シベリウスの5番・第1楽章のティンパニー
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◾️これは、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団が演奏するシベリウス作曲「交響曲第5番」第1楽章の中の、ティンパニーの超絶技巧の動画です。大学時代に所属していた学生オーケストラの後輩が教えてくれました。動画の上に譜面が出てきます。
ドュメンタリー映画「びわ湖の深呼吸-岡本巌先生とともに-」
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◾️昨日、総合地球環境学研究所で、参加している研究プロジェクトのコアメンバー会議がありました。会議終了後、研究員の池谷透さんが、最近入手されたというDVDを貸してくださいました。ドュメンタリー映画「びわ湖の深呼吸-岡本巌先生とともに-」です。このDVDを紹介した滋賀大学のページからのこのDVDの概要を転載させていただきます。
本学名誉教授の岡本 巌先生(87)の長年にわたるびわ湖研究や環境保全への取り組みをまとめたドキュメンタリー映画「びわ湖の深呼吸—岡本巌先生とともに—」(企画・制作:岡本先生映像記録の会)が完成しました。
岡本先生は、30年間に及ぶびわ湖調査研究により、びわ湖の湖水の交流、水温の変動、河川水の分散、滋賀の気象特性などを次々に解明されました。特に、びわ湖の溶存酸素の挙動についての新しい知見は記憶に新しいところです。いまでは広く使われるようになった「びわ湖の深呼吸」という用語を創作されたのは岡本先生です。緻密で精力的な調査研究を基盤として、先生はびわ湖の環境保全についても熱意を注がれ、行政や市民への啓発活動を積極的に推進されるとともに数多くの貴重な提言をなされました。
この映画は、岡本先生の半世紀に及ぶご研究を振り返るとともに、本学におけるびわ湖研究の重要さを改めて教えてくれるものだと思います。多くの方がこの作品をご覧になり、びわ湖へのご関心を深めていただきたいと願っています。
(https://www.shiga-u.ac.jp/2011/06/13/1452/)
Gabriel’s Oboe
◾️1986年にイギリスで製作された映画『The Mission』の中で演奏された曲『Gabriel’s Oboe(ガブリエルのオーボエ)』です。いろいろ聞いてみましたが、この動画が一番気に入りました。映画はまだ観ていないけど、ストーリーを知って観たいと思いました(ストーリーは、こちらで知ることができます)。この『Gabriel’s Oboe』を作曲したのは、イタリアの作曲家エンニオ・モリコーネです。私が知る限り映画『Nuovo cinema Paradiso(ニュー・シネマ・パラダイス )』の「愛のテーマ」も有名なんですが、そのほかにも、ものすごくたくさんの映画音楽を作曲しているんですね。
◾️トップの動画以外にも、気になった演奏を貼り付けておきます。2番目の動画は、サキソフォンの四重奏。最後は、アン・アキコ・マイヤースの演奏です。心に染みいってきます。私は彼女の演奏が好きです。さて、この『Gabriel’s Oboe』、人によっては「こんなお涙頂戴の甘ったるい曲のどこがいいのか…」と思われるでしょうね。どうも、今はそういう曲を心が求めているようです。
「第42回全日本アンサンブルコンテスト」金賞

◾️本日、札幌コンサートホールKitaraで開催された「第42回全日本アンサンブルコンテスト」で、関西代表として出場した龍谷大学吹奏楽部の「クラリネット4重奏」が金賞を受賞されました。おめでとうございます。
吹奏楽の魅力
◾️一昨日の晩、YouTubeにアップされている動画で、吹奏楽の演奏をあれこれ聞いてみました。もちろん、我が龍谷大学吹奏楽部の演奏を含めて、です。いろんな吹奏楽団の演奏を聞いて、だんだん耳が慣れてくると、私のようなものでもそれぞれの演奏の実力の差が多少はわかるようになってきました。私は、子どもの頃から弦楽器を習わされ(けして親しんできた…わけではありません、親の強制)、大学時代は学生オーケストラに所属してバイオリンを弾いていました。そのようなこともあり、いわゆるクラシックというジャンルの曲を聴くことが多く、これまで吹奏楽の演奏や曲を自ら進んで聴こうとすることは、ほとんどありませんでした。
