「阪本屋」さんと「平井商店」さんのコラボ
■鮒寿司の老舗「阪本屋」さんが、酒類販売免許を取得されました。鮒寿司や佃煮と大津の日本酒をセットで販売されます。日本酒は、大津百町の酒蔵「平井商店」さん。「阪本屋」さんと「平井商店」さんとは、発酵をキーワードに様々な催事で連携されてきました。今回は、その連携をさらに一歩進められたとい感じなのかな。とても嬉しいです。
■ちなみに、「北船路」は、もう卒業しましたが私のゼミの学生たちがプロデュースした銘柄です。ラベルも学生たちがデザインしました。あの頃は、単位にはならないけれど、学生たちは面白がって色々社会的活動に取り組んでいたな〜。ちなみに、この「北船路」、平井商店さんのおかげで大津の地域ブランドに選ばれています。
■皆さん、ぜひご注文ください。よろしくお願いいたします。
町家オフィスと阪本屋
■龍大社会学部「地域エンパワねっと」(社会共生実習)では、先週の金曜日、大津市役所の「町家オフィス」を訪問しました。この「町家オフィス」のある町家、以前は、龍谷大学町家キャンパス「龍龍」として利用させていただきましたが、その後、選挙運動のための事務所になり、現在は大津市役所の「町家オフィス」(都市計画部・都市魅力づくり推進課)として利用されています。町家キャンパス「龍龍」の時は耐震工事等や離れの改修等を行いましたが、大津市役所が「町家オフィス」を設置するにあたっては、元々の畳の部屋をフローリングのコワーキングスペースにリフォームされました。素敵な空間が生まれています。
■今回は、見学を目的に「地域エンパワねっと」の学生たちとやってきましたが、職員の方たちからこの「町家オフィス」の目的や活動内容をお聞きするうちにディスカッションが始まり、「ここをベースにして市役所とコラボした活動を展開したいと」と学生に皆さんが提案を初めました。市役所の職員の方と話が広がると同時に盛り上がりました。「エンパワねっとは楽しい❣️」です。
■大津市役所の「町家オフィス」を訪問した後は、丸屋町商店街にある「大津百町館」に伺い、施設の利用等の方法についてお話を伺いました。もう卒業されましたが、以前、「地域エンパワねっと」に取り組んでいた学生の皆さんが、この「大津百町館」を拠点に活動させていただいていました。再び、そのようなことができればと思います。そして最後は、鮒寿司店の老舗「阪本屋」さんを訪問しました。社長さんが丁寧にお店のルーツについてご説明くださいました。ありがとうございました。阪本屋さんは、江戸時代、膳所藩の御用料亭でした。この料亭から分家として鮒寿司販売の専門店として開業したのが、現在の阪本屋さんなのです。というとは、膳所藩のお殿様が愛した味が継承されているのですね。「エンパワねっとは面白い❣️」です。
大石龍門での聞き取り
■今日は大津市の大石龍門へ。龍門自治会の皆さん、叶匠壽庵の職員の皆さんと、「ふるさと屏風絵」の聞き取り調査を行いました。ゼミからの参加は、このコロナ禍のためにわずか1名。第2波がやってきている最中ですからね。まあ、これは仕方がありませんね。コロナのおかげで学外のいろんな取り組みも足踏み状態です。もちろん、この学外で活動を行うにあたっては、大学に申請を行なって承認を得ています。そうしないと、学外での活動はできないのです。ゼミ生が個人で行う卒論の調査に関しても、同様の手続きが必要です。
■「ふるさと屏風絵」。おそらく時代的には、高度経済成長期の前から初期のあたりの時代の、この龍門の生活や生業に関する聞き取りを行い、それを屏風絵にしていくのです。「なんだかよくわからん」と思いますが、私からすると、集落の将来を関係者の皆さん、特に集落内の異なる世代の皆さんがコミュニケーションを行うための手段=ツールなのです。今日も、かつての生活の聞き取り調査をしていたのですが、最後は、農家の高齢化、後継者不足のなかで、どのような仕組みを作って集落を守っていくのかという話題になりました。このような悩み(課題)は、龍門固有のものではなく、滋賀県内の農村はもちろん、全国の農村の問題でもあるわけです。というわけで、「ふるさと屏風絵」の製作のお手伝いだけに終わらず、ゼミ生たちの活動が、この農村の活性化につながっていけばと思っています。
