フィールドワークと卒業論文

20131201kitafunaji7.jpg ■ゼミの4年生たちは、卒業論文の最後の追い込みにかかっています。すでに草稿を提出できた人もいますが、多くのゼミ生は、まだ執筆途上にあります。そして、最後の最後まで補足調査をしている者もいます。これは、褒めているのではありません。フィールドワークを開始するのが遅かったために、こんなことになってしまっているのです。指導教員の私としては、かなり「怒り&叱りモード」なのですが、毎年、この手の学生の指導を年末最後までしなくてはなりません。そして、月末に自宅に簡易書留の速達で届く草稿を、正月に赤ペンを入れて、1月4日にゼミ生本人に返却するのです。もっと、ゼミ内での締切を早くして、その締切を厳守すればよいのでしょうが、学生たちの「実態」に押し切られてしまっているわけです。

■さきほど、最後の最後まで補足調査をしている者もいる…と書きました。今日は、そのような学生の1人が研究室に相談にやってきました。フィールドワークをしながら、しだいに自分自身の分析の視点が焦点化されてきたようなので、1つの論文を読ませていました。ある学会の年報に掲載されたきちんとした水準のある論文です。その学生は、この論文を読んで、「すごくよく理解できました。いつもだとこの手の文章を読むと3時間以上時間がかかるのですが、今回は、1時間で読むことができました。また、すごく参考になりました…」というのです。

■フィールドワークと論文とのあいだを往復するなかで、次第に、自分の頭のなかがクリアになってきているのです。しかし、残された時間はわずかです。その学生は、こうもいっていました。「もっと、早くからフィールドワークを始めればよかったと思います。今は、パソコンに向かって卒論のことばかりやっていますが、とても楽しいです」。やっとエンジンがかかってきたのです。卒業するために仕方なく、嫌々渋々ではなく、自ら進んで卒論に取り組める境地に到達したわけですね。これはこれで、喜ばしいことですが、すくなくとももう2ヶ月早くこの境地に到達してほしかったと思います。その点が、指導をしていて悔やまれてなりません。

■しかし、とにかく全力を出し切って仕上げてもらうしかありません。おそらく、この学生は「時間があれば、もっとレベルをあげることができたのに、悔しい…」と思うかもしれません。なぜ悔しい気持ちになってしまったのか。卒論のフィールドワークから執筆にいためまでのプロセスを、自分なりに分析して、その分析結果を、教訓として後輩に伝えてほしいと思います。

■トップの写真は、今月の初めに開催したゼミの卒論中間発表会の歳に学生が書いた落書きです。左隅では、私らしき人物が怒っていますね。「本気でやらないと もうやばいよ! ホントに」。こうやって落書きがかけるのは、当時は、まだどこかできちんと反省できてないところがあったのだと思います。まだ、卒論をなめています、この段階では。なかなか指導は難しいものです。

【追記】■龍谷大学社会学部の理念は、「現場主義」です。私は、自分なりにこの「現場主義」を強く意識し、ある意味愚直に、真正面から大学の教育や社会連携事業に取り組んでいます。ゼミでは、どんなテーマでもかまいませんが、実証的なフィールドワークにもとづく事例研究(ケーススタディ)により卒業論文を執筆してもらいたいといっています。そのような卒業論文の指導は手間がかかり、確かに大変なのですが、私のばあい、このような指導をやめてしまうと口先ばかりの「現場主義」になってしまうではないか…。そう思いながら、自分なりの工夫をして指導を行っているのです。

卒業生の樋口くんのこと

20131217higuchi.jpg■龍谷大学社会学部のホームページが、少し前のことになりますがリニューアルされました。 そこには、社会学部4学科の卒業生が登場しています。社会学科の卒業生は、うちのゼミ生だった樋口晃一くんです。4年生の春、早々にハウスメーカーに内定をとり、いったんはそこに就職したのですが、今年の春、米原市役所に転職しました。地方公務員になったのです。私のゼミからは、現在まで112名が卒業していますが(1~8期生)、そのうち公務員になったものは確認できるだけで15名。さらに、卒業後に公務員になったもの(転職したもの)は15名のうちの10名になります。よくわかりませんが、私の主観では、公務員の比率が高いように思います。

