琵琶湖岸の夕景、ヨシ群落の保全

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20210210yoshihara4.jpg■大学の会議は全てオンラインということもあり、自宅で試験の採点や卒論に関連する仕事をしてきました。座ってばかりいると、身体によくないですね。先日は、オヤツに焼き芋を食べてしまいました。ということで腹ごなしに、夕方、自宅から琵琶湖の湖岸まで散歩してみることにしました。天気が良いと、こういう色に空が染まります。対岸には、今から22年前まで勤務していた、滋賀県立琵琶湖博物館のc展示室の建物がよく見えました。

■この日、散歩した場所は、滋賀県が指定するヨシ群落保全区域に指定されています。ただし、そのことを示す看板がボロボロになっており、説明を読むことも判読することもできません。残念ですね。設置しているのは滋賀県庁さんでしょうが、このような細かなことまで気を回すマンパワーも予算もないのかな…、その辺り事情はよく分かりませんが、この看板については、もう一度、整備していただきたいと思います。

■こうやって景色を見ると美しいのですが、足元を見ると、たくさんのプラスチックゴミが漂着していました。このことについては、本当は地域や市民有志でなんとかしていくべきことかなと思っています。多くの皆さんが、少しずつ力を出し合い、このような状況を緩和してける仕組みができればと、改めて思いました。ヨシ群落の保全に関しては、これまで、かつての琵琶湖総合開発等で失われた面積を取り戻すことに力点が置かれてきましたが、一定程度面積を回復した上で今後取り組むことは、どうやって「人が手を加える」ことでヨシ群落の質を保全していくのかということになります。「量」も大切なのですが、「質」が問われる時代に移行しつつあります。
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琵琶湖の全層循環


■今年の冬は、それなりに厳しい寒さが続いています。そのことが良かったのかどうか…、私にはよくわかりませんが、琵琶湖で全層循環が起こりました。琵琶湖の湖水のうち表層については、冬になると冷気に触れて比重が重くなり、湖底へと沈んで湖底の水と混じり合います。冷気で水温が低くなった表層の水は酸素も十分に含んでいるので、湖底に酸素を運ぶことになります。夏の間は、表層の水は温められ、固定の水よりも軽くなります。水温の違う層が琵琶湖には生まれます。イサザなどの湖底の生物への影響が懸念されていましたが、これで少し安心できる状況になりました。良かった、良かった、本当に良かった。

仰木の「どんど焼き」

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■日曜日は午前中、いつものように近くの仰木集落の直売所「わさいな〜仰木」に出かけました。毎週の楽しみです。こういう直売所が近くにあって幸せです。今日は、いつもの駐車場で「どんど焼き」(左義長)も行われていました。仰木には3つの集落があります。以前は、集落ごとに「どんど焼き」を行なっていたそうですが、今では、この直売所の駐車所で一緒に行なっているそうです。ということで、我が家の締め飾りも焼いていただき、有料ですが(200円)餅も焼かせてもらいました。竹の先を割ってそこに餅を挟んだものを購入して、青竹が爆ぜるのにビビりながら、「どんど焼き」の炎でこんがり焼きました。こういうことをしたのは、子どもの時以来だなあ。焼いた餅はその場でいただき、竹は自宅に持ち帰りました。仰木の方の説明では、自宅の裏鬼門の地面に刺しておくと良いとのことでした。さあて、我が家の裏鬼門はどこかな。

■「どんど焼き」の餅を食べながら琵琶湖のことを考えました。これまで私は「とんど焼き」と言ってきました。しかし、仰木では「どんど焼き」です。ということで調べてみると、「とんど」、「とんど焼き」、「どんど」、「どんど焼き」、「どんどん焼き」、「どんと焼き」…全国各地でいろんな呼び名があるようです。

