団地とヤギの除草
■facebookのお「友達」がシェアされていた読売新聞の記事です。「団地ヤギ、雑草完食し任務終了…惜しむ声しきり」。かつて建設された団地(住宅公団→都市再生機構(UR)) には、大変豊かなコモンスペースがありますが、記事のなかにある東京都町田市の町田山崎団地のばあいは、道路用に確保された窪地約300㎡がススキやクズが生い茂ってこまっていたようです。そこでその窪地を柵で囲い、ヤギ4頭(オス1頭メス3頭)を放牧して除草させたのです。通常、除草は機械力で一気にやってしまうのでしょうが、そこれをヤギの放牧場にして雑草を食べさせてしまおうという試みです。いわゆる「環境に優しい」除草の取り組みとして実証実験が行われたのです。これまで、河川の法面や、耕作が放棄された圃場などで、ヤギに雑草を食べされることは行われてきましたが、今回は、団地です。人がたくさん暮らす団地だからでしょうか、住民の皆さんからは、予想外の反応があったというのです。
■ヤギが雑草をすべて食べ尽くした段階で、除草作業は終了。ヤギも、いなくなるのが通常ですが、この山崎団地では、団地の住民の皆さんから、ヤギがいなくなることを惜しむ声があがっているというのです。「ヤギを間近に見るのは60年ぶりぐらいです。姿もやさしいし、鳴き声も楽しく、心がなごみます。飼育の永続を願っています」。「毎日この道を通るのがたのしみです。でも29日でサヨナラ?もっといて、さみしいです」。このような住民の皆さんの声に、都市再生機構の担当者も、「ヤギが雑草を一掃したのは予想通りだったが、これほど、住民に心理的な影響を及ぼすとは思わなかった」と述べておられます。おもしろいですね〜。「除草作業」という特定の目的のために導入されたのですが、住民の皆さんが、ヤギに対して除草作業以外のもっと別の意味付けを始めておられるのです。この「意図せざる結果」、地域環境の保全や地域再生、そして流域再生を考える上で、大変重要なポイントだと思いました。
マザーレイクフォーラム・びわコミ会議(第3回)
■今日は午前中大学にいってちょっとした用事をすませて、昼からは滋賀県庁にいきました。琵琶湖環境部琵琶湖政策課が所管している「マザーレイク21計画」(琵琶湖総合保全整備計画)の第2期に関連する「第2回マザーレイク21計画学術フォーラム」が開催されたからです。
■国の6つの省庁(当時の国土庁・環境庁・厚生省・農林水産省・林野庁・建設省)が1997年度から2カ年にわたり共同で実施した「琵琶湖の総合的な保全のための計画調査」をふまえて、滋賀県では、琵琶湖を健全な姿で次世代に引き継ぐための指針として、2000年3月に、琵琶湖総合保全整備計画(マザーレイク21計画)を策定しました。1999年度から2010年度までが第1期になります。私は、国土交通省の琵琶湖総合保全計画検討調査委員や、滋賀県の琵琶湖総合保全学術委員会委員としてこの「マザーレイク21計画」の第2期、2011年度から2020年度までの計画策定にかかわってきました。
■今日、開催された「マザーレイク21計画学術フォーラム」は、この「マザーレイク21計画」(2期)の進行管理(PDCAサイクル)の中で、施策の評価を、学術的な見地から琵琶湖と流域の状況について指標などを用いて整理・解析する役割を担っています。今日は、半年前に開催された第1回での議論や注目を、事務局が積極的に受け止めて、新しい方向性が示されました。もちろん、今日は基本的な方向性であり、この先、まだまだ難関が続々と続くわけですが、こういうのは気持ちがよいですね。困難なのはわかっているけれど、未来に「希望」がみてくるから。仕事は、こうでななくてはいけません。仕事は、前向きでないといけません。
■ところで、この「マザーレイク21計画学術フォーラム」とも関係しますが、市民参加による施策の評価を行う会議も開催されます。8月31日に「コラポしが21」で開催される、「第3回マザーレイクフォーラム びわコミ会議」です。詳しくは、以下をご覧ください。
潜水ロボット「淡探」
