よみがえったイタセンパラ
■右の写真は、イタセンパラ(板鮮腹)という淡水魚です。ウィキペディアコモンズから拝借してきました。このイタセンパラは、タナゴ(コイ科)の一種です。10cm程の小さな魚です。国の天然記念物にもなっています。ただし、その生存が危ぶまれてきました。環境省のレッドリストで最も絶滅危険性の高い「絶滅危惧IA類」に指定されています。生息している地域は、琵琶湖・淀川水系、そして濃尾平野、富山平野になります。淀川の「シンボルフィッシュ」と呼ばれています。
■先日、このイタセンパラについて新聞記事(産経新聞)を読みました。一度消滅したと思われていた淀川のイタセンパラですが、8年ぶりに繁殖が確認されたというのです。記事には「大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センター(同府寝屋川市)や沿岸の子供たちなど、官民が手を携えた地道な活動が着実に実を結びつつあり、関係者は『地域の宝』のさらなる繁殖に期待を寄せている」と書かれています。素敵な話しですね。
■淀川のばあい、イタンセンパラは、流れの早い本流ではなく、岸近くの「わんど」にいます。わんどとは、河川沿いにある潅水域(かんすいいき=水たまり)のことです。河川本流が増水したとき直接につながりますが、ふだんは、ため池のようになっています。淀川のばあい、これらのわんどは明治以降の治水事業のなかで人為的につくられてきました。水草なども茂り、いろんな水生生物が生息できる安定した環境となっていました。しかし、このわんどに生息していたイタセンパラが一時期、姿を消していたのです。記事には、こう書かれています。「しかしその後、琵琶湖から下ったブラックバスやブルーギルなどの外来魚が繁殖し、生態系が変化。護岸工事によるわんどの減少が重なり、18年には大阪の淀川から完全に姿を消した」。その姿を消したイタセンパラが、また繁殖をしはじめたのです。
■再び、繁殖をはじめた背景には、行政と地域の子どもたちの努力がありました。再び、記事を引用してみます。
復活の裏には、官民連携した保全への努力があった。10月には、大阪市旭区の淀川左岸に広がる「城北(しろきた)わんど」で、地元の小中学生約45人を招いた行政機関主催の放流会が行われた。
イタセンパラは、希少性の高さや見た目の美しさからネットオークションなどでの売却目的に密漁する動きがあり、これまで放流場所は非公開だった。しかし「地域の人も参加できるような保全活動にしたい」と初めて公開に踏み切った。密漁防止のため、行政と地域住民が連携した巡視活動も始まった。
シンボルフィッシュを守る動きは、ほかにも活発化している。同センターは、子供たちにイタセンパラについての知識を深めてもらおうと、淀川沿岸の小学校に職員が出向く「出前授業」を開催。市民団体「淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク」(寝屋川市)と行政機関が連携し、外来魚駆除を目的とした釣り大会も開かれた。
着実に成果が表れつつあるイタセンパラの保全活動。同センターの上原一彦主幹研究員は「長期的な生物の保全には地域ぐるみの協力が不可欠。『地域の宝』として地元住民が誇れる存在になれば」と話している。
■この記事からわかることは、生物を保全していくためには、人のかかわりが必要であるということです。以前は、人と生物を隔離することで保全しようとする発想の方が、圧倒的に優勢でした。しかし、時代は少しずつ変化してきました。今回の事例では、「シンボルフィッシュ」という意味付けを通して、イタセンパラと地域の人びととの間に関係が生まれ、地域の人びとが保全の担い手となっていることがわかります。その前提として、イタセンパラが生息し続けていくために必要なわんどという環境、そこにある生態系の価値を再評価しようとする意識の広がりが存在しているはずです。
■ところで、この画像は、新聞記事の引用のなかにある「城北わんど」を、Google Earthでみたものです。いかがでしょうか。画像の左側が下流、右側が上流です。上流からみて左側が左岸、右側が右岸と呼ばれます。この画像では、左岸の方に、わんどが確認できるかと思います。わんどのあるところは、増水すれば水につかります。わんども、本流とつながります。現在、淀川は、治水・利水のための土木工事によって、「陸」の世界と「水」の世界は完全に分断されているわけですが、かつては、その境目が大変曖昧でした。わんどのような場所が、いたるところにありました。いろんなところに中洲があり、また河岸ではヨシが繁っていました。それらの場所は、「陸」の一部になったり「水」につかったりする場所となっていました。そこにも、たくさんの生物が生息していました。