■「どんど焼き」の炎の向こうに、比良山が見えます。先日の雪も、ほとんど残っていないようにみえます。寒さもずいぶん和らぎました。琵琶湖の深呼吸(全層循環)が起こるためには、もっともっと冷えないといけないのでしょうね。素人考えですが…。でも、とっても心配しています。

■以下は、「全層循環」に関する比較的最近の新聞記事です。
「琵琶湖北湖で貧酸素状態が深刻化 上下層の水が混ざる「全層循環」未発生が原因か」(2020年12月26日 毎日新聞)

「滋賀データ活用コミュニティ」のキックオフイベント

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■昨日の午後は、オンラインによる「滋賀データ活用コミュニティ」のキックオフイベントに参加しました。技術的なことはよくわからないのすが、NPO法人「琵琶故知新」の理事長としてお誘いいただき、参加することにしました。時間をいただいて、短いスピーチもさせていただきました。

■昨日のポイントは、琵琶湖環境問題の可視化・分析という点にありました。このイベントを開催した運営側には、「琵琶故知新」の理事の皆さんが入っておられます。「『琵琶故知新』の活動とあわせて、多くの方に琵琶湖の環境問題に興味を持ってもらいたい」という思いもあるようです。また、Tableauというオンライン上の分析プラットフォームの紹介もありました。このような「道具」を使って、どのようにして「琵琶湖の環境問題解決」につなげていけるのかという問題提起なのだと思います。

■ただ、サブタイトルに「琵琶湖の環境問題解決に、市民活動×テクノロジーで挑む」とあるわけですが、その中身が問われることになるでしょう。そういう意味で、「市民活動×テクノロジー」の可能性をこれから探っていくためのキックオフイベントなのだと思います。私個人は、もう少しこの Tableauを使った分析の事例を知りたいと思いました。企業が経営の状況を分析するためには有効なツールのようですが、琵琶湖の環境問題のような公共的課題の分析、しかも環境ガバナンスを担保した上で、このようなツールはどのように使いこなせるのでしょうか。その辺りが、私程度の理解ではよくわかりませんでした。もっと様々な事例があると、イメージも湧きやすいのですが…。現実は、まずは技術が先行していて、むしろそのポテンシャルを探るための事例が欲しいということなのかな…とも思いました。また、関係者にいろいろ聞いてみようと思います。

■Tableauの公式サイトにある紹介ビデオを見ると、ちょっと私が考えている方向性とは違う技術だなあと思いました。技術開発の前提になっていること、もう少し具体的に言えば、技術開発の前提のなかにある「人間観」や「社会観」が異なっているのだと思います。「琵琶湖の環境問題解決」に向けて…ということを、自分の問題関心に基づいて言い換えると、多様なステークホルダーが参加・参画するガバナンスの中で、コミュニケーションを促進するためのツールとして、どこまでカスタマイズできるのかなということになります。

■「琵琶故知新」でこれから運営していく「びわぽいんと」の元になったツールも、消費者と街中の商店をつなぐためのツールとして開発されましたが、そのようなツールを、琵琶湖の環境問題に取り組む環境保全団体をつなぎ、そこから連帯を生み出すためのツールにカスタマイズすることができました。まだ「絵に描いた餅」状態ではありますが、展望が見えてきました。このTableauについてもそのような展望が見えてきたらいいなと思います。

Tableau紹介ビデオ

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■自宅の玄関前に、睡蓮鉢を置いてあります。鉢には、スイレン等の水生植物が植えてあり、ヒメダカも飼っています。そのヒメダカ、今は底の方で冬眠中⁈のはずです。水草に隠れてじっとしています。今朝はこの鉢の水面が凍りました。よほど寒かったのか、結構な暑さの氷ができていました。ちょっと、びっくりしました。

■この程度の寒さだと、琵琶湖にはほとんど影響しないのかな。それともするのかな。そのあたり、よくわかりません。2年連続で琵琶湖の全層循環が起こっていないのですが、今年はどうなるでしょう。この寒さが続く中で、表層の酸素を含んだ湖水が冷やされて重くなり、琵琶湖の北湖の底に沈んでいくことで、湖底に酸素が届く…そうなったらいいのですがね。