◾️一昨日の晩は、クラシックの曲を吹奏楽用に編曲した演奏も聴きました。クラシックの中でも、ロマン派後期よりも前の曲は、特にモーッアルトやベートーベンのような古典派の曲は吹奏楽ではなかなか難しいと思います。向いていません。オーケストラの、例えば微弱な弦楽器の音から受ける感覚を吹奏楽の演奏では感じにくいと思います。ブラームスの「大学祝典序曲」を聴きましたが、曲の最後に近づいたあたり、大音量の中、1stバイオリンが非常に高い音域で演奏する部分があるのですが、そこではこの1stバイオリンの音楽的効果のようなものを感じます。そのようなことも、吹奏楽には難しいと感じました。もちろん、編曲の巧みさの問題もありますが…。そのあたりは、私ごときではよくわかりません。
◾️その一方で、ロマン派後期から現代に近づいてくると、ホルスト、ヴォーンウイリアムス、ショスタコーヴィッチ、ストラヴィンスキー…、クラシックから吹奏楽に編曲してももぴったりの曲がたくさんあります。このように、ついついこれまでの習慣からオーケストラでの音楽を前提に聴こうとしてしまうのですが、その前提を外して自由になると、吹奏楽のために作曲された素敵な曲がたくさんあることに気がつきます。私が知らないだけなのです。ということで、昨晩はいろいろ聴いてみました。吹奏楽の音の魅力。自分では言葉がみつからなかったのですが、弦楽器の無いすべて管楽器による音(コントラバスやハープは除きますが)、管楽器だけによる独特の音の響き、それも大きな音量での合奏による音の響き。それをオルガンサウンドというらしいですね。その魅力も、吹奏楽の演奏を繰り返し聴いていると、次第にわかるようになってきました(わかるように思っているだけかもしれませんが)。あとは、吹奏楽の魅力は、様々なジャンルの音楽を演奏すること、聴衆も一緒にそこに参加するように楽しむこと。そのようなことも吹奏楽の魅力なのだと思います。
◾️トップの動画、龍谷大学吹奏楽部の演奏です。映画「スターウォーズ」のテーマ曲です(2015年、第42回定期演奏会、大阪特別公演)。
【追記1】
◾️音楽とは全く関係ないことなのですが…。「スターウォーズ」の演奏の動画て、ハープの方が演奏開始後20秒前後、不思議な手の動作をされます。これはどういうことなんだろう。手汗を拭っているのかな?大変細かくて、どうでも良いことなのですが。気になってしまいました…。関係者の皆さん、すみません。失礼しました。
【追記2】
◾️日本の吹奏楽の世界で気になっていることがあります。全国の中学と高校に吹奏楽部があります。地域ごとにコンクールがあり、それが全国大会までつながっています。そのようなコンクールを束ねているのは、都道府県と全国の吹奏楽連盟です。ガッチリ組織化・制度化された世界があり、日本の吹奏楽の世界を支えています。大変裾野が広いと思います。その裾野の広さで楽器を愛好する方達がたくさん生まれていることになります。さらにもうひとつに気なること。大学の吹奏楽部は減少傾向にあり、中心は高校にあるという話も小耳に挟みました。正確な表現ではないかもしれないけれど。ここには、ひょっとすると最近の学生気質の変化があるのかもしれません。高校までの吹奏楽部で完全燃焼して、大学ではもうやるエネルギーが残っていないのでしょうか。例えば、高校までスポーツにずっと取り組んできたけれど、大学ではもうやりたくない…そのような話を聞くことがあります。それと構造的には似ているのかな、と思ったりもします。
◾️facebookにこのブログの投稿とほぼ同じ内容を投稿したところ、学生オーケストラ時代の後輩のみなさん、かつてのゼミの学生だったからも、「熱い」コメントをいただきました。みなさん、いかに吹奏楽を愛しているのかが伝わってきました。すごいなあと思います。
【追記4】
◾️面白い記事を見つけました。
日本人と吹奏楽
大学ジョイントコンサート2019 奈良公演
