湖西線と長靴

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■今年の滋賀県はよく雪が降りますね。たまたまなんですが、滋賀県の降雪に関して、「北雪」「中雪」「南雪」という言葉があることを知りました。詳しく解説した文献を確認できていないので気象学的な説明はできませんが、気圧の関係で風の向きが変わり、降雪量に差が生まれてくるようです。私は湖西線沿いに住んでいますが、一駅南に行くと、途端に積雪量が変わります。どうも、私の住んでいるところは「中雪」の最南端にあたるようです。素人推測でしかありませんが…。

■上の写真は、最寄駅のものです。一昨日の夜中は全く雪の気配がありませんでしたが、朝になるとそれなりに雪が積もっていました。朝10時から京都の上賀茂にある総合地球環境学研究所で、参加している研究プロジェクトの拡大コアメンバー会議が開催されたため、雪の中を歩けるように長靴で出かけました。しかし、隣駅では薄っすら白くなっている程度で、ずいぶん積雪量に差があることに気がつきました。そういえば、前回の降雪の際も同じ感じだったなあ…。もちろん、山科や京都に到着すると、街中はほとんど雪が積もっていません。総合地球環境学研究所のある上賀茂は、市内でも北部に位置するわけですが、それでも雪はあまり積もっていませんでした。長靴は、完全に「ハズレ」でした。下段の左の写真は、総合地球環境学研究所から撮った比叡山です。

■しかし湖西線沿いに暮らす人びとにとって、特に農村地域だと、雪の日、長靴は必需品です。自宅から駅までは長靴。そこで革靴に履き替えます。長靴はどうするのか。スーパーの白い袋に名前を書いておいて、その袋に入れておくのだそうです。ロッカーがあるわけではありませんが、駅の壁際に長靴の入った白い袋がずらりと並ぶのだそうです。私は、自分自身で目撃したことはありませんが、湖西線沿いにお住いの方からそのことをお聞きしました。私の住んでいるところは、そのような白い袋は並びませんが、なるほどと納得しました。昨日は、総合地球環境学研究所での会議を終えた後は、研究仲間である京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんと京都の出町柳で夕食を一緒に摂りました。もちろんお酒を飲みながら。さあそろそろ帰宅しようかという時間になると、出町柳界隈でも雪が降り始めていました。自宅近くは、下段右の写真のようにすでに真っ白。長靴が役立ちました。朝は「ハズレ」と思いましたが、反省。湖西線沿いの暮らしには、長靴が必要なんです。

龍谷大学の建学の精神

20170131kengakunoseishin.png ■龍谷大学に勤務して13年。にもかかわらず、大学のホームページの細かな中身を丁寧に見ることをしていません。おそらく、それは私だけではないと思いますが…。たまたま龍谷大学の宗教部のページを開いたところ、「龍大はじめの一歩 龍谷大学『建学の精神』」があるのを「発見」しました。今まで、気がついていませんでした。2015年に「龍大はじめの一歩 龍谷大学『建学の精神』」という冊子が発行されたようなのですが、知りませんでした。いけません…。宗教部のホームページでも読むことができます。

■おそらく、入学したばかりの新入生に読んでもらおうと執筆されたものかと思います。大変わかりやすく書かれています。でも、私のような教員こそが、今後のカリキュラムを考えていく上でも、しっかりとこの冊子を読むべきかなと思いました。建学の精神に基づき、様々な計画が立てられているのですから。龍谷大学は第5期長期計画を定めて大学の改革に取り組んでいますが、この長期計画が完了する時に到達すべき将来像として「2020年の龍谷大学」を定めています。その「使命」のところには、次のように書いてあります。

龍谷大学は、建学の精神(浄土真宗の精神)に基づく、すべての「いのち」が平等に生かされる「共生(ともいき)」の理念のもと、「人間・科学・宗教」の3つの領域が融合する新たな知の創造に努めるとともに、人類社会が求める「次代を担う人間」の育成を図り、学術文化の振興や豊かな社会づくり、世界の平和と発展に貢献することを使命とする。

■各教員が、事実として、どこまでこの「建学の精神」に注意を払っているのか私にはわかりませんが、私自身は、この建学の精神、そして「使命」を、自分が研究している地域社会での環境問題(琵琶湖や琵琶湖に流入する河川の流域管理・流域ガバナンス等)や地域社会での実践という具体的な文脈に位置付けて咀嚼しようとしてきました。現代社会の課題に取り組む上で、重要な視点が提示されているようにも思います。単なる”御題目”のような存在ではないはずです。

