『わたしのコミュニティスペースのつくりかた』
■届きました。素敵な本だな〜。本のタイトルを見て、心の中にモワモワとイメージが湧いてきて、ちょっとワクワクしてくる人は、ぜひ手に取って読んでみてください。なにより、タイトル通り「わたしのコミュニティスペースのつくりかた」が具体的に書いてあります。構成が素敵だな〜と思います。
■以下は、amazonに掲載されていた紹介文です。
イメージづくりからオープン準備、運営までの困りごとにQ&Aで答えるほか、民営図書館「みんなの図書館さんかく」、地域の文化複合拠点「ARUNŌ」の完成までのストーリー、全国のコミュニテイスペース運営者の体験談、企画や予算、契約、宣伝、取材対応、事業の継続性までのハウツウなど盛りだくさんの内容です。
場づくり・運営のかなり具体的な実践手法を紹介しておりますので、地域に溶け込むような場づくりに興味を持っていらっしゃる方にぜひ手に取っていただきた1冊です。
■こちらは、この本の著者のお一人である土肥潤也さんが運営する私設図書館「みんなの図書館さんかく」に関する記事です。Twitter経由で、このブログにも貼り付けてみました。この記事もぜひ読んでみてください。
私設図書館「みんなの図書館さんかく」を作った男が「余白」を作る理由(榎昭裕)#Yahooニュースhttps://t.co/bfQpeadLU6
— 脇田健一 (@wakkyken) March 7, 2023
■環境問題に関連して、問題解決のための緻密な仕組みを考えて地域に押し付けてるのはやめよう、むしろ「スカスカ設計」の方がいいんだよと常々言ってきました。こんなので大丈夫なのかなという「スカスカ設計」からスタートしながらも、いろんな人が関わりながら現場の中から「こうした方がおもしろいよ」とか、「私はこんなふうに展開してみたい」とか、そう行った動きが創発的に出てくる、新しいアイデアが出てくる、そういうことの方がずっと大切なんだとも言ってきました。そういう自分の「スカスカ設計」の考え方は、土肥さんの「余白」ということと、どこがつながるような気がします。気がするだけかもしれませんが。この私設図書館「みんなの図書館さんかく」に行ってみようと思います。
韓国の建国大学に出張しました。
■韓国ソウルにある建国大学で開催されている”Forum on the Tertiary Social Economy Education Operating System Development in Forestry”に参加して「大津エンパワねっと」の報告を行いました。反応も良く、気持ちよく報告ができました。午前中の報告は、私がトップバッターで、その後は慶尚大学校社会的経済事業団のイ・ウンソン先生から「専門人材養成事業教育運営体系」について、建国大学の金才賢先生からは「山林造園分野の社会的経済人材の養成」について報告が行われました。それぞれの地域連携型教育プログラムについて、いろいろ勉強になりました。加えて、お互いが「悩んでいること」についての意見交換できたことが良かったな〜と思っています。
■午後からは、プログラムの成果と効果について、事例発表が行われました。昨年、私が指導してた学生さんも報告を行いました。こちらにいると、日本で年度末に向けて抱えている仕事のことを、一時的にしろ、忘れることができます。メールは追いかけてきますけど。今回のフォーラムでは、私と学生のために、同時通訳が行われました。ご招待いただいた金才賢先生(Jaehyun Kim先生)からの様々なご配慮に心より感謝したいと思います。ありがとうございました。
■日本と相対的にではありますが、私の印象では、韓国社会ではいろんなところでトップダウン的に物事を動いていく傾向が強く、ガバナンスという概念が講演の中に度々出てきましたが、私とは少し考え方が違うなあと思いました。特に、以前取り組んだ研究プロジェクトの成果『流域ガバナンス』の中で書いた、「鳥の目と虫の目の対話」という話が聴衆の皆さんの印象に強く残ったようでした。地域連携型教育プログラムにいて講演をしたわけですが、結果として、このような話題にまで話は展開しました。