■さて、社会学部のホームページに登場している樋口。後輩の現役生の皆さんに、すてきなメッセージを届けておられます。以下、それを引用します。ここに書かれていること、特に、卒業論文にもっとも力を入れて取り組んだということは、本当のことです。頑張って調査を行い、レベルのある卒業論文を書き上げました。

卒論は仲間と一緒に、出来あがりの達成感はいい思い出

樋口 晃一さん
社会学科 卒業
「米原市役所 子育て支援課」在職中

卒論は仲間と一緒に、出来あがりの達成感はいい思い出

―― 龍谷大学在学中、もっとも力を入れていたことを教えてください。

卒業論文に力を入れて取り組みました。『地域住民によるまちづくり』をテーマに、地域で活動されているまちづくり団体を事例に取り上げ、地域住民によるまちづくりが地域コミュニティにどういった変化・影響を与えるのかなどについて考察し、論文にまとめました。
卒業論文はゼミの中で、各ゼミ生が各々のテーマで取り組むため、一人で執筆しなければなりません。当然、実際にまちづくり団体へ話を聞きに行くためにアポイントをとることや、聞き取り調査に行くことも全て一人で取り組まなければならず、初めはうまくいかないことも多く、卒業論文を書けるのか不安になることもありましたが、ゼミの先生やゼミの仲間と相談し合いながら卒業論文を書き上げ、仲間と一緒に提出したときの達成感は忘れません。

フィールドワークは現場が面白い

―― 龍谷大学での授業や実習等でもっとも印象に残っていることは何ですか?

龍谷大学社会学部では、演習や実習を重視したフィールドワークを通した授業が多かったことが印象に残っています。入学してすぐに入門実習があり、実際に現場に足を運び調査をするフィールドワークの基礎を学びました。3年次に履修した社会調査実習では、3泊4日のフィールドワークを行ってグループで報告書にまとめ、現地での報告会もさせてもらいました。私たちのクラスは、鳥取県倉吉市へ調査に行きましたが、実際に現地を訪れ話を聞いてみると、事前調査では見えてこなかったような発見などもあり、フィールドワークの難しさと同時に現地に足を運ぶことの面白さを感じました。

疑問も持つことで社会が見えてくる

―― 大学で学んだことが社会人となって役立ったことは?

社会学は、社会現象が人や集団の相互のつながりの中でどのように生み出されているのかを解く学問であると思います。私は龍谷大学で社会学を学び、物事をいろんな角度や視点から考える力が身についたことが社会人になって役立っていると思っています。入学時、ある授業で「社会学は社会の中にある”常識”を疑ってみることから始まる」というような話をされたことがありました。当たり前だと思っていることに「なぜ?」と疑問を持つことは、その事象について、いつもと角度を変えて見ることや違った視点から考えてみることから生まれると思います。社会学を学ぶことで、そうした力が身についたと思います。
私は大学卒業後、ハウスメーカーに就職し、大阪に住んでいましたが、この4月に転職、地元の市役所(米原市役所)で働いています。卒業論文で『地域住民によるまちづくり』をテーマに研究したことが大きく影響を受けていると思っています。
現在は子育て支援課で子育てを応援する施策に携わり、勉強の日々ですが、龍谷大学で学んだこと、得たことを今後、行政職員として、より良き地域社会実現のために活かしていかたいと思います。

自己を分析し、視野を広く持ち就職活動

―― 就職活動中、役立った龍谷大学の就職支援(キャリアプログラム)は?

業界研究セミナーや学内企業セミナーには、積極的に参加していました。業界や業種を自分の思い込みなどで絞ることなく、できるだけ視野を広く持って実際に話を聞く中で、自分自身がどんなことに興味があるのか、どういったことにやりがいを感じるのかといった自己分析することにも役立ちました。
また、学内企業セミナーには龍谷大学の卒業生で、企業で活躍されている先輩社員や内定者の方が来てくれていることが多いので、説明会だけでは聞けない仕事の話や就職活動のアドバイスなども聞かせてもらえる良い機会になっていました。

受験勉強はモチベーションを保つこと

―― 龍谷大学をめざす受験生に一言!

