超・早起き

■こんな投稿をfacebookにしました。

朝早くからの出勤が続き、昨晩は早く帰宅したこともあって、なんと21時半に眠ってしまった。そして、自然に目が覚めてしまったのが3時半。まあ、6時間ほど眠っている計算にはなるが、これでよいのか…。

仕方がないのでメールをチェック。メールで研究仲間の教えてくれた論文を、ネットで探して読み、日記のような身辺雑記のようなブログを書き、熱いシャワー浴び、新聞を読み、朝飯を作って食べ…7時前に家を出る。

研究仲間は、私の「階層化された流域管理」、それから「Future Earth」や「IPBES(intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services)」にも関係する論文だよと興奮した感じのメールで教えてくれた。私も早朝からちょっと興奮する。

ここに、さらに、ランニングが追加されれるような暮らしになれば良いのだが。

■昨日は、学部の教授会と研究科長の選挙でした。早く仕事が終りました。ということで、いつもよりも早めの帰宅となりました。ウイークデーにはめったにないことなのですが、妻と一緒に夕食をとることができました。また、ここ最近、朝早くに出かけることが多いものですから、身体がだんだん「朝方」になってしまっています。ということで、超・早朝の起床となったわけです。

■facebookの投稿のなかにある論文とはCashという研究者の論文です。以前、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト(「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」)で出版した『流域環境学』(京大学術出版会)のなかで(514頁)、研究仲間である谷内さん(京都大学生態学研究センター)が、Cashたち(2006)による” Scale and cross-scale dynamics : governance and information in a multilevel world. Ecology and Society. 11(8)(online)”を引用しています。彼らの考え方が、私がプジェクトのなかで提案した「階層化された流域管理」の考え方にかなり似ているからです。今日、谷内さんからメールでいただいた情報は、この論文よりももう少し前の Cashたち(2003)の論文 “Knowledge systems for sustainable development. PNAS.100(14) (online)” についてです。谷内さんは、丁寧に重要なポイントまで整理して私にメールを送ってくれました。この2003年の論文は、「階層化された流域管理」とかなり共通する考えたをもっているだけでなく、私たちがこれから本格的に取り組む総合地球環境学研究所のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」、さらにはIPBES (intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services=生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム、谷内さんはこのIPBESのなかにあるひとつのワーキンググループのメンバーです)、総合地球環境学研究所が関わっているFuture Earth(持続可能な地球環境についての国際協働研究イニシアティブ)とも大いに関係しているというのです。谷内さんのおかけで、朝から頭の中が興奮し、気持ちがたかぶってきました。

■以下に、『流域環境学』(514頁)の谷内さんの記述を引用します(「階層化された流域管理」の考え方そのものは、『流域環境学』の「『階層化された流域管理』とは何か」(47-68)をご覧ください)。

Resilience Alliance の機関誌(online journal)でもある Ecology and Society は、20006年に”Scale and Cross-scale Dynamics” という特集を組み、重層的な資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスにおいて生涯となる、スケールに関わる3つの課題(scale challenge)として、無知(ignorance)不適合(mismatch)多元性(plurality)を挙げる。無知とは、重要なスケールやスケール間の相互作用を認識できないこと、不適合とは、例えば、人間による生物資源管理の制度のスケールと資源の生物地理的な分布・移動のスケールが一致せず、ずれていること、多元性とは、関係主体の問題認識が異なること、あるいは、関係主体すべてに最適な唯一の管理スケールがあると仮定すること(による失敗)を意味する。本書の事例に即していえば、かつての環境保全における、びわ湖とその内湖や流入河川との間の連続性の認識の欠如が、無知に相当する。琵琶湖流域の河川管理の主体が、国と県、さらにその中で、異なる行政担当ごとに分割されていることや、流域の現象を総体として対象とする学問がないことが不適合に相当する。また流域の階層性による農業濁水問題に対する問題認識の違い、「状況の定義のズレ」が、多元性に相当する。

Cash らは、これらのスケールに関する諸問題を克服する制度的仕組みとして、異なる階層の制度間の調整(institutional interplay)、異なる階層間の協働マネジメント(co-managemanet)、階層間調整期間の設置(boundary or bridging organization) を検討し、多層にわたる資源管理・環境管理問題には、協働的な多層感マネジメントの構築が有効であるとする。

20141120haruki.jpeg■さて、投稿のなかで、私はランニングのことにもふれています。以前から、小説家の村上春樹さんの長編小説の執筆とランニングとの関係が気になっています。早く起きて仕事をして、走って、9時には眠るというライフスタイル。村上さんは、『走ることについて語るときに僕の語ること』のなかで「『基礎体力』の強化は、より大柄な創造に向かうためには欠くことのできないものごとのひとつ」と書いています。そうなのです。研究を進めるためには、同時に、ランニングが必要なのだ…ということです(^^;;。そのランニングですが、春のフルマラソン後の故障を理由に、中断してからずいぶん時間が経過してしまいました。今年の春の「篠山ABCマラソン」の後、脛の痛み、肋骨のヒビ…いった故障からの回復を待っているあいだに季節は夏に突入し、仕事もさらに忙しくなり、とうとう「ランニングしたい/しなくちゃ」モードが身体のなかから消えてしまいました。これではいけません。2つ前のエントリー「来年度の仕事」にも書いたように、仕事のベクトルが研究に強く向かっていることを強く感じる今だからこそ、また走らねばなりません。頭と身体が分離してしまっていては、良い仕事はできません。そういう例(人)を見てきましたので、自分自身は、このあたりでもう一度ランニングのモードをきちんと復活させて頭と身体の関係をチューニングしておこうと思います。

「つながり再生モデル構築事業」第4回協議会

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■昨日は、たいへん忙しい一日でした。朝から、兵庫県にある老母の生活介護にでかけました。まあ、たいしたことはしていませんが、母親が求めるものの買い物や、生協への食料品の宅配注文など、いつもの仕事をすませて瀬田キャンパスに向かいました。昼食をとる時間もなく、大阪から乗った新快速電車のなかでオニギリをたべ、4限の3年生ゼミへ。ゼミのあとは、来年に備えて大学院社会学研究科のいろんな仕事をすませ、晩は、草津市に出かけました。

