岳陽楼、洞庭湖の秋月
■一昨日は、朝から夕方まで、環境保全市民団体に助成する平和堂財団「夏原グラント」の一般1年目2次プレゼンテーション・選考会でした。先週の日曜日が一般2年目プレゼンテーション・選考会でしたが、昨日は1年目です。いろいろ思うところはありますが、それは横に置いておいて…。写真は、選考会の会場である「ピアザ淡海」に飾ってあった絵です。正確には刺繍です。
■滋賀県は、中国の湖南省と友好関係を結んでいます。琵琶湖と洞庭湖の関係があるからですね。素晴らしい風景を8つ選び評価することを八景と言いますが、有名な琵琶湖の周囲の「近江八景」は、10世紀に中国の北宋で選ばれた「瀟湘(しょうそう)八景」をもとにしています。瀟湘とは、中国で2番目に大きな洞庭湖と、そこに流入する瀟水と湘江の合流するあたりのことを言うそうです。中国に留学した僧侶が「中国で流行っていた八景というやつを、日本でもやってみようぜ。京都の周りでどこかないかな。あっ、琵琶湖の側がいいんじゃいの」と言ったかどうか知りませんが、「瀟湘八景」に憧れたのが「近江八景」なのかな。まあ、そんなわけで中国の湖南省と滋賀県は友好関係を結んでいるのです。
■で、この絵、いやいや刺繍、瀟湘の刺繍だから「瀟繍」というそうです。横にある解説によれば中国の四大刺繍のひとつだそうです。どこから眺めた風景かというと、湖南省岳陽市にある岳陽楼からみた洞庭湖の秋月です。私は、滋賀県立琵琶湖博物館博物館の学芸員をしているときに、この岳陽楼に登ったことがあります。懐かしい。四半世紀ほど前のことでしょうか。洞庭湖近辺の地域の伝統的な漁法の調査に行ったのですが、その際に、この楼閣に登りました。建物自体はもちろん新しいものですが、中には、確か范仲淹の「岳陽楼記」という漢文が掲げてあったように記憶しています。この漢詩の最後の部分が有名ですね。「先天下之憂而憂、後天下之樂而樂歟」(心配ごとは一般の人びとより先に心配し、楽しみごとは一般の人びとよりも後れて楽しむ)。この「先憂後楽」という、范仲淹が当時の政治家に望んだ姿勢が、後楽園の名前のもとになっているということを、この「瀟繍」を眺めながら思い出したのでした。
【追記】■関連投稿です。「洞庭湖の家船」