家棟川での現地交流会

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■滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、草津市の平湖・柳平湖の再生をめざす草津市志那町の皆さんと一緒に、野洲市の「NPO法人家棟川流域観光船」の活動を視察させていただきました。たいへん充実した現地交流会=視察・勉強会になりました。平湖・柳平湖の皆さんも、家棟川の皆さんも、ともに「つながり再生モデル事業」に応募されて採択されたグループです。私は、このモデル事業の採択時の「検討会」で委員長をしていたことから、積極的に実際の現場に出て行くようにしています。今回は、環境保全の活動に積極的に取り組まれてきた「NPO法人家棟川流域観光船」から学ばせていただこうと、現地交流会に参加させていただきました。

■「NPO法人家棟川流域観光船」は、「野洲の市街化の進展に伴い、市街地や水田等からの濁水の流入、ゴミの投棄、河口部のヨシ帯消失や在来魚介類の減少など、家棟川流域にはびわ湖の水や自然環境に関する課題の多くを抱えている」という状況のなかで、「ゴミがなく自然環境に恵まれた家棟川にすることを目指して」2007年に設立されました(NPOの公式ページより)。「流域観光船」って、ちょとかわった名前ですね。しかし、ただの観光船とは違います。観光は、多くの人びとに家棟川の状況を知っていただくための、ある意味「手段」なのかなと思います。

■これは一般論ですが、身近な「環境」に対して地域の「人びと」の関心が低くなっていくと(「つながり」が弱くなる/切れる)、身近な「環境」が悪化・劣化するリスクが高まります。言い換えれば、「人びと」と「環境」とのあいだにある、「物理的距離」が近くても「社会的距離」(意識しなくなる、かかわるチャンスがなくなる)が生まれてしまうと、「環境」は悪化・劣化していくリスクが高まります。この「エコ遊覧船」による観光は、家棟側に対する人びとの関心を高め、「社会的距離」を縮めていくための「手段」なのではないか…と思うのです。家棟川にすてられる不法投棄、流れてくるゴミ、これをなんとかしたいと、多くの市民ボランティアが参加してゴミの回収を行ったようですが、ゴミの量が減ることはなかったといいます。そこで、発想を転換し、家棟川に残る素晴らしい自然を楽しんでもらいつつ、この川の実態を多くの皆さんに知っていただこうと、手漕ぎによる遊覧船を始めたのだそうです。言い換えれば、観光船という「手段」を通して、家棟川と人びととの「社会的距離」を縮めようとされたのです。

■「NPO法人家棟川流域観光船」は、地元の漁師、「魚のゆりかご水田」を実践している農家など、里山・森・川・田畑・琵琶湖で活動する団体のリーダーが中心となって構成されています。代表の北出さんからは、野洲市環境基本計画を市民参加でつくるさいに、出会った地元の市民委員の皆さんが、その出会いをきっかけに、このNPOをつくったのだ…というお話しもうかがうことができました。多様な方達が参加されているわけです。ですから、以下のような強みをもっていることを自覚されています。以下は、NPOのパンフレットからの引用です。

地域の人に支えられて共に実践している
・琵琶湖周辺の6自治会(元)長が、NPOの趣旨に賛同し、会員参加している。
・漁師をはじめとした地元の21人が船頭として活躍している。
琵琶湖ならではの独自性がある
・琵琶湖とその水郷景観、漁師料理、漁師の語りなど、地域独自の宝物を提供できる。
行政の環境施策と連携した事業として実践してきた実績がある
・環境学習船として、延べ2,000人近くが乗船し、河川の現状を体験していただいた。
・これらの取組みが県知事から表彰された。

■以上のように「NPO法人家棟川流域観光船」で興味深いのは、そのメンバーの多様性です。いろんな「得意な分野や能力」をもった人びとが横につながり、「エコ遊覧船」による観光を柱にしながら、様々なテーマでの活動が可能になっていることてす。活動内容は、じつに様々です。家棟川の上流にある里山の保全(「漁民の森」整備)にも取り組んでおられます。家棟川流域のなかにある「山」、「水田」、「川」、「琵琶湖」をトータルに視野に入れて活動されているのです。活動に幅が生まれるだけでなく、家棟川をより大きな視点から捉えるように変化されています。素晴らしいことだと思います。チャンスがあれば、こういう多様な活動を展開されるようになってきたプロセスに関して、特に、レリジエンスという観点からきちんとお話しを伺ってみたいと思います。

