『ガチャコン電車血風録 地方ローカル鉄道再生の物語』

20250125gachakondensha.jpg▪️『ガチャコン電車血風録 地方ローカル鉄道再生の物語』(岩波ジュニア新書)です。若い方から大人まで読める新書です。暮らしている滋賀県の近江鉄道のことなので購入してみました。住んでいるのは、近江鉄道が走る湖東地域ではなく、湖西地域ですが、近江鉄道のこととても気になっていました。

▪️著者の土井さんは近江鉄道線活性化再生協議会の座長を務められた方です。土井さんは、実際に近江鉄道に乗り、また様々な資料に目を通すことで、この鉄道はまだまだ廃止する状況ではないことを確信されました。そして、まずはデータを読み込み、近江鉄道の再生の道を描かれました。この新書はその再生のプロセスを紹介されているようです。ようですというのは、これから読むので…。

目 次
はじめに

1.地域の足=全国の地域鉄道の96%が赤字!?
 1‐1 「まち」が抱える「様々な不安」と移動の関係
 1‐2 移動手段としての自動車と公共交通
 1‐3 地方ローカル鉄道の存廃問題が急浮上

2.近江鉄道ってどんな電車?――辛苦是経営って何?
 2‐1 近江鉄道の概要
 2‐2 独特のレトロ感をいまに残す近江鉄道
 2‐3 赤字が続いている近江鉄道

3.鉄道の存廃問題と上下分離方式
 3‐1 鉄道を動かすために必要となるお金――経費
 3‐2 なぜ鉄道の赤字が問題になるのか?
 3‐3 地方ローカル鉄道の存廃問題と対応策
 3‐4 上下分離方式という存続方策

4.近江鉄道のギブアップ宣言で延命か再生か、それとも廃線か?
 4‐1 ギブアップ宣言と、その受け止め方
 4‐2 近江鉄道の努力と存続の価値を見出す
 4‐3 衝撃→不信→結束、関係者はどう前を向いたのか

5.近江鉄道存廃について白熱の議論――任意協議会はじまる
 5‐1 任意協議会と地域公共交通総合研究所の報告書
 5‐2 「地域公共交通ネットワークのあり方検討調査報告書」の概要
 5‐3 存廃問題の最大の焦点と、さらに続く白熱議論
 5‐4 存続、そして次の展開へ。動き出した議論
 5‐5 近江鉄道沿線自治体首長会議でも、白熱議論

6.山あり谷ありのプロセスを乗り越えて法定協議会スタート
  ――なぜみんなが同じ方向を向くことができたのか?
 6‐1 近江鉄道の「ギブアップ宣言」の三日月滋賀県知事の受け止め方
 6‐2 法定協議会:開始早々の会長からの先制パンチ
 6‐3 データとファクトを共有して一気に結論へ
 6‐4 理解を深めた大人の遠足

7.全線存続に向けて一歩ずつ
 7‐1 次の一手は存続形態を決めること
 7‐2 沿線自治体の費用負担割合の決定
 7‐3 法定計画とデータを見ない意見の克服

8.沿線の人々や企業が近江鉄道再生の背中を押す
 8‐1 沿線の人々との接点の拡大
 8‐2 2022年10月の「全線無料デイ」:もし空振りだったら……。
 8‐3 市民からの発言「鉄道は道路整備と同じ感覚になる」

終章 上下分離、新生近江鉄道出発進行

参考資料
おわりに
謝辞

▪️鉄道に深い関心をお持ちの皆さんであれば、目次からでもいろいろわかるのではないかなと思います。書名にある「血風録」、これは司馬遼太郎の『新撰組血風録』が有名なようですが、なんだか血生臭い印象ですよね。それほど、鉄道事業者と沿線自治体の間にはちゃんとしたコミュニケーションもなく、当初、関係は最悪だったようです。そのような状況から、どうやって上下分離方式(公有民営方式、近江鉄道株式会社と一般社団法人近江鉄道線管理機構)で再スタートできるまでに至ったのか。コミュニケーション不足や相互不信をどのように乗り越えて、前向きに合意することができたのか。その辺りを勉強させていただきます。春からの授業でも学生の皆さんに紹介してみようかなと思っています。

カテゴリ

管理者用