執筆と大雪

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20170117yuki4.jpg■ここしばらく、大学に行く用事を極力減らして、自宅に籠って締め切りのある論文を書いていました。締め切りは過ぎてしまっており、かなり焦っていました。原稿は2つ。「野洲川流域における流域ガバナンスと地域間連携」と「生物多様性と集落のしあわせ-農村活性化における生物多様性の意味―」です。テーマ的には少し似ているところがあるので、書き分けるのにちょっと苦労しました。ひとつは、『限界都市化に抗する連携アプローチ』という本に所収される予定です。もうひとつは、「農村計画学会」誌35巻4号の特集「農業・農村が育む生物多様性~自然共生社会に向けての農村計画の役割~」の中で掲載される予定です。両方とも、総合地球環境学研究所の研究プロジェクトの中で取り組んできたことです。こちらの方は、ついつい決められた字数を超えてしまうので、圧縮したりカットしたりしていると、全体を貫く論理の展開についても、予定していたものから少し変えざるを得なくなりました。まあ、そうやっていろいろ苦労をしたのですが、本日は、なんとか残っていた原稿についても提出することができました。ホッとしています。まだ、いろいろやらないといけないことがあるのですが、それは論文ではないので、少し気が楽かな。

■さてさて、そんな自宅に引きこもって仕事をしているときに、ドカッと雪が降ってきました。雪は土曜日から降り始めました。日曜日の朝にはけっこうな量が積もっていました。昨年までは奈良県の奈良市に住んでいたので、それほど雪は降りませんでした。滋賀県は、日本海に近いだけあって、やはり積雪量が違いますね。同じ滋賀県でも、草津市のほうはそれほどでもなかったようです。私の住んでいる湖西は、けっこうな量の雪が降りました。14年前まで岩手県に暮らしていたので、6年間という短い期間ではありましたが、雪国の暮らしに不可欠の雪かきを経験しています。けっこうな量とはいえ、岩手に比べればどうってことがない程度なので、嬉々として雪かきに取り組みました。「岩手にいた頃が、懐かしいな~」、まあそんな感じです。原稿の執筆が行き詰っていたので、ちょうど気分転換になりました。

■日曜日の昼からは、スタッドレスタイヤを履かせた車で近所を回ってみることにしました。近所には広い草っ原がひろがる公園があるのですが、予想通り、たくさんの子どもたちが集まっていました。スノーボードで雪遊びです。おそらく、雪がふるたびに、ここではこういう光景が見られるのでしょうね。雪が豊富にあるためでしょうか、2メートルを超える雪だるまを誰かが作っていました。これは作ろうと思うとかなり力がいりますよ。また、少年たちがカマクラをつくっていました。楽しそうです。見ているだけで、私も楽しくなってきました。そういえば、子どものときはカマクラを作っていました。小さな子どもが1人はいるのが精一杯の大きさでしたが…。公園のあとは、近くの棚田の農村を回ってみました。一面の銀世界です。しかし、これだけ降った雪も、本日の火曜日にはかなり融けてしまいました。なにかちょっと残念な気持ちもどこかにあります。
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田中拓弥くんとの再会

20170112tanaka.jpg ■昨晩、偶然ですが、大津駅前で田中拓弥くんと出逢いました。駅前の広場でスマホでメールを送っていると、携帯電話でにこやかに話しをしながら通り過ぎていく人がいました。チラリとみると、むこうもこちらをチラリ。お互いにびっくりしました。田中くんは、以前、総合地球環境学研究所のプロジェクト「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」で、プロジェクト研究員として獅子奮迅の活躍をしてくれました。プロジェクトの成果は、『流域環境学 流域ガバナンスの理論と実践』(京大学術出版会)にまとめることができました。

■このプロジェクトのなかで、私は「階層化された流域管理」という考え方を提案し、「階層間のコミュニケーション」に焦点をあてたプロジェクトのプラットホームづくりに努めました。田中くんは、一般社団法人「コミュニケーションデザイン機構」の職員で、現在は、「近畿環境パートナーシップオフィス」で、「コミュニケーションディレクター・科学コミュニケーター」として活躍されています。以下は、その「近畿環境パートナーシップオフィス」のスタッフ紹介欄にある田中くんの自己紹介です。