■草津市の湖岸に近い農村にいきました。「つながり再生モデル構築事業」の第4回協議会が、草津市志那町にある「志那会館」で開催されたからです。平湖・柳平湖の暮らしと内湖の「つながり再生」に向けて、地元の志那町の皆さん、滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課の皆さんと話し合いを進めました。昨晩は、草津市役所からも職員の方が3名参加されました。

■この日は、「つながり再生」に向けて、地域の方達一人一人から素晴らしい意見が出され、少しずつ盛り上がってきました。先日、交流会ということで、この事業のもうひとつのモデル事業である「NPO法人家棟川流域観光船」を訪問し、皆さん良い刺激を受け止められたようです(3つめのモデル事業は、高島市の松ノ木内湖です)。個人的な意見ですが、将来は、内湖や内湖の魚たちと結びついたコミユニティビジネスが始まればと思います。今、頭のなかでは、いろんなアイデアが醸し出されています。ちょっと、ウフフ…といった感じなのです。今晩の協議会のことを早速facebookにアップしたとろこ、いつも「いいね!」をくださる草津市の市議会議員の方がコメントをくださいました。この事業に強い関心をもってくださったようです。「近いうちに、南草津で懇親会をしましょう!!」ということになりました。いろいろ「ご縁」が広がっていきます。

総合地球環境学研究所での研究会議(その2)

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■総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の全体会議、2日めです。午前中、朝一番に、友人でもある秋田県立大学の谷口吉光さんが、報告をされました(写真左)。秋田県立大学では、八郎湖の環境問題やガバナンスに関する研究を企画され、科研に申請されました。採択されれば、私たちの研究プロジェクトとマッチングファンド方式で取り組んでいかれることになります。

■谷口さんの報告のあとは、京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんが、IPBES(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services /「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)のなかのWGの1人としてオランダの会議に出席したことを報告するはずだったのですが、谷内さんはIPBESの報告書の執筆に忙しく、かわりにプロジェクトリーダーの奥田さんが説明をしました。IPBESの一連の報告書は、多様な空間スケール、多様なステークホルダー、多様な価値に配慮した内容になる予定らしく、過去にこのブログでお知らせてしたFuture Earthに呼応したものになるはずです。私たちの研究プロジェクトの理念を支持するものです。こういった世界のトレンドを常にきちんとおさえる必要があります。

■私たちの研究プロジェクトでは、滋賀県の野洲川を中心に研究を進めますが、同時に、国内の湖沼、宍道湖、八郎湖(八郎潟)、印旛沼との比較研究も進めます(国外ではフィリピンのラグナ湖)。今日のワークショップでは、自然科学的な観点からの比較だけでなく、それぞれの湖沼の環境ガバナンスがどのように変遷してきたのか、そのあたりの比較研究も進めることになりました。まだ詳しくは書くことができませんが、それぞれの湖沼を専門に取り組んで研究者たちがディスカッションするなかで、大変興味深いことが浮かび上がってきました。研究プロジェクト内の社会科学系の研究者による「人間・社会班」(ちょっとヒドいネーミングですが…)では、来年度中に、この国内湖沼の環境ガバナンスの比較研究を論文にまとめることにしました。若い優秀な研究者が参加してくれているので、このあたりは非常にフットワークが良く、頼もしい限りです。その若い研究者Oさんは、最初から海外のジャーナル(査読付きの学術雑誌)に投稿しようといってくれました。さすがですね。今回も、自然科学と社会科学の研究者が集まって取り組む研究プロジェクトの、その面白さというか妙味を今回も味わうことができました(まあ、個人的な特殊体質かもしれませんが…)。

■とはいえ、私のいる社会科学系の班は、まだまだマンパワーが不足しています。その一方で、いろいろ「宿題」は増えるばかり…。疲れました。体制づくりもいろいろ考えなければなりません。さらに3人ほど、流域管理に強い関心のある熱心な若手・中堅研究者が必要だ…と思いつつも、なかなか難しいのが現状です。研究費が欲しいから参加したい…という人はいるでしょうが、そういう人は…困ります。自分の研究分野の殻のなかに閉じこもらず、そして自然科学の研究者と積極的・生産的なコミュニケーションすることを厭わず、研究プロジェクト全体のミッションに貢献できる熱意のある人でないと困るからです。いろいろ手を尽くして頑張ってみます。

【追記】■昨日は、帰宅して夕食をとると、9時には眠ってしまいました。月曜日、ちょっとお休みをいただきたいところですが、そういうわけにはいきません…ちょっとトホホな気持ち。学内のいろいろ仕事が溜まったいます…。

総合地球環境学研究所での研究会議(その1)

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■今日と明日は、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の全体会議です。研究プロジェクトは複数のグルーブで役割分担をしており、それぞれのグループのリーダー(コアメンバー)が報告をしました。私は、社会科学系のグループのリーダーとして報告をしました。ディスカッションでは、いくつかの「宿題」をいただきましたが、グループ内の優秀な若手のメンバーの協力もあり、なんとか「宿題」として与えられた壁を超えることができそうです。

■今年度の秋からは、予備研究(FS)からプレリサーチ(PR)、来年度からはいよいよフルリサーチ(FR)の5年間が始まります!! プロジェクトの予算がドンとつき、いろんなメンバーを誘って本格的に研究に取り組むことができます。精神的なプレッシャーはかなりありますが、地域社会との連携、他分野との連携をより深め、良い成果を出せるように頑張ります。

■以上の総合地球環境学研究所の研究プロジェクトは、滋賀県の野洲川流域を中心取り組むことから、龍谷大学の政策学部が中心となって取り組む「LORC」による「限界都市化に抗する持続可能な地方都市の『かたち』と地域政策実装化に関する研究」とも部分的に連関するところがあります。私は、この「LORC」にも参加しているので、両者の関係者の「出会い」があればなとも思っています。「LORC」の研究テーマの最後に「地域政策実装化」とありますが、地球のプロジェクトも、単なる科学的な研究ではなく、野洲川流域での新たな流域管理の方法を科学的な研究をもとに構想し、それらをモデル的に取り組む地域社会との連携実践を通して、将来的には「実装化」していくことを目指してるからです。

