『遙かな町へ』谷口ジロー

20130630taniguti.jpg ■通勤するときは、自宅のある奈良から京都まで近鉄。そのあとは、キャンパスのある大津市瀬田までは、JRを利用しています。先日、通勤途上でたまたま見かけた特急列車が気になりました。特急「スーパーはくと」です。京都から鳥取、そして倉吉に行く特急です。途中、非電化の線路を走るのでエンジンで動く気動車です。その車体が気になりました。谷口ジローという漫画家の作品が描かれています。2012年に開催された「国際まんが博」の開催にあわせて、谷口ジローさんの作品を描いたイラスト列車なのです。谷口さんは鳥取県出身です。

■ところで、ついうっかりしていましたが、谷口さんは、『坊っちゃんの時代』や、『孤独のグルメ』といった作品も出されています。以前、それらの作品を読んでいたのですが、すぐには特急「スーパーはくと」のイラストとは結びつきませんでした。いけません…。ということで、彼の別の作品を読んでみることにしたのです。『遙かな町へ』と、『父の暦』です。今日は、母親の世話をしにいく電車のなかで、読むことにしました。

■大人の漫画です。おそらく、10年程前、まだ若い段階で読んでいたら、読後感もかなり違っていただろうなと思います。この作品は、谷口ジローが51歳のときのものです。漫画の主人公は48歳です。おじさんになったから(なってしまったから…)、心に沁みるように読むことができたのだと思います。漫画評論家の夏目房之助さんが、良い解説を書いておられました。

(このマンガの主人公は)若い頃にあった可能性や選択肢は、やがて「ここではないどこか」への、不可能な思いとして二重化されることを知っている。人がもってしまう、存在へのこの不可能な問いは、父を了解してしまう形で現在の主人公に回収される。大人であることの代償のように。

■ここを詳しく説明すると、「あらすじ」がわかってしまいますね。ですから、まだお読みでない方は、ぜひご自身でご覧いただければと思います。また、すでに過去にお読みになっているばあいでも、改めてお読みいただければと思うのです。この『遙かな町へ』、ヨーロッパでも人気が出て有名な漫画賞を受賞しているようですね。ところで、漫画の舞台は昭和38年の鳥取。漫画のなかの会話をみながら、鳥取出身の卒業生のことを思い出しました。どうしているかな。

【追記1】■谷口ジローさんのインタビュー記事のメモ。
覚え書:「時代を駆ける:谷口ジロー」、『毎日新聞』1~9

【追記2】■この『遥かな町へ』のことにつきましては、facebookにも投稿しました。すると、facebookの「友達」でもある職場の事務職員の方から、「私も、じつ『遥かな町へ』のファン」なんですと、笑顔とともに声をかけていただきました。なるほど〜。でも、その方はまだ30歳代前半です。私がその年代のときであれば、おそらくこの漫画の奥底にあるものを、ぼやっとしか理解できていなかったのではないかと思います。歳を重ねていくこと、また異なる味わいがあるのではないかと思いますよ。

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