受験勉強に励んでいるときには、受験までの日々が長く、ときにはつらく感じることもあるかもしれませんが、そんなときは、志望する大学でやりたいことができている自分を頭の中でイメージして、モチベーションを保ちながら受験に臨んでほしいと思います。入学後は、多くの人とのつながりや様々な経験を大切にして、龍谷大学に入学できてよかったと思えるような学生生活を送ってほしいですし、この大学で学べばきっとそう思えるはずです!

エンパワ「パズル」が、ポスターセッションで奨励賞・環びわ湖大学地域交流フェスタ2013

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■社会学部「大津エンパワねっと」5期生のチーム「パズル」も、「環びわ湖大学地域交流フェスタ2013」のポスターセッションで活動奨励賞を受賞しました。頑張りました~。

■「大津エンパワねっと」の「地域エンパワねっとⅠ・Ⅱ」では、必ず報告会を開催し、お世話になった地元の皆さんにご意見やアドバイスをいただいていますが、今回は「学外」での報告になります。そのあたりが、学生たちには、大変新鮮で有意義であったようなのです。学内のなかだけではなく、学外の皆さんにも評価をいただくことは、学生たちには大変刺激的だったようです。「大津エンパワねっと」からは、チーム「パズル」のほかにも、チーム「ワイルド・モンキー」も参加しました。「ワイルド・モンキー」の学生たちは、おしくも活動奨励賞の受賞はなりませんでしたが、今回のポスターセッションに参加できたことに、大変満足していました。

■この2つのチームの学生たちと話しをしたのですが、「もっと、エンパワをやりたい」という気持がどこかにあるようです。「大津エンパワねっと」は、3年生前期で修了するのですが、この活動をもっと続けたいというのです。今回、受賞した「パズル」は、自分たちの活動をひきついでくれた下級生のチームを支援することで、地域とかかわっていきたいと考えているうようです。素晴らしいですね~。

【追記】■「環びわ湖大学地域交流フェスタ2013」や「ポスターセッション」のことが、社会学部のホームページに記事としてアップされました。あわせて、ご覧ください。

最新情報「環びわ湖大学地域交流フェスタ2013」を龍谷大学瀬田キャンパスにて開催

今日の「地域エンパワねっとⅠ」

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■金曜日の1・2限は、社会学部の地域連携型教育プログラムである「大津エンパワねっと」の「地域エンパワねっと」の授業です。社会学部にある4学科(社会学科、コミュニティマネジメント学科、地域福祉学科、臨床福祉学科)の学生たちが、学科の壁をこえて履修しています。そのようなことも、この授業の魅力のひとつなのかなと思います。

■今日は、中央学区(大津市の中心市街地)にある町家キャンパス「龍龍」と、瀬田キャンパスの2ヶ所にわかれて活動をしています。私は瀬田キャンパスの担当になりました。写真の左側は、チーム「BWCO4」です。このチームは、街のあちこちにある「かっこいい大津」(大津市の中心市街地の魅力)に注目しています。各自でスマホやカメラを利用してまち歩きをしながら撮ってきた、いいかえれば採集してきた「かっこいい大津」を検討しています。そうすると、チーム内のメンバーが思っている、それぞれの「かっこいい」の物差しが違っていることや、物差しのユニークさと面白さがみえてきます。なかなか面白い試みです。「かっこいい大津」数珠つなぎ…とか、「かっこいい大津」街の人物バージョンとか…おもしろいアイデアもいろいろ出てきました。

■右側のチームは、チーム「めろん」です。中心市街地に次々に建設されているマンションに入居された新住民の方たちと、地域社会とをつなぐことを目的に活動しています。この日は、中心市街地でお世話になっている(ご指導いただいている)地域住民の方から、メールが届いたようです。その内容について、チームで検討しているところです。地域のみなさんに丁寧にご指導いただけること、本当にありがたいことです。

【追記】さきほどチーム「BWCO4」のメンバーがパソコンルームから戻ってきました。「かっこいい大津」分布マップの試作品ができたようです。

「かっこいい大津」分布図

「大津エンパワねっと」の「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅰ」

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■今日の1限は、「大津エンパワねっと」の「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅰ」でした。受講しているのは1年生。ゲスト講師は、先週に引き続き、大津市歴史博物館・学芸員の木津勝先生でした。木津先生は、大津市の近現代の古写真を博物館で収集保存されています。今日は、「大津ってどんなとこ?古写真でみる地域のあゆみ」というテーマのもと、博物館に収蔵されている写真を使って講義をしていただきました。写真ですが、トップは講義をされている木津先生です。その下。講義の冒頭、まずは私から「大津エンパワねっと」についての説明を行いました。

