龍大facebookページのカバー写真
■龍谷大学のfacebookのカバー写真、更新され、新緑の瀬田キャンパスになりました。
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防災訓練
■昨日は、暮らしているマンションの一斉清掃の日でした。幸いなことに天候にも恵まれ、1時間半ほどで清掃を終えることができました。草抜きなどは、日常的に管理人のご夫婦がやってくださっているので、私たち住人の仕事は、主に、マンションに面した道路の側溝の落ち葉や、たまった土砂を掘り出すことでした。
■うちのマンションも、高齢化が進んでいます。おそらくは昨日作業に出てこられた男性のなかでは、私が一番若かったのではないでしょうか。もちろん、小さなお子さんのいらっしゃるご家庭の若いお母さん方は出てこられるのですが、30歳代、40歳代の男性の参加率が極端に少ないといいますか、参加者がゼロだったように思います。各世帯から1名の参加が求められているので、まだ参加されているだけヨシとせねばなりませんが、少し寂しいですね。もっとも、現役で働いているときは、なかなか自治会活動に参加しにくいことは確かです。私のマンションで、自治会活動に積極的に参加されている男性の方も、58歳で早期退職されるまでは一切自治会活動に参加していなかったとおっしゃっていました。きちんと調査したことはありませんが、都市の自治会活動の担い手は、この男性のように、退職する60歳前後から前期高齢者の75歳頃までなのではないかと思います。元気印の前期高齢者が地域コミュニティを支えているように思います。
■ところで、うちのマンションの駐車場には、毎日、介護ヘルパーさんの車がずらりと並びます。これは、介護サービスを必要とされている方が、お住まいだということです。また、自治会での調査からは、1人暮らしの高齢者の方が多いこともわかっています。大きな災害や火事等がおこったときに、ご近所で助け合って避難しなければなりません。そのようなこともあり、昨日は、一斉清掃のあと防災訓練を行いました。うちの自治会には、防災委員会があり、毎年、一斉清掃のあとに、消防署の職員の方たちにも来ていただき防災訓練を行っているのです。まずは火事発生という想定で、避難訓練から始め、そのあとは模擬消化器を使った消化訓練、最後にAED(自動体外式除細動器)を使った救命訓練も行いました。トップの写真は、訓練用の人形です。私も、実際にこの人形を使って心臓マッージと人口呼吸をしてみました。また、AEDの使い方や、周りの人たちへの協力の呼びかけ方についても学習しました。こういうのは勉強になりますね、本当に。今年も訓練に参加してよかったと思います。
■防災訓練のあとは、炊き出し訓練。とはいっても、1年で交代する自治会の役員さんたちをサポートしている実行委員というボランティアの男性たちを中心にした交流会・慰労会のようなものでしょうか。本当は、もっときちんとした訓練になったほうがよいと思いますが、こうやって一緒に汗を流して働き、そのあとに一緒に食事をして親睦を深めることも大切なのだと思います。昨日は、コンクリートブロックで竃をつくり、そこで米を炊いたり、鉄板をおいて料理を作ったり…まあ、実態は飯盒炊爨のようなものですね。来年は、「子ども会の皆さんにカレーを作ったりしててもらったら、もっといいね〜」という意見も出ました。多くの皆さんができるだけ参加できる工夫をしていこうということですね。
■夕方からは、これは本当に実行委員のおじさんたちの交流会(酒盛り)でした。最年少は私55歳。最年長は85歳の男性。多くのみなさんは、マンションが建設された当時からお住まいの方たちばかりです。長年の信頼関係がここにはあります。ただし話題は、年金や健康のこと、高齢化に関連する話しがどうしても多くなりますね。しかし同時に、管理組合の将来のことや、その他、マンションに一緒に暮らす上で大切な話題もたくさん出てきました。こういう「場」から、様々なアイデアが創発的に生まれたり、問題が共有されたりすんですね。おそらく、もう少し暑くなったころ、こんどはマンションの夏祭りの準備の会議で、このような交流会が開催されるのではないかと思います。