シェアとオンラインのコーヒー店
■りりこさんは、東京にお住まいのお友達です。10年以上前のことになりますが、ネットを通して親しくなったブロガーの皆さんとのつながりの中で、りりこさんとも知り合いになりました。東京のまち歩きのイベントで、実際にお会いしたこともあります。普段は、NPOや地域づくりのお仕事、映画の上映会…様々な市民活動をされておられます(私の理解が正しければ、ですけど)。
■今日は、Twitterでりりこさんの珈琲店のことを知りました。アカウントは「りりこ珈琲店」。どこでお店を開店されのかとお聞きしたところ、コーヒーはオンラインやイベントでの販売の珈琲店なのだそうです。しかも、コーヒーの焙煎もご自分でされています。もし、お店も焙煎も全部自前でとなると、それなりに大変ことになりますが、りりこさんの場合は、池袋にある焙煎店を9人の方達(店長)さん、そして複数の登録されている方達と、その焙煎機をレンタルされているのです。シェアコーヒー焙煎店ですね。しかもレンタルはお2人で。店長Aさんと店長Bさん。漫画家の藤子不二雄さんのようですね。毎週木曜日の夜だけの営業です。【so good coffee】という名前の焙煎店です。
■りりこさんのコーヒー店は、友人と焙煎機のレンタルをシェアして、ネットで宣伝してオンライン販売という形式です。りりこさん達の「思い」や「志し」を理解してくださる方達のイベントで販売されています。お金をかけずに、人とのつながりの中で、自分の思いを形にしていく。儲けることよりも、「思い」や「志し」を実現していくことを大切にされているわけです。ここには、いろいろヒントがあると思います。
■以下は、共同で店長をされている方のメッセージ。大切なことですね。転載させていただきます。フェアトレードと、安心・安全、オーガニックを大切にコーヒーを販売されておられます。
店内で自家焙煎したコーヒー豆を提供します。
【so good coffee】は、唯一無比のJBのようなFEEL SO GOODなテイスト+社会をちょっと良くするSOCIAL GOODなアクションで、毎日のコーヒーを心から楽しめるSO GOODなコーヒーに変えます。毎日のコーヒーは、誰も悲しませることなく楽しみたいですよね。
【so good coffee】が選ぶ生豆は、厳選されたフェアトレードや有機栽培など、しっかりトレースされたものしか使いません。ほんの僅かな販売量でも、サスティナブルな社会に寄り添います。もしあなたが旅行者なら簡単に想像できるでしょう。現地で生豆を洗う水を飲むのは、相当な勇気が必要です。さらに生豆は長い航海に耐えるため、JAS有機認証生豆以外はポストハーベスト(防虫剤・防カビ剤)で燻蒸されています。JAS有機認証生豆はポストハーベストが使われていないですが、その分カビやカビ毒のリスクが高くなります。しかし、焙煎するほとんどの生豆は、輸入された麻袋からそのまま焙煎機に投入されています。
【so good coffee】は焙煎前に欠陥豆を取り除き、汚れを落とすために温水で何度も洗い、綺麗に見やすくなった生豆から更に欠陥豆と取り除きます。安全で美味しい豆だけを焙煎するから、安全で美味しいコーヒーがであがります。焙煎技術は、(一社)日本焙煎技術普及協会、通称アームズの指導を受けた高い技術が保障します。
コーヒーを飲むとトイレが近くなる、飲み過ぎるとお腹を壊す・・・本当は汚れているからかもしれません。【so good coffee】は綺麗に洗った良質な豆だけを焙煎するから、安心して飲むことができます。苦いコーヒー、酸っぱいコーヒーも・・・深煎りでも焦がすことがないから決して苦くないし、浅煎りでも酸っぱくなくフルーティーです。これまでのコーヒーの常識は、本当に常識でしょうか。コーヒー本来の美味しさが味わえるアームズ式焙煎こそが、これからの本当の常識としてに広まることを願い【so good coffee】を始めました。