■今回のことをfacebookに投稿しているのですが、それを読まれた事務職員の方からは、地域連携型教育プログラムに関連した今回の講演をもとに、学部内で簡単なFDをやってくれないかというお話をいただきました。できれば、学部内に閉じずに、他学部の教員の皆さんにも協力、ご出席いただき、他学部で取り組まれている地域連携型教育プログラム、あるいは地域連携型教育プロジェクトについても意見交換できればと思います。まあ、これからの相談になりますが。良い方向に展開していったら良いなと思います。社会学部が深草キャンパスに移転することを前提に、そのような他学部との共催するFDが開催できたらと思います。
ビワマスフォーラム
滋賀県琵琶湖地域「世界農業遺産」認定記念祝賀会
■本日、滋賀県庁農政水産部農政課企画で世界農業遺産を担当されている職員さんから、写真が届きました。先日、このブログに「『世界農業遺産』認定シンポジウム」を投稿しましたが、このシンポジウムの後に開催された小さな祝賀会の時の写真です。この祝賀会が開催される前には、野洲市で「魚のゆりかご水田」に取り組んでおられる農家の堀彰男さんに、「世界農業遺産の認定を今後の地域での活動にどのように活かしていくのか」、まだちょっと抽象的な言い方になりますが、そのようなことについて相談をさせていただきました。また、世界農業遺産に認定された「琵琶湖システム」においては、湖岸地域とともに、その湖岸地域を含む流域の上流地域との交流が大切になってくると考えています。夢は広がります。そのようなことも、祝賀会では堀さんにお話させていただきました。共感もしていただきました。今後の展開が非常に楽しみです。
【関連エントリー】「『世界農業遺産』認定のお祝い」
流域治水の真空地帯
■火曜日は、1講時から授業があります。朝、多くの学生の皆さんと一緒に、JR瀬田駅から瀬田キャンパスに向かっていると、LINEで家族からメッセージが届きました。どうしたろだろうとスマホを見てみると、今朝の新聞記事でした。記事は、8月上旬に氾濫した高時川に関連するものでした。このブログでは、高時川に関連して、過去にこのような投稿をしてきました。
「被害引き受けた農地の苦悩」という記事
高時川の氾濫に関してご教示いただきました。
流域治水に関連して
高時川氾濫の動画
高時川の氾濫に関連して-「遊水池」の受苦-
■8月上旬の高時川の氾濫で、被害を受けられた農家である横田圭弘さんとも少しやりとりをさせていただきましたが、溢れた水を受け入れた後、農地は大変なことになっています。今は、稲の収穫をされていますが、圃場に流入した漂流物を手で取り除いても、どうしても全ては取り除くことができません。しょっちゅうコンバインに漂流物が挟まって作業が進まず、たびたびコンバインや乾燥機等が故障しているとのことでした。今のところ、この費用は、被害農家である横田さんの農園が負担しなければなりません。以下は、9月24日の横田さんのfacebookへの投稿です。
■さて、今朝の記事の内容を見てみましょう。記事では、農業保険制度のうち収入保険制度の算定方法について解説してあります。記事を引用します。
過去5年平均収入を基準にして、被害に遭った年の収入が90%を下回ると下回った額の最大9割が補填される仕組みですが、横田さんは数年前の台風でも大きな被害を受けました。過去の5年のうち毎年のように被災した場合は、基準となる平均収入が低くなるため、補填額の算定は厳しくなます。従業員を雇って運営する法人の経営では楽ではありません。
■横田さんは、自分の農地が「霞堤」として機能するように治水計画上で位置付けているのであれば、被害にあうリスクが高いわけだから、どうして他の地域と同じ扱いで算定されなければならないのか、おかしいのではないかというわけです。本当にその通りだと思います。算定方法は、被害を受けた農地の実態に即したものではないということになります。農家を補償する制度としては単純すぎるようにも思います。
■記事では、県が田畑に治水機能を期待しているのなら、その機能を果たした時の補償はないのかとの疑問から、滋賀県庁の流域治水政策室に質問されたようですが、以下のような回答のようです。