■最後の方の写真についても説明しておきましょう。料理の写真。これは湖魚を使った「漁師料理」です。「NPO法人家棟川流域観光船」で提供されている料理です。「エビ豆」(大豆とスジエビ)、「鮎」(山椒風味)、「ウロリ」。「ビワマスの煮付け」、「鮒寿司」。「ビワマスの刺身」。ただし研修ですのでお酒はなし。ということで、ご飯を2杯もいただきました。

NPO法人 家棟川流域観光船

【追記】■逆にいえば、特定の人が、「地域づくり」活動のなかで自らリーダーたろうとして(主導権を独占したいという欲望)、情報を独占して他のメンバーを操作しようとすると、活動の持続性は急激になくなってしまいます。自分の頭のなかの青写真に、他のメンバーを資源として動員するような形に陥ってしまうことの危険性があります。「地域づくり活動」は、企業などを運営するやり方とは違うところがありますから。

松の木内湖の環境再生と地域づくり

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■一昨日、30日(木)、滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、琵琶湖政策課や滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの皆さんと一緒に、高島市にある松の木内湖にでかけました。内湖に隣接する集落の皆さんに、小さな船(タブネ)で案内していただきました。松の木内湖は、様々な意味で周囲に暮らす人びとにとって重要なコモンズでもありました。

■内湖の湖底の泥。底泥は、肥料分を含む貴重な資源でした。周辺の人びとは、この泥をすくいあげ、畑にすきこみました。夏野菜がよく実ったといいます。内湖は、様々な魚の生息場所でもありました。春には、内湖の周囲にあるヨシ原にたくさんのコイ科魚類が産卵にきました。鮒寿司の原料になるニゴロブナはもちろんですが、それ以外のフナやコイの仲間の魚たちも、タツベやモジなどの竹製の漁具で捕獲され食用にされました。昨日お会いした方達は、そのような湖魚を食べる食文化のなかで生まれ、これまで生きてこられました。そうそう、私が大好きなホンモロコもよくやってきたといいます。ヨシ原は、ボテジャコとよばれるタナゴ等の小さな魚の生息場所でもありました。その他にも、ナマズやギギ、ドジョウなどもいくらでもいたといいます。内湖の琵琶湖への出口のあたりには、小さなエリも設置されていました(フナなどを獲る荒目のエリ)。肥料や食料といった人びとの生業だけでなく、内湖は、子どもたちの夏の遊び場でもありしまた。人びとの生活とも密接につながっていました。ところが、高度経済成長期を経て生業や生活のスタイルが近代化のなかで変化していきます。化学肥料が普及すると、内湖の泥を使うことはなくなりました。食生活も変化し、若い世代の皆さんは、内湖の魚を食べることがなくなっていきました。人びとの暮らしや生業と内湖との「つながり」が切れてしまったのです。もちろん、今はこの内湖で遊ぶ子どもの姿もみることもできません。このような変化は、この松の木内湖だけではなく、現在でも残っている滋賀県内の他の内湖でも同様の状況かと思います。

■人びとの暮らしや生業と内湖の「つながり」が切れてしまうことで、内湖は少しずつ変化していきました。かつてのように内湖の低泥を肥料として取り出すことはなくなりました。当然、流入する河川からの土砂で内湖は浅くなり、そのような土砂は内湖に溜まっていくことになります。この地域の皆さんの話しを総合すると、そこに拍車をかけたのが河川改修や周囲の水田の圃場整備事業です。かつて松の木内湖には、周囲の複数の河川から、今とは違ってかなりの量の水が流れ込んでいたようです。また、内湖から琵琶湖へ内湖の水が流出するあたりは、今よりも幅が狭くなっており、そのこともあり、かなりの流速があったようです。内湖の湖底には、そのような水の流れにより「ホリスジ」と呼ばれる一段深くなった内湖のなかの水路のようなものもあったといいます。常に、この松の木内湖の水は動いていたてのですね。しかし、河川改修によりその動きがなくなりました。さらに、圃場整備事業により水田からの濁水が、内湖に河川から流れ込み、泥が堆積するようになってしまいました。圃場整備事業により濁水や内湖に堆積する泥の量は増えました。泥が堆積したところにはヨシ帯が形成され、樹木もはえるようになってしまいました。少しずつ内湖は小さくなっていったのです。実際に田舟にのって内湖を拝見したわけですが、そのさい、湖底からキノコのようなものがニョキニョキとはえているのがみえました。もちろんキノコではありません。水中の泥が沈殿していくさいに、水草の葉や茎に泥が積もってしまったのです。それが、キノコのように見えていただけでした。何も知らなければ、美しい風景のように見えますが、この地域の皆さんからすれば、これは荒れ果ててしまった内湖ということになります。