これまでは、大学・研究機関で、河川や湖沼の環境についての調査やその支援・推進の仕 事に携わってきました。 その経験を生かして、環境の研究者と実践家・市民の皆さんを橋渡しするお手伝いをした いとおもいます。 環境についての情報や科学知識は日進月歩です。楽しく学べるような場やそれが持続する ための仕組みを皆さんとつくりたいと考えています。

■現在のお仕事では、以前のプロジェクトのなかでいっていた「階層間のコミュニケーション」を実際に取り組まれているわけです。今回は、お仕事の打ち合わせで急いでおられましたが、近いうちに連絡をとりあって、いろいろ話しをしようということになりました。いろいろ出会いがありますね。

総合地球環境学研究所「食文化から見た琵琶湖流域の人と自然のつながり」もちつきワークショップ

月刊『地理』2017年1月号

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■月刊『地理』(通巻740号 2017年1月号)の特集「環境問題解決への科学者の役割」に、総合地球環境学研究所で取り組んでいるプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の紹介を兼ねたエッセー「超学際科学に基づく順応的流域ガバナンス-生物多様性が駆動する栄養循環と人間のしあわせ」が掲載されました。プロジェクトの代表である奥田昇さんと、プロジェクト研究員である淺野悟史さんとの共著です。私は、プロジェクト全体のフレームといくつかの基本的なアイデアを提供しているので、ここに名前を連ねています。だから共著なのですが、執筆の中心は代表者の奥田さん、そしてプロジエクト研究員の淺野さんがサポートしています。

■改めて読んでみて思うこと。私たちのプロジェクトは、学際を超えた超学際的研究プロジェクトであることから、非常にたくさんの分野の方達が参加しています。ひとつのプロジェクトであっても多様な考え方がそこにはあるわけです。これは生態学者である奥田さんの立場から見た私たちのプロジェクトであることがよくわかります。立場が変われば、表現の仕方等では微妙に違いが出てくると思います(自分だと、こういう啓蒙的な姿勢とか、「欠如モデル」的なことは絶対に書かない/書けないだろうな…とか)。文章というものは、人柄が出る。その人の骨身に染み込んでいるものが出てきます。そういうものですから。それは仕方のないことです。とはいえ、多くの皆さんに、プロジェクトが理解しやすい内容になっているのではないでしょうか。

■ところで、この特集の冒頭は、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの近藤昭彦さんの「環境問題の現場における科学者とステークホルダーの協働」です(近藤さんが、この特集をコーディネートされたのだと思います)。このブログでも何度か取り上げた「Future Earth」の話しから始まります。新しい地球環境イニシアティブである「Future Earth」(FE)は、問題解決型プログラムであり、ステークホルダー(利害関係者、SH)との協働によるトランスディシプリナリティー(超学際)の実現を重要な達成目標として掲げています。しかし、このステークホルダーは多様で多層で考慮すべき課題が多いと近藤さんは述べています。

しかし、FEの理念に今日んを持った研究者としての立場からは、SHとして現場の当事者を考えたい。それはFEが対象とする問題は、それが地球環境問題であるとしても、人にとっては地域における自然との関係性の問題として出現するからである。その考え方の基盤には、地域を良くすることが世界を良くすることにつながる現在を良くすることがより良い未来の創成につながる、という考え方がある。これは、環境社会学における地球的地域主義(グローカルの考え方)である。

現代における経験に基づくと、問題の解決を諒解するために必要な基準として、①共感基準、②理念(原則)基準、③合理性基準、があるように思える。まず、SHとの間で、共感がなければ協働にはならない。次に、どのような社会が望ましいかという理念が共有される必要がある。問題の現場から離れたところにいる科学者にとっては理念であるが、SHにとっては原則となる。最後に、③科学の成果を問題解決に取り入れたい。FEにおいては、通常の科学の③だけでなく、①②の基準を重視することが超学際の達成につながると考えられる

■このような考えを提示した後、ご自身で関わってこられた原子力災害や印旗沼流域の環境問題を例に、科学者とSHとの関係について検討されています。そして、「SHとの共感を大切と考え、自らもSHとして政策に関わり、問題解決に関与する立場をとりたい」と自分の立ち位置を説明されます。そのような研究は、近藤さんも言われているように「論文で成果を競う従来型の研究ではなく、問題の解決の達成を目指す活動の中で役割を果たしたかどうかが問われる研究」ということになります。この点に関してですが、ビエルクというアメリカの政治学者(政策科学者)の著書『 The honest broker』を元に、科学者と政策の関係性に関する類型を元に4つのタイプを提示されています。