初詣

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■私は、大津市の中心市街地からすれば郊外にあたる地域にある住宅地の住んでいます。農村地域にある丘陵地帯の里山を開発して造成された、いわゆる新興住宅地ですね。このような新しい住宅地には、通常、氏神さんは祀られていません。もともと氏神が祀られていた場所の周囲が住宅開発された…という例はあるかもしれませんが、通常は祀られていることはないと思います。従って、家から歩いていける範囲にある神社となると、隣接する農村地域の氏神さんということになります。今の場所に暮らして5年になりますが、毎年、家から歩いていける神社に初詣しています。今年も初詣は正月の三ヶ日の内にと思っていましたが、諸々の事情で今日になってしまいました。

■私は、あまり「気」の類を感じることがありません。とても鈍感だと思います。こんなことを書くと、科学を仕事にされている同僚や友人の皆さんからは訝しく思われるかもしれませんが、こちらの神社では、その様な私でも何か清々しい気持ちになるのです。鼻を通して素敵な感覚が身体の中にスッと入ってくるような気がするのです。気のせい?そうです。「気」のせいです。振り返ると琵琶湖が見えます。南湖の対岸には、ずいぶん以前に勤務していた滋賀県立琵琶湖博物館が茅の輪のような輪っかを通して見ることができました。全国の神社で「茅の輪くぐり」が行われています。神社境内で茅で作れた大きな輪をくぐることで、無病息災や厄除け、家内安全を祈願する行事のことのようです。でも、この茅の輪くぐりを行うのは6月末です。だからこれは、結界なのではないかと思います。邪悪なものの侵入を防ぐために設けられるものです。滋賀県では、勧請吊が有名です。あれも、結界ですね、たぶん。これはなんと呼んでいるのでしょうね。地元の関係者に聞いてみないとわかりません。

■それはともかく、初詣では、氏神様に、まずは自分や家族の健康を支えてくださるようにと祈願しました。昨年は、背中・肩・首の凝りから始まって、よく緊張性の頭痛がおこりました。さらに具合が悪くなると耳鳴りと難聴が、最悪の場合は目眩がすることになりました。姿勢が悪い、運動不足、仕事のストレス等、原因はいろいろ考えられますが、今年は、まずは運動不足をなんとかしなくては…と思っています。もうひとつは、次の仕事を見守っていただくことを祈願しました。昨年は、年末ぎりぎりになりましたが、研究プロジェクトの成果を『流域ガバナンス 地域の「しあわせ」と流域の「健全性」』(京都大学学術出版会)にまとめることができました。これからは、年齢も年齢なので、大きな研究プロジェクトは若い方達にお願いをして、個人の仕事に集中しようと思います。次の書籍は『石けん運動の時代-環境運動の歴史社会学』というふうに、タイトルも一応、決まてあります。この本をまとめる仕事をなんとかスタートさせて軌道に乗せることができればと思います。氏神様には、背中をそっと押していただければと思います。

今年最後の「わさいな〜仰木」

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20201228wasainaohgi3.jpg■週一回、仰木(大津市)の直売所「わさいな〜仰木」に新鮮な野菜を買い求めに通っています。自宅から歩いて30分くらいでしょうか。歩いて行けないわけではありませんが、帰りは野菜を持って帰らねばならないので、車で出かけることになります。昨日は、オープンの時刻に到着しました。いつもだと、オープン前から行列ができているのですが、今日はすんなり中に入ることができました。