■この「陸」と「水」の関係について、もう少し考えてみたいと思います。極端な例で考えてみましょう。私は、かつて東南アジアのカンボジアのトンレサップ湖に調査にいったことがあります。その時の経験について、少し述べたいと思います。以下は、トンレサップ湖についてのwikipediaの説明です。
トンレサップは、カンボジアに位置する湖であり、河系と結びついている。東南アジア最大の湖であり、クメール語で巨大な淡水湖 (sap) と川 (tonlé) という意味がある。一年のうちほとんどの期間、水深は1mに留まり、面積は2700平方kmしかない。形状はひょうたん形である。しかし、夏季のモンスーンの時期には湖からプノンペン付近でメコン川に流れ込むトンレサップ川が逆流する。そのため周囲の土地と森を水浸しにしながら面積は1万6000平方kmまで拡大して深度も9mに達する。淡水魚には陸上植物起源の有機物が豊富に供給され、また多量のプランクトンが発生する、このような一時的水域で繁殖するものが多いため、魚が大量に発生する。体重100kgを上回るメコン大ナマズ (Pangasius gigas) やフグなど600種類以上の淡水魚が生息する。雨季の終わりには水が引き、繁殖を終えた魚は川下に移っていく。トンレサップ水系で採れる魚は、カンボジア人のたんぱく質摂取量の60%を占める。水が引くにつれ周囲に養分に富む堆積物を残すため、雨季以外には重要な農地が拓ける。浮き稲などが栽培されている。トンレサップ川が逆流することで、メコン川下流の洪水を防ぐ安全弁にもなっている。
(太字強調は脇田)
■トンレサップ湖周辺の水田です。2003年8月下旬に撮影したものです。「ああ、これから田植が始まるのかな?」とお思いの方、それは違います。もう一度、上のwikipediaの引用の太字をお読みください。そうです。この水田は、これから湖になってしまうのです。水につかった水田のむこうには、なにやら茶色い壁のようなものが見えますね。これは、竹で作った漁具です。湖のなかに迷路をつくって魚を迷い込ませて獲るのです。琵琶湖のエリという定置漁具に似ています。稲を育てる場所が、同時に、魚を獲る場所でもあるのです。興味深い風景ですね(確認していませんが、漁具を仕掛けている人と、水田を耕している人は別の方だと思います。一定のルールの元で、特定の人の所有している水田に、他人が漁具をしかけても問題ないのです。もともと、カンボジアには、私たちが近代国民国家のもとで自明としている近代的土地所有権の観念ははっきりとは存在していませんでした)。右の写真ですが、家が見えます。これは水に浮いています。雨季にトンレサップ湖の水位が上昇するあいだ、ここに暮らして、漁をおこなうのだと思います。フローティングハウスですね。ここでは「陸」と「水」の世界が連続していることが、はっきりわかります。また、そのような環境をうまく活用して人びとの生業や生活が成立していることがわかります。もちろん、日本を含む東アジアと東南アジアとでは、同じモンスーン気候とはいってもかなりの差があります。トンレサップ湖のばあいは、かなり「強烈」です。しかし、このような「陸」と「水」の世界が連続する風景、そしてそこに人びとが強く関与する風景、それは日本も含めたアジア・モンスーン地帯のいわば原風景といえると思うのです。
(この投稿の後半は、現在、塩漬け状態にある拙ブログ「Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」の「モンスーンのなかの淀川、淀川のワンド(その1)-大阪から、何故かカンボジアへ-」 」にもとづいています。)
若草山-芝・鹿・宗教-
■12年も乗り続けた自宅の車が新車に替わりました。昨日、その新車が我家にやってきました。ということで、新車の走り具合を確かめてみたく、近場を少しドライブをしてみることにしました。目指したのは、若草山です。若草山からは、奈良の街を眺めることができるからです。
■若草山には、若草山の麓から、春日山、そして高円山へと向かう有料ドライブウェイ「奈良奥山ドライブウェイ」を通っていくことになります。くねくねと曲がった道を登っていくと、山頂近くの駐車場にたどり着きます。駐車場から山頂までは歩いてもすぐです。時間は、ちょうど夕日が沈んだ頃でした。ここに来たのは、何年ぶりでしょうか。おそらく、20年以上前、おそらくは25年程前のことではないかと思います。奈良に住んでいても、なかかな若草山に登ることはないのです。
■若草山は芝に覆われています。この芝は、この若草山にしか自生しない固有種だといわれています。昨年、共同通信で配信されたニュースですが、次のように報道されています。
奈良・若草山の芝は固有種 シカ共生でガラパゴス化?