■本日、配布された資料も以下にアップしておきますので、参考にしていただければと思います。
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■大津。津とは港を意味します。したがって大津とは「大きな港」ということです。江戸時代は、北陸方面からの米などの物資は、丸子船と呼ばれる伝統的木造船で、琵琶湖の北の港から大津まで運ばれていました。江戸時代中頃には1000隻をこえる丸子船が湖上を行き来していたという記録が残っているといいます。白い大きな帆を揚げた船が琵琶湖を行き来している風景、港に陸揚げされた膨大な物資の量。どれだけ大津の街が繁栄していたのか、容易に想像できるはずです。実際、大津は港町としてだけでなく、東海道の宿場町として、そして三井寺等への参拝客が集まる門前町としても繁栄しました。江戸時代には、旅籠が軒を連ね、たくさんの商店がひしめいていました。17世紀末頃には、町数100カ町、18、000人を超える規模に発展していました。このように大津は、江戸時代に大きく繁栄したわけですが、明治時代に入るとしだいにその繁栄は衰退していきます。その原因は鉄道です。

■明治に入って東海道線がすぐに開通したわけではありません。京都と大津のあいだは、1880年に開通しました。ただし、技術的な問題から、線路は現在の場所ではなく、南まわり(伏見区の稲荷を経由して…)のルートでした。大津駅も、現在の場所にはありませんでした。いったん現在の膳所駅、当時の馬場駅までいき、そこからスイッチバックして現在の浜大津にある大津駅に向かいました。大津駅からは、人びとは太湖汽船で長浜まで湖上交通で移動しました。そして、再び長浜から鉄道にのって移動しました。しかし、1889年に東海道線が全線開通します。駅も現在の大津駅の近くに移動します。かつては、いったん大津の街に降りていた人たちは、その必要がなくなり、大津は通過地点になってしまいました。(つづく)

「地域エンパワねっとⅠ」と「啐啄同時」

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■履修学生の皆さん。このあたりが一番しんどい時期かもしれません。活動のテーマを焦点化していくことは、なかなか難しい。自分たちのミーティングだけで、ああでもないこうでもないと時間を消費しているだけでは、活動の展開がありません。また、漫然と地域の皆さんにお話しを伺うだけでも活動の展開は、なかなかありません。勉強にはなりますけれど、「君たちは、いったいエンパワで何をしたいんや?」と逆に地域の皆さんから問われることになります。まち歩きをしたり、地域の皆さんにお話しをうかがいながら、自分たちのなかにぼんやりと浮かび上がってきたテーマを、どのようにしたら地域のなかに隠れているニーズや課題と結び付けていけるのでしょうか。

■仏教の宗派に禅宗があります。その禅宗に「啐啄同時」という言葉があります。「そったくどうじ」と読みます。「啐」とは、鳥の雛が卵からかえろうとすると、雛が内から卵の殻をつつくことを言い、「啄」とは親鳥が雛がかえろうとするときに、外から卵の殻をつつくことをいいます。禅宗では、この鳥の親子の話しを禅にあてはめます。禅において、師匠と修行者との呼吸がぴたりと合うこと、機が熟して弟子が悟りを開こうとしているときのことを「啐啄同時」と呼んでいるのです。先日、1人の学生が、「地域づくりって難しいですね」と言っていました。当初予想していたよりも手こずっているのでしょう。でも、もう少しすると「啐啄同時」のタイミングがやってくると思います。一緒に頑張ってまいりましょう。

大津エンパワねっと「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅰ」

20131203empowernet.jpg■昨日は、龍谷大学社会学部の地域連携型教育プログラム「大津エンパワねっと」の「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅰ」が、社会学部社会学科の学生を対象として「社会調査入門の授業」のなかで実施されました。講師は、大津市歴史博物館学芸員の木津勝先生です(コミュニティマネジメント学科、地域福祉学科・臨床福祉学科の「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅰ」は、すでに終了しています)。

■木津先生は、大津に関わる近現代の古写真を収集・研究されています。今回の講義「大津ってどんなとこ?古写真でみる地域のあゆみ」でも、それらの写真をふんだんに用いて大津の明治期以降の歴史についてご説明くださいました。一般の市民の方にもお聞きいただきたい内容でした。木津先生、ありがとうございました。