■かつての内湖をよくご存知の60歳代以上の皆さんは、なんとかこの状況を食い止めたい、そして改善したいとお考えです。この日は、地元の方に田舟に乗せていただき、内湖をその内側から見学させていただきました。内湖の状況をじっくり観察させいただきました。陸からながめているのとは異なり、地域の皆さんが悩んでおられる実態がよく理解できました。以前、公共事業により、この内湖を整備して公園化してしまおうということが計画がたてられましたが、結局、予算の関係もありうまくいきませんでした。しかし、地元の皆さんは、そこで挫けませんでした。現在、4月末か5月頭にかけて内湖の端にたくさんの「鯉のぼり」を泳がせるイベントを開催されています。少しでも、内湖のことを知ってもらい、内湖と関わってもらおうという狙いがこのイベントにはあります。私は、まだ参加したことがないのですが、地域外からもたくさんの方たちが参加されるようです。

■田舟での内湖の視察のあとは、地元の方達と、この松の木内湖の再生、特に地元の皆さんの暮らしと内湖の「つながり」をどのように再生していくのか…という点について協議を行いました。これで3回目になります。今回は、松の木内湖の「つながり」をもっと再生できるように、これまで地域の皆さんで実施されてきた「鯉のぼり」のイベントを、さらに盛り上げていこうということになりました。最初は少々堅い雰囲気でしたが、しだいにいろんな「夢」が出てきました。「夢」を語り合うことができました。結果として、「さあ、やるぞ!!」という感じで「力」が湧いてくる素敵な会議になりました。「こんなこといいな、できたらいいな…」と漫画「ドラえもん」の歌の歌詞のような展開になりました。写真とは異なり、みなさん笑顔になりました。いろんなプランが提案されました。そうした中で、まず決定したことは、若い世代の方達が泥臭いと嫌っておられる内湖の魚を美味しく料理して食べてもらおう…というものです。そのために、新しい湖魚料理をプロデュースできる料理人の方に、そのイベントに参加してもらおうということになりました。現在、料理をしてくださる方を募集中です。すでに、声をかけさせていただいた方もいます。個人的な主観といわれるかもしれませんが、湖魚は美味しいんです!! 美味しい湖魚を、現代風のレシピのなかで使っていただき、若い世代にも楽しんでもらおう…というのが狙いです。湖魚料理以外にも、内湖のもっている「びっくり」するような「すごい」魅力を、しっかり伝えていけるような企画も考えています。楽しいイベントにしていきます。地元はもちろんですが、地域外からもたくさんの参加をいただければと思います。また、このブログでも広報させていただきます。

白鬚神社

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■昨日は、滋賀県庁の「つながり再生モデル事業」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の関係で、琵琶湖政策課や滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの皆さんと一緒に、高島市にある松の木内湖まででかけました。滋賀県庁の公用車ででかけたのですが、途中、白鬚神社で少しだけ時間をとっていただき、この写真を撮りました。

■iPhone5で撮ったわけですが、なかなか満足のいく出来に仕上がりました。写真を撮っているとき、とても清々しい気持ちになりました。最近は、いわゆるパワースポットとしても有名らしいのですが、なるほど…と思います。

第3回「おおつ未来まちづくり学生会議」

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20141017gakusei2.jpg ■17日(金)、瀬田キャンパスのREC棟の部屋に瀬田キャンパス「おおつ未来まちづくり学生会議」の面々が集まって、午前中からグループワークを実施しました。第1回目はテーマ設定とグループ分け。第2回は細長い大津市を分担して「まち歩き」、そして「まち歩き」で発見したことの整理。第3回は、次回の市役所での発表を前に、パワーポイントの作成…。タイトなスケジュールの中で、自分たちの気付きがうまく伝えられるよう「あーでもない、こーでもない」と頑張っています。

■私も作業の途中を時々のぞきにいきましたが、なかなか大変ですね〜。この日だけでは完成できず、あとは第4回まで各グループで作業を継続してもらうことになりました。頑張れ、学生諸君。