ぜひお試しください。毎日の自分のために、大切な家族と共に。プレゼントにもきっと喜ばれます。安全で、美味しくて、誰も悲しませることのない、みんなを笑顔にするコーヒー豆です。木曜の夜だけのお店です。
梅雨が明けました。
■午前中は、滋賀県庁の合同庁舎で琵琶湖環境問題関連の会議、マザーレイク21計画学術フォーラムが開催されました。マザーレイク21計画=琵琶湖総合保全整備計画(第1期1999年度〜2010年度、第2期2011年度〜2020年度)は、2021年3月で終了します。少し、この辺りのこと、説明してみます。
■2015年9月に琵琶湖保全再生法が施行されました。この法律の目的ですが、以下の通りです。「法は、国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生を図り、もって近畿圏における住民の健康な生活環境の保持と近畿圏の健全な発展に寄与し、湖沼がもたらす恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現に資することを目的とするものです」。詳しくはこちらをご覧ください。
■この法律に基づき琵琶湖保全再生施策に関する計画=琵琶湖保全制裁計画が策定されました。その第1期計画期間は2017年度から2020年度までの4年間です。第2期計画がスタートするにあたり、これまで並行して進めてきた2つの保全計画を整理することになりました。琵琶湖保全再生計画の方は行政計画です。この計画に基づいて、県と市町が琵琶湖再生保全再生施策の推進をはかることになっています。マザーレイク21計画の方は、多様な主体の協働によるマザーレイクフォーラムという多様な主体が「思い」と「課題」によって「ゆるやかにつながる場」が設けられていました。来年度からは、新たな枠組みと目標の構築を目指す「発展的組織」が構築されることになっているようです。行政計画と発展的組織が両輪となって琵琶湖の保全再生を進めていこうということのようです。まだ実態がよく見えないのですが、1999年から多くの人びとが参加・参画しながらマザーレイク21計画を推進する中で培われてきた「マザーレイクの精神」が、次のステージにもきちんと継承されさらに発展していくことを期待したいと思います。
■マザーレイク21計画学術フォーラムは、午前中に終わりました。外に出ると日差しの強さを感じました。昼食は駅前の「近江ちゃんぽん」で野菜1日盛り&味玉トッピング。そのあと丸屋町商店街の平井商店に。お世話になった方に、ゼミで学生たちがプロデュースした「北船路 純米吟醸無濾過生原酒」と「純米吟醸みずかがみ」を郵送してもらうお願いをしました。コロナ禍の中、家に篭ることが多いので、たまに街中に出るといろいろやるべきことがたくさんあります。平井商店さんの後は、大津駅の構内にあるスターバックスで休憩することにしましたが、駅に戻る途中、大きなざるに梅干しが干してあることに気がつきました。梅雨が明けたことを実感しますね。
■15時からは、新型コロナウイルスに対して万全の体制を確保し、大津市内に事務所を構えておられる不動産鑑定士のYさんの事務所を、龍谷大学の「学生まちづくりラボFAN」のメンバーと一緒に訪問しました。FANの活動については、このブログでも紹介してきましたが、高齢化が進み空き家が増える都市近郊の新興住宅地が抱える問題に取り組んでおられます。私はこのFANの活動を応援していることから、知り合いの不動産鑑定士さんのことを紹介したことから、今回の訪問が実現しました。学生の皆さんの関心は、都市郊外の新興住宅地の問題と地価やまちづくりの活動との関係について、いろいろご教示いただきました。また、同時に、励ましてもいただきました。