■特別講義の様子は、「大津エンパワねっと」の公式facebookページでもごらんいただけます。facebookに登録されていない方にもご覧いただけると思います。ぜひ、以下のURLをクックしてご覧いただければと思います。こちらで写真をご覧ください。

就活と卒論

20131203seta4.jpg脇田ゼミ3年生の皆さんへ

■12月になりました。3年生の就職活動が、いよいよ始まりましたね。私のところには、「合同説明会にいくので、ゼミを欠席させてください」というメールが届きます。「ゴーセツ」というやつですね。どうか、洪水のように押し寄せる情報に振り回されないようにしながら、就職活動に前向きに取り組んでもらいたいと思います。また、洪水のように押し寄せる情報に恐れをなして、殻に閉じこもってしまうのも困ります。落ち着いて。焦ってはいません。キャリアセンターのガイダンスやキャリアカウンセラーの方たちのアドバイスを参考に、丁寧に準備を行って就職活動に取り組んでください。「シューカツの雰囲気」に飲み込まれないように。また、友達の就職活動の進捗状況に、過剰に反応しないようにしてください。人それぞれの就職活動があるわけでから。

■ただし、就職活動だけで大学生活の最後が終ってしまうと思っていたら、それは問題です。必修の卒業論文のことを忘れないでください。就職活動に振り回されて、「卒業論文なんてどうでもよい、適当でかまへんやん…」という気持ちになってしまうと、あとで辛い思いをすることになります。就活と卒論は、車の両輪のようなものです。両輪ですから、どちらも同じようにエネルギーと情熱を注がなければ、卒業というゴールに向かってまっすぐに進むことはできません。

■ゼミでは、「今年の12月中に、卒論の具体的なテーマ、できれば調査地も決めていきましょう」と伝えました。それは、指導教員として、長期的に卒論に取り組んでもらいたいと純粋に思っているからです。少しずつ自分の卒論の研究を成長させていくことが、結果として、一番の「卒論の近道」だと思うからです。しかし、それだけではありません。卒論は、就職活動とも微妙にかかわってきます。就職活動の面接では、しばしば、「卒業論文ではどのようなテーマに取り組んでいますか?」と質問されます。そのさい、卒論の構想だけでも、きちんと説明できることが大切かなと思います。さらに、具体的な自分の課題設定にむかって、計画的に調査・研究を進捗させていることを、きちんと説明できるようにしてください。

■ひょっとしたら、卒業論文を「お手軽」に済ませたいと思っている人がいるかもしれません。できるだけ卒論にかける時間やエネルギーを節約して、要領よく、単位や評価を獲得したいと思っている人がいるかもしれません。コストをかけずに、ベネフィットは得たい、そういう考えの人がいても不思議ではありません。しかし、それは間違っていると思います。あるいは、最初から「卒論の単位さえあれば、内容や質はどうでもよい。ギリギリ低空飛行でもOK」と思っている人(…さすがに、そんな人は私のゼミにはいないと思いますが)、それも間違っていると思います。卒業論文とは、大学で勉学に取り組んできたことの、いわば総決算のようなものではないかと思います。繰り返しになりますが、ちゃんとした水準のある論文を執筆しようと思うと、時間がかかります。しかし、そのような水準のある卒論を時間をかけて書き上げることができたとき、それまでの経験は、あなたに自信を与えることになるはずです。自分自身のためにも、時間をかけて卒論に取り組んでください。

■ぜひ、早めに卒業論文に取り組むようにしてください。一生懸命取り組む人には、私の方も、時間を惜しまず一生懸命に指導します。

卒論中間発表会

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■昨日は、脇田ゼミの「卒論中間発表会」でした。ノロウイルスにやられたという2人をのぞいた4年生全員と、時間の都合をつけることができた3年生が集まりました。3年生は、来年の今頃、自分たちも先輩と同じように卒業論文に取り組むことになるわけです。「心の準備」と「頭の準備」をしてもらい、長期的に自らの研究テーマに取り組み、きちんとした水準のある卒業論文を執筆してほしいと思います。