【関連ページ】生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性
【関連エントリー】 限界都市化に抗する持続可能な地方都市の「かたち」と地域政策実装化に関する研究

【追記】■晩は、京都四条で懇親会をもちました。朝9時から夕方17時までずっと会議でした。みなさん、お疲れさまでした。このあとは、多くの皆さんが二次会へ。私は、二次会の途中で奈良の自宅に戻りましたが、総合地球環境学研究所の施設に宿泊する皆さんは、深夜まで楽しまれたようです。個人的な考えですが、こういう懇親会は研究プロジェクトの凝集性を高めていくためには必要なことだと思います。
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研究会議の打合せ

20141106yachi1.jpg ■昨日は、朝1限の講義のあと、事務仕事や4年生の卒論指導、そして大学広報の取材対応(「北船路米づくり研究会」)。夕方からは、大津の中心市街地にある町家キャンパス「龍龍」に移動しました。月1回開催されている中央地区の皆さんと「大津エンパワねっとを進める会・中央」。進める会の最後に、地域の高齢者のサロン活動や、学区の運動会を手伝うために、卒業してからもやってくるエンパワ修了生のことが話題になりました。喜んでいただいています。

■そのあとは、引き続き「龍龍」に残り、京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんと今週末の土日に総合地球環境学研究所で開催される研究会議のためのミーティング。研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」に関するミーティングです。

■土日の研究会議で話す内容に関して、アウトラインを相談しました。そのさい、オランダで開催された「IPBES」(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services /「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)の会議に参加してきた谷内さんから、そこでの議論に関して、話し聞かせてもらいました(谷内さんは、IPBESの報告書の執筆者)。環境ガバナンスに関して、地球の裏側(南米)からやってきた研究者が、私たちの「階層化された流域管理」の考え方と似たような問題意識を持っていたと聞いて、ちょっと嬉しくなりました。このIBPESや以前にもこのブログでふれたFuture Earth等、世界のトレンドや動きをにらみつつ、プロジェクト進めていくことになります。そのあとは、「今日も一日ご苦労さん…」ということで、ちょっとだけいつもの店、大津駅前の居酒屋「利やん」です。いや、ほんまにちょっとだけ。急遽行くことになったものですから、ちょっとしたアテの他はひたすら呑み。食事は家に帰ってから。体に悪いです〜。

20141106yachi2.jpg■谷内さんの職場の宣伝になりますが、「データベースの構築と活用から見えてきた! 新しい生物多様性のサイエンス」という市民向けの講演会が「みやこメッセ」で開催されます。写真、クリックして拡大してみてください。市民向け…というには、少々内容は小難しいですけど、サイエンスが好きな方にはね面白い内容だと思います。

■谷内さんとは、ずいぶん長い付き合いです。15年程になるでしょうか。「利やん」では、ちょっと思い出話しにもなりました。最初の出会いである日本学術振興会の未来開拓学術研究推進事業のプロジェクトや、その後の総合地球環境学研究所の以前のプロジェクト。そして、そのときにお世話になったプロジェクトの秘書であるYさんや Kさんのこと。仕事がとろくて怒られたこと…いろいろあったなと…トホホ。ということで、お2人には、facebookでメッセージも送りました。台湾の大学教員であるYさんとはfacebook上で、ちょっとした同窓会になりました。便利な世の中になりましたね。「谷内さんと一緒に、台湾で癒されたい〜」と伝えると、大歓迎とのことでした。嬉しいな〜。「実現したらいいな台湾の温泉と美味しい料理」。

再投稿・金才賢先生と堀昭一さんの出会い

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(異常が発生し、ご迷惑をおかけしております。とりあえずの対応でしのいでいます。本日投稿したエントリー「金才賢先生と堀昭一さんの出会い」ですが、私のデータ操作が悪かったためでしょうか、フリーズしてしまっています。そこで、1ページに表示できるエントリー数を減らし、問題が生じたエントリーをダミーのエントリーで次ページに移動させることにしました。このエントリーの本文、後で書きます)」
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■少し前のエントリー「金才賢先生(韓国・建国大学)の来日」にも書きましたが、これから滋賀の農産物を活かした石釜ピザの店を開店される「Ishigama」の堀昭一さんにも、金才賢先生とインタビューしていただきました。この写真は、堀さんにお許しいただき、堀さんがfacebookにアップされたものを転載させていただいています。facebookの投稿のなかで、堀さんは、次のように述べておられます。

昨日は、龍谷大学脇田先生からの、ご依頼を受けて
韓国からお越しの頂いた金教授のインタビューを受けて参りました。
『地域の中でどのような位置付けでありたいか』
『生産者との関係をどのように表現していきたいか』
普段から思い描いていることを、しっかりと言葉にすることがとても大切だと改めて気がつきました。

■「普段から思い描いていることを、しっかりと言葉にすることがとても大切だ」。私もその通りだと思います。言語化、概念化して自分たちの活動をきちんと説明できることが、「地域づくり」においてはとても大切だと思います。先日、3年生のゼミで読んでいる延藤安広先生の『まちの再生の述語集』には、冒頭の部分に、次のような4つのデザインに関する説明があります。

・状況にいかに「やたかなふくらみ」を与えるかという「戦略デザイン」
・人と人[code][code]・状況にいかに「やたかなふくらみ」を与えるかという「戦略デザイン」
・人と人のつながりをいかに仕掛けるかという「参加のデザイン」
・どんなモノを配慮しどんな親密な場所にしていくかという「空間のデザイン」
・「ヒト・モノ・コト・トキ」をいかに仕組むかの「マネジメント・デザイン」

