NPO法人家棟川流域観光船」の活動を視察させていただきました。たいへん充実した現地交流会=視察・勉強会になりました。平湖・柳平湖の皆さんも、家棟川の皆さんも、ともに「つながり再生モデル事業」に応募されて採択されたグループです。私は、このモデル事業の採択時の「検討会」で委員長をしていたことから、積極的に実際の現場に出て行くようにしています。今回は、環境保全の活動に積極的に取り組まれてきた「NPO法人家棟川流域観光船」から学ばせていただこうと、現地交流会に参加させていただきました。
■「NPO法人家棟川流域観光船」は、「野洲の市街化の進展に伴い、市街地や水田等からの濁水の流入、ゴミの投棄、河口部のヨシ帯消失や在来魚介類の減少など、家棟川流域にはびわ湖の水や自然環境に関する課題の多くを抱えている」という状況のなかで、「ゴミがなく自然環境に恵まれた家棟川にすることを目指して」2007年に設立されました(NPOの公式ページより)。「流域観光船」って、ちょとかわった名前ですね。しかし、ただの観光船とは違います。観光は、多くの人びとに家棟川の状況を知っていただくための、ある意味「手段」なのかなと思います。
■これは一般論ですが、身近な「環境」に対して地域の「人びと」の関心が低くなっていくと(「つながり」が弱くなる/切れる)、身近な「環境」が悪化・劣化するリスクが高まります。言い換えれば、「人びと」と「環境」とのあいだにある、「物理的距離」が近くても「社会的距離」(意識しなくなる、かかわるチャンスがなくなる)が生まれてしまうと、「環境」は悪化・劣化していくリスクが高まります。この「エコ遊覧船」による観光は、家棟側に対する人びとの関心を高め、「社会的距離」を縮めていくための「手段」なのではないか…と思うのです。家棟川にすてられる不法投棄、流れてくるゴミ、これをなんとかしたいと、多くの市民ボランティアが参加してゴミの回収を行ったようですが、ゴミの量が減ることはなかったといいます。そこで、発想を転換し、家棟川に残る素晴らしい自然を楽しんでもらいつつ、この川の実態を多くの皆さんに知っていただこうと、手漕ぎによる遊覧船を始めたのだそうです。言い換えれば、観光船という「手段」を通して、家棟川と人びととの「社会的距離」を縮めようとされたのです。
■「NPO法人家棟川流域観光船」は、地元の漁師、「魚のゆりかご水田」を実践している農家など、里山・森・川・田畑・琵琶湖で活動する団体のリーダーが中心となって構成されています。代表の北出さんからは、野洲市環境基本計画を市民参加でつくるさいに、出会った地元の市民委員の皆さんが、その出会いをきっかけに、このNPOをつくったのだ…というお話しもうかがうことができました。多様な方達が参加されているわけです。ですから、以下のような強みをもっていることを自覚されています。以下は、NPOのパンフレットからの引用です。
地域の人に支えられて共に実践している
・琵琶湖周辺の6自治会(元)長が、NPOの趣旨に賛同し、会員参加している。
・漁師をはじめとした地元の21人が船頭として活躍している。
琵琶湖ならではの独自性がある
・琵琶湖とその水郷景観、漁師料理、漁師の語りなど、地域独自の宝物を提供できる。
行政の環境施策と連携した事業として実践してきた実績がある
・環境学習船として、延べ2,000人近くが乗船し、河川の現状を体験していただいた。
・これらの取組みが県知事から表彰された。
■以上のように「NPO法人家棟川流域観光船」で興味深いのは、そのメンバーの多様性です。いろんな「得意な分野や能力」をもった人びとが横につながり、「エコ遊覧船」による観光を柱にしながら、様々なテーマでの活動が可能になっていることてす。活動内容は、じつに様々です。家棟川の上流にある里山の保全(「漁民の森」整備)にも取り組んでおられます。家棟川流域のなかにある「山」、「水田」、「川」、「琵琶湖」をトータルに視野に入れて活動されているのです。活動に幅が生まれるだけでなく、家棟川をより大きな視点から捉えるように変化されています。素晴らしいことだと思います。チャンスがあれば、こういう多様な活動を展開されるようになってきたプロセスに関して、特に、レリジエンスという観点からきちんとお話しを伺ってみたいと思います。
■最後の方の写真についても説明しておきましょう。料理の写真。これは湖魚を使った「漁師料理」です。「NPO法人家棟川流域観光船」で提供されている料理です。「エビ豆」(大豆とスジエビ)、「鮎」(山椒風味)、「ウロリ」。「ビワマスの煮付け」、「鮒寿司」。「ビワマスの刺身」。ただし研修ですのでお酒はなし。ということで、ご飯を2杯もいただきました。
