人間に対する思いやりの感覚を持ったAI
▪️コンピューター科学者のジェフリー・ヒントンさんは、2024年にノーベル賞物理学賞を受賞されています。もともとは米グーグルの元幹部でしたが、2023年に、AIの発達がもたらす危険性について自由に話せるようにGoogleを退職されています。こちらの「人類がAI支配を生き延びる唯一の道「AIのゴッドファーザー」が提唱する解決策とは」という記事は、昨年の8月のCNNのネットニュースですが、AIが急激に進化していることを実感するようになり、調べ物をしていてこのような記事に辿り着きました。
▪️ヒントンさんは、多くのテック企業が試みているように「従属的な」AIに対する人間の「支配」を守ろうとしてもうまくいかないと考えています。AIは私たち人間よりも賢いので、自分たちの目的を達成するために人間を支配しようとするというのです。「AIは現時点で既に、自分の目的を達成するために人間を欺いたり、だましたりする事例が報告されている」のです。それじゃあどうするのか。ヒルトンさんは、母親が子どもを守るように、AIに人間に対する思いやりの感覚を持たせることだというのです。ちょっとジェンダーに関するバイアスっぽいものも感じますが、言わんとすることはわかります。
▪️この記事を読んで、小さな頃に読んだ漫画「鉄腕アトム」を思い出しました。この漫画ではオメガ因子という装置が登場します。このオメガ因子を装着されると、ロボットが良心を持たず人間に対して平気で悪いことをするようになるのです。たしか。この時、ロボットは基本、人間に対して善良な存在なのですが、AIの場合は、そのまま成長していくと必然的に人間にとって邪悪な存在になっていくことが予想されているのです。オメガ因子が組み込まれていなくても。そうならないように工夫をして人間に対する思いやりの感覚を持たせるということにるわけですね。でも、具体的にはどういうことなんでしょうね。間に合うのかな。以下は、記事の最後の部分です。
AIはいずれ、AIを超えた「汎用人工知能(AGI)」になると多くの専門家が予想する。
ヒントン氏は、かつてはAGIの実現に30~50年かかるだろうと思っていたが、今は「合理的に考えて5~20年」で達成されると考えるようになったと話した。
もしAIがこれほど急速に進化すると知っていたらどうしていたかという質問に対しては、AIを機能させることしか考えなかった自分を悔やんでいると告白し、「安全問題についても考えるべきだった」と答えた。
現実化するディストピア、世界に拡散するディストピア。
▪️「ディストピア」って映画や小説の中に描かれていると素朴に思っていたけれど、もう現実なんですね。恐ろしい。ミネソタ州で暴れ回っている⁉︎ アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)が身につけている情報システムについて調べて驚きました。こういうネットニュースを読みました。『ニューズウィーク』の記事です。2つの引用を貼り付けます。「移民政策の名の下に進むこの変化は、いずれ国境を越え、他国の制度設計にも影響を与える可能性がある」というのが恐ろしい。
米国の移民関税捜査局(ICE)が構築しつつある監視システムは、もはや近未来SFの描写と見分けがつかない水準に達している。顔認識、位置情報、DNA、虹彩スキャン、電話盗聴、ソーシャルメディア分析――それらが単独ではなく、巨大なデータ基盤のもとで統合され、全米規模で運用されているからだ。
【監視対象は全世界】
ここまで読めばわかるように、これらの監視が移民に限定されていないことは大きな問題だ。アメリカにいる者をすべて調べ、不法移民をあぶり出すという理屈のため、アメリカにいる人間は誰でも監視対象だ。つまり、もはやICEはアメリカにいるすべての人間を監視する組織になっているのだ。
専門家は、この状況を「移民排除を名目にした全国民監視」と指摘する。データブローカーとAIの発達により、国家はかつてないほど低コストで包括的な監視を実現できるようになった。その最先端にいるのがICEなのだ。
こうした動きが示すのは、アメリカが「自由と法の国」から、「アルゴリズムとデータに統治される監視国家」へと静かに変貌しつつある現実だ。移民政策の名の下に進むこの変化は、いずれ国境を越え、他国の制度設計にも影響を与える可能性がある。
▪️アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)によって、ミネアポリスの市民2人が射殺されました。アメリカの有名なシンガーであるブルース・スプリングスティーンさんが、この市民2人が射殺された事件を受け、強硬な移民政策を進めるトランプ大統領、ミラー大統領次席補佐官、ノーム国土安全保障省長官を名指しで批判する曲を発表しました。この記事で知ることができました。
カナダの首相であるマーク・カーニーさんの講演
▪️学生の頃の話です。経済的には安定成長の時代ですね。指導教員であった領家穰先生がこんなことを黒板に書きました。