■「卒論中間発表会」の場所は、ゼミの活動「北船路米づくり研究会」でお世話になっている指導農家の琵琶湖畔にあるお宅です。昨日は、とっても良い天気でした。北船路は、湖西の比良山系と琵琶湖に挟まれた地域です。素晴らしい山と湖の景色が私たちの目を楽しませてくれました。が、しかし。そのような素晴らしい景色はとりあえず横に置いておいて、まずは卒業論文の中間発表会です。

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■昨日の「卒論中間発表会」では、4年生にレジュメを用意してもらい、自分が執筆している卒業論文の「課題設定」、「調査地の概況」、「分析」、「結論」について報告をしてもらいました。安定感があり安心して聞くことのできる発表から、途中で何をしゃべっているのか自分自身でもわからなくなってしまったような発表まで、じつに様々でしたが、とりあえず発表会を終えることができました。問題は、努力がたらず、発表ができなかった人たちです。奮起して取り組まなければ、後日、この「お返し」は利子付きで、自分自身にドーンとやってくることになります。時間は残り少ないのです。まずは、自分自身が努力しなければ指導のしようもありません。もう逃避したり、先送りしたりできる余裕はないはずです。

■私のゼミでは、社会学部の教育理念「現場主義」にもとづき、ゼミ生各自がフィールドワークをおこない、実証的な事例研究に取り組んでもらうことになっています。そして、きちんとした水準の実証的な卒業論文を書き上げ、自信をもって卒業していくことを大切にしています。ですから、卒論の個人指導は、とても丁寧におこないます。私が以前勤務していた大学でお世話になった細谷昂先生(農村社会学者)は、学生たちに「たかが卒論、されど卒論」とよくいっておられました。長い人生のなかで、卒業論文に取り組む期間などほんの短いものでしかありません。しかし、ここでの経験、特にどれだけきちんと卒論と真摯に取り組んだのか、自分で納得のいく卒論を仕上げることができたのか、そのあたりの経験は、卒業後、社会人になってからも「自分自身にとって大切な経験」として、いつまでも記憶されることになります。

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■「卒論中間発表会」のあとは、ゼミ活動「北船路米づくり研究会」の「地酒プロジェクト」。「北船路米づくり研究会」では、学生自らが、生産者である農家(農村)と、消費者(都市)のあいだで架け橋になって、地域社会のなかに、食の安心・安全を大切にする「顔の見える関係」づくりに取り組んでいます。その一環として、今年の9月には、農村と都市の交流イベントである「かかし祭」を開催しました。今年で、第2回になります。第1回の「かかし祭」では、中心市街地の造り酒屋・平井商店(「浅茅生」という銘柄のお酒を生産されています)の奥様と生産組合の農家が出会い、結果として、北船路の棚田で酒米を生産し、その米で新しい地酒を生み出すことになったのです。ゼミの「北船路米づくり研究会」でも、この新しい地酒のプロデュースをお手伝いしようと、研究会内に「地酒プロジェクト」班をつくって学生たちが頑張っています。

■昨日は、4合瓶のラベルに使う「字」を検討するということで、字の下手な学生(そして字の下手な教員も)は下手なりに、上手な学生はその実力を活かして、「清酒 北船路」と1人ずつ筆で書くことになりました。私はグラフィックデザイン的なことはわかりませんが、素敵な「字」が採取できたようです。愉快な書体は「あらばしり」* 用、美しい文字は「純米酒」用。デジカメで撮影し、それをパソコンで加工して使用するのだそうです(ゼミ生に1人、パソコンの技術に優れた者がいます)。ところで下にある写真は、空いた時間で学生たちが書いた落書き。今年1年をふりかえり反省した…落書きのようです。逃亡→復活…これは、卒論のことか…。

■「字」の採取が終わったあとは、お待ちかねの慰労会です。いつもお世話になっている北船路の農家の水菜や白菜を使ったお鍋です。美味しかったな~。やはり、北船路の野菜は品質が違います。柔らかくてなおかつ味が濃い。とっても美味しくいただきました。
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*「あらばしり」(日本酒造組合中央会

荒走り(あらばしり)