■昨日は、無農薬のハクサイ、ダイコン、キントキニンジン、レンコン、サトイモ、サツマイモ、トウガラシ、卵、カボチャプリン、オハギ。野菜に加えて、甘いものも買ってしまいました…。私、甘辛両党ですかね。野菜やスイーツの他にも、この直売所では、パンやお弁当やお寿司も販売されています。ところで、我が家で購入したレンコンは、尾崎考さんが栽培されたものです。尾崎さんは、大阪から仰木の集落に移住して就農されている方です。我が家は尾崎さんが生産された米を大切に味わって楽しんでいます。他にも里芋なども購入してきました。今回は、レンコンです。使われなくなった棚田を、レンコン畑にして栽培されているようです。昨日、直売所におられた方のお話では、よくあるレンコン畑とは違って腰までつかるような深い棚田ではなく、水田を利用しているので、農作業がなかなか大変なようです。正月のお節料理に使うのでまだいただいていませんが、尾崎さんがネットで発信している情報によれば、尾崎さんの自信作のようです。楽しみです。ひとつ前の投稿では、「街の専門店は、豊かな気持ちで暮らすためのインフラだと思います。大切にしないといけませんね」と書きました。同じような意味で、近くの農村は、豊かな気持ちで暮らすためのインフラなのだと思います。大津市は、生産者と消費者が隣接して暮らしている地域が多いのに、農産物を通した交流がどこでもあるわけではありません。私の場合は、この直売所「わさいな〜仰木」のような生産者と消費者をつなぐ仕組みがあるおかけで、食卓が豊かになります。幸せですね。

■「わさいな〜仰木」からは、比良山系の山々がよく見えます。昨日、山頂のあたりは白くなっていました。今年最後の「わさいな〜仰木」を楽しみました。
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地域の美味しいもの

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■1枚目。昆虫写真家・今森光彦さんの写真でよく知られる、大津市仰木の棚田。我が家では、その仰木の棚田で農家の尾崎考さんが生産された、無農薬無化学肥料のコシヒカリ玄米を購入しています。今日は、その尾崎さんのコシヒカリ玄米を精米し、同じく仰木の棚田で、いつも我が家の庭の世話をしてくださる「庭師だいすけ」さんが生産された「彩米」を少し加えて炊いてみました。自然農栽培の古代米(赤米、緑米、黒米、餅米)。自然農栽培なので、農薬不使用、無施肥、不耕起、稲架掛なんだそうです。尾崎さんとだいすけさんのコラボによるご飯、美味しくいただきました。幸せだ〜。

■2枚目。仰木の直売所「わさいな〜仰木」でほぼ毎週、新鮮で美味しく安い野菜を購入しています。ご紹介するのは、その直売所で購入した下仁田ネギです。丸焼きにして、中のトロトロになった部分にオリーブオイルと岩塩振りかけていただきました。非常に美味しい〜です。自分が住む場所で穫れた新鮮で美味しい農産物をいただけること、とても幸せなことだと思います。「地産地消」の幸せですね。3枚目。滋賀県高島市の今津町に行く用事がありました。帰りに富有柿を売っていたので購入することにしました。これで500円です。安いですよね。実は、柿は高島市今津町深清水の特産品なんです。

■自分や自分の家族は、生きていくために必要な「食」をどのような社会的な仕組みを通して確保しているのか。普段、食べている食材は、どこで生産されて、どういう経路で自分のところにやってきていのか。そのことをあまり考えることはありませんね。近くのスーパーマーケットに行けば、だいたい欲しいものは手に入るからです。野菜についているラベルには、どこの産地かは書いてありますが、それ以上のことは考えません。そのようなこともあり、最近は、できるだけ近い距離の場所、自分が暮らしている地域社会の中で、できれば「顔が見える関係」の中で、自分に必要な食材が確保できたらなあと考えるようになりました。私の場合ですが、いろいろ情報を探索するうちに(たいした手前ではありませんが)、たまたま近くにそのような生産者がおられることに気がついたのでした。自分の近くにいる生産者と良い関係を持つこと、これって、大切なことなんじゃないかと思っています。

