ノルウェー旅行(4) - グリーグのカエル -

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■ノルウェーの作曲家・グリーグは、ピアノの名手でした。ただし、かなりの「あがり症」だったようです。演奏するさいは、このカエルをお守りのようにポケットに入れていました。そして、指先で、このカエルのお守りをこすっていたのです。本物は、ゴム製だったようです。もちろん、これはお土産です。グリーグの暮らした家がある場所(「トロールハウゲン」)には、少し前に投稿したコンサートホールだけでなく、博物館もあるのですが、その博物館のショップに売られていました。グリーグがもっていたお守りのレプリカですね。前足が欠けています。おそらく、本物が欠けているのでしょうね。

■グリーグにとって、このゴムのカエルは、単なる幸運を呼ぶお守りを超えて、精神的なつながりをもった友達だったようです。このカエルの他に、子豚のぬいぐるみの友達もいました。寒い冬のあいだ、グリーグは、自分の作品をもってヨーロッパのあちこちに演奏旅行することが多かったようですが、そのときにはいつもカエルくんと子豚くんが一緒でした。眠るときも、一緒だったと伝えられています。

■グリーグの博物館では、彼の生涯についていろいろ学ぶことができました。特に、妻であるニーナ・グリーグとの関係は、とても興味深いものがあります。グリーグ自身、以下のように語っています。「私は素晴らしい声とたぐいまれな解釈力を持つ若い女性に恋をした。その女性が私の妻となり、生涯の伴侶となった。あえていえば、ニーナは私の歌曲の唯一の理解者であり、表現者だ」。詳しくは、以下のページをご覧ください。

ニーナ・グリーグ Nina Grieg (1845~1935)(norway the official site japan)

20141207grieg2.jpeg ■グリーグの生涯について関心をもつようになり、良い伝記はないかとちょっとだけ調べてみました。すると、この本が一番、読んでみたいと思いました。「音楽の友社」のサイトのなかで、青山学院大学の広瀬大介(ひろせ・だいすけ)さんが、この本の書評を書かれています。この書評を読んで、迷わず読んでみることにしました。

本書は、グリーグの生涯を丹念に追いかけるというよりも、作曲家の生涯においてもっとも輝ける瞬間をそのまま切り取り、そこからグリーグの人となりをあぶりだすような手法を用いる。ノルウェーの民謡素材を用いつつも、それを普遍的言語へと高める努力を惜しまぬ結果生まれた《ピアノ協奏曲イ短調》作品16、そしてもっとも長大な分量が割かれる《ペール・ギュント》など、「音楽そのもの」を媒介として、そこから作曲家の生涯を浮かび上がらせていく。とりわけ、後者を巡るヘンリク・イプセンとの関係は興味深い。お互い完全に胸襟を開くわけではないものの、その志のありようをきちんと理解しあう友情は、互いの芸術を尊重するゆえの距離感なのだろう(このような詩人と音楽家の距離感の取り方は、ホフマンスタールとリヒャルト・シュトラウスのそれをある程度識る筆者にとっては、大変納得ゆくものだった)。
 こうした特殊な、ある種の入門的・あるいは啓蒙的とも言うべき記述方法を採用したのは、そもそもグリーグの浩瀚な伝記は言うに及ばず、北欧音楽の研究書そのものが日本語ではまだまだ少ない(これは日本に限らず西欧諸国でも大差ないはず)という特殊事情にもよるだろう。寡作なグリーグの場合であれば、代表曲についての記述によって、その生涯をほぼ網羅できてしまう。
 その全貌をいまだ知られているとは言い難いこの作曲家を多くの人に知ってもらう、という観点から見れば、この叙述方法は、考え得る幾多の方法のなかでも、もっとも適したものと思われる。まだ人目に触れることの少ないグリーグ関連の写真もふんだんに用いられており、それを見るだけでも豊かな発見に満ちている。もっとも、作曲家の人生とその作品を並置して描こうとするこの方法は、前者の体系的な叙述がある程度犠牲になることは避けられない。巻末の年譜を参照しながら読むことで、理解を補うことも必要になるだろう。作品へのアプローチも、その種の人間ドラマを紡ぐことに主眼があるために、「音楽そのもの」への言及はごく限られている。

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