制度<集団<個人
制度>集団>個人
▪️この不等号が何を表現しているのかというと、変化のスピードをあらわしています。上の方は、個人が変化していくスピードと比較して、集団はもっと遅く、制度はさらに遅い(あるいは、そのように感じられてきた)かもしれないけれど、これからは、逆になる、あいるはすでに逆になっているといわれたのです。いろんなことを忘れてしまうのですが、この時のことは強く記憶しています。実際、大学卒業後にしばらくしてバブル経済が始まり、その後バブルが弾け、その頃同時に、東西の冷戦がおわり、ソ連は解体しました。東西の冷戦が自分が生きている間に終わるとは思いもしませんでした。
▪️領家先生は、もうお亡くなりになっていますが、もしご健在でアメリカのトランプ大統領に振り回されている世界の状況をご覧になるのならば、この不等号に国家や世界が加わっていたでしょう。その世界を、ひとりの老人(トランプ)という個人が振り回しているわけです(もちろん、背景にはスタッフがいて、取り巻きがいるわけですが)。私が学生時代に、すでに「社会学では、全体社会が国家であることを自明にしてきたけれど、もう今や全体社会は世界や」と言っておられましたので、このときはたまたま世界が入っていなかっただけかもしれません。当時、多国籍企業についてはよくいわれましたが、グローバル経済、グローバリゼーションということは、私の記憶にはありません。
▪️しかし、その第二次世界大戦後に築き上げられてきた世界の国際秩序が、崩壊しはじめたという講演を聞きました。個人、集団、制度、国家を超えて、国家間の国際秩序、すなわち世界の方から大きく変わろうとしている、いやこれまでの国際秩序が崩壊したというのです。カナダの首相であるマーク・カーニーさんが、スイスで開催されている世界経済フォーラム(ダボス会議)で講演をしました。その講演が、あちこちで高く評価されているように感じます。
▪️カーニー首相は、アメリカが主導して築き上げてきた戦後の世界秩序(アメリカの利害に基づいた)は、それが本当であるかのように演じる全員の意志、言い換えればそのような虚構に依存していたという事実をストレートに語っています。身も蓋もない話ですが。そのような虚構は、アメリカ自身が、トランプが粉砕しているわけですからね。だったら、そんなの無理して信じるふりをするのをやめてしまおうぜと、言っているわけです。信じるのを辞めたら、困るのはトランプじゃん、というわけです。偉そうにしているアメリカのような国を相手にせず、既存の国際秩序はすでに崩壊してしまったのだから、中堅国家による新たな協力体制の構築していきましょう。そう言っているわけです。日本では、今のところあまり報じられていませんが…。最初、私はXの投稿で知りました。以下は、その講演の日本語訳です。
▪️2023年に100歳で死去したヘンリー・キッシンジャーさんは、トランプ大統領について「一つの時代の終わりを告げ、古い見せかけを捨てさせるために歴史に現れる人物」という評価をしていたようです。キッシンジャーは、ニクソン政権およびフォード政権期の国家安全保障問題担当大統領補佐官、国務長官を務めた国際政治学者です。カーニーの講演とキッシンジャーの評価はかなりの部分でかさなります。「一つの時代の終わり」とという部分。戦後、良くも悪くもアメリカが築いてきた世界秩序が終わるということでしょう(もちろん、キッシンジャーはトランプの手法や憲法への挑戦については厳しく批判していますけど)。そもそも、トランプ大統領って憲法や法律をこれまでの大統領のように自分を縛るルールとしては捉えていませんし。無視するか敵を攻撃するための道具に使うかどちらかのように思います。そもそも憲法や法律がどのようなものであるのかも、深く理解していない可能性があるようなきがします。
▪️第2期のトランプ政権になって以降、そして今月に入って、ベネズエラへのアメリカ軍の侵攻、さらにグリーンランドの領有といった一連の出来事が起きてきすごく気持ちが悪かったのは、戦前の帝国主義的な世界に逆戻りして、ギャングの親分が「縄張り」を主張して、暴力と金の力で好き放題やるような世界に戻ってしまうことに対する拒否感なのだと思います。地面が揺れるよう気持ち悪さです。そのような世界の状況のなかでのマーク・カーニーの講演です。注目されるわけですね。
▪️カーニーがいう「中堅国家による新たな協力体制」に日本はどう向き合っていくのでしょうか。トランプが、G7(主要7カ国)が構築しようとしてきたリベラルな国際秩序ではなく、それに代わる利益と力による新たな国際枠組みとしてコア5(5とはアメリカ、中国、ロシア、インド、日本、EUは排除されています)を構想しているらしい。ただ、そもそもトランプ大統領は、今年の11月にある中間選挙以降も政権が維持できるのか(民主党が上下両院で過半数の議席を取れば弾劾されるかも)、残りの任期3年間大統領の職務を続けられるのか。79歳です。発言や彼の挙動をみていると…心身ともに健康状態はどうなんだろうと思いますね。特に、精神面ですが…。