「霞堤」は県流域治水基本方針に記載はあるが、流域治水条例への明記はなく、知見も深まっていない。治水機能を果たす農地があることは認識しているが、それにより下流への影響の検証はできない。
湖北圏域河川整備計画は2016年に策定しており、高時川上流は整備実施区間には位置付けられている。そのなかでも、霞堤の扱いは広域への影響を考慮する必要がある。測量やシミュレーションをしながら、慎重に進めているところ。
■率直に言えば、「いかにも行政組織らしく慎重な回答だな」と思います。私なりにこの行政組織の回答を言い換えれば、「霞堤」が治水機能を果たしているかもしれないし、そのことはわかってはいるけれど、きちんと科学的に評価できていないので、本当に下流の被害を軽減しているのかといえば、よくわからない。たがら、すぐには対応できない、どうすれば良いのか今は考えがあるわけではないし、何かできるわけでもない…ということのように聞こえます。直接的には言ってはいないにしろ、結果として、「被害農家には、ご自身で負担していただくしかない…」と言っているのに等しい内容かと思います。被害農家の横田さんにはそのように聞こえていると思います。記事では農政課にもお尋ねになっています。農政課は「『農業保険制度は全国一律の仕組みで、現状、県独自に別途助成することは困難であると考えている」と回答されています。行政は、何の法的・制度的な根拠もなく、簡単に、被害農家に寄り添うような、あるいは期待を持たせるような発言はできないのでしょう。そのことも理解はできます。でも、流域治水の制度の真空地帯に横田さんは置き去りにされたままになります。
■記事には、次のようなことも書かれていました。日本農業新聞の記事のようです。
農水省が自民党農林合同会議に23年度農林予算概算要求の重点事項を示した際に、自民党側から収入保険について、毎年のように被災した場合に基準収入が低く計算され、補填額が減ってしまうとの課題提起がありました。農水省側は問題は認識しているとし、何らかの対応を検討する考えを示唆したとのことです。
■これから気候変動がさらに進んでいきます。豪雨による被害が頻発するでしょう。そのような被害に対応できるように、さまざまな救済制度を修正していく必要があるように思います。そのような被害発生後の救済制度の修正も含めて、国土強靭化なのではないでしょうか。土木技術だけの話ではないはずです。
■以上の堀江さんの記事の下の方に、「霞堤の指針作成県、国に要望 農地浸水補償検討巡り」という記事が掲載されていました。県議会で、三日月滋賀県知事が以下のような答弁をされています。「霞堤の定義や機能を評価する手法などが定まっておらず、被害の補償を決めるのは難しいとされている。三日月知事は『国の考え方が示されるよう、(霞堤の)ガイドラインの作成を要望したい』と述べた」。県が国に下駄を預けるかのような答弁のようにも聞こえますが、「国がまずは基準(ガイドライン)を作ってくれないと、県としても動きようがない」ということなのでしょう。このような要望の結果として、国はどう対応していくのか継続して注目したいとは思いますが、このような中で、横田さんの被害の苦しみは、そのままということになってしまうのでしょうか。すでに起こったこととして、救済の対象にはならないということになるのでしょうか。
夏原グラント活動報告書(2021年度)
■ 2014年から、公益財団法人 … 原グラント」の選考委員を務めています。平和堂は、滋賀県を中心に近畿地方、そして北陸地方や東海地方にまで総合スーパーとスーパーマーケットを展開する企業ですが、この平和堂の創業者である夏原平次郎さんが、「平和堂をここまでに育てていただいた地域の皆様に感謝し、そのご恩に報いるため」に、私財を寄付して平成元年に設立した財団です。
■こちらの財団では、2011年度の公益財団法人への移行を機に環境保全活動や環境学習活動への助成も始められました。「夏原グラント」です。「びわ湖およびその流域の自然環境の保全」に取り組むさまざまな実践活動、教育活動、研究活動に対して、その活動資金を助成されています。2022年度は61団体へ総額17,508,000円を助成しています。