■延藤先生が指摘されているこの4つの「デザイン」は、金才賢先生のインタビューでの堀さんに対する質問とも重なっています。ゼミの3年生にもいったのですが、自分たちがやっている「北船路米づくり研究会」の活動をこの4つのデザインの考え方に重ね合わせてみたときに、どういうふうに自己点検・評価できるのか。堀さんの言葉でいえば「しっかり言葉にする」ことをやってもらいたいと思うのです。話しを、この日のことに戻しましょう。

■金才賢先生は、堀さんにインタビューしたあと、「韓国にも、ピザ店を開店して地域の活性化の取り組む若者達がいますよ」と教えてくれました。「清風商会」というお店を古い伝統的な地域の市場のなかに開店させた若者たちの話しです。ピザ店がメインなのですが、それ以外にも、フットバスやシェアハウス・ゲストハウスの経営もされていすま。ところで、この若者たちは、ある韓国のシンクタンクで学んだ人たちです。韓国には、「希望製作所」というシンクタンクがあります。現在、ソウル特別市の市長であり、弁護士をされていた朴元淳さんが中心とり、2006年、市民が社会デザインの担い手となることを目指す市民参加型シンクタンク「希望製作所」(ヒマンチェジャクソ、The Hope Institute)を設立しました。ネーミングがいいですね。「希望製作所」です。この「希望製作所」でインターンをした若者が、自分の故郷である江華島に帰って、江華島の古い市場のなかで「清風商会」を開店したのです。「清風商会」の経営は、2人の若者がやっているわけですが、そのうちの1人、金土日さんの記事をみつけて、翻訳してみました。もちろん、「エキサイト翻訳」を駆使しての翻訳です。それを少し編集しました。ですから、必ずしも正確ではありません。しかし、大筋はわかると思います。大変興味深い活動だと私は思います。

こんにちは。 「希望製作所」뿌리センター28期インターン金土日です。「希望製作所」のインターンを修了してすでに1年が過ぎました。「希望製作所」での4ヶ月という時間は、自分自身、これから何をしていくべきかについての方向性を、はっきりと捉えることのできた非常に大切な時間でした。

私は江華島(カンファド)で幸せな学生時代を送りました。ソウルにある大学に通う間にも、常に私の胸中には、いつか自分が暮らして地域に戻って何かしてみたいという強い想いがありました。多様な活動によって地域を再生し、コミュニティを活性化していくための仕事をする、뿌리センターのお手伝いをすることになったのも、私が暮らしてきた地域で、自らの人生を育みたいという私の欲求を満足させるためでした。

江華島(カンファド)で何かをしたいという漠然とした考えだけを持っていましたが、ルーツセンターでインターン生活をして地域活動事例に接しました。実際に活動に参加して多様な経験をしました。今私たちがしていることも、このルーツセンターで研修し、研究員の方達の後を付いて回って得たアイデアを活用し、そのアイデアに接木させたのです。 それでは今からルーツセンターで学んだことを基に、私が江華島(カンファド)でどんなことをしているのか紹介し、宣伝させていただこうと思います! ^^

インターンを終えた後、 강화풍물市場に文化観光型市場育成事業団ができたことを知りました。「江華島(カンファド)で地域活性化、市場活性化活動をすることができるとは!」と、嬉しくて浮き立った気持ちになり、すぐにその事業団に参加することにしました。江華島(カンファド)を感じることができる小さい旅行を企画して、市場全体で進める面白い遊び文化を作り、地域民を伝統市場に誘導するための祭りも企画しました。

また、青年たちの活動基盤になる青年モールを作る仕事にも参加しています。 青年たちが持続的に地域で活動をするためには青年モールと同じ基盤がなければならないと考えた末に参加しました。そこで、仁川(インチョン)で文化芸術活動をしていた友達、永らく商売をしていた友達、そして私が一緒に集まって「清風(チョンプン)商会」という名前のお店をつくり、市場で商売を始めました。 「清風(チョンプン)商会」は、現在の実行している取り組みだけでなく、計画中の事業についても色々あります。まず 강화풍물市場に「かまど食堂」を開いてかまどピザを焼いて売っています。

地域の伝統的な市場にどうしてピザなのか。私たちは、伝統な地域市場にピザ屋ができれば、地域の若者たちが市場のなかを探すだろうと考えてピザ屋を開いたのでした。4名全員、料理のできる青年ではありません。市場のお母さんたちが私たちに関心をもってくださり、彼女たちがアドバイスをくださったおかげで、ピザのメニューがひとつひとつ完成していきました。まだ数は少ないけれど、来店されるお客さんのアドバイスについても、ひとつひとつに耳を傾けて味をアップグレードしています。「かまど食堂」を再訪されたお客さんは「かまど食堂」の成長を自らのことのように喜んで応援してくださいます。「かまど食堂」は、青年たちの力だけで成長するのではなく、市場の商店の皆さんと江華島(カンファド)の市民が一緒に育てる食堂になっています。「安い価格と素敵なサービスで、市場を生き残るようにしよう!」という考えで商売をしてみると、「青年たちが他の皆さんに与えるだけでは滅びてしまう…」とたいへん心配して訪ねてくる方たちもいます。

江華島(カンファド)は他の地域に比べて、地域で活動する青年がいません。 ソウルと1時間の距離にあるため距離上で首都圏ですが、江華島(カンファド)だけを切り離して見れば、首都圏のイメージは探すことが難しく、よく言われる田舎っぽい雰囲気が漂っています。そのため、青年たちは江華島(カンファド)に留まることはなく、ソウルや仁川(インチョン)に出て行って活動をするので、他の地域に比べて青年の数がさらに少ない状況にあります。このような状況のためでしょうか、私たち青年が自発的に江華島(カンファド)で住み着いて活動していることを、江華島(カンファド)年配の方は好奇心が入り交じった良い目線で眺めて下さっています。

