中野孝教先生 総合地球環境学研究所定年退職祝賀会

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■26日(土)は、朝から枚方市にある家具団地に向かいました。今月の3日、大津市に転居しましたが、少しばかりですが新しい家具を用意する必要があるため家具団地に向かったのです。家具団地から戻る途中、「北船路野菜市」の学生たちの様子をみにいき、いったん自宅に戻ってからこんどは京都に出かけました。もう、バタバタの年度末です。京都では、この3月末で総合地球環境学研究所を退職される中野孝教さんの「特別講演会」と「定年退職祝賀会」が国際会館を会場に開催されました。中野さんとのお付き合いは、12年程になります。中野さんが筑波大学から総合地球環境学研究所へと異動されさい、当時、私が参加していた文理融合型の研究プロジェクト「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」にも加わってくださいました。地学の研究からスタートされた中野さんのご専門分野は、同位体環境学です。専門分野はまったく異なりますが、たいへん親しくお付き合いをさせていただきました。地球研のホームページでは、中野さんのことを以下のように紹介しています

生き物の一部を調べただけで、出身地がどのあたりか、何を多く食べていたかわかるってすごくありませんか。地球研の研究高度化支援センター長の中野孝教教授は「安定同位体」の研究者で、水を中心に石、植物、動物、食品や人間に含まれる安定同位体比を調べています。まったく関係の無いように見えるものでも、安定同位体比を調べるとつながりが見えてきます。絶滅しそうな魚の安定同位体比を調べて、育った町の山や川とその魚のつながりを知り、河川流域の環境を良くしていくヒントにする、なんてことができるかもしれません。愛媛県西条市、福井県大野市、山形県遊佐町、岩手県大槌町などでは、住民の力を借りながら水を集め、研究所で安定同位体比などを測定しています。そこで得られた発見を各地の人とつなげていく、研究者と市民が一つの輪になる共同研究を試みています。

■ここで安定同位体比について、きちんと説明しないといけませんね。しかし、わかりやすく説明する能力が私にはありません。もし、少し詳しく知りたいという方がおられるならば、研究プロジェクトに一緒に取り組んできた陀安一郎さんのホームページがよいかもしれません。ここに安定同位体比についての解説があります。ぜひ、お読みいただければと思います。

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20160327nakano6.jpg■中野さんの特別講演会のタイトルは「地下から始めた同位体マラソンを通して出会った人と学んだこと」でした。中野さんの講演は、ご自身のお若いころからの研究過程をマラソンに例えたものでした。なぜ、マラソンなのか。それは、中野さんご自身がフルマラソンを何度も走っておられるからです。たしか、3時間40分の記録をお持ちだったと思います。私もフルマラソンを3度完走しましたが、私自身の記録は、中野さんの記録よりも1時間遅いものです。中野さん、すごいんです

■市民ランナーである中野さんと私が総合地球環境学研究所で出会ったときは、ちょうどフルマラソンの30kmを超えたあたりになります。そこから、一緒に「文理融合」の研究プロジェクトに取り組んできました。実際のフルマラソンでは、30kmを超えたあたりからとても辛くなってきますが、私たちの研究プロジェクトも、なかなか厳しいものがありました。思い返せば辛いことの連続でしたが、結果として、なんとか研究を無事に終えることができました。この「文理融合」の研究プロジェクトをやりとげたことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。

■中野さんは講演のなかで、「施設や制度が文理融合を生み出すのではなくて、研究プロジェクトが文理融合を生み出す」、そのような趣旨のことをおっしゃっていました。その通りだと思います。同じ問題や対象を異なる学問分野から取り組んだとき、自分だけでは「できないこと」が、異なる分野とつながることで「できるようになる」からです。そのような「相補的な関係」がプロジェクトのなかに生まれるとき、文理融合は実質化していきます。私は、そのことを強く実感してきました。中野さんとは、以前から、「いつか、安定同位体の手法を使った地域連携型の研究プロジェクトを一緒にやろう」といっていたのですが、中野さんの定年までには間に合いませんでした。でもチャンスがあれば、中野さんと一緒に研究プロジェクトに取り組めればと思っています。というわけで、特別講演のなかでは、少しだけ私も登場することになりました。龍谷大学に異動した頃の私が写っていました。淀川の三川合流地点から河口までを自転車を使って1泊2日で調査した時のものです。パワーポイントのスライドには、「社会学者と一緒になることで研究が進む」とありました(この写真は、総合地球環境学研究所の研究員の方が気をきかせて撮ってくださいました)。

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■「定年退職祝賀会」も国際会館で開催されました。乾杯の音頭は、和田英太郎先生でした。ひさしぶりに、お世話になった和田英太郎先生とお会いすることができました。同位体生態学の分野を切り開いてきたパイオニアです。じつは、私を文理融合の世界にぐいっと引っ張り込んでくださったのは、和田先生なのです。とてもお元気でした。乾杯の音頭のさいに簡単なスピーチをされましたが、和田先生はこうおっしゃいました。「人間、70歳を過ぎてからは『健康』が何よりも重要。かつてどんな企業に勤めていたとか、どんな役職に就いていたとかは、まったく意味を持たない」。その通りだと思います。もう1枚の写真。和田先生の左側は、秋道智彌先生です。和田先生も秋道先生も、ともに総合地球環境学研究所の名誉教授です。なんだか、歴史的な写真だな~と瞬間的に思い、撮らせていただきました。

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