「本文続きます」のこと

■時々、時間が足りず、「本文続きます」などと書いているばあいがあります。もっと書きたいことがあっても時間の関係で書けないときは、そうやって、あとで時間をみつけて書き足すようにしています。ところが、「老人力」がついてきているせいか、「本文続きます」のままにしているばあいがどうもあるようです。申し訳ありません。今朝も見つけました。10月10日の「町家キャンパスについて」というエントリーもそうでした。「学生の皆さんへ」で終わってしまっていました。しかし、何を書こうと思っていたのか、なかなか思い出せないのです。まだ「老人力」がつきはじめたばかりなので、「いつか思い出すやろ〜」とはいかず、しばし頭をひねっていました。なんとか思い出すことができました。「学生の皆さんへ」と書いていたのが、ヒントになりました。

■こういう「本文続きます」のまま…になっているエントリー、他にもあるのではないかと思います。申し訳ありません。気がつきしだい。きちんと追加をしたいと思います。何かを追加すべきか忘れてしまっているばあいは、「本文続きます」をカットします。また、過去のエントリーに関して、後から追加したいなと思うものもあります。そのばあいは、【追記】として書き足しています。

生物多様性タウンミーティングの開催

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■生物多様性に関するタウンミーティングが滋賀県の6箇所で開催されます。滋賀県庁・琵琶湖環境部・自然保護課の「滋賀生物多様性地域戦略策定に係る専門家会議委員」のメンバーというこもあり、滋賀県立琵琶湖博物館の中井さんのお手伝いのような感じで、ファシリテーターをやります。中井さんは、昔の同僚、そして生物多様性の専門家です。「生き物の賑わい」にご関心のある皆様、ぜひご参加ください。
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滋賀県では、自然のめぐみを守り、将来にわたってりようできるよう、(仮称)滋賀県生物多様性地域戦略の策定を進めているところです。
今回、県内にお住まいのみなさまから、地域の自然の特徴や、暮らしとの関わり等について、具体的なお話を伺うため、県内6地域においてタウンミーティングを開催することとしましたのでお知らせします。
1.開催日時および開催場所:
①大津 …平成26年10月23日(木曜日)18時30分-20時30分 @コラボしが21
②甲賀 …平成26年10月21日(火曜日)19時-21時 @碧水ホール
③東近江…平成26年10月15日(水曜日)19時-21時 @八日市商工会議所
④彦根 …平成26年10月16日(木曜日)19時-21時 @彦根勤労福祉会館
⑤長浜 …平成26年10月22日(水曜日)18時-20時 @長浜文化芸術会館
⑥高島 …平成26年10月26日(日曜日)15時-17時 @高島市観光物産プラザ
2.内容:
○生物多様性とは何かについてご説明します
○生物多様性地域戦略の概要について御説明します
○みなさんの地域の生物多様性に関する御意見を伺います
申し込み不要、どなたでもご参加いただけます!

滋賀県庁

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■今日は、県庁で「つながり再生モデル検討会」(琵琶湖環境部・琵琶湖政策課)の打合せがありました。いろいろ頑張らなくてはいけない仕事です。会議が終わったとき、窓に目をやると、滋賀県庁本館の裏側が見えました。理由はよくわかりませんが、ちょっと素敵だな…と思えたので、iPhoneのカメラで撮ってみました。

【追記】
■滋賀県庁に関する最初の記憶は、琵琶湖博物館の開設準備室職員の採用試験を受験したときだと思います。でも、記憶はすでにおぼろげです。大きな試験会場で、30人近く受験者がいたでしょうか。なんとか合格者4名のなかに入ることができましたが、ぼやっとした記憶です。

■最初ではないけれど、強烈に残っている記憶があります。滋賀県庁に入庁したさいのことです。入庁式は、この写真に写っているレトロな本館ではなく、隣接する新館の7階(だったと思う…)のホールで行われました。高校を卒業したての方たち、大卒・短大卒の方たち、そして私のように30歳を過ぎて入庁する人も含めてたくさんの人たちが、ホールに集まっていました。式が始まるまでにまだ時間があったので、ホールの窓からなにげなく本館の方をながめていました。

■たくさんの窓がならんでいました。その窓を背にして、白いカバーがかかった肘付きの椅子、そして大きな机がみえました。ほとんどの窓に、そのような椅子と机が見えました。あとでわかりますが、課長級以上のポジションの方たちの席です。その向こうには、島状に固められた机が並んでいます。係長級以下の方達の席です。ある窓の白いカバーの椅子では、若い職員の方に入れてもらったお茶を飲みながら「エラいさん」が新聞を読んでおられました。そして島状の机では、職員の方達が仕事に取りかかり始めておれました。

