卒業生・修了生への学長からのメッセージ

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■龍谷大学のホームページに[卒業生・修了生への学長からのメッセージ]が掲載されましたので、転載させていただきます。

晴れて卒業を迎えられた皆さん、おめでとうございます。龍谷大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。また、ご家族の皆さまにも心よりお慶びを申し上げます。

新型コロナウイルス感染拡大により、本年度は卒業式並びに大学院修了式を挙行することができませんでした。皆さん方の気持ちを鑑みれば、心苦しくてなりません。卒業式の場で直接皆さんにメッセージを伝え、共にお祝いしたいと考えておりましたが、大変残念です。今回はこのような形で、新たなステージに羽ばたかれる皆さんにメッセージを贈ります。

さて、4月からの新生活が無事にスタートをきれるかと不安におののいている方もいるかと思います。この度の感染症にしてもそうですが、近年、予期せぬ災厄が頻発しています。未知なる事象に遭ったときの「人間としてのあり方」が問われています。「生きるとは何か」「自己とは何か」についてもっと深く考える必要があります。社会人になっても「考える人」であり続けてください。

大学を卒業しても、学びが終わるわけではありません。学びに終わりはないのです。社会に出てどのような職につくにせよ、学びが基本です。実社会に出て、これからいよいよ実践的な学びがスタートするのです。「仕事」が学びの場となり、「社会」そのものが大きな学び舎となるのです。初めはわからないことばかりです。とまどうことも、足がすくむことも、気持ちが萎えることもこれから多く経験することでしょう。時が経つにつれ、無力感にさいなまれることも、居心地の悪さを感じることもあるでしょう。しかし、「学びの姿勢」を持ち続けることで、困難を乗り越えることはできます。龍谷大学で培った「学びの姿勢」をどうか失わないでください。大学院へ進学される方はさらに専門知に磨きをかけてください。

皆さんがこれから船出する社会という海は荒波がたっています。状況をよく見極めないと、荒波に飲み込まれてしまいます。地球的視野で現代社会をみつめるならば、あまりに多くの深刻な課題があることに気づきます。排他的な思想が蔓延し、国家や地域間で紛争がそこかしこで発生しています。貧困や飢餓が多くの人たちの生命を奪い、生活を危機にさらしています。紛争、貧困、経済格差、気候変動など、いまや地球が持続不可能な危機的状況にあります。地球が悲鳴をあげているのです。決して大げさな表現ではありません。

こうした危機的状況を真摯に受けとめ、2015年に国連において、地球上の人類社会のための行動計画として「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」といった17の目標と169の達成基準が定められました。より良い社会を目指して各国、地域、企業、個人がそれぞれの立場で取り組んでいく、これがSDGsです。「誰一人取り残さない」という崇高な理念が掲げられています。とりわけ企業や大学の取り組みが注目されています。

SDGsの「誰一人取り残さない」という理念は仏教の慈悲の精神に通じるものがあります。昨年より龍谷大学は仏教とSDGsを繋いだ「仏教SDGs」を始動させました。卒業生諸君にも参画を呼びかけるつもりです。

さて、皆さんが学んだ龍谷大学は江戸時代の寛永16年、西暦で言えば1639年に西本願寺に創設された「学寮」が起源です。昨年、創立380周年を迎えました。卒業生の皆さんは龍谷大学の長い歴史に名を刻むことになり、これからは龍谷大学の卒業生として行動していくことになります。

わが龍谷大学の建学の精神は周知の通り、「浄土真宗の精神」すなわち親鸞聖人の精神です。鎌倉時代、親鸞聖人が人間のありようを根源的に問いかけ、まことの生き方を求められました。阿弥陀仏の本願に出遇われ、本願に照らされた「真実の生き方」を顕かにされたのです。まさにその点にこそ龍谷大学のエッセンスがあります。いかに自分というものが至らない存在であるか、その至らぬ存在の自分に対し智慧と慈悲の光が届いているという不思議。この思議を超えた働きかけこそが、常にわが身を省みて社会のために尽くす人格を形成させるのです。創立380周年を迎えるにあたり、学生諸君の建学の精神への回路として、行動哲学「自省利他」(自ら省みて、他者の安寧のために尽力する)を掲げました。誰もがもっている「自己中心性」を自覚しない限り、人は自分が正しい、間違っているのは他人だという思考に容易に陥ってしまいます。

皆さん方はこれからいよいよ自分で未来の扉を開くことになります。
本学の建学の精神を具えた者は、日々のありふれた日常がかけがえのない日常であることに気づきます。
本学の建学の精神を具えた者は、悲嘆にくれる他者の痛みに心から共感することができます。
本学の建学の精神を具えた者は、生きる意味を深く問い、常にわが身を省みる習性を身につけます。

先輩達が伝え残してくれた建学の精神。それは本学にとって大きな宝です。気づかないばかりに喜べることが喜べない、空しく過ごす人生であってはなりません。卒業にあたって、襟を正せば誰しも重大な気づきがあるはずです。多くの支えがあったればこその今の自分。支えがあったればこその現在の自分であることは、今この瞬間に深く思いを致すならば、大いに実感できると思います。

数年前に本学を巣立って今東京で仕事をしている卒業生から昨年手紙をもらいました。「あるお寺の前を通ると掲示板に『幸せだから感謝するのではない。感謝できることが幸せなのだ』という文章がありました。背中に電気が走って、ふっと自分の学んだ大学を思い出しました」と手紙には書いてありました。

どうか感謝の気持ちを保護者の方、家族の方に伝えてください。卒業式・修了式は中止となりましたが、年内に卒業生・修了生の皆さんと大学関係者が改めて集い、語りあえる場を設けたいと思っています。その時はぜひ元気な顔を見せてください。お世話になった先生方や励ましてくれた学友に思いを伝えてください。

これからは、皆さんは龍谷大学の卒業生として誇りある伝統を背負う一員です。今後皆さんは卒業生で構成する龍谷大学校友会に属することになります。皆さんがこれから社会で体得することになる新たなる知見は今後の龍谷大学にとっての知的資源となりうるものです。在学生にとっても大きな刺激となるでしょう。今後、卒業生ならではの力をどうか私たちに貸してください。本学はいま、卒業生との関係をさらに強化しつつあります。在学生・卒業生がスクラムを組み、希望に満ちた明るい未来を切り拓いてもらいたいのです。卒業生からの在学生への助言は時に闇を照らす光となります。どうか、卒業生にしかできないことをしていただきたいと願っています。

龍谷大学はさらに中身を充実させて、魅力ある大学へと突き進みます。本学が皆さん方の誇りとなるように、私たち教職員も懸命に努力してまいります。

大きな社会変動が起きている時代であればこそ、永久に揺るがぬ教えに耳をすます必要があります。龍谷大学はまぎれもなく皆さんの母校であり、同時に母港でもあります。時々は寄港してもらって、新たなエネルギーを補充し、清新な空気を取り入れてください。人生の歩みの中で、大きな壁にぶつかることもあります。今一度学び直したいと思うこともあるでしょう。自分の原点に立ち戻ってみたいと思うこともあるでしょう。そのときはどうぞまた本学に戻ってきてください。私たちはいつでも皆さんを歓迎します。

自らを省みるこころを失うことなく、どうか光り輝く人生を歩んでください。そして志を高くもって、どうか周囲を明るく照らす人間になってください。皆さんが光り輝くとき、大学も輝くのです。

「見よ黎明の空澄みて 吾等が学府 光輝あれ」

困難な状況を乗り越え、共に力強く歩んでいきましょう。ご卒業まことにおめでとうございます。

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