◾️ひさしぶりに奈良に行きました。奈良で「大学ジョイントコンサート2019」が開催されたからです。7つの大学の吹奏楽部が参加しています。大阪工業大学文化会ウインドアンサンブル、関西大学応援団吹奏楽部、関西学院大学応援団総部吹奏楽部、京都橘大学吹奏楽部、近畿大学吹奏楽部、明星大学学友会吹奏楽団、龍谷大学吹奏楽部の計7つの大学の吹奏楽部です。関東圏から明星大学が参加されています。逆に、関東で開催される「大学ジョイントコンサート」には、立命館大学吹奏楽部が参加しています。吹奏楽の世界にはコンクールがあり、お互いの存在をよく知っていると思いますが、さらにこういったジョイントコンサートがあると、良い刺激を与えう会うことができますね。
◾️コンサートは7大学がそれぞれ単独演奏をされた後、合同演奏が行われました。私は、次の用事があったため、合同演奏を聴くことはできませんでしたが、最後の龍谷大学の単独演奏の最後まで、部長の村井龍治先生の横の席で聴かせていただくことができました。ありがとうございました。龍谷大学の単独ステージですが、1曲目は、ゲストである外囿祥一郎さんが「ハーレクイン」を演奏されました。外囿祥一郎さんは、しばしば龍谷大学吹奏楽部のステージに登場されます。この曲はユーフォニアムの為の独奏曲です。ユーフォニアムらしい柔らかな包み込むようなサウンドにうっとりとしながらも、曲の後半では猛烈な超絶技巧に驚くことになります。2曲目は、「ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲」でした。この曲は、讃美歌を基にした曲。冒頭のファンファーレの後のコラール部分からは、そのことがよくわかります。曲のタイトルにある、ルイ・ブルジョワ(Loys Bourgeois)は、16世紀フランス・ルネサンス音楽の作曲家。また、タイトルの讃美歌とは、礼拝の際に栄唱としてよく用いられる「詩編旧100番」のことだそうです。この曲は、吹奏楽コンクールでよく演奏されるらしいのですが、同時に難易度の高い曲でもあるとのこと。このような曲です。
◾️まだ、当日の演奏の動画は公開されていないようですが、合同演奏のリハーサルで、外囿さんが「ダニーボーイ」を演奏されている様子はご覧いただくことができます。
◾️その日は、晩に大津であった別用を済ませてから帰宅しました。その翌日の晩、YouTubeにアップされている龍谷大学吹奏楽部の過去の演奏を拝見していました。かなりたくさんの動画がアップされています。その中で、貴重に歴史的?!資料を見つけました。龍谷大学が全国コンクールに出場するようになった1986年の動画です。指揮は、あの佐渡裕さんです。佐渡さんは、この頃、あちこちのアマチュアの吹奏楽団やオーケストラで指揮をされていたのではないでしょうか。私がいた関西学院交響楽団でも1987年に指揮をされています。この後に、国際コンクールで認められて、レナード・バーンスタインのアシスタントをお勤めになるようになりました。当時は、新進気鋭の若手指揮者だったと思います。この頃、指揮をしてもらった吹奏楽部の皆さん(今は、おじさんとおばさん)は、その時の経験を大切にしていると思います。私の後輩である関西学院交響楽団の皆さんも、そうですから。
◾️ところでこの動画を見てハッとしました。ひょっとして現在の龍谷大学吹奏楽部の副部長をされているMさんがこの動画の中でクラリネットを吹いておられるのではと思い、ご本人に確認したところ、そうだとのことでした。副部長さんによれば、故・上埜孝先生や、現在、音楽監督をしていただいている若林義人先生が指導されるようになり、徐々に演奏のレベルが変わっていったとのことでした。全日本吹奏楽コンクールの常連になるのは、佐渡裕さんが指揮をされた後、もう少し経ってからかなとのことです。
BS11 フランス人がときめいた日本の美術館「第23回 仏教と美術に思いを巡らす『龍谷ミュージアム』(京都・下京区)」
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◾️今週の金曜日、3月8日(金)(夜8:00〜8:58)に、BS11の「フランス人がときめいた日本の美術館」というBSの番組で、龍子大学の博物館「龍谷ミュージアム」が取り上げられます。以下は、番組紹介です。
日本にはバラエティに富んだ魅力的な美術館があります。それを気付かせてくれるのは、フランス人の美術史家・ソフィー・リチャードさん。10年かけて日本の美術館を巡り、その魅力をまとめた書籍『フランス人がときめいた日本の美術館』が話題となっています。