うめきた
■龍谷大学瀬田キャンパスに、2105年度、農学部が開設されます。ところで、関西の私立大学農学部といえば近畿大学。龍大農学部と競合する大学があるすとれば、圧倒的に存在感のある近大農学部なのです。
■ところで、です。JR大阪駅北側の再開発地域「うめきた」に、商業施設やオフィスが集まる「グランフロント大阪」がオープンしました。その中核施設といわれている「ナレッジキャピタル」に、近畿大学農学部が「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」をオープンしたのです。この施設はレストランのカテゴリーには含まれていませんが、実質はレストラン・・・という扱いなのです。大学の情報発信の試みですね。すごいですね~。ということで、さっそく視察に行ってきました。ところが・・・長い行列が・・・。そして、本日は終了しました(材料がつきてしまった・・・)という看板がでているではありませんか…。がっかり。残念でしたが、またこんど訪問させていただくことにしましょう。
■学部生の頃、「遊ぶ」といえば梅田でした。その頃は、現在のヨドバシカメラのところに、国鉄の古めかしい社屋がありました。阪神デパートの裏側には、戦後の闇市の雰囲気がまだ少し残っていました。その大阪梅田もスクラップ&ビルドの再開発のなかで、すっかり雰囲気を変えてしまいました。梅田の地下はずいぶん昔から(私が子どもの頃から…)有名でしたが、JR東西線の北新地駅のあたりになると、もうさっぱりわかりません。全国のお土産物がズラリと販売されていた、通称、「アリバイ横町」も、ほとんど閉店してしまいました。なにかコジャレタ雰囲気にどんどん変っていきました。最近は、阪急デパートのリニューアル、そして今回の「うめきた」に誕生した「グランフロント大阪」です。もはや、ついていくことができません・・・。その「グランフロント大阪」の窓から見えるのが、旧・JR梅田駅です。ここは、貨物駅なのでした。この廃墟のような梅田駅は、かつての梅田を感じ取ることができる場所のひとつではないかと思います。2枚目の写真では、列車が走っています。おそらく、特急「くろしお」ではないかと思います(・・・なんだけど、実際のところはどうでしょうか)。
KINGJIMミーティングレコーダー MR360
■同僚の教員、笠井先生のfacebookで知りました。上の動画は、アップされたものです。この「KINGJIMミーティングレコーダー MR360」、すごいですね~。これは使えますね。会議録というよりも、ネット上でのパフォーマンスに使えます。気にいりました!!これを使って、対談や鼎談などアップできますものね。
父の好きだった蔓薔薇
■老いた母の生活介護のために、週1回、母の家に通っています。「子守り」ならぬ「親守り」です。介護保険で毎日ヘルパーさんが来てくださっているので、とりあえず週1回でなんとかなっています。ご近所の皆さんのお心遣いもにも感謝です。とはいえ、身の回りの世話や買い物に加えて、春になると庭に雑草が生い茂るので、たびたび除草作業が必要になります。これは私がしなければなりません。ひどい庭なんです…。ひどい庭なんですが、この季節は、庭の蔓薔薇が満開になります。
■この蔓薔薇、4年前に亡くなった父が好きでした。ただし、父も含めて両親はこの蔓薔薇や、庭の手入れをしていなかったですね~。庭というものは、丁寧に世話をしてなんぼのものですが、うちの両親は世話をしていなかった。無秩序に樹が植わっています。その剪定と消毒は業者さんにお任せしていますが、庭の除草は私がしなくてはいけません。今日は、その除草作業の日でした。以前は、手作業でやっていたのですが、最近は、家庭用の電動草刈機を使っています。ずいぶん楽になりました。とりあえず、なんとかご近所にご迷惑をおかけしない程度には除草をしました。とはいえ、1ヶ月しないうちに、また庭は雑草でいっぱいになります・・・。仕方ありませんね~。
Word for Mac のショートカットキー