①純粋な科学者(政策には関与せず研究の成果を提示)
②科学の仲介者(研究成果を政策に提言)
③論点主義者(研究成果をもとに特定の政策を提言、主張)
④複数の政策の誠実な仲介者(研究に基づき可能な複数の政策を提言)

■私が専攻分野である社会学の場合は、ほとんどの研究者は①だと思います。しかし、社会問題を扱う研究者の場合は③であることが多くなるかもしれません。印象論でしかありませんが。近藤さんは、この③については次のように述べています。「特定のSHとの協働はあるが、特定の政策を提言、主張するものである。例えば、特定の施策に対する反対運動や推進に関わる研究は③に属すると考えられる」。日本の社会学の者の多くは、経済学者などとは違って、自ら政策の現場に飛び込み提言を行う人は少ないように思います(経済学では②の人の割合が社会学よりもずっと高いと思います)。もちろん論文の中で政策批判を行うことはあっても提言する人は少数派です。私の細かな専門分野を言えば環境社会学ということになりますが、この環境社会学の場合でも③の研究者がほとんどでしょう。

■近藤さんは、FE科学を推進するために必要なのは④なのだと言います。ただし、これは個人で達成することが困難なため、科学者集団として対応していくことが必要になってきます。私は、30歳代の終わりから文理融合・文理連携の研究プロジェクトにずっと関わってきました。そのような経験を積みながら考えてきたことは、近藤さんが主張されていることとほぼ重なり合うように思います。私自身も、総合地球環境学研究所のプロジェクトを通して、地域の広い意味での活性化と地域環境問題の解決を同時に視野に入れ、しかも地域の皆さんと一緒に考えながら活動し、さらに政策にも関わろうとしているからです。今日は、近藤さんの書かれたものを拝読し、非常に「勇気づけられた/力づけられた」ような気持ちになりました。④に取り組もうという考えを持った研究者は、まだまだ少数派だからです。

■ピエルクの文献ですが、以下の通りです。
Pielke, R. A.(2007): The honest broker: making sense of science in policy and politics. Cambridge University Press.

小佐治での忘年会、「しあわせ」の増殖

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■昨晩は、滋賀県甲賀市甲賀町小佐治に行きました。総合地球環境学研究所のプロジェクトのメンバー、そしてプロジェクトに協力してくださっている小佐治の農家の皆さんとの忘年会が開催されたからです。毎日、忘年会です。場所は、プロジェクトで借りている民家。ここは山小屋風になっています。私たちのプロジェクトでは、ここをフィールドステーションにして調査をしているのです。アメリカ製らしいのですが、ちゃんと薪ストーブもあります。もちろん、燃料の薪は、小佐治の里山のコナラです。

■私たちのプロジェクトのテーマは「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」です(総合地球環境学研究所の中では、「栄養循環プロジェクト」と呼ばれています)。プロジェクトでは、滋賀県の野洲川流域でいくつかの調査サイトを設定していますが、その中でもこちらの小佐治は、地域の農家の皆さんと緊密に協働しながら研究を進めることができています。昨晩は20名近くの農家の皆さんが集まってくださいました。

栄養循環プロジェクトの概要

■小佐治では、「しあわせの環境ものさし」づくりという活動を行なっています。小佐治は、いわゆる谷津田の発達した中山間地域です。谷筋にある水田で内部に生き物が生息しやすい水田内水路をつくり、そこに廃棄物になった塩化ピニールのバイブ等を設置して生き物のシェルターを作り、めだか等が棲めるように工夫してきました。そして、食の安心・安全に配慮した「めだか米」として販売してきました。私たちのプロジェクトでは、この活動がさらに発展できるように支援をさせていただいています。そのひとつが「しあわせの環境ものさし」づくりの活動です。