■ちなみに、Yさんは、大学時代に所属していた学生オーケストラの後輩になります。いつもは、タメグチというか、私の方が先輩なもので偉そうな口をきいていますが、今日は学生の皆さんの指導をお願いする立場ということもあり、丁寧に話をさせていただきました(笑)。Yさんというか、Yくんありがとうございました。コロナが収束したら(いつになるのかわからないけれど…)、また呑みに行きましょう。
2020年度プレゼン龍翔SDG’s龍起業塾「社会起業家育成プログラム」
■龍谷大学の学生の皆さんのための企画です。詳しくは、こちらをお読みください。
「 龍谷大学まちラボfan」の活動
■「龍谷大学まちラボfan」の活動を応援しています。龍谷大学の様々な学部の学生たちが参加しています。大津市の湖西にある新興住宅地「仰木の里」の皆さん、そしてそこにある2つの小学校の先生方と連携しながら、新たな活動を始めようとしています。ぜひ、この投稿をお読みください。
■この取り組み、元々は大津市からの呼びかけによって始まりました。昨年度までの2年間は、市からの助成がありました。また学内の地域連携を担当する部署(REC)が、学生研究員を募集し活動を支援してきました。しかし、市からの助成も終わり、今年度からは完全に自立した学生団体として活動を行うことになりました。元々学生研究員だったOBの皆さんのサポートもあり、順調に活動が進んでいます。今年度はコロナ禍で活動が思ったようにできないわけですが、Zoomを使ってミーティングや研究活動を積み重ねてきました。新たなメンバーも増えました。順調に進んでいます。
■facebookの投稿、転載します。
皆さま元気にお過ごしでしょうか??
龍谷大学まちラボFANのとんDです😁😁
久しぶりの投稿でワクワクしてます(^。^)
コロナ禍でなかなか外に出れず苦しい日々が続きましたね😢
4月から本学でもオンライン授業が始まり、
慣れない授業スタイルに日々困惑しておりました💦
これからの時代はアフターコロナとして生活様式や仕事のスタイルに変化がもたらされそうですね!
さてこのコロナ渦の状況ではありましたが
現在✨『9名』✨の新メンバーを迎え
週2回のzoomを用いてのオンラインミーティングを重ねておりました💻
そこで7月3日に
以前からお伝えしていたエディブル教育を基にした食育菜園を小学校で実現しようという取り組みについて
・仰木の里小学校校長先生
・仰木の里東小学校校長先生
・龍谷大学社会学部教授
・FANのメンバー数名
※自治連合会の方はご多忙のため後日議事録の共有という形で参加
を交えたオンラインでの合同zoomミーティングを自治連合会の協力のもとに開催致しました‼️
そこでFANのメンバーから両校長先生に向けて
これからのエディブル教育をもとにした食育菜園についてのプレゼンテーションをさせて頂きました🙇♂️
このエディブル教育をもとにした食育菜園を実現することにより、地域に『開かれたガーデン』を作ることができます😀
そうすることで
地域✖️学校✖️児童
の仕組みを作ることができ
地域と学校は子供たちと共に学びながら
地域のつながりを今より更に深いものにすることが期待できます✨✨
この食で学ぶ食育から
命の大切さや主体的に学ぶ力が養えると
とても質の高い教育を実現できるのではないかと思います‼️
世界を持続可能なものにしていくSDGsの
■目標4「質の高い教育をみんなに」
というところにも繋がっていますね😎
このプレゼンテーションから
両校長先生から質問や意見交換を頂き
これからのエディブル教育をもとにした食育菜園を実施する上での方向性や考えも共有することができました🤲
この実現に向けて両校長先生が興味を持たれ、真剣にお話を聞かれている様子がFANのメンバーとして非常に嬉しい思いでした😭😭
ご多忙の中ご参加頂いた両校長先生には
本当に感謝の気持ちでいっぱいです🙇♂️🙇♂️
今後のFANの役割は
エディブル教育をもとにした食育菜園について
保護者の方や児童、教員の方に向けて
この活動を普及していき
学生の若さとフットワークの軽さを生かし
菜園活動のお手伝いをすることで
地域に貢献していきたいと考えております!