【追記】■逆にいえば、特定の人が、「地域づくり」活動のなかで自らリーダーたろうとして(主導権を独占したいという欲望)、情報を独占して他のメンバーを操作しようとすると、活動の持続性は急激になくなってしまいます。自分の頭のなかの青写真に、他のメンバーを資源として動員するような形に陥ってしまうことの危険性があります。「地域づくり活動」は、企業などを運営するやり方とは違うところがありますから。
松の木内湖の環境再生と地域づくり
■一昨日、30日(木)、滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、琵琶湖政策課や滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの皆さんと一緒に、高島市にある松の木内湖にでかけました。内湖に隣接する集落の皆さんに、小さな船(タブネ)で案内していただきました。松の木内湖は、様々な意味で周囲に暮らす人びとにとって重要なコモンズでもありました。
■内湖の湖底の泥。底泥は、肥料分を含む貴重な資源でした。周辺の人びとは、この泥をすくいあげ、畑にすきこみました。夏野菜がよく実ったといいます。内湖は、様々な魚の生息場所でもありました。春には、内湖の周囲にあるヨシ原にたくさんのコイ科魚類が産卵にきました。鮒寿司の原料になるニゴロブナはもちろんですが、それ以外のフナやコイの仲間の魚たちも、タツベやモジなどの竹製の漁具で捕獲され食用にされました。昨日お会いした方達は、そのような湖魚を食べる食文化のなかで生まれ、これまで生きてこられました。そうそう、私が大好きなホンモロコもよくやってきたといいます。ヨシ原は、ボテジャコとよばれるタナゴ等の小さな魚の生息場所でもありました。その他にも、ナマズやギギ、ドジョウなどもいくらでもいたといいます。内湖の琵琶湖への出口のあたりには、小さなエリも設置されていました(フナなどを獲る荒目のエリ)。肥料や食料といった人びとの生業だけでなく、内湖は、子どもたちの夏の遊び場でもありしまた。人びとの生活とも密接につながっていました。ところが、高度経済成長期を経て生業や生活のスタイルが近代化のなかで変化していきます。化学肥料が普及すると、内湖の泥を使うことはなくなりました。食生活も変化し、若い世代の皆さんは、内湖の魚を食べることがなくなっていきました。人びとの暮らしや生業と内湖との「つながり」が切れてしまったのです。もちろん、今はこの内湖で遊ぶ子どもの姿もみることもできません。このような変化は、この松の木内湖だけではなく、現在でも残っている滋賀県内の他の内湖でも同様の状況かと思います。
■人びとの暮らしや生業と内湖の「つながり」が切れてしまうことで、内湖は少しずつ変化していきました。かつてのように内湖の低泥を肥料として取り出すことはなくなりました。当然、流入する河川からの土砂で内湖は浅くなり、そのような土砂は内湖に溜まっていくことになります。この地域の皆さんの話しを総合すると、そこに拍車をかけたのが河川改修や周囲の水田の圃場整備事業です。かつて松の木内湖には、周囲の複数の河川から、今とは違ってかなりの量の水が流れ込んでいたようです。また、内湖から琵琶湖へ内湖の水が流出するあたりは、今よりも幅が狭くなっており、そのこともあり、かなりの流速があったようです。内湖の湖底には、そのような水の流れにより「ホリスジ」と呼ばれる一段深くなった内湖のなかの水路のようなものもあったといいます。常に、この松の木内湖の水は動いていたてのですね。しかし、河川改修によりその動きがなくなりました。さらに、圃場整備事業により水田からの濁水が、内湖に河川から流れ込み、泥が堆積するようになってしまいました。圃場整備事業により濁水や内湖に堆積する泥の量は増えました。泥が堆積したところにはヨシ帯が形成され、樹木もはえるようになってしまいました。少しずつ内湖は小さくなっていったのです。実際に田舟にのって内湖を拝見したわけですが、そのさい、湖底からキノコのようなものがニョキニョキとはえているのがみえました。もちろんキノコではありません。水中の泥が沈殿していくさいに、水草の葉や茎に泥が積もってしまったのです。それが、キノコのように見えていただけでした。何も知らなければ、美しい風景のように見えますが、この地域の皆さんからすれば、これは荒れ果ててしまった内湖ということになります。
■かつての内湖をよくご存知の60歳代以上の皆さんは、なんとかこの状況を食い止めたい、そして改善したいとお考えです。この日は、地元の方に田舟に乗せていただき、内湖をその内側から見学させていただきました。内湖の状況をじっくり観察させいただきました。陸からながめているのとは異なり、地域の皆さんが悩んでおられる実態がよく理解できました。以前、公共事業により、この内湖を整備して公園化してしまおうということが計画がたてられましたが、結局、予算の関係もありうまくいきませんでした。しかし、地元の皆さんは、そこで挫けませんでした。現在、4月末か5月頭にかけて内湖の端にたくさんの「鯉のぼり」を泳がせるイベントを開催されています。少しでも、内湖のことを知ってもらい、内湖と関わってもらおうという狙いがこのイベントにはあります。私は、まだ参加したことがないのですが、地域外からもたくさんの方たちが参加されるようです。
