過疎地の選択 “お上依存”を脱しよう(中日新聞社説)

■以下は、本日の中日新聞社説です。大いに共感しました。大切なことは、「自分たちの幸せ」「自分たちの幸せの物差し」を共有できるかどうか…なのだと思います。

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 人口減と高齢化が急速に進む中、過疎地がどう生き残るかは、とりわけ重い課題だ。地域ごとに実情は違っても、あすへの希望をつなぐには“お上依存”脱却が有効な手だてのひとつではないか。
 全国の過疎地に点在する約六万五千集落を調べたら、四百五十カ所が十年以内になくなる可能性がある-。これは二〇一〇年、総務省がまとめた予測だ。いわゆる限界集落のことである。
 今春出された将来推計人口などの数値でも人口減・高齢化の進行は著しい。が、そんな未来社会がマイナス面のみ強調されすぎても、やりきれない。
 知恵を絞る試みが地域にあるからだ。長野県南部も、その仲間といえよう。ここは地方自治法の広域連合制度を活用している。
 一県単位で全市町村が名を連ねて広域連合を構成しているのは長野(十連合)、埼玉両県だけ。規約によって消防や介護など行政の一部を補い合い、これという施策は自治体の独自性を存分に発揮できる柔軟性がミソである。
 昨年始まった自然エネルギーの固定価格買い取り制度は、大企業の参入が目立ち、売電利益も電気も地元を“素通り”する。
 南信州広域連合(十四市町村)の中核市、人口十万人余の飯田は「地域環境権」という考えを柱に四月、市再生可能エネルギー条例をつくった。山あいの人口約五百人の過疎地・上村(かみむら)地区で今、谷川など自然の恵みを生かした住民主体の小水力発電所計画が進む。
 利益も電気も地元に還元し、地区に自立してもらう「持続可能な地域モデル」と市は位置づける。条例はその支えなのだ。
 下條村。六千四百人はいた人口が四千人を大きく割った。だが、公共事業のバラマキで景気回復を図る国策には背を向け続けた。
 若者が住みやすい村営格安の住宅を整備、医療費を高校生まで無料にした。未来への投資だ。人口は四千人台に戻り、何より子どもが増えた。
 三分の一が限界集落の泰阜(やすおか)村。「年寄りばかりでも不幸せとは限らん」と、松島貞治村長は言う。“低空飛行の村”は「最期は自宅で迎えたい」という住民の願いを聞き入れた高齢者・在宅福祉に重きを置く村政が、村民の安らぎを支え続ける。
 どれも国の政策や効率性、成長頼みより、住民の自立や安心をすくい取ることを第一にしている。
 へこたれぬ田舎は、まだまだあるはずだ。もっと増えてほしい。

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