何か一つでもFANに出来ることが有れば全力でお手伝いさせて頂きたいです😀😀
長くなりましたが
これからも仰木の里に対して
私たちが出来る一つ一つのことに取り組んで貢献していきたいと思っております🙇♂️
コロナに負けずに明るい未来に向けて
頑張りましょう💪
とんD
大津市大石龍門の「ふるさと絵図」(心象絵図)
■昨日、大津市大石龍門を訪問しました。和菓子の「叶 匠壽庵」さんと龍門の自治会とで取り組む「ふるさと絵図」(心象絵図)の村づくり活動を見学させていただきました。私のゼミの学生たちも(3回生)、この「ふるさと絵図」づくりに参加させていただくことになっています。まずは、一足先に、教員である私が、見学をさせていただくことにしました。
■この日は、「ふるさと絵図」の発案者であり、家元といってもよい上田洋平さん(滋賀県立大学)、そして草津市内の複数の地域で「ふるさと絵図」を製作されてきた絵師の河崎凱三が参加されていました。おかげで、「ふるさと絵図」、実際にはどのように取り組むのか理解することができました。勉強になりました。ありがとうございました。社会学や民俗学の調査と重なりつつも、独特のものがありますね。お聞きした内容を絵にしてなければならず、形とか色とかかなり細かなところまでお聞きしなければなりません。以前、「叶 匠壽庵」さんでは、上田さが発案され「ふるさと絵図」(心象絵図)の方法のうち、五感によるアンケートを実施されており、そのことについて質問項目がたくさん用意されていたのですが、細かなことをしっかり聞いていくと、1時間半弱の時間で、わずか3つ程度の項目しか進むことができませんでした。アンケートに基づきながらも、話のやり取りは自然にあっちこっちに揺らいでいくからです。その揺らぎが、お話いただく内容をどんどん深めていくことになります。それが楽しいわけです。
■私が参加したテーブルでも、興味深いお話を拝聴しました。以下は、その一例です。結構、物々交換が行われていたことを知りました。
・草津の野菜農家が、大八車で屎尿を取りにきていた。野菜などと物々交換をしていた。
・1軒の家に必ず1頭いた牛の話。大きくなった牛は肉牛としてなった。代わりに小さな牛をもらい受け、牛の体重差で牛肉をもらった。その時だけは、すき焼きを食べた。牛は大切にされていた。牛に餌をまずあげて、人間の食事はその後だった。
・庭には卵を取るために鶏がいた。年に何回か、特別な日に鶏を潰してジュンジュン(すき焼きのような郷土料理)にした。鶏には、貝殻を割って食べさせた。それは、瀬田から自転車でやってくるシジミ売りからシジミを買っていたから。
■すでに完成している他地域の「ふるさと絵図」も参考のために、会場の前に飾られていました。左が彦根市八坂、右が草津市矢倉です。左は本物。右は本物をビニールにプリントアウトしたものです。どこにでも持ち歩くことができます。少しだけ説明させていただきたいのは、左の八坂の「ふるさと絵図」の方です。上田さんにお聞きしました。八坂は、琵琶湖の湖岸にある地域です。砂浜が広がっています。以前は、そういう環境を生かしてラッキョウが生産されていました。絵図の中には、桶の上に立って作業をしている男性がいます。これはラッキョウの皮を剥いているところです。少し離れたところには、ラッキョウ畑が描かれています。よく見ると、女性が、魚を畑に撒いています。不思議ですね。さらに目を少し移すと、川で多くの人がコアユを救っています。昔は、半ドンの日は、こうやってコアユを掬うことが許されていたといいます。このコアユを畑に巻いて肥料にするのです。海で獲れるイワシやニシンは、かつて、干して生産地から全国各地に運搬されて肥料として使われていましたが、こちらはコアユですね。それも生なのかな…それとも干してかな。私は、コアユを肥料にするという話を、野洲川の上流で聞いたことがありますが、どうだったかな…。普通は乾燥させてだと思うのですが、その辺りのことを、上田さんには聞き忘れてしまいました。こういった生業の実に細かなことまで、「ふるさと絵図」には描き込まれています。大変興味深いですね。
