学長メッセージ「『自省利他』の精神を根底にして」

◾️勤務してるい龍谷大学では、創立380年を迎えたことから、入澤崇学長自らメッセージを発信しています。「自省利他」です。

「自省利他」の精神を根底にして
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龍谷大学は本年、創立380年を迎えました。それにあたり、龍谷大学から新たな哲学を発信したいと思います。
新たな哲学、それは「自省利他」です。
いま、世界を見わたせば、排他的な考えが蔓延し、国家や地域間で、紛争がそこかしこで起きています。その結果、多くの子どもの未来が奪われ、貧困や飢餓がさらに追い打ちをかけています。経済格差や温暖化など、地球的視野で現代社会をみつめるならば、あまりに多くの深刻な課題があることに気づきます。
問題の本質はどこにあるのでしょうか?それは人間の「自己中心性」にあると私は考えます。
例えば「争い」。「自分は正しい」と各人(または各国)が主張すれば、争いは避けられません。自分自身を絶対視すれば、当然のことながら敵が生じてきます。敵を生まない思考に立脚しない限り争いはなくなりません。
例えば「富」。わが国は明治以降、経済成長を目指し続けています。しかし、明治政府の打ち立てた「富国強兵」が結果として何をもたらしたでしょうか。1980年代のひたすら富を求めるバブル経済が何をもたらしたでしょうか。「経済」は原意の「経世済民」(世を治め、民の苦しみを救う)でなくてはなりません。
創立380周年記念事業を実施するにあたり、自己中心性に気づくことから始めたいと思います。自分は果たしてこのままでいいのか。自分に欠けていることは何なのか。自分のありようを省みることが自己変革に繫がります。「自分のものさし」ではなく、「仏さまのものさし」で自分をはかれば、そもそも「自己なるもの」は虚妄であることが見えてきます。自分という存在は他者との関係性から成り立っているのであり、他者との関係性を重んじる「気づき」が重要となってきます。

大学のありようを省みたならば、どうでしょうか。私たちは大学の果たすべき役割や使命を担っているとはっきりと言えるでしょうか。深草キャンパスを例に出すと、この地にはかつて軍事施設がありました。軍事施設を教育施設に変えることに尽力した先人の思いをどれだけ私たちはくみ取っているでしょうか。教育は社会の基点。大学キャンパスは地域社会の拠点となるべき存在です。地域貢献は大学にとっての大きな使命なのです。大学自身、自省したいと思います。

大学は閉鎖的な存在であってはなりません。学術世界を世間の隅に封じ込めてはなりません。「学び」は成熟した人生、成熟した社会を創りあげる要です。他者との関係性を重んじ、他者の幸福に資することを考え行動する。教職員と学生が仏教の「利他の精神」に学び、創立380年を機に、改めて龍谷大学の使命を血肉化していきたいと考えます。

「自省利他」、これを龍谷大学創立380周年の基本コンセプトに掲げます。

2019(令和元)年 5月
龍谷大学 龍谷大学短期大学部
学長 入澤 崇

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