醪を圧搾濾過して、清酒と清酒粕に分離する操作をいい。あげふねともいう。最近は自動醪圧搾機が普及しているが、昔は酒袋(さかぶくろ)に醪をつめて、槽(ふね)の中にならべて搾った。その操作は次のようである。
まず、醪を酒袋(5~9リットル入り)につめ、槽(ふね)の中に並べて積む。この間に、最初に出てくる白く濁った清酒を荒走り(あらばしり)という。槽が袋でいっぱいになると、槽の上にカサ枠を乗せて、さらに酒袋を積む。積み終わってから3時間くらいは、自らの重さできれいな酒が自然に出てくる。この間を水槽(みずぶね)という。
積み上げた酒袋の高さが低くなってくると、カサ枠を取り除き、押蓋(おしぶた)と枕木をのせて圧搾を始める。これを押槽(おしぶね)という。
翌日、酒袋を積み替えて(袋直し、槽直し)再び圧搾する(責槽(せめぶね))。責槽から出る酒を責め(せめ)といい、また荒走り後責め(せめ)より前に出る酒を中垂れ(なかだれ)という。

「大津エンパワねっと」全体授業

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■今日の投稿は、龍谷大学社会学部の地域連携型教育プログラム「大津エンパワねっと」について。「大津エンパワねっと」コースのなかにある実習も取り込んだ授業「地域エンパワねっとⅠ」・「地域エンパワねっとⅡ」では、大学に隣接した瀬田東学区と、大津市の中心市街地にあたる中央地区の2カ所で、学生たちが活動しています。「エンパワ」の授業は金曜日の1・2限に開催されますが、地区ごとに集まって集団指導を行う日と、全員が集まって授業を行う日の両方があります。今日は、後者の方。6期生の全員か集まり、全体授業が行われました。トップの写真は、瀬田東学区で地域の防犯をテーマに取り組んでいるチームです。臨床福祉学科の高松智画先生の指導を受けているところです。

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■「地域エンパワねっとⅠ・Ⅱ」は、社会学部の4学科すべての学生が履修できる教育プログラムです。そして、4学科から教員が1人ずつ出てこの授業を担当しています。担当者の代表は、コミュニティマネジメント学科の笠井賢紀先生です。今日も笠井先生の進行で授業は始まりました。現在、学生たちは、地域社会で地域づくりに取組む皆さん、そして地域づくり団体からヒアリングを行うとともに、地域の活動に参加しながら、自分たちのチームのテーマを絞り込んでいこうとしています。学生ならではの「目線」から、この地域の課題や魅力をどのように発見していくのか。どのチームの学生たちも、悩みながら頑張っています。でも、雰囲気はとても楽しそうです。素敵なことですね。

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■今日の授業の前半では、「ワールドカフェ」という方法を用いて授業が実施されました。「ワールドカフェ」とは、どのような方法なのでしょうか。ネット上では、以下のように解説されています

ワールド・カフェとは、“カフェ”にいるようなリラックスした雰囲気のなか、参加者が少人数に分かれたテーブルで自由に対話を行い、ときどき他のテーブルとメンバーをシャッフルしながら話し合いを発展させていくこと。相互理解を深め、集合知を創出していく組織開発の手法です。その考え方や方法論は世界中に普及し、ビジネスや市民活動、まちづくり、教育などさまざまな分野で活用が進められています。

■チームに分かれて、「地域と、地域で、私たちには何かができるのか」ということをテーマに話し合いをします。テーブルの真ん中には、模造紙を広げてあるのですが、そこに話し合いのなかから生まれた意見やアイデアを書き込んでいきます。そのあと、チームでの話し合いを説明する人を1人を残して、他のメンバーは別のチームのテーブルに移動します。そこで、また、「地域と、地域で、私たちには何かができるのか」というテーマについて自由に話しをします。そして、模造紙にも書込みをしていきます。この段階が終ったら、各自、もといた自分のチームのテーブルに戻ります。他のチームの人の意見やアイデアが書き込まれています。こうやって、相互理解を深めていくのです。他のチームの書込みが、思わぬヒントになったり、励ましになったりするのではないかと思います。

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■今日は「ワールドカフェ」だけでなく、「クリッカー」という装置も使用されました。一方的に教員が講義をするのではなく、この装置を使って学生も意見を簡単に述べられるのです。双方型の授業を支援するために開発された装置なのです。学生たちの意見をリアルタイムに集めることのできます。いろいろ便利なものが生まれていますね〜。

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