■ところで、上田さんは、大石龍門でのご指導の後、滋賀県の一番北の地域での「ふるさと絵図」づくりをご指導されるために、再び車で移動されました。ご多用ですね〜。大石龍門は、滋賀県の南の方になります。移動だけでも大変なことです。まさに、家元です。各地から指導の依頼があるのでしょう。これからも、益々ご活躍ください。
「沖縄戦デジタルアーカイブ〜戦世からぬ伝言〜」、そして「流域アーカイブ」へ。
■沖縄タイムス社、渡邉英徳さんの研究室(首都大学東京→東京大学)、GIS沖縄研究室で、沖縄戦の推移を地図と時間軸で表現した「沖縄戦デジタルアーカイブ~戦世からぬ伝言」を制作されています。以下のようなものです。上の動画からもその様子を理解することができますが、実際にご覧いただければと思います。
沖縄タイムスに掲載された沖縄戦体験者の証言と、戦没者名簿から読谷村出身者の戦没地、沖縄戦時に撮影された写真を地図に重ね合わせた。地図は1945年当時の航空地図と1948年の地形図、そして現在の地図と航空写真から成る。沖縄戦時と現在とを比べながら、沖縄戦体験者と戦没者の足取りをたどり、貴重な証言を読みながら、沖縄戦の実相に触れることができる。
■渡邉英徳さんは、アメリカ軍によって広島や長崎に投下された原爆の被爆に関しても、アーカイブを制作されています。こちらもご覧いただければと思います。
ナガサキ・アーカイブ
ヒロシマ・アーカイブ
■このような仕組みを、広い意味での環境保全にも役立てることができると思っています。例えば、ある流域の皆さんに、「どのように身近な水辺環境を利用していましたか…」と、古い地図(旧版の地形図)を元にインタビューさせていただきます。その際は、上田洋平さんが発案した「心象絵図」の中にある「五感アンケート」ような、身体の奥底に眠っている体験も語っていただく必要があろうかと思います。あれば、古い写真も拝見してインタビューを行う。そのようなデータを、デジタルアーカイブにしてみたらどうなるのか…。「流域アーカイブ」ですね。博物館とも連携してできないかなあ…。そのようなことを妄想しています。いろんな人々の体験が蓄積していくことによって、そこから何かが立ち上がってくるような気がします。
「逆開発~アスファルトの駅前を森に戻す」(日経ビジネス記事)
■ちょっと素敵な記事を読みました。『日経ビジネス』のネットの記事です。千葉県のローカル私鉄「小湊鐵道」に関する記事です。まず、タイトルに少し驚きました。だって、「逆開発~アスファルトの駅前を森に戻す」ですから。普通と真逆ですね。だから「逆開発」なんでしょうけど。早速、読んでみましたが、大変興味深いものでした。
■「小湊鐵道」は、房総半島の東京湾側にある千葉県市原市の五井駅から、房総半島の中程にある千葉県夷隅郡大多喜町堀切の上総中野駅までの39.1kmを走るローカル私鉄です。社名の「鐵道」、旧字体なのでまずは「おっ!」と思いますよね。こだわりを感じますね〜。走っている列車も特徴があります。電車ではありません。全線非電化、走っているのは気動車(ディーゼルカー)になります。クリーム色と柿色のツートンカラー、昭和の雰囲気満載です。かつては電化されていない地域がたくさんありました。そこではこのような気動車がたくさん走っていました。私などの年代の人たちは、おそらく懐かしく感じるのではないでしょうか。都市部の鉄道はどんどん新しくなり、機能的にも優れた列車が走ることになっているのだと思いますが、こちらの「小湊鐵道」は、そうではありません。そういう傾向とは異なる方向で経営されているのではないか、そのことが雰囲気から伝わってきますね。