この前は「清風(チョンプン)商会」の2番目事業である足浴カフェ(フットバス)「足漬けて」がオープンしました。足を漬けて旅行の開始と仕上げができる空間です。バスターミナルそばにあって、旅行客が行き来しやすい 강화풍물市場で、暖かい水に足を漬けて飲み物を楽しみながら旅行の始まるを楽しみ、旅行を終えて家に帰るばあいは、その前に旅行の疲労をとって旅行をふりかえるような空間になるでしょう。もちろん旅行客だけのための空間ではありません。 市場で商売をされているかたたちと江華郡(カンファグン)の人びとのための空間でもあります。市場での仕事は神経を使いとても疲れます。商売されている方たちが、一日の仕事を終えて足をお湯に漬ける、そういった一日の日課を近隣の商店の方たちと共有すると、商売をされる方たちの間の結束力を確かめることになります。江華島(カンファド)は歴史的文化的に多くの資源を有していますが、これらの資源がうまく活用されずにいます。「清風(チョンプン)商会」はこういう豊富な資源を活用できる方法を悩んでいます。

私を除いた残り三人の青年たちは、江華島(カンファド)で暮らしたことがないのですが、今は江華邑(カンファウプ)に家を得て一緒に生活しています。今後、私どもが暮らしている空間を改造してシェアハウスとゲストハウスを運営する計画です。江華島(カンファド)は、歴史のある場所だと呼ばれる程、韓国の歴史から除くことはできない重要な地域であり、そこに自然の海と山が組み合ったとても美しいところです。

江華島(カンファド)はソウル近郊に位置しているため、観客数が多いわけですが、観光客の大部分はペンション旅行や観光地だけさっとみて戻る場合が多いのです。それで私たちは、江華島(カンファド)に住んでいる青年と観光客が交流して、地域に関して話しを交わすことができるゲストハウスを運営することにしました。ペンションが並んでいる江華島(カンファド)には、外国人が一日二日泊まって旅行しにくるでしょう?このゲストハウスを活用した外国人観光客誘致は、地域に風変わりさを提供しますし、ごちゃごちゃした町商圏を活性化させる役割をはたすでしょう。ゲストハウスは朝鮮末期の哲宗が過ごしたヨンフングンがある路地にあります。ここは、江華島(カンファド)に住んでいる学生たちもしばしばやってくる路地です。今後は、ゲストハウスの周辺路地を中心に、地域内文化芸術家らと交流して文化芸術を共有することができるような場所にしていくつもりです。

私はこの頃本当に楽しいです! 正直にいって、まだ「清風(チョンプン)商会」の私たちは余裕があるような生活をするほどの金を儲けられていませんが、楽しく生きているということが私たちにとって最も重要なことなのです。私が育った江華島(カンファド)で、楽しい仕事できることを、本当に幸せなことだと思っています。

by뿌리センター28期インターン研究員・金土日

■できれば、堀さんたちと、ぜひこの韓国の「清風商会」を訪ねてみたいものです。以下の動画は、金土日さんと一緒に「清風商会」を経営されているCho Sunghyuさんです。少し、彼らの活動が理解できるかと思います。

家棟川での現地交流会

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■滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、草津市の平湖・柳平湖の再生をめざす草津市志那町の皆さんと一緒に、野洲市の「NPO法人家棟川流域観光船」の活動を視察させていただきました。たいへん充実した現地交流会=視察・勉強会になりました。平湖・柳平湖の皆さんも、家棟川の皆さんも、ともに「つながり再生モデル事業」に応募されて採択されたグループです。私は、このモデル事業の採択時の「検討会」で委員長をしていたことから、積極的に実際の現場に出て行くようにしています。今回は、環境保全の活動に積極的に取り組まれてきた「NPO法人家棟川流域観光船」から学ばせていただこうと、現地交流会に参加させていただきました。

■「NPO法人家棟川流域観光船」は、「野洲の市街化の進展に伴い、市街地や水田等からの濁水の流入、ゴミの投棄、河口部のヨシ帯消失や在来魚介類の減少など、家棟川流域にはびわ湖の水や自然環境に関する課題の多くを抱えている」という状況のなかで、「ゴミがなく自然環境に恵まれた家棟川にすることを目指して」2007年に設立されました(NPOの公式ページより)。「流域観光船」って、ちょとかわった名前ですね。しかし、ただの観光船とは違います。観光は、多くの人びとに家棟川の状況を知っていただくための、ある意味「手段」なのかなと思います。

■これは一般論ですが、身近な「環境」に対して地域の「人びと」の関心が低くなっていくと(「つながり」が弱くなる/切れる)、身近な「環境」が悪化・劣化するリスクが高まります。言い換えれば、「人びと」と「環境」とのあいだにある、「物理的距離」が近くても「社会的距離」(意識しなくなる、かかわるチャンスがなくなる)が生まれてしまうと、「環境」は悪化・劣化していくリスクが高まります。この「エコ遊覧船」による観光は、家棟側に対する人びとの関心を高め、「社会的距離」を縮めていくための「手段」なのではないか…と思うのです。家棟川にすてられる不法投棄、流れてくるゴミ、これをなんとかしたいと、多くの市民ボランティアが参加してゴミの回収を行ったようですが、ゴミの量が減ることはなかったといいます。そこで、発想を転換し、家棟川に残る素晴らしい自然を楽しんでもらいつつ、この川の実態を多くの皆さんに知っていただこうと、手漕ぎによる遊覧船を始めたのだそうです。言い換えれば、観光船という「手段」を通して、家棟川と人びととの「社会的距離」を縮めようとされたのです。

■「NPO法人家棟川流域観光船」は、地元の漁師、「魚のゆりかご水田」を実践している農家など、里山・森・川・田畑・琵琶湖で活動する団体のリーダーが中心となって構成されています。代表の北出さんからは、野洲市環境基本計画を市民参加でつくるさいに、出会った地元の市民委員の皆さんが、その出会いをきっかけに、このNPOをつくったのだ…というお話しもうかがうことができました。多様な方達が参加されているわけです。ですから、以下のような強みをもっていることを自覚されています。以下は、NPOのパンフレットからの引用です。

地域の人に支えられて共に実践している
・琵琶湖周辺の6自治会(元)長が、NPOの趣旨に賛同し、会員参加している。
・漁師をはじめとした地元の21人が船頭として活躍している。
琵琶湖ならではの独自性がある
・琵琶湖とその水郷景観、漁師料理、漁師の語りなど、地域独自の宝物を提供できる。
行政の環境施策と連携した事業として実践してきた実績がある
・環境学習船として、延べ2,000人近くが乗船し、河川の現状を体験していただいた。
・これらの取組みが県知事から表彰された。