奈良市の若草山で、芝の種子を採取する京都府立桂高校の生徒たち=2011年6月(同校提供)
国の天然記念物「奈良のシカ」が暮らす奈良市の若草山に自生する芝が、DNA鑑定の結果、他の場所では確認例がない固有種であることが京都府立桂高校の調査で分かった。小ぶりだがシカに食べられても次々と葉を出し成長するのが特徴で、シカと共生する独自の進化を遂げた可能性が高い。
指導した片山一平教諭によると、この芝は日本芝の一つである「ノシバ」の一種。若草山の山頂付近に古墳が築かれた4世紀ごろから自生しているとみられる。片山教諭は「千年以上かけた特異な進化の過程はまるでガラパゴスだ。砂漠化したモンゴルの草原のような場所の緑化につなげたい」と話している。
■この芝が固有種で、この若草にしか自生しないこと。そして、鹿の存在を前提にしていること。私には自然科学的なことはわかりませんが、事実だとすれば、これはとっても面白いことだと思います。記事には出てきませんが、奈良の鹿は特殊な存在です。古来より春日大社の神使とされています。春日大社が創建されるさい、茨城県にある鹿島神宮の祭神・武甕槌命が神鹿に乗ってやってきたと伝えられています。宗教的な存在でもあり、人びとは、この鹿を大切に扱ってきました。であれば、鹿と芝の共生には、このような古来より続く宗教や信仰の存在も同時に関連づけて考えられるべきだと思うのです。もし、宗教的なバリアがかかっておらず、他の地域のように鹿が狩猟の対象になっていたのであれば、おそらくは、若草山はまったく異なる植生の山になっていたことでしょう。若草山は、比較的シンプルながら、長い歴史のなかで生態系と文化が複合化してできあがったシステム(生態学者の川那部浩哉がいう「生命文化複合体」)として捉えることができるのです。
■さて、それはともかく…です。山頂からの風景を写真でご覧ください。すばらしい風景です。ここは、「新日本三大夜景」のひとつにも選ばれています。もう少し暗くなるまでまてば、その美しい景色を眺めることができたのかもしれませんが、山頂はけっこう強い風が吹いており、10分程はいましたが、寒さにまけて退散することになりました。
団地とヤギの除草
■facebookのお「友達」がシェアされていた読売新聞の記事です。「団地ヤギ、雑草完食し任務終了…惜しむ声しきり」。かつて建設された団地(住宅公団→都市再生機構(UR)) には、大変豊かなコモンスペースがありますが、記事のなかにある東京都町田市の町田山崎団地のばあいは、道路用に確保された窪地約300㎡がススキやクズが生い茂ってこまっていたようです。そこでその窪地を柵で囲い、ヤギ4頭(オス1頭メス3頭)を放牧して除草させたのです。通常、除草は機械力で一気にやってしまうのでしょうが、そこれをヤギの放牧場にして雑草を食べさせてしまおうという試みです。いわゆる「環境に優しい」除草の取り組みとして実証実験が行われたのです。これまで、河川の法面や、耕作が放棄された圃場などで、ヤギに雑草を食べされることは行われてきましたが、今回は、団地です。人がたくさん暮らす団地だからでしょうか、住民の皆さんからは、予想外の反応があったというのです。
■ヤギが雑草をすべて食べ尽くした段階で、除草作業は終了。ヤギも、いなくなるのが通常ですが、この山崎団地では、団地の住民の皆さんから、ヤギがいなくなることを惜しむ声があがっているというのです。「ヤギを間近に見るのは60年ぶりぐらいです。姿もやさしいし、鳴き声も楽しく、心がなごみます。飼育の永続を願っています」。「毎日この道を通るのがたのしみです。でも29日でサヨナラ?もっといて、さみしいです」。このような住民の皆さんの声に、都市再生機構の担当者も、「ヤギが雑草を一掃したのは予想通りだったが、これほど、住民に心理的な影響を及ぼすとは思わなかった」と述べておられます。おもしろいですね〜。「除草作業」という特定の目的のために導入されたのですが、住民の皆さんが、ヤギに対して除草作業以外のもっと別の意味付けを始めておられるのです。この「意図せざる結果」、地域環境の保全や地域再生、そして流域再生を考える上で、大変重要なポイントだと思いました。