■毎年、年度末が近づいてくると、審査が始まります。まず書類での選考が行われ、その次に選考に残った団体からプレゼンテーションを聞かせていただきます。審査をさせていただきながらも、地域の困った課題に気づき、有志とその課題を共有し、具体的な活動を少しずつ展開されていくプロジェクトのプロセスから、大切なことを学ばせていただいています。ありがとうございます。
■昨日は、平和堂財団から2021年度の活動報告書が送られてきました。こちらの財団の事務局は、しがNPOセンターのスタッフの皆さんになりますが、丁寧に各団体にヒアリングをされています。私も、審査するより、現場でのヒアリングに出かけたいな〜と思うのですが、立場上、そのようなことは難しいのでしょうね。
■審査員も9年目になりますが、審査員として希望することは、助成を受けた団体の間での交流がもっと活発になってほしいということです。そのような思いもあり、2021年度は助成を受けた団体に集まっていただき、ワールドカフェ方式のワークショップに取り組んでいただきました。すごく手応えを感じました。助成をするだけでなく、環境保全活動に取り組む人たちの間で、悩みを聞き合ったり、知恵を出し合ったり、アドバイスをしあったりする「場」を作っていくことも財団の大切な役目だと思っています。
「被害引き受けた農地の苦悩」という記事
■先月、8月の上旬の豪雨で、滋賀県長浜市を流れる姉川の支流、高時川からの越水で農地が一時的に水没した災害について、「滋賀の豪雨 霞堤の機能発揮 被害引き受けた農地の苦悩」という記事が、今朝(9月13日)の朝日新聞に掲載されました。
8月上旬の豪雨で、氾濫した滋賀県北部の高時川を空撮した写真が、期待通りに遊水機能を発揮した「見事な治水」だとネット上で注目を集めた。ただ、現地を取材すると、単純に成功とも言い切れない。被害を引き受ける農地の公益性にどう報いるかが、豪雨頻発時代の課題になる。
■この災害が発生した時、この記事のリード文にもありますが、「見事な治水」という意見がTwitter等で多く見られました。中には、水害の被害を単純に報道するマスメディアの報道姿勢を批判してこの霞堤を評価するツイートもありました。このような「見事な治水」という意見の背景には、近年注目を浴びている流域治水という考え方や取り組みが存在しています。
■私自身は、流域治水の考え方に賛成するものの、この時のTwitterを中心とした社会の反応には、強い違和感がありました。その時、すぐにこのブログで自分の考え方を述べて、専門家にも問合せたりしました。以下が、その時の投稿です。
高時川の氾濫に関連して-「遊水池」の受苦-
高時川氾濫の動画
流域治水に関連して
高時川の氾濫に関してご教示いただきました。
■どうして、農地が水没した立場から「受苦」の立場からの記事が出ないのだろうと不思議でしたが、やっとこう言った視点からの記事が出てきました。流域治水の専門家でもない素人の意見と一蹴されるかもしれませんが、流域治水の問題が、私には「土木的」「技術的」なことだけに矮小化されているように思えて仕方がありません。私は流域ガバナンスという社会的課題について研究してきましたが、そのような研究関心からするならば、以下のような点にもっと社会的注目が集まる必要があると思っています。特定の地域や関係者に、被害という「受苦」が集中することで、災害を免れるという「受益」を薄く広く享受することができる、このアンパラスさについてもっと議論を積みかねていくべきかと思うのです。