■以上のように「NPO法人家棟川流域観光船」で興味深いのは、そのメンバーの多様性です。いろんな「得意な分野や能力」をもった人びとが横につながり、「エコ遊覧船」による観光を柱にしながら、様々なテーマでの活動が可能になっていることてす。活動内容は、じつに様々です。家棟川の上流にある里山の保全(「漁民の森」整備)にも取り組んでおられます。家棟川流域のなかにある「山」、「水田」、「川」、「琵琶湖」をトータルに視野に入れて活動されているのです。活動に幅が生まれるだけでなく、家棟川をより大きな視点から捉えるように変化されています。素晴らしいことだと思います。チャンスがあれば、こういう多様な活動を展開されるようになってきたプロセスに関して、特に、レリジエンスという観点からきちんとお話しを伺ってみたいと思います。

■最後の方の写真についても説明しておきましょう。料理の写真。これは湖魚を使った「漁師料理」です。「NPO法人家棟川流域観光船」で提供されている料理です。「エビ豆」(大豆とスジエビ)、「鮎」(山椒風味)、「ウロリ」。「ビワマスの煮付け」、「鮒寿司」。「ビワマスの刺身」。ただし研修ですのでお酒はなし。ということで、ご飯を2杯もいただきました。

NPO法人 家棟川流域観光船

【追記】■逆にいえば、特定の人が、「地域づくり」活動のなかで自らリーダーたろうとして(主導権を独占したいという欲望)、情報を独占して他のメンバーを操作しようとすると、活動の持続性は急激になくなってしまいます。自分の頭のなかの青写真に、他のメンバーを資源として動員するような形に陥ってしまうことの危険性があります。「地域づくり活動」は、企業などを運営するやり方とは違うところがありますから。

金才賢先生(韓国・建国大学)の来日

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20141031kim1.jpg ■金曜日、土曜日と、韓国の建国大学の金才賢先生と、先生が指導されている2人の大学院生が滋賀県内の団体に関して聞き取り調査をされました。私は、今回の聞き取り調査のアレンジをするとともに、同行させていただくことにしました。

■もっとも、聞取り調査の対象の1つは、ゼミでおこなっている「龍谷大学・北船路米づくり研究会」でした。農村(生産者)と都市(消費者)の「顔のみえる関係」づくりを課題として活動している研究会が、どのように社会的なネットワークを拡大していったのかという点に関して、関係者や研究会とつながっている方たちからお話しをうかがいました。もちろん、私も、いろいろお話しをさせていただきました。純米吟醸酒「北船路」でお世話になっている「平井商店」の平井弘子さん、「大津の町家を考える会」の野口登代子さん、鮒寿司の「阪本屋」の内田健一郎さん、これから滋賀の農産物を活かした石釜ピザの店を開店される「Ishigama」の堀昭一さん、 「北比良グループ」の山川君枝さん、北船路の「農事組合法人福谷の郷」の音島良治組合長、研究会の顧問でもある吹野藤代次さん。皆様いろいろお世話になりました。ありがとうございました。

■ひとつのゼミの小さな小さな活動ですが、農村(生産者)と都市(消費者)の「顔のみえる関係」づくりを忘れずに活動をしてきました。カリキュラム外での取り組みです。評価も単位もありません。あくまで学生の自主性だけで運営されています。大学からの財政的な支援もわずかです。ですから、なんらかの助成金が必要になります。その申請書類の作成、プレゼンテーション、中間発表、最終報告…。私が知る学生の地域連携活動としては、かなり高いレベルを求められているのではないかと思います。学生たちの苦労は多いと思いますが、やりとげたときには深い達成感もあるでしょう。しかし、研究会の活動がとまってしまうのではないか…と危惧するような状況が何度もありました。

■この研究会の活動に関して、金先生の質問で私がとても印象的だったことは、「農村の方は、学生たちにどのように『夢』を与えることができていますか?」という質問でした。学生たちは、なんらかのスキルが身に付くとか、コミュニケーション能力が高められるとか、そのような小さな個人的な利益との「交換」で研究会の活動をしているわけではありません。もし、そういう学生がいたとしても、そのような学生は長続きしません。研究会の活動の発展に貢献できません。そのような学生が多くなれば、研究会の活動も持続しなくなります。すぐに息切れをしてしまいます。研究会のひとつひとつの活動が、社会的にどのような意味をもっているのか、その点に関して常に学生自身が確認し続けることも必要なわけですが、同時にそれらの意味は「他者」から「贈与」され続ける必要もあると思うのです。そのことが金先生の質問の根っこにあったと思われます。「交換」の原理にもとづくネットワークは持続性が弱い。「モノ」や「サービス」が動く事業系の地域づくり活動であっても、表面的な「交換」とは別に、その底には「贈与」の原理が動いている必要があります。

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■土曜日は、東近江市と多賀町を中心に、森林とともに豊かに暮らしていける未来をめざし、人の営みと森林が結びつくカタチをていねいに育てるプロジェクトに取り組む「 一般社団法人 kikito」の、山口美知子さん、大林恵子さん、平居晋さん、 伴政憲さん、田中一則さん、5名のみなさんからお話しを伺いました。「kikito」に関しても、どのように社会的なネットワークを拡大していったのかという点に関してお話しを伺わせていただきました。私自身もとても勉強になりました。ありがとうございました。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。