マザーレイクフォーラム・びわコミ会議(第3回)
■今日は午前中大学にいってちょっとした用事をすませて、昼からは滋賀県庁にいきました。琵琶湖環境部琵琶湖政策課が所管している「マザーレイク21計画」(琵琶湖総合保全整備計画)の第2期に関連する「第2回マザーレイク21計画学術フォーラム」が開催されたからです。
■国の6つの省庁(当時の国土庁・環境庁・厚生省・農林水産省・林野庁・建設省)が1997年度から2カ年にわたり共同で実施した「琵琶湖の総合的な保全のための計画調査」をふまえて、滋賀県では、琵琶湖を健全な姿で次世代に引き継ぐための指針として、2000年3月に、琵琶湖総合保全整備計画(マザーレイク21計画)を策定しました。1999年度から2010年度までが第1期になります。私は、国土交通省の琵琶湖総合保全計画検討調査委員や、滋賀県の琵琶湖総合保全学術委員会委員としてこの「マザーレイク21計画」の第2期、2011年度から2020年度までの計画策定にかかわってきました。
■今日、開催された「マザーレイク21計画学術フォーラム」は、この「マザーレイク21計画」(2期)の進行管理(PDCAサイクル)の中で、施策の評価を、学術的な見地から琵琶湖と流域の状況について指標などを用いて整理・解析する役割を担っています。今日は、半年前に開催された第1回での議論や注目を、事務局が積極的に受け止めて、新しい方向性が示されました。もちろん、今日は基本的な方向性であり、この先、まだまだ難関が続々と続くわけですが、こういうのは気持ちがよいですね。困難なのはわかっているけれど、未来に「希望」がみてくるから。仕事は、こうでななくてはいけません。仕事は、前向きでないといけません。
■ところで、この「マザーレイク21計画学術フォーラム」とも関係しますが、市民参加による施策の評価を行う会議も開催されます。8月31日に「コラポしが21」で開催される、「第3回マザーレイクフォーラム びわコミ会議」です。詳しくは、以下をご覧ください。
潜水ロボット「淡探」
■昨日は、評価の仕事で滋賀県琵琶湖環境科学研究センターに行きました。そのさい、センターのロビーに展示してある潜水艇が気になりました。「淡探」(たんたん)という自律型潜水ロボットです。全長2m、180kg、12時間の連続潜航が可能なのだそうです。ただし、現在は使用されていません。ひとつには、予算の関係。もうひとつは、新しい新型の水中探索ロボットを導入されたからです。少し前のことになりますが、産經新聞の記事には次のように書いてあります。
同センターが導入した新型ロボは、水中でのハイビジョン撮影が可能なほか、ケーブルを通して船上から水中の様子をリアルタイムで観察できるすぐれものだ。
センターは平成12(2000)年に初めて水中探索ロボット「淡探」を配備した。しかし、撮影画像が粗く録画しかできなかったことなどから、思うような成果が上がらず結局“お払い箱”に。そこで約660万円をかけてこの新型ロボを開発し、昨年3月に導入したところ、使い勝手が格段によく、調査の質が大幅に向上したという。
■なるほど、「淡探」はお払い箱ですか…。たしかに、研究推進のためには仕方のないことですが…。大変素朴の気持ちですが、「淡探」はカッコいいです。素敵ですね〜。自律式というのが素敵です。琵琶湖でも潜水艇って、できないですかね。海の深海に比べれば、はるかに浅いわけですから(100mちょっと…)。この目で、琵琶湖の底を見てみたいと思うのは、私だけではないと思いますが。ところで、この「淡探」ですが、漫画の「タンタンの冒険旅行」(Les Aventures de Tintin)にひっかけているのかな?