■昨日は、評価の仕事で滋賀県琵琶湖環境科学研究センターに行きました。そのさい、センターのロビーに展示してある潜水艇が気になりました。「淡探」(たんたん)という自律型潜水ロボットです。全長2m、180kg、12時間の連続潜航が可能なのだそうです。ただし、現在は使用されていません。ひとつには、予算の関係。もうひとつは、新しい新型の水中探索ロボットを導入されたからです。少し前のことになりますが、産經新聞の記事には次のように書いてあります。
同センターが導入した新型ロボは、水中でのハイビジョン撮影が可能なほか、ケーブルを通して船上から水中の様子をリアルタイムで観察できるすぐれものだ。
センターは平成12(2000)年に初めて水中探索ロボット「淡探」を配備した。しかし、撮影画像が粗く録画しかできなかったことなどから、思うような成果が上がらず結局“お払い箱”に。そこで約660万円をかけてこの新型ロボを開発し、昨年3月に導入したところ、使い勝手が格段によく、調査の質が大幅に向上したという。
■なるほど、「淡探」はお払い箱ですか…。たしかに、研究推進のためには仕方のないことですが…。大変素朴の気持ちですが、「淡探」はカッコいいです。素敵ですね〜。自律式というのが素敵です。琵琶湖でも潜水艇って、できないですかね。海の深海に比べれば、はるかに浅いわけですから(100mちょっと…)。この目で、琵琶湖の底を見てみたいと思うのは、私だけではないと思いますが。ところで、この「淡探」ですが、漫画の「タンタンの冒険旅行」(Les Aventures de Tintin)にひっかけているのかな?
琵琶湖環境科学研究センターの評議会
■年をとったせいか、評価に関する仕事が増えてきました。一番苦労するのは、自分が勤務する社会学研究科の大学認証評価です。これは、評価を受ける側になります。しかしそれと同時に、評価をする仕事もいろいろあります。学内での評価(ないしは審査)だけでなく、学外の評価の仕事もあります。今日は、終日、そのような仕事でした。
■現在、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの評議員をしています。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターは、「琵琶湖とその流域を一体のものとしてとらえ、健全な水循環、物質循環、生態系の保全といった視点から琵琶湖と滋賀の環境に関する現象の解明、行政課題に取り組むため、幅広いネットワークの形成を図りながら、総合的に試験研究を推進することによって、滋賀をモデルとした持続可能な社会の構築に貢献する」ために設置されています。今日は、センターの評議委員会が開催されました。センターの次の研究計画(第4期)の評価を行うためにです。
■評議委員会は、朝9時15分に始まりました。まず、第4期中期計画の全体概要の説明が行われました。そして、4つの政策研究課題と5つの調査解析の研究プロジェクトの計画について、16時半頃まで報告が行われ、それぞれについて評議委員により評価を行いました。今回は、昨年の評議会で私がおこなったコメント(評価可能な研究事業の体系性の確保)にきちんと対応していただきました。その結果、センターの研究事業全体の枠組みがシャープになりました。センター長や知り合いの研究員の方にお話しをうかがったところ、ずいぶん時間をかけてセンター内で議論を積み重ねてこられたのだそうです。こういう成果が見えてくると、評価の仕事をしていても嬉しくなりますね。
■写真は、センターから大津市街地の方面を写したものです。今日は雨でした。こういう風景も、水墨画のようで悪くないですね。
琵琶湖の固有種、ビワマス
(桑原雅之氏撮影)
■facebookを見ていて、以前勤務していた滋賀県立琵琶湖博物館の桑原雅之さんの写真に、目が釘付けになりました。桑原さんにお許しをいただき、その写真を掲載させていただきました。魚が写っています。ご自身で釣られたビワマスです。トリミングしたので3匹しか映っていませんが、本当は全部で5匹写っていました。facebookには、「40cmくらい以下は全部放流し,55cmを頭に5匹キープ」と書かれていました。写真の一番上のやつが、55cmだと思います。大量ですね。
