「民主的なチームだから強い」

▪️毎日新聞に「関学大前監督『民主的なチームだから強い』甲子園ボウル6連覇」という記事が掲載されていました。注目しました。タイトルにある部の運営が民主的であることと、チームの強さはどのように関係しているのか。随分以前だと、「俺についてこい」タイプの指導者や先輩のいるチームの方が強いのではないかとか、身体能力が特別に秀でて注目されるアスリートがいるからとか…そう思う人の方が多かったと思います。前監督の鳥内秀晃さんは関学の強さをそのようには説明されません。

▪️鳥内さんは記事の中で「4年間(甲子園ボウルに)出られない先輩もいた。過去のいろいろな経験からこういうチームが出来上がったことを忘れてはいけない」と語っておられます。アメリカンフットボールは、フィールド上で、それぞれのチームが11人で対戦します。そして、オフェンスチーム、デイフェンスチーム、それからフィールドゴールやパントを行うスペシャルチームに分かれていて、さらにそれぞれのチームの中でも非常にかまこくポジションが専門分化しています。フィールドゴールの際、ボールをキャッチしてキッカーがキックしやすいようにセットする役割の方がいます。調べてみましたが、「ホルダー」と呼ぶのだそうです。一見地味なポジションですが、この人がきちんとボールをキャッチしてセットできなければチームは勝利することができません。

▪️それから、フットボールの選手のユニフォームには背番号が付いています。アメリカンフットボールの背番号は99番まで。ファイターズのホームページを見ると番号を与えてもらえない部員も80人近くかおられます。鳥内前監督が「4年間(甲子園ボウルに)出られない先輩もいた」というのも、この人数からすると当然ということなります。厳しいですね。まあ、これはどのスポーツでも、硬式野球部でも、サッカー部でも同じといえばそうなんですが、試合に出られなくてもその部員は自分のチーム全体の中での役割をよく考えておられるようです。鳥内さんは、次のように語っておられます。

関学大が6連覇できた要因について鳥内さんは「選手が自分の役割、ミッションを見つけることができる。『今年は何で役立とう』と考える。それを主体的に考えてやれることが受け継がれている」と解説した。

「関学大は下級生でも民主的な意見がいえるチーム。戦後からずっとそういうやり方をやってきて続いてきている。だからチーム力の勝負になれば強い」。

▪️ミッションは、上から与えられるものではなく、自分自身で見つけること、上から言われて取り組むものではなく、自分自身で主体的に取り組むことがファイターズという組織の伝統や文化になっているというのです。そのようなことを可能にするのが、民主的な組織運営なのです。それが、アメリカンフットボールという競技の特性とうまく噛み合って、強いチーム力が維持されているのでしょう。このことと関連するかもと思う興味深いXのポストを見つけました。

▪️このポストで取り上げられているのは、49番4年生の薬袋龍太郎(みない・りゅうたろう)さんです。ホームページによれば、ポジションはDB(ディフェンシブバック)です。どのようなポジションが調べてみました。「ディフェンス陣の一番最後にいる選手たちを指します。前に位置するディフェンスライン、ラインバッカーが止めきれなかった相手オフェンスのラン、パスを止める役割」とのことでした。だから、ディフェンスの最後の砦ということでしょうか。間違っていたらごめんなさい。そのDBの薬袋さんは、4年間ずっと日陰でやってきたというのです。それでも毎日タックルの練習を繰り返してきた。それが、彼がチームに貢献するためのミッションなのだと思います。いつ試合に出られるかわからない、日陰で練習を積み重ねてきて、学生日本一を決める甲子園ボウルで鋭いタックルを決められたのですから、ものすごく嬉しかったでしょうね。しかも、そのタックルで相手の選手がボールをこぼしてしまい、それを味方の選手が押さえて攻撃権が関学側に移ったのですから。「最後に毎日のタックル練が報われました」というところから、薬袋さんの気持ちがすごくよく伝わってきました。

▪️この動画の8分17秒のあたりで、薬袋さんがタックルを決めたシーンを確認できます。そのあとの様子からは、「毎日のタックル練が報われた」、その喜びを爆発させておられる様子が伝わってきます。素敵だと思います。

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