そんな彼女のメッセージをヒントに、「トキメキ」の旅に出掛けるのは、女優の野村麻純。
今回、ソフィーさんがオススメするのは、京都から歩いて10分、世界遺産・西本願寺の真向かいに建つ「龍谷ミュージアム」が今回の舞台です。ここは、2011年にオープンした新しい美術館、仏教の誕生と広がりをわかりやすく紹介しています。案内してくれたのは、元館長で、龍谷大学・学長の入澤先生。人類発の仏教像が制作されたというガンダーラで発掘調査を行ってきた仏教の研究者で、僧侶です。「仏教とは?」という壮大なテーマを、1900年前に制作された貴重な仏像などを見ならがら、解説いただきます。興味深いお釈迦様の誕生の物語や、月とウサギとお釈迦様の関係などを表した動物の彫刻も登場。さらに龍谷ミュージアムには、明治時代に、仏教復興の糸口を探るため中央アジア・シルクロードの学術調査に向かった「大谷探検隊」が発掘した貴重な品々が展示されています。中でも圧巻が、シルクロードの仏教を伝えるベゼクリク石窟という洞窟寺院の回廊を原寸大で復元したもの。壁画にはお釈迦様の前世の物語が描かれています。「龍谷ミュージアム」は、2500年の時を経て、人から人へ繋げられた人類の大いなる知恵を学べる、そんな場所でした。
紹介作品:「仏立像」、「菩薩立像」、「仏伝浮彫:誕生」、「託胎霊夢」、「ベゼクリク石窟大回廊復元展示」ほか
柳平湖
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◾️昨日は、昼間にJR山科駅のそばにあるカフェで、3回生ゼミの卒論の指導をしました。そのあと、そのまま草津市に行きました。草津市役所です。19日は長浜市役所で市長の藤井勇治さんにインタビューをさせていただきましたが、今回は草津市長の橋川渉さんにインタビューをさせていただきました。両日とも、「環びわ湖大学・地域コンソーシアム」の大学連携政策研究事業 「県内高等教育振興のための政策研究事業」に関連するインタビューです。今回も、顧問の仁連孝明先生とご一緒させていただきました。
◾️橋川渉市長へのインタビューを終えたあと、壁に飾ってあった絵に惹きつけられました。描かれている場所は、草津市志那町にある内湖の柳平湖である腰とがすぐにわかりました。昨晩は志那町で内湖保全に関する会議をしていたので、偶然なのですがちょっと驚きました。この絵を描かれたのは、大津市在住の画家、ブライアン・ウィリアムさんとのことです。
◾️エントリー「内湖保全の会議」では、上西恵子さんの写真を元にしたカレンダーについて紹介させていただきました。上西さんのカレンダーの9月と10月のページの写真は、このブラインアン・ウィリアムさんが描かれた場所とほぼ同じところになります。写真家である上西さん、画家であるブラインアン・ウィリアムさん、表現の方法は違いますが、お2人ともこの柳平湖のこの場所に注目されたことに、ちょっと感動しました。
関門海峡
◾️亡くなった母の自宅を売却しました。売却したのは、母が亡くなる前でしたが。その売却に先立ち、家の中に詰まった諸々のモノを処分しなければなりませんでした。よくもまあ、これだけのモノが詰まっていたものだと思うほど、モノでいっぱいでした。最初は、自分の力で整理しようと思っていましたし、いるものや使えるものと、いらないもの使えないものを分別しようとしていました。昭和生まれなので、どこかで勿体無いと思っていたのだと思います。そうしていつまでもモタモタしたいたのですが、売却するためのリミットが迫ってきて、最後は業者さんにお願いをしました。引っ越し会社から独立した方達が作った会社でした。さすがプロ、あっという間に家の中はスッからかんになりました。呆気ないくらいでした。お金は予想以上にかかりましたが、決断してよかったです。仕事をしながらだと、余程の馬力を投入しないことには無理だと思います。母の家は、新興住宅地の小さな家でしたから、まだよかったのですが、農村地域の何代も続いた大きな御宅の場合は、どれだけ大変かと想像します。