■流域全体の構造化された問題群を、どのように多様なステークホルダーの関係・連携の中で緩和するのか。もし、一部に被害が集中する場合は、その被害からの回復を支援しケアしていく仕組みをどう立ち上げていくのか。そのような一連の仕組みも、技術とセットで考えないと意味がないと思っています。山間部の風力発電も含めた開発、また鹿の食害、それらによる土砂が流出しやすくなっている問題。人が山に暮らさなくなり、山の手入れができなくなって山が荒れているという問題。頻発する豪雨。新しい災害のステージに相応しい避難行動はどのようなことなのか。平時において日常的な減災の取り組みはどのようなものがあるのか。経済的補償を農家の農業共済にだけ押し付けておいて良いのか。記事にもありますが、「被害を引き受ける農地の公益性にどう報いる」のか、そのための制度はどのように可能なのか。
■じつに様々なことが相互に連関してくると思います。特定の省庁や役所、特定の専門家だけで解決できる話でもありません。頻発する豪雨で、流域単位の「総合政策」が、今こそ必要になっているのだと思います。
高時川の氾濫に関してご教示いただきました。
■8月4日(木)に滋賀県長浜市の高時川が氾濫したことにより、facebookのお友達の横田圭弘さんが経営されているヨコタ農園の圃場が水に浸かりました。このような状況に関して、特にTwitterにおいては、今回のことを「霞堤」(後に説明します)がうまく機能した例として高く評価するTweetを多数拝見いたしました。その一方で、ヨコタ農園の圃場が泥をかぶってしまったこと、言い換えれば横田さんが被害を受け止めた「苦しみ」に関してほとんど言及がなく、加えて、この「苦しみ」を緩和する社会的な支援の仕組みも今のところ存在しないということを知り、強い違和感を覚えたのでした。また、行政の計画によってヨコタ農園の横の堤防の高さが低く設定され、高時川の水量が危険な水位に達した時は、濁水が圃場に流れ込むことにしてあるにもかかわらず、そのことに対するきちんとした補償する制度がないことに驚きました。あるのは農家が自ら掛け金を支払っている「農業共済」のみというのです。横田さんは、地域の担い手農家として、耕作をされない農家の農地を預かり、小作料を支払いながら営農されているが故に、非常に理不尽なものを感じてしまいました。
■ヨコタ農園さんの現在の圃場が遊水池になることで、下流の地域に広く治水上の「受益圏」が発生することになります。特に「受益」とは思っておられないかもしれませんが、理屈の上ではリスクが低減されています(そのことを科学的に定量評価することは困難らしいのですが)。ところが、ヨコタ農園さんが遊水池になることで、そこには「受苦圏」が同時に発生することになります。しかも、「霞堤」として評価している人たちには、この「受苦圏」の存在が視野に入っていないように思います。もちろん、圃場が水に浸かっているところは(ニュース等を通して)目に見えているのでしょうが、その「受苦圏」での「苦しみ」を理解しようとはされていないように思うのです。私からすれば、見事に「霞堤」として機能している点に目が奪われてしまっているが故に、「受苦圏」の「苦しみ」にまで思い至らないということかなと、思ってしまいます。
■トップの画像は、左が私のスマホに入っている「スーパー地形」というアプリで切り取ってきたものです。右は同じく私のスマホに入っている「Google Earth」から切り取ってきたものです。少しずれていますが、ほぼ同じ場所を切り取ってみました。左の方には、白い線の○で囲んだ場所があります。よくご覧いただけばわかりますが、この部分だけ堤防が高くありません。高時川の水が増水すると、この開口部から圃場に濁水が流れ込むことになるわけです。この画像の北側(上)が高時川の上流になります。上流から流れてきた水の一部がこの開口部から吸収されて、高時川の水の勢いが緩やかになるわけです。高時川の水位が低下してくると、圃場に一旦たまった泥水も、再び、川に戻っていきます。このような仕組みを「霞堤」と呼んでいます。
■ちなみに、このような「霞堤」は、「流域治水」の推進という文脈で評価されているように思います。「流域治水」とは、「気候変動を踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策」のことです。まだ不勉強で正確に説明することができません。国交相のこちら資料や、滋賀県のこちらのサイトをご覧ください。。