琵琶湖環境科学研究センターの評議会
■年をとったせいか、評価に関する仕事が増えてきました。一番苦労するのは、自分が勤務する社会学研究科の大学認証評価です。これは、評価を受ける側になります。しかしそれと同時に、評価をする仕事もいろいろあります。学内での評価(ないしは審査)だけでなく、学外の評価の仕事もあります。今日は、終日、そのような仕事でした。
■現在、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの評議員をしています。滋賀県琵琶湖環境科学研究センターは、「琵琶湖とその流域を一体のものとしてとらえ、健全な水循環、物質循環、生態系の保全といった視点から琵琶湖と滋賀の環境に関する現象の解明、行政課題に取り組むため、幅広いネットワークの形成を図りながら、総合的に試験研究を推進することによって、滋賀をモデルとした持続可能な社会の構築に貢献する」ために設置されています。今日は、センターの評議委員会が開催されました。センターの次の研究計画(第4期)の評価を行うためにです。
■評議委員会は、朝9時15分に始まりました。まず、第4期中期計画の全体概要の説明が行われました。そして、4つの政策研究課題と5つの調査解析の研究プロジェクトの計画について、16時半頃まで報告が行われ、それぞれについて評議委員により評価を行いました。今回は、昨年の評議会で私がおこなったコメント(評価可能な研究事業の体系性の確保)にきちんと対応していただきました。その結果、センターの研究事業全体の枠組みがシャープになりました。センター長や知り合いの研究員の方にお話しをうかがったところ、ずいぶん時間をかけてセンター内で議論を積み重ねてこられたのだそうです。こういう成果が見えてくると、評価の仕事をしていても嬉しくなりますね。
■写真は、センターから大津市街地の方面を写したものです。今日は雨でした。こういう風景も、水墨画のようで悪くないですね。
琵琶湖の固有種、ビワマス
(桑原雅之氏撮影)
■facebookを見ていて、以前勤務していた滋賀県立琵琶湖博物館の桑原雅之さんの写真に、目が釘付けになりました。桑原さんにお許しをいただき、その写真を掲載させていただきました。魚が写っています。ご自身で釣られたビワマスです。トリミングしたので3匹しか映っていませんが、本当は全部で5匹写っていました。facebookには、「40cmくらい以下は全部放流し,55cmを頭に5匹キープ」と書かれていました。写真の一番上のやつが、55cmだと思います。大量ですね。
■ビワマスは、その形からもわかるように、サケ科の淡水魚です。日本の琵琶湖にしかいない固有種でもあります。秋になると、琵琶湖の北湖の周りの河川を遡上し産卵します。サケ科ですから、自分が生まれた河川を遡上し産卵するのです。次の時の春に孵化した稚魚は河川を下り、琵琶湖の沖合の深くて水温の低い場所まで移動します。そこで、2〜5年かけて大きく成長するのだそうです。まあ、このようなビワマスの生活史は横においておきましょう。私が桑原さんの写真に釘付けになったのは、このビワマスが大変美味しいからです。とくに、これからの季節は、刺身が絶品なのです。
