生涯学習課の来学

■今朝も、朝のジョギング=朝ランで5km走ってきました。体は(特に、下半身の筋肉は)、どことなく疲れているわけですが、朝ランは脳を活性化します。朝から気持ちが高揚し、今日も元気に仕事に取り組んでいます。さて、今日は、滋賀県教育委員会生涯学習課の職員の方が3名、社会学部の「大津エンパワねっと」のヒアリングのために来学されました。「大津エンパワねっと」は、別のエントリーにも書きましたが、社会学部がある瀬田キャンバスに隣接する「瀬田東学区(小学校区)」と大津市の中心市街地にある中央学区を中心とした「中央地区」の2カ所で、学生たちが地域の皆さんと協働しながら地域の課題解決や魅力を伸ばしていく活動に取り組んでいます。活動が大津市であるということもあり、これまでは大津市役所さん(特に、都市計画部都市再生課)には、大変お世話になってきました。

■今日は、滋賀県教育委員会の生涯学習課の皆さんです。じつは、今年の春、広い意味での「地域づくり」に関連する滋賀県庁の部署に、「大津エンパワねっと」の活動報告書や関連資料をお送りしたのですが、それらの報告書や資料をお読みいただき、「大津エンパワねっと」にご関心をお持ちいただいたことが、今回の来学につながったようです。ヒアリングということもあり、基本的には、「大津エンパワねっと」の概要や取り組みのポイント、また地域との連携のあり方等についてお話しをさせていだいたのですが、生涯学習課が、今後どのような事業展開をしていきたいのかという点についてもお話しを聞かせていただきました。

■生涯学習というと、公民館のような施設での「座学」というイメージが強いわけですが、私自身は、それだけではないと思っています。少し、説明させてください。現在、企業を退職された方、あるいはこれから退職されようとしている方たち(男性が多いわけですが)が、地域社会のなかに再度、自分と社会との「つながり」をもてるような仕組みが地域社会のなかに必要とされています(中高年男性の地域デビュー)。また、地域社会のなかには、大学も含めた様々な学校、広い意味で地域づくりに関わる様々な団体、それから地域にねづいて活動をしている自治会関連の団体、これらが有機的な「つながり」を構築していくことも必要だと考えています。そのような様々な「つながり」、地域社会のなかで孤立した個人、そして「島状」になって分散する小さなネットワークをつなぎながら、さらに社会関係資本(Social Capital)を蓄積しネットワークを重層的に築いていくこと、そのためにはコーディネートする「人材」や「社会的な仕組み」が必要です。

■私は、前者の「人材」を、「呼びかけ屋さん」「つなぎ屋さん」と読んでいます。そのような「呼びかけ屋さん」や「つなぎ屋さん」は地域づくりの表舞台に出るというよりも、舞台裏で活躍する人びとです。「呼びかけ屋さん」や「つなぎ屋さん」は、自分が表舞台に立って、自分が思い描いた「青写真」を、周りの人びとをリードしながら実現していく…そのようなタイプの人ではありません。また、なんらかのカリスマ性のもとで、人びとを魅了し、人びとをまとめるようなタイプの人でもありません(一昔前のリーダーシップ像とは、そのようなものでしたが)。むしろ、様々な潜在的な力や資源をお持ちの個人や団体が、それぞれの「持ち味」を活かしあう「相補的な関係」が生まれる「場」や「チャンス」をつくっていくような人こそが求められているのかなと思っています。そのような意味で、ディレクターではなく、表舞台には出ない影のプロデューサーである必要があります。「影の」という点が重要です。

■そのような「場」や「チャンス」が一定程度、ゆるやかに制度化されていったときに、さきほどの(後者の)「社会的な仕組み」が生まれていくことになります。そのような「社会的仕組み」のなかでは、特定の個人や団体が、他の個人や団体=「他者」を自らの目的のために「手段」として使うような状況(あるいは、そのように見えてしまう状況)に陥らないことが必要です。お互いの「持ち味」を活かしあえる関係が必要なのです。「他者」を「承認」し「評価」しあうこと、と言い換えてもよいかもしれません。これまでも、よく「win-winの関係」ということが言われてきました。しかし、そのような「win-winの関係」が、単に功利主義的(自分にとって都合がよい、自分が得をする…)な関係のままでは、「社会的仕組み」には持続性が生まれません。「他者」を「承認」し「評価」しあうこと、「私(あるいは、私たちの団体)は、あなたの(あるいは、あなたたちのような団体)の存在があって、さらに光輝くことができる」という、他者への「リスペクト」が伴う関係であってほしいと思います。さらには、「他者」の様子をそれとなく伺いながら、お互いに、さりげなく「支援」を申し出ることができる関係であってほしいとも思います。少し難しい言葉になりますが、他者を自らの「エージェント」にしない、他者に自らの「ミッション」を押し付けない関係(「エージェント」化と「ミッション」化の回避)、そして他者を「包摂」しながらも同時に「排除」するような抑圧性を孕まない工夫が必要なのです。

■影のプロデューサーである「呼びかけ屋さん」や「つなぎ屋さん」が生まれるような土壌づくり、そして「他者」を「承認」し「評価」しあうことのできる「社会的仕組みづくり」、この両方をどのように地域社会のなかに根付かせていくのか、そのあたりのことが現在の地域社会の課題になっているように思います。そして、そのような取り組みこそが、これからの時代の、広い意味での「生涯学習」ではないかとも思うのです。生涯学習課の皆さんとは、「大津エンパワねっと」の事以外にも、このようなお話しをさせていただきました。せっかく「ご縁」が生まれたのですから、これからは生涯学習課の皆さんとも、なにか新しい取り組みができればと考えています。

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