仰木の直売所「わさいな〜仰木」

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■仰木の直売所「わさいな〜仰木」。美味しくて、安くて(値段はキャプションで)、しかも「近い」。この近いという点が「地産地消」的にはとても大切です。中山間地域、棚田の農村である仰木の高齢者の皆さんが、自家消費用の野菜+αを生産されているわけですが、そのα部分を直売所に出荷されています。生きがい+お小遣い稼ぎ…ですかね。私たち消費者にとっては、安心+安全な食べ物を自宅の近くで入手できるというわけです。

■まあ、そのような話を直売所のお世話をされている村の方といろいろ話をするのも楽しいわけです。この日買ったのは、以下の通りです。ホウレンソウ110円、キクナ100円、カブ120円、白菜170円、里芋180円、柚子150円、下仁田ネギ200円、ネギ100円、卵310円、ミカンのケーキ180円、漬物140円、リース700円。食べ物で一番高いのは卵だが、すべて200円まで。リースは、素朴なものですが、これは室内に飾ることにしました。玄関のドアには、別のリースを飾っています。

■そう、食べ物以外にも、リースなんぞを売っておられるのです。「リースを作るための材料も売って欲しいな〜、売れるんじゃないのかな…」みたいな話や、「自分の畑に収穫に行くのが大変なおばあちゃんの代わりに、私がバイトしますよ。バイト代は現物支給でいいです」みたいな話をお世話をされている村の方とお話ししました。仰木には3つの集落があります。こり直売所、集落を超えて、自分たちの資金で運営されているようです。法人格はなく、任意団体とのことでした。ついつい、聞き取り調査のようなことを初めてしまうのですが、この直売所に出荷する人たちが固定化しているという話もお聞きする腰とができました。こういう活性化の取り組みに関心がある人と、そうでない人とに分かれているということのようです。また詳しく、お話をお聞きしてみたいと思います。

『流域ガバナンス 地域の「しあわせ」と流域の「健全性」』(京都大学学術出版会)

20201210watarshedgovernance.jpg■ずっと編集に取り組んできた例の本、出版されるのは月末だそうです。これで、気持ちがスッキリしました。次の仕事に頭と気持ちを切り替えることができます。

■この本は、総合地球環境学研究所(大学共同利用機関法人人間文化機構)の文理融合型プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態システムの健全性」の成果をまとめたものです。プロジェクトに参加した人たちが各自の成果を学術論文にまとめ、その論文をもとに原稿を執筆した…わけですが、そのような論文を束ねただけの本ではありません。全体を貫き通す研究プロジェクトの考え方を強く意識して編集しています。

■ですから、通常の論文集ではありません。文理融合を志向する上での困難、地域と連携していく超学際的研究を目指す上での困難、そのような困難にも愚直に取り組んだことがわかるように工夫しています。また、プロジェクトの進捗の際に何があったのかが垣間見えるような工夫もしています。個々には、素晴らしい成果が出ているわけですが、全体としての評価については、いろいろご意見をいただかねばなりません。私自身は、「どうだすごいだろ〜」と胸を張るようなつもりでこの本を編集していません(そのような本は、世の中にたくさんありますけど、少なくとも私は違います)。正直にプロジェクトのことを書いています。この本が、個別のディシプリンの壁を越えて、環境科学の新たな地平を切り開いていこうとする方たち、特に若い研究者の方たちや、地域社会で環境問題に実践的に取り組む方達にぜひ読んでいただきたいと思って編集しました。そのような願いも、本書とともに読者に届けば幸いです。

■以下は、目次です。

はじめに

序 地球環境の中の流域問題と流域ガバナンスのアポリア
 序-1 流域への注目と2つの研究戦略
  (1)教育映画 “Powers of Ten”
  (2)空間スケール
  (3)水平志向の研究戦略
  (4)垂直志向の研究戦略
  (5)先行するプロジェクトについて
 序-2 学際研究・文理融合研究から超学際的研究へ
  はじめに
  (1)文理融合による2つの先行プロジェクト(1997-2006年度)
  (2)超学際的アプローチによる流域ガバナンス研究の展開(2014-2019年度)