■『日経ビジネス』の記事の内容を紹介することにしましょう。「小湊鉄道」の沿線、私自身は行ったことがないのですが、会社の公式サイトを拝見すると、丘陵地に里山が残る素敵な田園風景が広がっています。ところが、そのような風景を評価するような考え方は、かつては存在していませんでした。高度経済成長期には沿線が観光地化されたようですが、その頃はそのような観光施設も人気があり、人も集まったようです。しかし、その後はしだいに観光地としては寂れていきました。開発されたのに、寂れていったわけです。それは鉄道を利用する人が減っていくということを意味します。そこで、鉄道会社としてどうしたのか、動画や記事をお読みいただきたいのですが、駅の周りのアスファルトを剥がして木や花を植え、駅の周りを森林にしていくのです。「逆開発」。そもそも…というか、もともとこの地域にあった自然環境や風土の中に、鉄道を埋め戻していくということでしょうか。アスファルトを剥がして、周りの自然環境や風土と一体化していく中で、むしろそれを経営上の利点として活かしていくという発想です。鉄道と地域(地域コミュニティや自然環境)とが繋がることで、新しい価値を産み出そうとしているのです。誤解を招いてしまうかもしれませんが、「鉄道の里山資本主義」という言葉が頭に浮かんできました(藻谷浩介さんからお叱りを受けますね…すみません)。
■私は関西に住んでいますから、私鉄というと、都市と郊外を結んで、郊外に住宅地を開発し…というパターンを連想します。阪急の小林一三が生み出したビジネスモデルですね。小林一三は、私鉄経営のビジネスモデルの創造者として知られています。しかし、この「小湊鐵道」は、それとは真逆の発想になります。非常に興味深いです。
「地域と会社の間に境目を作らなければ、自然の持つエネルギーがバランスシートの資産になってくる。悪く言えば、自然を使い倒す。これは理にかなった事業活動だと思う」
4月下旬。逆開発が始まって1カ月なのに、すでに木々が成長を始めていた。まだ、全体計画から見れば、ほんの一部しか手がつけられていないが、駅前の風景は大きく変わった。鉄道でやってくる若者や家族連ればかりでなく、クルマで通りかかった人々も、様変わりした駅前に集まってくる。枕木で作られたベンチに腰掛け、緩やかに流れる時間を過ごしていた。
■このような発想は、現在の社長の祖父にあたる先代の社長の影響があると記事には書いてありました。先代の社長は画家でもあり、沿線の里山の風景を絵画としてたくさん残した人でした。しかも、昔の駅舎を丁寧にいつまで使い続けることを命じた人です。その辺りのことは、記事の方をお読みいただきたいと思います。記事の最後では、こういう書かれていました。
「開発という字は『かいほつ』という禅の言葉で、自分を気付かせることを言う」。養老渓谷駅に近い宝林寺住職の千葉公慈は、人と人が交錯することで、互いに自分の潜在力に気づくという。地域社会も、来訪者が来ることで、その地が秘めている能力や可能性を発見し、伸ばすことができる。
■その通りだと思います。「反開発」(はん・かいはつ)と言っても、実践していることは仏教でいう「開発」(かいほつ)だったのですね。他者の中に自己には無いものを見出していく=お互いの潜在力に気が付くこと、それが本来地域が持っている可能性を引き出していくわけです。かつて「内発的発展」ということがよく言われましたが、この「反開発」=「開発(かいほつ)」は、どこかでつながっているように思います。