■このビワマスに関して、生態学者の川那辺浩哉さんが、『知っていますかこの湖を びわ湖を語る50章』という本のなかで、次のようなことを書いておられます。画家であり俳人でもあった与謝蕪村が、「瀬田降りて志賀の夕日やあめのうお」という句を残しているのだそうです。「あめのうお」とはビワマスのことです。この句について、川那辺さんは次のように解説されています。「瀬田は夕映えではなくて雨だとして俳を効かせ、天智帝の都ですぐに荒れてしまった志賀里に夕日がきれいに見えているとして、産卵期のビワマスの背が黒く、体側が虹色の姿に対比したわけだ」。なるほど。ビワマスも含めてサケ科の魚たちは、産卵期が近づくと「婚姻色」=虹色になるのです。
■川那辺さんは、蕪村の句について以上のように説明したあと。次のように解説されています。
「この句をどこで吐いたのか。瀬田と比叡山麓が見えるのだから、南湖東岸であることは確かだ。また膳の上のものではなく、「今や漁師が網からとり上げたところ」に違いない。しかし今、漁獲されるのは湖北のみである。だが野洲川はそもそもビワマスの名産地で、御上神社や兵主神社には秋にこの魚が捧げられる。びわ湖の水質が格段に回復し、蕪村さんの句のとおり、南湖でその風景を賞でながらビワマスを食べられるように、これまたすべきなのではあるまいか」。
ニゴロブナフォーラム
■以下のようなフォーラムが開催されます。
ニゴロブナフォーラムの開催について
~ニゴロブナでつながる人々と琵琶湖~
滋賀県では、「魚のゆりかご水田プロジェクト」により、魚が田んぼに上りやすくする道づくり(魚道)に取り組み、魚たちが水田で卵を産み、稚魚がすくすく育ち琵琶湖へ巣立っていく「生きもの」にやさしい環境づくりを目指しています。
平成25年6月27日はニゴロブナ(25627)と読めるのにちなみ、6月をニゴロブナ月間として、ニゴロブナにちなむ各種イベントを企画しています。
今回、このイベントの一環としてニゴロブナフォーラムを開催し、安土城考古博物館副館長の大沼芳幸さんにお越し頂き、「田んぼが魚を呼び寄せた」と題して琵琶湖と水田と魚の関わりの歴史とふなずしのルーツについてご講演いただきます。
また、琵琶湖に生息する魚の代表種の1つであるニゴロブナに焦点を当て、ニゴロブナ等の魚が遡上する水田を復活させる取組をしている農家さん、琵琶湖でニゴロブナ漁に携わる漁師さん、魚のゆりかご水田米の取組を応援する研究者や魚のゆりかご水田プロジェクトを推進する行政など、様々な方面からニゴロブナ等に関わっている人たちに、ニゴロブナを介した琵琶湖と人々のつながりについて語り合っていただきます。
記
1.日時:平成25年6月29日(土曜日)13時15分~16時30分
2.集合場所:草津市民交流プラザ5F大会議室
(草津市野路1丁目15-5フェリエ南草津)3.内容:別紙参照(PDF:1,289KB)
4.定員:130名先着順(募集締切り6月26日)
5.参加費:無料
マンガ「寄生獣」
■マンガの蔵書のなかから、『寄生獣』を職場のランニング仲間・駅伝仲間でもあるHさんにおかししていました。今日は、仕事で瀬田キャンパスに来られていたHさんから、そのマンガが戻ってきました。マンガには手紙が沿えられていました。
「脇田先生 寄生獣、長い間お借りしておりました。ありがとうございました。 本当にレベルの高い、おもしろいマンガでした。長男も甚く気に入ったようで、『人生で二番目!!』ともうしてました。→一番目は今のところ空席だそうですが…。」
■嬉しいですね〜。Hさんは私よりも一回りお若い方です。その息子さんは、まだ高校生。世代を超えて、このマンガに共感してもらえて、満足です。『寄生獣』、大変奥の深いマンガだと思います。研究室にありますから、関心のあるゼミ生や同僚の教員の皆様にはおかししますよ。