■「kikito」に関しては、パソコンをひろげて真剣にメモをとっていました。ところが、そのファイルが消えてしまった…ショックです。「kikito」のことは、『地域再生滋賀の挑戦 : エコな暮らし・コミュニティ再生・人材育成』(近江環人地域再生学座 編 ; 森川稔 責任編集)のなかに、山口美知子さんが「湖東地域材循環システム協議会(kikito)の挑戦」を書かれていますが、特に印象に残っていることを少し書いておきたいと思います。「kikito」の活動は、異業種の人たちによる研究会から始まっています。特定の業種の人たちだけではなく、森林を所有している人、林業の仕事をする人、行政、建築家…。通常は、みなさん自分の立場から木材のことを考えているわけですが、研究会でコミュニケーションを継続するうちに、それまでの自分のものの見方・考え方が相対化されるようになったのだそうです。自分の利益や自分の都合ばかりを主張する、そのような自己のあり方を相対化されたのです。別の言い方をすれば、この研究会の活動を通じて、森林の諸課題を、「私も含めた私たちの課題」として、あるいはより高い公共性を伴ったこれまでとは少しズラした視点をから捉えられるようになった…といってもよいかと思います。それまでは、地域社会で働き、森林や森林資源について考えながらも、出会うことがなかった人たちがつながることで、原木の調達からストックまで、地域材を無駄なく、無理なく有効利用するための仕組みづくりを行うことができるようになったのです。そのような仕組みのなかで「地域“財”を活かした商品開発」、「森林整備に貢献する紙製品の開発」、「びわ湖の森CO2」対策、「森林を活かせる人材の育成」等に取り組んでおられます。このような取り組みのなかで、「kikito」は、「行政」にも「市場」にもできないことをやろうとしておられます。お話しを伺うなかで、いろんな意見を聞かせていただきました。ひとつは、今は補助金や助成金も使ってこのような仕組みを動かしているけれど、もっと経営的にも自立度を高めていくべきというものです。それに対して、行政にも市場にもできない隙間の課題を一般社団法人として取り組んでいるのだから、そこに社会的な費用が投入されていもよいのではという意見も聞かせていただきました…。う〜ん、メモが消えてしまったので、ずいぶんズレたことを書いてしまっているかもしれません。ああ、それにしても、メモのファイルが消えてしまったことはショックです。

■「kikito」での聞き取り調査を終えたあと、金先生たちと一緒に彦根城の見学をして、いつもの大津駅前の居酒屋「利やん」に移動して夕食をとりました。打ち上げです。土曜日ですが、たくさんの知り合いの方達がお店におられました。びっくりです。「利やん」は、私にとって人との「つながり」=ネットワークを生み出していくうえで、とても重要な場所であるです。金先生にも、そのことを理解していただけたのではないかと思います。ところで、金先生はお酒をお飲みになりません。そのかわり、大学院生の女性お2人が酒をつきあってくださいました。日本の若い女性だと、甘目のお酒…ということになるのですが、このお2人はそれは嫌いなのだそうです。ということで、芋焼酎を、ストレートやロックで楽しんでおられました。お強い。すごいですね〜。酒飲みのおじさんとしては、とても嬉しくなりました。

■大学院生のJumi Kimさんが、facebookで楽しい動画を作成してプレゼントしてくれました。

【追記1】■「kikito」の聞き取り調査を終えたあと、facebookで「kikito」のメンバーの方達とメッセージのやり取りをしました。そのなかで、金先生がかかわっておられる韓国のコミュニティビジネスセンターに関心があるという話しから、それなら有志で韓国に視察と聞き取り調査にいってみようという話しになりました。金先生とは、日韓でお互いに交流しながら学びあっていこうという約束をしたので、きっとおもしろい展開になるのではないかと思います。

【追記2】■金先生や院生の方達には、仁川にあるピザ店のことを教えてもらいました。まだ、よくわかっていませんが、面白いお店なのだそうです。ちょっと調べてみます。

松の木内湖の環境再生と地域づくり

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■一昨日、30日(木)、滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、琵琶湖政策課や滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの皆さんと一緒に、高島市にある松の木内湖にでかけました。内湖に隣接する集落の皆さんに、小さな船(タブネ)で案内していただきました。松の木内湖は、様々な意味で周囲に暮らす人びとにとって重要なコモンズでもありました。

■内湖の湖底の泥。底泥は、肥料分を含む貴重な資源でした。周辺の人びとは、この泥をすくいあげ、畑にすきこみました。夏野菜がよく実ったといいます。内湖は、様々な魚の生息場所でもありました。春には、内湖の周囲にあるヨシ原にたくさんのコイ科魚類が産卵にきました。鮒寿司の原料になるニゴロブナはもちろんですが、それ以外のフナやコイの仲間の魚たちも、タツベやモジなどの竹製の漁具で捕獲され食用にされました。昨日お会いした方達は、そのような湖魚を食べる食文化のなかで生まれ、これまで生きてこられました。そうそう、私が大好きなホンモロコもよくやってきたといいます。ヨシ原は、ボテジャコとよばれるタナゴ等の小さな魚の生息場所でもありました。その他にも、ナマズやギギ、ドジョウなどもいくらでもいたといいます。内湖の琵琶湖への出口のあたりには、小さなエリも設置されていました(フナなどを獲る荒目のエリ)。肥料や食料といった人びとの生業だけでなく、内湖は、子どもたちの夏の遊び場でもありしまた。人びとの生活とも密接につながっていました。ところが、高度経済成長期を経て生業や生活のスタイルが近代化のなかで変化していきます。化学肥料が普及すると、内湖の泥を使うことはなくなりました。食生活も変化し、若い世代の皆さんは、内湖の魚を食べることがなくなっていきました。人びとの暮らしや生業と内湖との「つながり」が切れてしまったのです。もちろん、今はこの内湖で遊ぶ子どもの姿もみることもできません。このような変化は、この松の木内湖だけではなく、現在でも残っている滋賀県内の他の内湖でも同様の状況かと思います。