■先日、研究室のデスクトップ、iMacが新しくなりました。研究室のiMacはリース物なので、私のばあいは、3年ごとに新しいものにかわるのです。研究部の職員の方が、古いiMacと新しいiMacを直接つないで、そっくりそのまま中身を移動させてくれました。Macはそういうことができるんだそうです。便利ですね〜。新しいiMac、キーボードの感触は以前の方が良かったように思うけれど、本体は、かなり薄くなりました。また、ディスプレイもさらに美しく映るようになっていると思います。薄くなったということでいえば、トップの画像のような感じになります。かなりの薄さですね。
■しかし、困ったことも起きています。とくに、私のような「かな入力」の人間にとっては…。
■私は、Mac用のofficeを使っています。Word、Excel、PowerPointといった類いのアプリケーションです。今回 iMac が新しいものにかわり、Word で困ったことが生じました。それは、ショートカットキーが使えないということです。特に、カット、コピー、ペースト、セーブ、全てを選択、元に戻る…といった「command+X/C/V/S/A/Z」のショートカットキーが使えなくなっているのです。上の画像の左をご覧ください。マウスで「編集」をクリックしてみても、ショートカットキーはみつかりません。もちろん、マウスを使えば作業はできるのですが、むちゃくちゃ時間がかかってしまいます。大変面倒です。作業時間が1.5倍になります…。
■弱りました。facebookで「友達」の皆さんに解決策を尋ねましたが、「こうすれば良いよ!!」という回答はなかなかいただけませんでした。それもそのはずです。これは「かな入力」の人にだけ出てくる現象なのだそうです。詳しくは、こちらのブログ記事をお読みいただければと思います。「ことえりが日本語モードの時にだけ発生する」のだそうです。
■なんといいますか、悲しいです。「かな入力」の人たちって、もはや極めて少数派のため、その存在は、開発者の目には入っていない様です。Macを使い続けようと思っているのにな〜。そういえば、iPadも「かな入力」ができませんね。「私たち」に対して、Apple社はかなり冷たいです…。もし「かな入力」ができれば、すでにiPadを購入しているところなのですが…。
■さて、解決策ですが、上記のブログ記事のリンクにもあるように、「option」キーを押したままWordを起動すると大丈夫なようです。若干副作用があるようですが…。
沖島訪問
■6月8日(土)、「社会学入門演習」の18名の新入生たちと一緒に、琵琶湖の浮かぶ離島、沖島(近江八幡市)を訪問します。沖島には、長い歴史をもつコミュニティがあります。ここの自治会長さんと副会長さんのお2人にお話しを伺う予定になっています。本当は、沖島に宿泊できればよかったのですが、諸般の事情から沖島での宿泊は難しいということがわかりました。仕方がないので、夕方、野洲市のユースホステルに移動して宿泊する予定になっています。翌6月9日(日)は、草津市の烏丸半島にある滋賀県立琵琶湖博物館で一日勉強することになっています。
■「社会学入門演習」では、1年生が必修の授業です。すべてクラスが、学外に現地実習旅行に出かけ、そこでの体験にもとづき報告書を執筆することになっています。以下は、シラバスの講義概要です。ちょっと固い説明になっていますね…。
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この科目では、大学での学修スタイルと、本学科における大学生活にいちはやく慣れる機会を提供することを目的として、クラス単位で1泊2日の現地実習旅行をおこない、現地で見たり聞いたりして得た知識をもとに、実習報告書を作成する。
高校までの「勉強」と、大学での「学修」は大きく異なる。高校までは、基本的に与えられた知識を身につければよかったのに対して、大学での「学修」の最大の特徴は、自分がおもしろい・重要だと思える知識を自分で掴み取るという点にある。そのために大学の授業では、「話し合い(議論)」が非常に重視される。そしてその基本となるのが、「異質な他者」とのコミュニケーション能力である。初めて出会うクラスメイト、教員、実習旅行先で出会う人、自分の書いた報告書を読むことになるであろう人、これらの人々は、家族や友人とは異なり、独りよがりに「気分語」「仲間語」を発するだけではわかってもらえない、自ら進んで関係を持とうとする姿勢や、お互いに理解し合えるための工夫が必要な「異質な他者」である。この実習を、そうした「異質な他者」との出会いを体験し、「話し合い」という様式のコミュニケーションに慣れる場として捉えて欲しい。それが、本学科での4年間の学修生活の基礎を培うはずである。
