日本の年次・性・年齢別人口ピラミッド


■「日本の年次・性・年齢別人口ピラミッド」という動画を偶然見つけました。1920年(大正9年)から2065年までの人口ピラミッドの変化がよく理解できます。こうやって刻々と変化していく人口ピラミッドを眺めていると、日本の将来に対してリアルな感覚を持つようになります。この動画がいつの時点でまとめられたものかわかりませんが、もちろん、将来のことは推計値になります。こうやって変化を見ていくと、日本の行末がどうなるのか、不安になります。

■動画の始まりである1920年(大正9年)頃は、人口ピラミッドは富士山のような形をしています。総人口は「55,963,000人」(5千5百96万3千人)。正確な数値はわかりませんが、戦前は平均余命が50歳以下になります。私は人口問題に関して深い知識をもっているわけではありませんが、衛生面での知識が普及する以前、水道や冷蔵庫が普及したり医療の発達する以前は、人は簡単に死んでいたのではないかと思います。子どが生まれたからといって、健やかに成長してくれるとは限りません。たくさん生まれるけれど、たくさん死んでいく…ということになるのかな。裾野の広がる人口ピラミッドの背景には、そのような社会の状況があります。私の母の場合、兄弟姉妹は4人生まれたわけですが、そのうち2人は小さい頃に亡くなっています。おそらくは、当時の一般の人びとの「死生観」も、今とは大きく異なっていたと思います。そのような「死生観」は、「人は簡単にあっという間に死んでいく」という感覚とともにあったと思います。

■1920年の大正時代から昭和時代に移行すると人口は増加していきます。人口ピラミッドも富士山のような形のまま増加していきます。しかし、その富士山が崩れる時があります。第二次世界大戦で、若い男性の国民が徴兵され戦死されたたからです。人口ピラミッドの男性の側、20歳から30歳までのところがえぐれるような形でへこみます。恐ろしいです。しかし、そのへこみも第二次世界大戦後には回復していきます。それと同時に、一番下の年齢層が急激に増加していきます。第一次ベビーブームです。

■この動画では、その後、1967年頃に総人口が1億人を超えます。1970年代に突入すると前半で再び一番下の年齢層が急激に増加します。第二次ベビーブームです。第一次ベビーブームの子どもの世代です。しかし、第一次ベビーブームほどではありません。第一次ベビーブームの頃、合計特殊出生率は「4.3」でしたが、第二次ベビーブームの頃は「2.14」になっています。とはいっても、このままいくと、次の世代で子どもが生まれると「第三次ベビーブーム」が起きてもおかしくありません。しかし、現実にはそうはなりませんでした。一貫して合計特殊出生率は減り続けました。第一次と第二次の間、高度経済成長の期間中で、一瞬ドスンと合計特殊出生率が減った年がありました。1966年です。合計特殊出生率は「1.58」になりました。なぜ減ったかというと、この年は歴でいう「丙午(ひのえうま)」にあたる年でした。「丙午に生まれた女性は気性が激しく夫の命を縮める」という迷信があったためです。今の学生の皆さんは信じられないかもしれませんが…。

■で、第三次ベビーブームについてですが、第三次ブームが起きてもおかしくない2000年になっても、やはり合計特殊出生率は減り続けました。2000年の合計特殊出生率は、「1.57」です。「丙午」の「1.58」よりも低くなってしまったのです。「1.57ショック」と呼ばれています。未婚・晩婚化だけでなく、その背景にあるのは経済問題が重要です。細かな違いまで視野に入れると様々な主張があるようですが、ここでは、教育社会学者の舞田敏彦さんの解説をご紹介しておきます。「来なかった第3次ベビーブーム」です。

■動画に戻りましょう。2008年の1億2,808万人をピークに、日本の人口は減少に転じていきます。そして、2020年になると、つまり来年ですが、第一次ベビーブームの人たちが「70歳〜74歳」になり、第二次ベビーブームの人たちは「45歳〜49歳」になります。このあたりからは推計値です。当たり前と言えば当たり前ですが、第一次ベビーブームの世代の皆さんは、少しずつ人口が減っていきます。そして、2030年頃には消えていきます。お亡くなりになると考えられるからです。私はこの第一次ベビーブームの人たちよりも約10歳若い世代ですが、私の世代もやがて消えていきます。第二次ベビーブームの世代の皆さんはどうかというえば、2050年頃を境にピークが曖昧になりやがて消えていきます。この頃の人口ピラミッドは、棺桶のようです。棺桶といっても、日本の葬儀の際に用いられる棺桶ではなく、欧米の棺桶の形ですね。ホラー映画で、ドラキュラが眠っている棺桶と言えばわかりやすいかもしれません。

■動画は2065年まで、その続きはわかりません。2065年の人口は、「88,077,000人」、「8千800億77万人」です。これは一定の前提に基づいて推計された数値だと思いますが、現実には、環境問題や大災害の発生、あるいは世界的な経済破綻により、人口はもっと減少していくかもしれません。経済破綻、財政破綻から福祉や医療に関する行政サービスがどんどん低下すれば、今後も寿命が伸びていくとは限りません。

■私の孫は来年3歳になります。2065年、孫は48歳です。私は生きていれば107歳ですが、もちろん生きているはずもなく、平均寿命まで生きるとすれば2040年までには死んでいることでしょう(病気でもっと早くに死ぬよな気がします)。孫が本格的な高齢になったときに、はたして日本はどのような社会になっているのでしょうか。そもそも日本は存在できているのか。そのあたりも不安です。学生の皆さんの年齢は、2065年には60歳代半ばになっていますね。そのような先のことを考えても仕方がない…そう思う人も多いかと思います。確かに、私が学生の頃を思い返しても、同じように考えていたかもしれません。しかし、社会の状況は大きく変わってしまいました。備える必要があると思います。

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