■私たちは、小佐治での「里山↔︎溜め池↔︎従来の田んぼ↔︎圃場整備された水田↔︎河川」の「つながり」再生が重要だと考えています。その「つながり」再生とのかかわりで、生き物の賑わいが豊かになれば…そのような賑わいが生まれる農法に取り組んでいるということが、小佐治の農産物の付加価値を高めることにつながれば…との思いでプロジェクトに取り組んでいるのです。プロジェクトでは、里山と田んぼとのつながりを示すニホンアカガエルやカスミサンショウウオの分布をひとつの「ものさし」にして小佐治の環境(の変化)を把握しようと、小佐治の農家の皆さんと「しあわせの環境ものさし」活動に取り組んできました。ニホンアカガエルやカスミサンショウウオも、共に里山と冬場の水田を行き来しながら繁殖している生き物です。そのような生き物が生息しているということは、里山と水田につながりがあり、生き物の賑わいを生み出す良好な環境が保持されていることを裏付けることになるからです。この取り組みは、プロジェクト研究員の1人である淺野悟史くんが中心となって頑張って取り組んできました。ただし、どのような生き物を指標にするのかについては、この土地の農業のあり方や農家の皆さんの関心のあり方ときちんと関連づけることができなければ意味がありません。また、小佐治の皆さんの暮らしの「しあわせ」とどこかで繋がっていなければ意味がありません。私たちのプロジェクトでは、そのあたりのことについてとても慎重に取り組んできました。

■大変興味深いことなのですが、そのような生き物のひとつとして、農家の皆さん自身もゲンジボタルに注目し調査を始められたことです。自分たちの営農のあり方とゲンジボタルとの間に関係があることに気がつかれたのです。すでに、「ゲンジボタルが棲む環境で生産したお米ですよ‼︎」とアピールするための米袋もできていました。ちょっとびっくりですね。地元の農家の皆さんが、張り切って取り組まれていることが伝わってきます。

関連エントリー「小佐治訪問(総合地球環境学研究所)」

■そういう協力と信頼関係を育む中で、プロジェクト研究員の石田卓也くんからは、こんな話しを聞かせてもらいました。ある農家から「あんたとも友達になってしもうたな〜笑」といわれたというのです。「なってしもうた」。これはどういう意味でしょうか。おそらくは、「最初は、友達になりたいとか、なろうとか思っていたわけではないけれど、一緒に活動をするうちに気心の知れた親しい関係になっていたね」という意味なのだと思います。プロジェクトの活動によって、農家と研究者との間に「しあわせ」が増殖しているように思います。素敵ですね。「しあわせ」は、人と人の関係の中に生まれるのです。もっと正確に言えば、環境との関係を媒介とした人と人の関係のなかに、「しあわせ」は発生し増殖していくのです。

ヨシ群落保全基本計画等見直し検討会

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20161222yoshihozen7.jpg■火曜日の報告です。午前中は研究不正防止に関連して研究部の委員会でした。昼からは滋賀県庁に移動。「ヨシ群落保全審議会」の委員の皆さんが集まった「ヨシ群落保全基本計画等見直し検討会」に出席しました。私は審議会の会長を務めさせていただいていることから、この日の検討会では、ファシリテーターになって「これからヨシ群落どうしていくねん」って感じで、ワイワイ楽しくワークショップを行いました。皆さん、審議会の委員であるとともに、実践的な活動にも励んでおられます。とても積極的に、今日のワークショップに取り組んでくださいました。

■一人一人の心の中にあるモヤモヤを文字にして、言葉にして、人に聞いてもらい、共感し、最後にはそれらを「見える化」して共有しました。皆さんと楽しみながら、これからの時代の「ヨシ群落保全条例」と「ヨシ群落保全基本計画」が目指す方向性を確認しました。参加者は、大津市雄琴学区自治連理事の青山武廣さん、ヨシでびわ湖を守るネットワーク(コクヨ滋賀)の太田俊浩さん、公益財団法人淡海環境保全財団の川端さん、針江生水の郷委員会の高橋敏枝さん、伊庭の里湖づくり協議会の田中信弘さん、審議会公募委員の松田明子さん、野洲市長の山仲善彰さん、環境政策課の職員の皆さん、そして私。全員で11名。ご公務のため山仲市長は途中で退席されましたが、皆さんの「想い」を形にすることができました。まずは、キックオフですね!今日は曇り時々雨ですが、こうやって皆さんと一緒に有意義な時間を持つことができて、心の中は日本晴れです!これからの展開が楽しみです。

夏原グラント「環境保全活動交流会」

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■日曜日は、夏原グラントの「環境保全活動交流会」が草津市の草津市立まちづくりセンターを会場に開催されました。夏原グラントは、滋賀県を中心としたエリアで総合スーパー等の小売チェーンを展開する平和堂が設立した財団、公益財団法人平和堂財団が、豊かな環境の保全および創造のために設立したものです。NPO法人・市民活動団体または学生団体の自主的な活動に助成しています。私は、この夏原グラントの選考委員をしていることから、この交流会に参加することになりました。