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■私のクラスでは、4班にわけて、このシラバスにある「話し合い(議論)」を進めてきました。そのなかで、沖島でお聞きする質問項目についても議論してきました。ネット上の情報や動画をみながら、そして以下の新聞記事などを参考にしながら、質問項目を整理してきました。今回の現地実習では、事前に、この質問項目を沖島の自治会の関係者にお渡してする予定にもなっています。
【産経新聞記事】
琵琶湖・沖島の挑戦(上) 「離島」になりたい 財政優遇に未来かける
琵琶湖・沖島の挑戦(下) 日常が「スローライフ」 観光客呼び込みに活路
■ところで、上の画像、Google Mapから取り出したものです。琵琶湖の真ん中あたりです。もう少し細かくいうと、堅田と守山の間を渡る琵琶湖大橋を超えた北湖の南部にあたります。右上のほうに、沖島が確認できるでしょうか。画像の左の方は、湖西になります。私の3・4年生ゼミでおこなっている「北船路米づくり研究会」の活動は、ちょうこの画像では左の真ん中あたりになります。山裾に四角い圃場がひろがっているのが見えるでしょうか。ここが、北船路の棚田になります。下の写真は、北船路の棚田から沖島を撮ったものです。
大津駅前商店街のツバメ
■JR大津駅で、琵琶湖側(北側)の改札口を出て左の方面にいくと、寺町筋と呼ばれる通りがあります。駅前からしばらくは「大津駅前商店街」が続きます。お店の前には、広告も兼ねた照明が、歩道の上に伸びたアーケードに設置れています。この広告照明、とっても人気があります。はい、ツバメに・・・です。
■毎年、春になると、この大津駅前商店街のお店の照明のところにツバメが巣をつくります。雛が孵り、親鳥が餌を運ぶころになると、この商店街では、たくさんの親ツバメが飛び交うようになります。私は、その風景が大好きです。今年もちゃんとツバメがやってくる・・・当たり前のことですが、このような季節の循環を感じ取ることができることに、私は幸せを感じるのです。
■以前、岩手県立大学に勤務していました。住まいのあった盛岡市では、毎年、市内を流れる中津川に鮭が産卵のために遡上してくることを、多くの市民の皆さんが気にしていました。理屈からいえば、サケは当然のことながら遡上してくるわけですが、それでも、当たり前であっても、その遡上するサケを確認するために橋の欄干から川面を覗きこんだものです。そして、今年もやってきたなと、嬉しい気持ちになったのです。
■大津の街の、駅前商店街のツバメ。それは、岩手に暮らしていた時代のサケに通じるものがあります。皆さんも、ぜひ、育っていくツバメの雛たちを見守ってあげてください。
「みつばち保育園」の遠足
■昨日、28日(火)、大津市内にある「みつばち保育園」の園児さんたちが、ゼミ活動の一環として取り組んでいる「北船路米づくり研究会」のフィールド、北船路の棚田に、園の先生方の引率のもと電車(湖西線)でやってこられました。そして、研究会の顧問である指導農家でもある吹野藤代次さんが世話役となって、地元の農業生産法人「福谷の郷」の田んぼで農作業を体験されました。「みつばち保育園」では地産地消に熱心に取り組まれており、園の給食に北船路産の「こしひかり」(環境こだわり米)を使われており、そのような関係もあって、遠足も北船路にやってこられたのです。
■昨日は火曜日で、3年生は授業があり、4年生は就職活動等があったわけですが、なんとか忙しいなか都合をつけられた4年生のYくんが、サポート役で園児さんたちの農業体験を手伝ってくれました。また、この3月に卒業したばかりの卒業生・Sくんも休日であったことから手伝いに来てくれました。Sくん、ありがとうございます!! 卒業しても、こうやって時間をみつけては手伝いにきてくれるOBの存在、とってもありがたいものがあります。