第1章 流域ガバナンス研究の考え方
 第1章解説
 1-1 文理融合型研究プロジェクトの「残された課題」
  (1)相似的関係にある2つのアポリア
  (2)研究プロジェクト「地球環境情報収集の方法の確立」
  (3)研究プロジェクト「琵琶湖―淀川水系における流域管理モデルの構築」
  (4)残された課題
 1-2 流域における生物多様性と栄養循環
  (1)なぜ、生物多様性は必要か?
  (2)生物多様性とは何か?
  (3)流域の生物群集の固有性と階層性
  (4)生物多様性の恩恵
  (5)生物多様性と栄養循環
 1-3 流域における地域の「しあわせ」と生物多様性
  (1)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
  (2)経済的利益の向こうに見え隠れすること
  (3)農家にとっての「意味」
  (4)集落の「しあわせ」
 1-4 「4つの歯車」仮説 垂直志向の研究戦略の展開
  (1)「鳥の目」と「欠如モデル」
  (2)経済的手法と人口減少社会
  (3)「ブリコラージュ」と超学際
  (4)「4つの歯車」仮説
  (5)協働の本質
 1-5 2つの流域を比較することの意味
  (1)シラン・サンタローサ流域
  (2)流域を比較することの意味
  (3)「虫の目」による修正
  (4)本書の構成

◉コラム1-1 湖沼をめぐる循環とガバナンス 2つの視点はなぜ重要か?
◉コラム1-2 環境トレーサビリティと流域の環境

第2章 野洲川流域における超学際的研究の展開
 第2章解説
 2-1 琵琶湖と野洲川流域――インフラ型流域社会の特徴
  (1)琵琶湖の固有性と多様性
  (2)野洲川流域の風土と文化
  (3)変貌する琵琶湖と流域管理
  (4)インフラ型流域社会
  (5)流域の新たな課題
  (6)流域管理から流域ガバナンスへ
 2-2 上流の森を保全する多様な主体の「緩やかなつながり」
  (1)大原の概要
  (2)森林保全を担う主体の多様化
  (3)上流の森林地域でのフィールドワーク
 2-3 圃場整備と少子高齢化――「地域の環境ものさし」によるアクションリサーチ
  (1)小佐治地区の地理的特徴
  (2)圃場整備と生態系基盤の変容
  (3)小佐治地区の環境保全活動
  (4)アクションリサーチと「地域の環境ものさし」
  (5)「地域の環境ものさし」が地域にもたらしたもの
 2-4 魚と人と水田――「魚のゆりかご水田」
  (1)須原地区の地理的特徴
  (2)琵琶湖に生息する魚
  (3)琵琶湖総合開発による人や魚の変化
  (4)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
  (5)「魚のゆりかご水田」5つの恵み
  (6)経験知と科学知
  (7)「魚のゆりかご水田」プロジェクトの課題
  (8)経験知と科学知で人と人、人と自然をつなぐ
 2-5 在来魚がにぎわう内湖の再生に向けて
  (1)内湖と人の関わり
  (2)志那の内湖
  (3)内湖を残す
  (4)内湖の保全・利用をめぐる関係性と生きものへの配慮
  (5)次世代に残す魅力あるまちづくりに向けて
 2-6 南湖の水草問題をめぐる重層的なアプローチ
  (1)水草問題の経緯と現状、滋賀県の対策
  (2)水草が植物成長に及ぼす効果
  (3)水草利用と環境保全
  (4)水草問題の多面性
  (5)水草問題から新しい環境自治へ

◉コラム2-1 水田における栄養循環調査――田越し灌漑と冬季湛水は水質保全に貢献するか?
◉コラム2-2 「鮒の母田回帰」を確かめる――ストロンチウム安定同位体比による分析