◾️さて、殆どのモノは処分したのですが、自宅に持って帰ったものもあります。一部の食器、重要な書類、アルバムや写真…。そして絵画です。「文化資本」の蓄積がない家でしたが、どういうわけか絵画が飾ってありました。両親が自分たちの趣味で買い求めたというよりも、絵を描くことが好きな知人から贈ってもらったり、知人の画家から購入したりという感じでしょうか。写真は、その知人の画家の水彩画です。今は、我が家に飾ってあります。色紙に描かれています。その画家の先生は、私の絵の先生でもありました。まあ、私の才能は開花しませんでしたが…。この水彩画は、関門海峡の風景を描いたものです。門司側から下関側を描いていると思います。この絵を見ながら、下関や北九州の小倉にいた頃のことを(5歳から10歳)、いろいろ思い出しています。
【追記】◾️母の自宅のモノを処分して色々思うところがあります。「終活」の諸々に関連してでしょうか。歳をとると、自分で家の中のモノを処分できなくなるのだと思います。亡くなった両親を見ていてそう思いました。処分には体力も気力も必要ですし。もし「終活」的な意味での「断捨離」を行うのならば、健康なうち、前期高齢者のうちにやってしまわないと、多分、子ども世代に迷惑をかけてしまうと思います。これを、「迷惑」といってしまうところが、今時なのですが…。それと、あとはエンディングノートですね。銀行や年金や役所関係のこと…全部を含めたことを、エンディングノートにきちんと書いておくことでしょうか。
映画『ちいさな独裁者』
◾️映画ブロガー・ライターの杉本穂高さんによる「軍服だけで権力を手にした男の驚くべき実話。映画『ちいさな独裁者』監督インタビュー」という記事を読みました。非常に興味深い内容でした。この「小さな独裁者」という映画、実話に基づいているそうです。「あらすじ」は、以下の通り。
舞台は第二次大戦末期。若い脱走兵ヴィリー・ヘロルトは道端に打ち捨てられた車の中からナチス大尉の軍服を発見する。暖を取ろうとそれを着た矢先、別の脱走兵から本物の大尉と間違われ、彼を部下とする。これに味をしめたヘロルトは、次々と脱走兵を束ねて自分だけの部隊「ヘロルト親衛隊」を結成する。やがて、ヘロルトの部隊は政治犯や脱走兵を収容した施設に到達する。そこでヘロルトは強大な権力を行使し、恐るべき命令をくだす。
◾️「ただの脱走兵でしかない男が、軍服を身にまとうだけで権力を手に入れ、恐るべき暴君に変貌」し、彼を本物の大尉と信じてしまった脱走兵を引き連れて虐殺を行ってしまう…。
権力という目に見えない幻想を人間はたやすく信じてしまう。しかし、そんな目に見えないものが存在するという前提で、人間の社会は営まれている。社会は確かにそうした幻想を必要としている。時に権力構造は秩序を作り出し、時には本作の物語のように混沌を生み出す。たったひとつの「服」を引き金にして。
◾️この映画の公式サイトには、関係者のコメントを読むことができます。この映画の監督は次のようにコメントしています。「彼らは私たちで、私たちは彼らだ。過去は現在なのだ」。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんのコメントは次の通りです。「抑圧する者、される者、強者におもねり、なびく者。その境界線はあまりに脆く、曖昧だった。『私』の中にも宿る残虐な『彼ら』の存在を、この映画は鋭く突きつける。目を背ける『私たち』に、歴史は再び忍び寄る」。映画のあらすじを知り、こういうコメントを読むと、「権威主義」や有名なエーリヒ・フロムの「権威主義的パーソナリティ」という概念を連想します。この映画で大尉の軍服を、私たちはひとつの比喩として理解するべきでしょう。また、映画そのものもを恐ろしい現代的寓話として理解するべきなのでしょう。この映画が描く権威的なるものは軍隊だけではなく、私たちの身の回りにある様々な制度や組織の中にも、ごく当たり前のように存在しています。たとえば、政治家と国民の関係の中には、すでにそのような権威的なるものが存在しているのかもしれません。あるいは身近な組織の何らかの役職が、この映画の中の軍服の役割を果たしているのかもしれません。「彼らは私たちで、私たちは彼らだ。過去は現在なのだ」という監督のコメントは、そのような意味で理解する必要があるでしょう。
◾️映画「ちいさな独裁者」は、全国で上映されますが、私の場合だと、京都シネマでしょう。京都シネマでは2月9日から上映されます。