■さて、園児さんたちは、田植えの体験をされたあと、北船路の茶畑にいき茶摘みをされました。このお茶は、保育園にもってかえって、園で飲むお茶っ葉になるのだそうです。すごいですね〜。私は茶摘みはしたことがありません…。羨ましい。最後は、里芋の種芋の植えつけをされました。秋には、園の給食の材料として使われることになるのだと思います。これは、「食育」であるとともに「農育」「環境教育」でもありますね。これからも、「みつばち保育園」と連携しながら、様々な事業を推進していこうと思います。
■私は、昨日は、授業や学生の指導、また会議があり、北船路にはいけませんでしたが、YくんとSくんが写真を添えて報告してくれましたので、それにもとづいてこのエントリーを書いています。YくんとSくん、ありがとうございました。
甲賀の農村で
■過去のエントリーで、総合地球環境学研究所の文理連携(協働)の研究プロジェクトのことをアップしました。先週の25日(土)、このプロジェクトのコアメンバーの皆さんと、野洲川流域の視察と簡単な聞取り調査にでかけました。この日は朝8時半にJR瀬田駅に集合したあと、リーダーの奥田さんが所属する京都大学生態学研究センターの車2台に分乗して、第二名神高速道路を使い野洲川の上流部まで一気にさかのぼり、上流かから琵琶湖の湖岸まで、一日かけて野洲川を少しずつ下っていきました。
■ちょうど昼頃になりますが、甲賀市にある小佐治という集落を訪問しました。小佐治は、137世帯の農村です。JRの最寄りの駅は、草津線の寺庄。滋賀県の内陸部とはいえ、兼業可能な地域です。近くには、工業団地も多数あります(滋賀県は、湖東に工場群が集積する内陸工業県です)。もちろん、専業や兼業の農家以外にも、非農家の皆さんもお住まいです。そして、他の農村地域と同じように、少子高齢化や農業の後継者の問題をかかえています。
■この辺りは、古琵琶湖層が隆起した丘陵地帯です。古琵琶湖というと、聞き慣れない人がいるかもしれませんね。琵琶湖はもともと現在の三重県の伊賀上野で、400万年前に誕生しました。地殻変動によってできた「大山田湖」です。湖とは、おおきな水たまり。地殻変動で大地生じた凸凹に応じて移動します。琵琶湖が、およそ現在の位置に到着したのは、40万年〜100万年前の間といわれています。私たちが訪問した甲賀市は、その琵琶湖の移動の通り道に位置しているのです。現在の甲賀市の位置には、約270年前から「甲賀湖」という深い湖が形成されました。この「甲賀湖」は約20万年間続きました。古い時代の琵琶湖、古琵琶湖のなかでは一番安定していた湖といわれています。
■小佐治は、甲賀市の丘陵地帯にあります。古琵琶湖の泥がたまった湖底の粘土が隆起してできた丘陵地帯です。そのため、関東地方でいうところの「谷津田」がたくさんみられます。トップの写真をご覧ください。まるで、人間や動物の肺の気道と肺胞のようでしょう。古琵琶湖の湖底が隆起してできた丘陵は、細かな粘土からできていますから、雨水を簡単には透しません。あふれた雨水は、低いところに流れていき、大地を削り、写真のような谷を形成していったのです。人間は、この谷筋に流れる雨水を頼りに水田をつくっていきました。もちろん、丘陵の森に降った雨水をためておく溜池もつくました。溜池に溜めた水を谷につくった水田にひいていったのです。大きな溜池は5つですが、小さいものは100はあったとのことです。
■もっとも、1962年に、少し離れたところに灌漑用の大原ダムが建設されたあとは、このダムの水を水路により溜池までひっぱってきました。いったん溜池に貯水して使用しているとのことです。ですから、かつて存在した小さな溜池は現在では、使われず、堤もこわれているのではないかとのことでした。ちなみに、こちらの小佐治のばあいは、丘陵の森は、ほとんど民有林でした。だいたいどの農家も1町歩ほどの山林地をもっているといいます。また、村の共有林もありました。ですから、かつては、冬になるとどの農家も山で山仕事をするのが普通だったといいます。もっとも、高度経済成長期の燃料革命で、これらの山はほとんど利用されなくなりました。