第3章 流域の対話を促進するために
 第3章解説
 3-1 流域の栄養循環と生物多様性との関係
  (1)「鳥の目」から見た栄養循環の特性と流域ガバナンス
  (2)野洲川流域の栄養物質の動態と人間活動
  (3)安定同位体を用いたリン酸の発生源解析
  (4)懸濁態リンの流出と発生源
  (5)野洲川流域の栄養循環と生物多様性の関係
  (6)川の中の栄養物質の動き――川の水質浄化作用
  (7)生物多様性と栄養循環のかかわり
 3-2 信頼関係がつむぐ主観的幸福感――野洲川流域アンケート調査に対するマルチレベル分析
  (1)主観的幸福感に関するこれまでの研究成果
  (2)野洲川流域アンケート調査――「幸福な個人」と「幸福な地域」
  (3)信頼の二面性――「きずな」と「しがらみ」
  (4)「しがらみ」を緩和する一般的信頼
  (5)流域全体の「しあわせ」の醸成に向けて
 3-3 流域の栄養循環と地域のしあわせを生物多様性でつなぐ
  はじめに
  (1)「4つの歯車」仮説
  (2)「4つの歯車」仮説の実態:野洲川流域を対象として
  (3)超学際的研究におけるツールとしての意義

◉コラム3-1 リンはどこからやってくるのか? リン酸酸素安定同位体比による分析
◉コラム3-2 流域からの地下水経由による琵琶湖へのリン供給
◉コラム3-3 産業連関分析からひもとく経済活動が引き起こすリンの流れ

第4章 シラン・サンタローサ流域における超学際的研究の展開
 第4章解説
 4-1 ラグナ湖流域における人口の急速な増加と開発――流域管理の課題
  (1)フィリピン開発の歴史と課題
  (2)シラン・サンタローサ流域における流域管理の課題
 4-2 シラン・サンタローサ流域におけるコミュニティが抱える課題――カルメン村を事例として
  (1)カルメン村の概要
  (2)周辺開発によるカルメン村の変容
  (3)開発影響下にあるカルメン村の将来
  (4)マリンディッグの泉の保全に関するアクションリサーチ
 4-3 シラン・サンタローサ流域における栄養負荷、栄養循環と生物多様性の現状
  (1)流域の土地利用と河川の栄養バランスの不均衡の関係
  (2)栄養螺旋長の計測による河川の栄養代謝機能の評価
  (3)栄養負荷と大型底生無脊椎動物の多様性の関係
  (4)シラン・サンタローサ流域における栄養循環と生物多様性、今後の展望
 4-4 サンタローサ流域における共通の関心(Boundary Object)――地下水問題
  (1)歴史的に豊富な地下水
  (2)地下水に関する問題と懸念
  (3)シラン・サンタローサ流域の地下水の窒素汚染の現状
  (4)バウンダリーオブジェクトとしての地下水
  (5)ワークショップによる調査活動のまとめ
 4-5 サンタローサ流域委員会の発展と地域の福祉
  (1)サンタローサ流域における流域管理に向けた協力・協働の歴史
  (2)サンタローサ流域委員会(SWMC)の設立(2017年)
  (3)サンタローサ流域委員会(SWMC)の制度分析
  (4)サンタローサ流域における参加型ステークホルダー分析
  (5)協力関係の強化にむけて――サンタローサ流域フォーラムの開催
  (6)サンタローサ流域の流域ガバナンスの今後

第5章 流域ガバナンス研究の超学際的発展にむけて
 5-1 垂直志向の研究戦略から明らかになったこと
  (1)第三のアプローチ
  (2)野洲川流域とシラン・サンタローサ流域の結果の差異は何によるのか?
  (3)未来の専門家の姿
 5-2 多様な流域のモザイクとしての地球
  (1)多様な流域のモザイクとしての地球――ユニバーサル型の地球環境問題の視点から
  (2)地球環境研究の文脈の中での私たちのプロジェクト
  (3)「ジャーナル共同体」からの越境

謝辞
索引
執筆者一覧

https://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=5156

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