■人びとの暮らしや生業と内湖の「つながり」が切れてしまうことで、内湖は少しずつ変化していきました。かつてのように内湖の低泥を肥料として取り出すことはなくなりました。当然、流入する河川からの土砂で内湖は浅くなり、そのような土砂は内湖に溜まっていくことになります。この地域の皆さんの話しを総合すると、そこに拍車をかけたのが河川改修や周囲の水田の圃場整備事業です。かつて松の木内湖には、周囲の複数の河川から、今とは違ってかなりの量の水が流れ込んでいたようです。また、内湖から琵琶湖へ内湖の水が流出するあたりは、今よりも幅が狭くなっており、そのこともあり、かなりの流速があったようです。内湖の湖底には、そのような水の流れにより「ホリスジ」と呼ばれる一段深くなった内湖のなかの水路のようなものもあったといいます。常に、この松の木内湖の水は動いていたてのですね。しかし、河川改修によりその動きがなくなりました。さらに、圃場整備事業により水田からの濁水が、内湖に河川から流れ込み、泥が堆積するようになってしまいました。圃場整備事業により濁水や内湖に堆積する泥の量は増えました。泥が堆積したところにはヨシ帯が形成され、樹木もはえるようになってしまいました。少しずつ内湖は小さくなっていったのです。実際に田舟にのって内湖を拝見したわけですが、そのさい、湖底からキノコのようなものがニョキニョキとはえているのがみえました。もちろんキノコではありません。水中の泥が沈殿していくさいに、水草の葉や茎に泥が積もってしまったのです。それが、キノコのように見えていただけでした。何も知らなければ、美しい風景のように見えますが、この地域の皆さんからすれば、これは荒れ果ててしまった内湖ということになります。

■かつての内湖をよくご存知の60歳代以上の皆さんは、なんとかこの状況を食い止めたい、そして改善したいとお考えです。この日は、地元の方に田舟に乗せていただき、内湖をその内側から見学させていただきました。内湖の状況をじっくり観察させいただきました。陸からながめているのとは異なり、地域の皆さんが悩んでおられる実態がよく理解できました。以前、公共事業により、この内湖を整備して公園化してしまおうということが計画がたてられましたが、結局、予算の関係もありうまくいきませんでした。しかし、地元の皆さんは、そこで挫けませんでした。現在、4月末か5月頭にかけて内湖の端にたくさんの「鯉のぼり」を泳がせるイベントを開催されています。少しでも、内湖のことを知ってもらい、内湖と関わってもらおうという狙いがこのイベントにはあります。私は、まだ参加したことがないのですが、地域外からもたくさんの方たちが参加されるようです。

■田舟での内湖の視察のあとは、地元の方達と、この松の木内湖の再生、特に地元の皆さんの暮らしと内湖の「つながり」をどのように再生していくのか…という点について協議を行いました。これで3回目になります。今回は、松の木内湖の「つながり」をもっと再生できるように、これまで地域の皆さんで実施されてきた「鯉のぼり」のイベントを、さらに盛り上げていこうということになりました。最初は少々堅い雰囲気でしたが、しだいにいろんな「夢」が出てきました。「夢」を語り合うことができました。結果として、「さあ、やるぞ!!」という感じで「力」が湧いてくる素敵な会議になりました。「こんなこといいな、できたらいいな…」と漫画「ドラえもん」の歌の歌詞のような展開になりました。写真とは異なり、みなさん笑顔になりました。いろんなプランが提案されました。そうした中で、まず決定したことは、若い世代の方達が泥臭いと嫌っておられる内湖の魚を美味しく料理して食べてもらおう…というものです。そのために、新しい湖魚料理をプロデュースできる料理人の方に、そのイベントに参加してもらおうということになりました。現在、料理をしてくださる方を募集中です。すでに、声をかけさせていただいた方もいます。個人的な主観といわれるかもしれませんが、湖魚は美味しいんです!! 美味しい湖魚を、現代風のレシピのなかで使っていただき、若い世代にも楽しんでもらおう…というのが狙いです。湖魚料理以外にも、内湖のもっている「びっくり」するような「すごい」魅力を、しっかり伝えていけるような企画も考えています。楽しいイベントにしていきます。地元はもちろんですが、地域外からもたくさんの参加をいただければと思います。また、このブログでも広報させていただきます。

「ふるさとの看取り方」


■facebookのお「友達」がリンクを貼って紹介されていた記事に注目しました。「“地域活性化”を軽々しく語るな! 消え行く集落の最期を偲ぶ、『ふるさとの看取り方』」。なんともショッキングなタイトルです。こんなリード文がありました。

安倍内閣が重要課題に掲げ、にわかに注目を集めるようになった地域活性化。しかし総務省職員として多くの地方を周ってきた田中佑典氏は、安直な「地域活性化」の掛け声に対し、絶対に活性化できない地域もあると主張。限界集落の現実を伝え、消え行く運命の地域を「看取る」方法を考えることも必要だと訴えました。

■なんとも勇ましい文章です。しかし、そのあとの講演録には、どこにも「安倍内閣」や「安直な『地域活性化』」なんて言葉は登場しません。あとの講演録を読んでも、講演者の田中さんは、そういう文脈で語っているわけではありません。リード文が非常によくないと思いました。個人的な印象ですが、田中さんの主張が、このリード文によってねじまげられているようにも思いました。田中さんは、限界集落のある地域の出身者として(ある意味当事者として)、ユーモラスに、もっと淡々と語っているように思います。そこに持ち味があるのに。

集落って何なんでしょうね? 僕はずっと考えてきましたけど、最近ちょっとわかってきた気がするんです。集落って、人間の生活の爪あとなんです。思えば集落って、本来は林業とか漁業とか農業とか、何かしらの生業を中心に集まった人間の集合体だと思います。よそ者にはわからないかもしれない、でもそこに住んでいる人にとっては先祖代々受け継がれてきた、かけがえのない生活の場所。そこに暮らし続けたいと思って生活している人がたくさんいました。

いろいろ述べてきましたけど、僕の思いはすごくシンプルで、1,000年続いたコミュニティが何も残さず消えるって寂しすぎると思うんです。僕はこれからも、集落に集落の住民に向き合っていきたい。そこで懸命に生活しているひとりひとりに焦点を当てて、その生活を最後までサポートしていきたい。ふらっと遊びに行って、昔話に花を咲かせて、一緒に笑って一緒に悲しんで、1000年続いたコミュニティの最期を、僕はこの目で見届けたいと思います。

■トップの動画は、YouTubeにアップされた田中佑典さんの講演です。こういうのは、いまどき講演とはないのでしょうね。この講演を企画した「TEDxTokyo」については、こちらをご覧ください

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