■田舟での内湖の視察のあとは、地元の方達と、この松の木内湖の再生、特に地元の皆さんの暮らしと内湖の「つながり」をどのように再生していくのか…という点について協議を行いました。これで3回目になります。今回は、松の木内湖の「つながり」をもっと再生できるように、これまで地域の皆さんで実施されてきた「鯉のぼり」のイベントを、さらに盛り上げていこうということになりました。最初は少々堅い雰囲気でしたが、しだいにいろんな「夢」が出てきました。「夢」を語り合うことができました。結果として、「さあ、やるぞ!!」という感じで「力」が湧いてくる素敵な会議になりました。「こんなこといいな、できたらいいな…」と漫画「ドラえもん」の歌の歌詞のような展開になりました。写真とは異なり、みなさん笑顔になりました。いろんなプランが提案されました。そうした中で、まず決定したことは、若い世代の方達が泥臭いと嫌っておられる内湖の魚を美味しく料理して食べてもらおう…というものです。そのために、新しい湖魚料理をプロデュースできる料理人の方に、そのイベントに参加してもらおうということになりました。現在、料理をしてくださる方を募集中です。すでに、声をかけさせていただいた方もいます。個人的な主観といわれるかもしれませんが、湖魚は美味しいんです!! 美味しい湖魚を、現代風のレシピのなかで使っていただき、若い世代にも楽しんでもらおう…というのが狙いです。湖魚料理以外にも、内湖のもっている「びっくり」するような「すごい」魅力を、しっかり伝えていけるような企画も考えています。楽しいイベントにしていきます。地元はもちろんですが、地域外からもたくさんの参加をいただければと思います。また、このブログでも広報させていただきます。
白鬚神社
■昨日は、滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、琵琶湖政策課や滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの皆さんと一緒に、高島市にある松の木内湖まででかけました。滋賀県庁の公用車ででかけたのですが、途中、白鬚神社で少しだけ時間をとっていただき、この写真を撮りました。
■iPhone5で撮ったわけですが、なかなか満足のいく出来に仕上がりました。写真を撮っているとき、とても清々しい気持ちになりました。最近は、いわゆるパワースポットとしても有名らしいのですが、なるほど…と思います。
生物多様性タウンミーティングの開催
■生物多様性に関するタウンミーティングが滋賀県の6箇所で開催されます。滋賀県庁・琵琶湖環境部・自然保護課の「滋賀生物多様性地域戦略策定に係る専門家会議委員」のメンバーというこもあり、滋賀県立琵琶湖博物館の中井さんのお手伝いのような感じで、ファシリテーターをやります。中井さんは、昔の同僚、そして生物多様性の専門家です。「生き物の賑わい」にご関心のある皆様、ぜひご参加ください。
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滋賀県では、自然のめぐみを守り、将来にわたってりようできるよう、(仮称)滋賀県生物多様性地域戦略の策定を進めているところです。
今回、県内にお住まいのみなさまから、地域の自然の特徴や、暮らしとの関わり等について、具体的なお話を伺うため、県内6地域においてタウンミーティングを開催することとしましたのでお知らせします。
1.開催日時および開催場所:
①大津 …平成26年10月23日(木曜日)18時30分-20時30分 @コラボしが21
②甲賀 …平成26年10月21日(火曜日)19時-21時 @碧水ホール
③東近江…平成26年10月15日(水曜日)19時-21時 @八日市商工会議所
④彦根 …平成26年10月16日(木曜日)19時-21時 @彦根勤労福祉会館
⑤長浜 …平成26年10月22日(水曜日)18時-20時 @長浜文化芸術会館
⑥高島 …平成26年10月26日(日曜日)15時-17時 @高島市観光物産プラザ
2.内容:
○生物多様性とは何かについてご説明します
○生物多様性地域戦略の概要について御説明します
○みなさんの地域の生物多様性に関する御意見を伺います
申し込み不要、どなたでもご参加いただけます!