■ところで、私がfacebookに上記のことを疑問に感じたと投稿したところ、お2人の専門家の方から、様々な情報の提供をいただきました。ありがとうございます。お名前はあげませんが、お2人とも、流域治水を推進していくお立場の方達です。お2人のご教示の詳細をここで説明するわけにはいきませんが、いろいろ勉強しなければならないと思っています。とはいえ、当初の強い違和感や理不尽さについて解消されたわけではありません。
■今回、環境社会学者で、前滋賀県庁知事・現参議院議員の嘉田由紀子さんが高時川上流をお仲間と調査され、その結果をfacebookにアップされていました。いろいろ重要なことを書いておられます。私は、この嘉田さんのご投稿をシェアさせていただきました。そして、嘉田さんからコメントをいただきました。
今回の高時川の氾濫(出水)は、異例の大雨、豪雪とダム計画で廃村になった奥山、琵琶湖淀川水系の最源流部、日本のブナ帯・ユキツバキ群落の南限、ブナとトチノキの巨樹巨木保全地域、結果として、伝統知である「霞堤」や、かつての住まい方の継承により、人的被害の回避、霞堤の中で作物被害を受けた農家の苦悩をどううけとめるのか?などなど、私の単純な頭では整理つきません!皆さんの叡智を結集ください!。
■今回は、流出した流木が対岸の湖西の高島市の湖岸に大量の打ち上げられましたが、このような事まで含めて、いろんな専門分野、いろんな視点、いろんな立場からの知恵が必要とされているように思います。個人的な妄想のレベルですが、いろんな専門分野や、地域の歴史や変化をよくご存じの方達が集まって、大雑把でも良いので(科学的なエビデンスが必ずしもなくてかまわない)、問題の「全体像」を共有できたらいいなあと思います。そういうワークショップができたらいいなあと思います。
【追記】■高島市の湖岸に漂着した流木のことについてfacebookに投稿したところ、岐阜県の林学の専門家から、以下のような記事の存在をご教示いただきました。ありがとうございました。
流域治水に関連して
■連日、高時川の氾濫のことで投稿しています。長浜市の高時川沿いにあるヨコタ農園さんの農地が、高時川の氾濫で水に浸かりました。ここは、「霞堤」なのだそうです。霞堤についてこういう説明をネット上に見つけました。「わざと田んぼに水を引き受けることで、反対側の田んぼや集落の氾濫、下流の氾濫を抑えています」。よくわかっていないので疑問に思ったことがあります。もちろん、この説明が正しければの前提になりますが。
■「誰」がわざと水を引き受けることを決めたのでしょう。もちろん、ヨコタ農園さんではないはずです。河川行政については素人なんですが、ここ、とても大切なことだと思っています。また、専門家の人たちにお聞きしたいと思います。予想外の豪雨で、河川水が堤防を越えるとか、堤防が切れるとか…「霞堤」はそういうのとは違うと思います。そのような被害が出ないように、わざと水を引き受けるようにしているのですから。「わざと引き受ける」というのは、計画、想定内の話になります。であれば、引き受けた後のケアや手当も必要だと思うのです。そのことも含めて計画ではないかと思うのです。
■もうひとつ。別の例を話します。滋賀県では、ローカル私鉄である近江鉄道を守るために、全国初の「交通税」導入の検討を始めました。私自身は、交通税の導入に賛成です。私自身は湖西に暮らしているので、めったに湖東を走る近江鉄道を利用することはありませんが、賛成しています。滋賀県民としてそう思います。
■もし、「交通税」導入の理屈が可能ならば、「流域税」の検討も必要じゃないのかと素人としては思います。豪雨による氾濫等の災害を、「流域治水」で減災するために税を広く薄く集めて、例えば「遊水池」として犠牲になった農家や地主等の関係者を支えていく仕組とそれを支える社会的費用が必要なんじゃないのかなと思うのです。都市は、森林や農地によって守られているのですから。森林税は、すでに存在しています。であれば、なおのこと流域税って必要なんじゃないかと思います。森林にしろ、交通にしろ、流域にしろ、多くの皆さんが連携して協力して初めて維持できるわけです。みんなで共に支えていく仕組みが必要でしょう。