■村人のお話しによれば、古琵琶湖の細かな粘土でできている水田は、米や餅米の生産に大変適しているのだそうです。特に、小佐治の餅はこの村の名物になっており、皇室にも献上されてきたようです。左の写真は、ドブガイの化石と粘土の固まりです。古琵琶湖の時代の化石がこうやって地中から出てくるんですね。ご覧いただけばわかると思いますが、粘土は乾燥すると大変固くなります。この地域では、以前は、稲刈りの終った後でも、冬場に水田を湛水状態にしておいていたとのことでした。来年の春に農作業を始めるとき、鍬などの農具が入りやすいようにするためです。古琵琶湖の贈り物である粘土の土が、この地域の農業に特色を与えているように思います。
■ところで、最近では、この特産品を使った、米粉の麺料理や餅料理を食べさせる農村レストランもオープンしています。いわゆる、コミュニティビジネスです。大変熱心に村づくりに取り組んでおられることがわかります。もちろんハッピーな話しばかりではありません。先ほども少し触れましたが、民有林の管理ができなくなり、山は荒れ、獣害がひどくなり、田んぼにいた生物の賑わいも減ってしまったといいます。また、後継者不足や村の農地の維持についても問題になっています。現在、まだ法人化はしていないものの、「集落営農」にも取り組み始めているそうです。
■ただし、頑張って村づくりに取り組んでおられるだけのことはあります。小佐治では、水田の生きものを復活させる、生きものの賑わいを取り戻す事業にも取り組んでおられます。滋賀県庁の農村振興課の事業に応募されたのです。なぜ、応募されたのか。この辺り、「村の論理」をきちんとわかっていなければなりません。補助金というお金だけみていたのでは、「村の論理」は把握できません。問題は、農業を基盤とした村の永続生や持続性なのです。言い換えれば、「持続可能な農村コミュニティ」を目指してこの地域を再生していくためには、身近な環境保全に努めることが必要だ…と考えておられるのです。小佐治では、環境こだわり農産物の生産にも取り組んでおられます。生きものを育む水田で生産された米や餅米は、それ自体が付加価値を持つとともに、さきほどの農村レストランのようなコミュニティビジネスとともに「村のブランディング化」に寄与することでしょう。先行き不透明な、厳しい現実が存在していることは事実なのですが、小佐治のみなさんは、村づくりに大変意欲的に取り組んでおられます。そのことは、村人が話しをされている時の話しぶりや表情からも窺えました。
■興味深いことに、この村には、外部から4世帯が移り住んでこられました。子どものいる若い家族の転入を村としては大歓迎されています。また、家族の定住をサポートされてもいます。転入した家族の方でも、積極的に村の活動に参加されているようです。そのような新住民のお1人にもお話しをうかがいました。いろいろ農村地域で暮らしたいと思って移り住める家を探していたとき、この村が美しいと思ったのだそうです。そのことが、転入した一番の理由だとのことでした。山は荒れてきているとはいえ、身近な里の自然に配慮をし、村人の手が加わっているのです。村の風景は、ここに暮らす村人の心のあり様をも映し出しているはずです。そのことが、ここの村の風景を、そして村の暮らしを美しく見せたのではないでしょうか。
■今回視察したグループが取り組む研究プロジェクトは、いわゆる文理融合・文理協働の研究プロジェクトということになります。私としては、このプロジェクトの研究をとおして、ここの村づくりのお手伝いができたらと思っています。村としても、私たちの参加を歓迎してくださっています。村人の話しをうかがいながら、私の頭の中には、これからのプロジェクトが取り組むべきことがらのアイデアが、脳みそのなきら次々と湧き出してきました。経験上、こういうイメージは、とても重要なのです。これからが、楽しみです。少し先のエントリーになると思いますが、この小佐治の村づくりの取り組みを、こんどは野洲川の流域管理の問題や、生物多様性、生態系サービスの問題と結びつけながら考えてみたいと思います。