■冒頭は、選考委員5名によるリレートークでした。環境保全活動の意義、琵琶湖再生法、活動資金の確保の仕方…、選考委員の皆さんが、それぞれの持ち味を活かした短い講演(お一人15分程度)をしていきました。私の番は、5番目ということで最後。環境保全活動と、環境保全活動を通した人びとのつながり、両者の関係を通して地域に暮らすことの「楽しさ」や「幸せを」を活動やつながりの中から紡ぎ出していくことの大切さ…そのようなことを、岩手県の県北地域にある村づくりの活動を事例にお話しをさせていただきました。なんの準備もせずに、朝、頭の中で浮かんできた粗筋に沿ってお話しをさせていただきました。結果としてですが、多くのみなさんに共感をしていただけたので、安心しました。「一度、うちの地域に遊びに来てください」、「今度、地域の皆さんに話をしてくれませんか」といったお誘いもいただきました。有難いことです。

■リレートークの後は、8つのグループに分かれてテーブル交流会になりました。私もひとつのテーブルのファシリテーターを担当しました。夏原グラントの直接的な目的は団体に助成していくことですが、同時に、こういう場での交流を通して、相互に悩みや成果を共有し、素敵な「ご縁」を作っていただくことも大切な目的なのではないかと思います。この交流の中から、新しい「事」が起きたら面白いでしょうね。そうなったら素敵だな〜。

総合地球環境学研究所での全体会議

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■先日の土日は、京都の上賀茂にある総合地球環境学研究所で会議でした。コアメンバーとして参加しているプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の全体会議です。全体会議は、年1回開催されます。大きなプロジェクトですので、ふだん出会うことのないプロジェクト内の異なるワーキンググループのメンバーが、この場で全体の研究スキームを再確認し、それぞれのワーキンググループの報告を行うと同時に議論を行います。様々情報や考え方を共有し、プロジェクト全体の進捗状況を確認します。

■総合地球環境学研究所の研究プロジェクトは、私たちの研究プロジェクトも含めて、その多くがいわゆる「文理融合」の研究であり、同時に、「超学際」的な研究です。「文理融合」とはいっても、しばしば見かけるような、いろんなディシプリンの小さな研究成果を集めて、それらを「パチンとホッチキスで閉じた」ようなものではありません(キーワードでゆるく纏めただけのプロジェクト・・・)。私たちは実質的にディシプリンの境界をこえて研究スキームを共有し、研究者の緊密な連携・協働によりプロジェクトを進めています。また、持続可能な社会へ向けた転換のために、地域社会の行政・市民/住民団体、地域住民・・・様々なステークホルダーと「超学際」的に連携・協働を進めています。

■しかし、このような「文理融合」・「超学際」的研究を進めながらいつも感じることは、「初めに『文理融合』・『超学際』的研究ありき」で研究プロジェクトがスタートしてしまうことの弊害です。現場の課題が明確であり、その課題の必要性から「文理融合」・「超学際」的研究を進めていくようになればよいのですが、必ずしもきちんとそうはなっていません。細かくみていくと、時に、手段が目的化していくような側面が否めません。もうひとつの問題は、プロジェクトの評価に関するものです。プロジェクトは、評価委員会により行われます。総合地球環境学研究所のプロジェクトは、「インキューベーション研究(IS)」、「予備研究(PS)」、「プレリサーチ(PR)」、そして「フルリサーチ(FR)」と、段階的に進みます。段階的に次のステップに進むさいには厳しい評価を受けなければなりません。私たちは幸いなことに「フルリサーチ」まで進むことができましたが、途中でプロジェクトが取りやめになるばあいもあります。そうすると、とりあえず評価を突破することが目的化してしまう傾向も生まれてしまうように思います。現在、総合地球環境研究所では、プロジェクトの評価や推進のあり方を再検討されています。個人的には、良い方向に向かっているように思っています。

■さて、2015年度から2年間、大学の研究部長の職に就いたことから、このプロジェクトに関連する調査に赴くことがなかなかできませんでした。2011年から2014年まで大学院の社会学研究科長を務め、それが終わったらプロジェクトに本腰を入れようと思っていただけに、この2年間はかなりつらいものがありました。まあ、大学の仕事が優先ですので、仕方のないことではありますが・・・。しかし来年度1年間は、学内行政や授業が免除され、研究に専念できることになりそうです。「文理融合」・「超学際」的研究は、かなり精神力と体力がいります。このタイプの研究は、今回が人生で最後になりそうです。しっかり本腰を入れてこのプロジェクトに取り組みたいと思います。

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