【追記1】■高時川の水位が上がった際、この投稿の農地が「浸水被害にあう可能性が、他の場所に比べて相対的に高いということがあらかじめわかっていて、なおかつ、被害が出ても仕方がない…」と考えている人はいるのかいないのか、その辺りは分かりません。しかし、必要なことは、「これは流域全体の問題なのだから、「他人事」ではなく「自分事」として考えるべきだ」と考えることなのではないでしょうか。
【追記2】■流域治水の考え方について、もっと勉強しないといけません。不勉強を承知で申し上げれば、素朴な疑問点は、「流域治水というのは、土木技術的なことだけなのか」ということです。減災という言葉があります。災害を抑え込むのではなくて、受け入れて緩和するという感じでしょうか。であれば、受け入れたあと、どうやって地域社会を復旧させていくのか、特定の人たちに被害が集中しているのであれば、それをどうやって流域全体で支えるのか、その辺りの社会的な制度や仕組みに関しても同時に考えていく必要があると思います。
【追記3】■農地が遊水池になることで、どれだけ河川の流れの量や勢いが緩和されたのか、その科学的評価が知りたいです。もうひとつ、緩和されたことで、どれだけ被害を抑えることができたのか、その経済的評価も知りたいです。他にも評価のポイントはあるのだろうと思いますが、そのような農地が「遊水池」になったことで生まれた社会的価値を多くの人に「見える化」する作業が必要なのではないかと思います。そのようなことは、普段、生きて生活している範囲の中だとなかなか実感できませんからね。その上で、補償のもとになる費用をどうやって捻出するのか、そこもいろんな方達の知恵をもとに考えていくべきだと思っています。
高時川氾濫の動画
■高時川氾濫の動画です(ABCテレビニュース)。横田さんの農場(ヨコタ農園)も映っています。10分50秒あたりからです。農地が遊水池になっていることがわかります。取材のヘリコプターに乗っている記者らしき人が、「川の水が逆流」していると語っています。遊水池が吸収しているわけですね。これがまさしく「霞堤」なのです。この動画のコメントに、村上悟さん(特定非営利活動法人碧いびわ湖)が、的確にコメントをされています。以下は、そのコメントの一部です。私は、この部分が非常に重要かと思います。早急に、そのような仕組みの検討に入るべきだと思います。
霞堤で耕作してくださっている方のご苦労を、その方々個人に押し付けるのではなく、流域の社会みんなの負担で補償する社会的な仕組みが重要と思います。
また、稲であれば一時的に水に浸かっても収穫できる可能性がありますが、転作の大豆や野菜だと全滅になります。転作も、一律ではなく、これらの場所は稲作で続けられるような施策も必要だと思います。
■ひとつ疑問もあります。「わざと田んぼに水を引き受けることで、反対側の田んぼや集落の氾濫、下流の氾濫を抑えています」という部分。「誰」がわざと水を引き受けているのか…、そこをはっきりさせる必要があると思います。
■本日、氾濫して遊水池となった農家の後始末にいて、農家の横田圭弘さんがfacebookに投稿されていました。水がひいた後、横田さんの息子さんとヨコタ農園の従業員さんが、農地に入り込んだ瓦礫を取り除く作業をされたことについての投稿です。ぜひ、こちらの投稿もご覧ください。
■これは個人的な意見ですが、これは、滋賀県だけの話ではないと思います。現在、我が国では、あちこちで毎年のように豪雨が頻発しています。どこにでも起きることです。気象の予報も含めて災害の予防をしっかり行う、そして災害が発生した後について、被災者への精神的ケア、復旧に向けての労力の提供、経済的支援、様々な支援、トータルな支援が必要になると思います。
【追記】■ヤフーニュース(毎日新聞)に、「琵琶湖岸に大量の流木 出漁できず遊泳も禁止 高時川氾濫で被害」という記事が出ています。高時川の災害は河川だけでなく、琵琶湖にまで影響を与えているのですね。記事は、高島市のマキノ町のとのことです。流木はどのあたりまで流れているのでしょうか。