糠漬け

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■糠漬けの記憶。一番古い記憶は、おそらく幼稚園の頃だと思います。だから、今から56年前のことになります。当時は、現在の北九州市小倉北区にある日本住宅公団の団地に暮らしていました。5階建ての1階。今も部屋の番号を覚えています。2215です。22号棟の1階の左から5番目の部屋…という意味になります。3Kの間取りでした。6畳が一間と4畳半の二間、そして小さなキッチン(K)です。ステンレスの流しの下には物が置けるようになっていた。我が家の糠漬けの定位置はその場所でした。

■私の記憶では、糠床は青の蓋のついた琺瑯の容器に入れられていたように思います。その琺瑯の容器の中に入れられた糠床には、何処かの家の糠床が加えられていました。そう聞かされていました。100年漬け続けてきた糠床です(百年床というらしい)。スーパー糠床ですね。糠床は、乳酸菌、酵母、その他の微生物の相互作用で生まれる芸術的な食品ですから、分けてもらった糠床で、我が家の糠漬けのレベルは随分向上したのではないかと思います。父は、その漬物を好んで食べました。特に、胡瓜の少し黄色くなりかけた酸味を増した古漬けが好きだったと思います(私は好きではなかったのですが…)。そうやって、子どもの頃は当たり前のように糠漬けが食卓にのぼっていましたが(同年代の皆さんのご実家でもそうだったと思う)、自分自身が糠漬けの食文化の技を継承することはありませんでした。ということで、飲みに行っても、自分の店で漬けたという糠漬けが出てきたりすると嬉しくなります。知人の家で出してもらったりすると喜んでいただきます。自宅で糠漬けをやっているという人は、相当減ってしまったのではないでしょうか。

■我が家では、浅漬けを自分の家で作る程度で、糠漬けはやったことがありません。ところが、最近、我が家にはこの写真のようなものが登場しました。「この袋がぬか床に!! ぬか漬け体験」と書かれてます。よくスーパー等でも売られていますね。食塩、昆布、辛子、刻み干し椎茸、山椒の入った炒糠と、米糠と乾燥ビール酵母、調味料(アミノ酸)からできた種糠、これで糠床を作るようになっています。調味料が入っているから、完全な糠漬けとは言えないかもしれません。だから「ぬか漬け体験」なのでしょう。でも、そこそこ美味しく食べられます。昨日は、糠床を混ぜて胡瓜と茄子と茗荷を漬けるように言われたので、自分でもやってみました。

【追記】
小倉は糠漬や、糠炊という魚料理(糠床の糠も使って魚を炊く料理)が有名です。もっとも、子どもの時、糠炊を食べた記憶がありません。どのような味なんだろう。このような小倉と糠漬けの歴史は、江戸時代や初めの頃まで遡るようです。ごく簡単にですが、こちらで歴史を確認できますね。小笠原忠真という信州から移封された殿様が、小倉で庶民に奨励したということのようです。ちなみに、茶人でもあり、小笠原家茶道古流を興した人物でもあります。

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