■ビワマスは、その形からもわかるように、サケ科の淡水魚です。日本の琵琶湖にしかいない固有種でもあります。秋になると、琵琶湖の北湖の周りの河川を遡上し産卵します。サケ科ですから、自分が生まれた河川を遡上し産卵するのです。次の時の春に孵化した稚魚は河川を下り、琵琶湖の沖合の深くて水温の低い場所まで移動します。そこで、2〜5年かけて大きく成長するのだそうです。まあ、このようなビワマスの生活史は横においておきましょう。私が桑原さんの写真に釘付けになったのは、このビワマスが大変美味しいからです。とくに、これからの季節は、刺身が絶品なのです。
■このビワマスに関して、生態学者の川那辺浩哉さんが、『知っていますかこの湖を びわ湖を語る50章』という本のなかで、次のようなことを書いておられます。画家であり俳人でもあった与謝蕪村が、「瀬田降りて志賀の夕日やあめのうお」という句を残しているのだそうです。「あめのうお」とはビワマスのことです。この句について、川那辺さんは次のように解説されています。「瀬田は夕映えではなくて雨だとして俳を効かせ、天智帝の都ですぐに荒れてしまった志賀里に夕日がきれいに見えているとして、産卵期のビワマスの背が黒く、体側が虹色の姿に対比したわけだ」。なるほど。ビワマスも含めてサケ科の魚たちは、産卵期が近づくと「婚姻色」=虹色になるのです。
■川那辺さんは、蕪村の句について以上のように説明したあと。次のように解説されています。
「この句をどこで吐いたのか。瀬田と比叡山麓が見えるのだから、南湖東岸であることは確かだ。また膳の上のものではなく、「今や漁師が網からとり上げたところ」に違いない。しかし今、漁獲されるのは湖北のみである。だが野洲川はそもそもビワマスの名産地で、御上神社や兵主神社には秋にこの魚が捧げられる。びわ湖の水質が格段に回復し、蕪村さんの句のとおり、南湖でその風景を賞でながらビワマスを食べられるように、これまたすべきなのではあるまいか」。
ニゴロブナフォーラム
■以下のようなフォーラムが開催されます。
ニゴロブナフォーラムの開催について
~ニゴロブナでつながる人々と琵琶湖~
滋賀県では、「魚のゆりかご水田プロジェクト」により、魚が田んぼに上りやすくする道づくり(魚道)に取り組み、魚たちが水田で卵を産み、稚魚がすくすく育ち琵琶湖へ巣立っていく「生きもの」にやさしい環境づくりを目指しています。
平成25年6月27日はニゴロブナ(25627)と読めるのにちなみ、6月をニゴロブナ月間として、ニゴロブナにちなむ各種イベントを企画しています。
今回、このイベントの一環としてニゴロブナフォーラムを開催し、安土城考古博物館副館長の大沼芳幸さんにお越し頂き、「田んぼが魚を呼び寄せた」と題して琵琶湖と水田と魚の関わりの歴史とふなずしのルーツについてご講演いただきます。
また、琵琶湖に生息する魚の代表種の1つであるニゴロブナに焦点を当て、ニゴロブナ等の魚が遡上する水田を復活させる取組をしている農家さん、琵琶湖でニゴロブナ漁に携わる漁師さん、魚のゆりかご水田米の取組を応援する研究者や魚のゆりかご水田プロジェクトを推進する行政など、様々な方面からニゴロブナ等に関わっている人たちに、ニゴロブナを介した琵琶湖と人々のつながりについて語り合っていただきます。
記
1.日時:平成25年6月29日(土曜日)13時15分~16時30分
2.集合場所:草津市民交流プラザ5F大会議室
(草津市野路1丁目15-5フェリエ南草津)3.内容:別紙参照(PDF:1,289KB)
4.定員:130名先着順(募集締切り6月26日)
5.参加費:無料
マンガ「寄生獣」
■マンガの蔵書のなかから、『寄生獣』を職場のランニング仲間・駅伝仲間でもあるHさんにおかししていました。今日は、仕事で瀬田キャンパスに来られていたHさんから、そのマンガが戻ってきました。マンガには手紙が沿えられていました。
「脇田先生 寄生獣、長い間お借りしておりました。ありがとうございました。 本当にレベルの高い、おもしろいマンガでした。長男も甚く気に入ったようで、『人生で二番目!!』ともうしてました。→一番目は今のところ空席だそうですが…。」
■嬉しいですね〜。Hさんは私よりも一回りお若い方です。その息子さんは、まだ高校生。世代を超えて、このマンガに共感してもらえて、満足です。『寄生獣』、大変奥の深いマンガだと思います。研究室にありますから、関心のあるゼミ生や同僚の教員の皆様にはおかししますよ。