■この風景が見えたときに、頭に浮かんだのは、官僚制という概念でした。「この風景、まさに官僚制やな〜。これから、この組織で働くんか〜」と、多少憂鬱な気持ちで眺めたのでした。というのも、官僚制という概念から数珠繋ぎ的に連想するのは、どうしてもロバート・キング・マートン(Robert King Merton)の「官僚制の逆機能」という概念になるからです。滋賀県庁に入庁し、ここで働くことを誇りに思い、笑顔で入庁式にのぞんでいる若い職員の方達とは少し異なる複雑な気持ちだったのです。この時代の滋賀県知事は、稲葉稔さんでした。どんなスピーチをされたのか、まったく記憶していません。困ったものです。

■入庁式のあと、滋賀県庁の向かいにある滋賀会館のオフィスにもどりました(滋賀県教育委員会文化施設開設準備室)。その日かどうか忘れましたが、そのオフィスに、滋賀県琵琶湖研究所の研究員をされていた嘉田由紀子さんが、挨拶にやってこられました(1年後に、博物館の準備室に異動されます)。そのとき、その嘉田さんが、15年後に第51代滋賀県知事に就任されるとは、ご本人も含めて誰も想像できなかったはずです。こうやって昔のことを思い出すと、なにか感慨深いものがあります。

第2回「おおつ未来まちづくり学生会議」の開催

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■昨日は、第2回「おおつ未来まちづくり学生会議」が開催されました。この「学生会議」については、過去に2つエントリーしています。その記事の一部を引用します。

「おおつ未来まちづくり学生会議」と、家棟川流域の再生]

大津市では、行政施策の基本となる「総合計画」を定めています。「総合計画」とは、地方自治体が策定する行政運営の基本となる総合的な計画のことです。大津市に限らず、すべての自治体は総合計画を策定することを法律により義務づけられています。大津市の現行の計画は平成28年度までとなっており、現在、29年度にスタートする新計画の策定に向けて研究等を市役所で行っておられます。そのさい、新しい計画づくりでは、いかに若い世代の意見を受け止めるのかが、ひとつの大切な課題となっています。そこで、大津市の政策調整部企画調整課では、龍谷大学瀬田キャンパスの学生の皆さんに学生委員に就任していただき、「おおつ未来まぢつくり学生会議」を開催することにしました。

「おおつ未来まちづくり学生会議」

浜大津にある旧大津公会堂で「おおつ未来まちづくり学生会議」の第1回会議が開催されました。この会議は、「環びわ湖大学・地域コンソーシアム」大学地域連携課題解決支援事業2014に、「理想の大津つくろう~大学生が考える未来の大津~」という事業名で採択されています。私は、この事業にアドバイザーとして参画・参加しています。今回のこの事業は、「大津エンパワねっと」を通して様々な機会にお世話になってきた、大津市役所企画調整部企画調整課のTさんからの依頼でした。Tさんとのご縁により、学生たちが成長できる新たな機会をいただけたこと、心から感謝いたします。今回のこともそうですが、「ひとつひとつのご縁を大切にしていると、ご縁がご縁を生み出していく…」ということを日々、実感しています。

■昨日は、午前中、学生たちは、3チームにわかれて、大津市の企画調整課、都市計画課、国際交流課、商工労働政策課の職員の皆さん、そして龍谷大学の職員の皆さん(REC)たちと一緒に「まち歩き」をしました。「人」をテーマに、膳所から浜大津、そして三井寺の周辺を歩いたグループ。「自然」をテーマに、旧志賀町や比良山をめぐったグループ。それから「まち」をテーマに、阪本町・比叡山や石山の商店街を歩いたグループ。それぞれに、重要な「気づき」、素敵な「発見」はあったでしょうか。

20140913gakusei10.jpeg■3グループとも、15時半頃にはまち歩きを終えて瀬田キャンパスに戻ってきました。学生たちはもちろんですが、市役所の職員の皆さん、そして龍大の職員の皆さんも、学生と一緒にまちを歩いたことがとても楽しかったとおっしゃっていました。龍谷大学は、滋賀県と大津市に誘致され、1989(平成元)年に瀬田キャンバスを開学しました。龍谷大学は京都に本部があるというこからすれば、京都の大学かもしれませんが、瀬田キャンパスは大津にある大学でもあるのです。ひょっとすると、瀬田キャンパスの学生と、市役所の職員の皆さん、そして龍大の職員の皆さんが一緒に事業に取り組むことは、初めてのなのかもしれません。そう思うと、とても感慨深いものがあります。

■キャンパスに戻ったあと、グループワークに取り組みました。今日のまち歩きでの「気づき」や「発見」についてディスカッションをして整理するグループワークです。そして、その結果をポースターにまとめ、最後は報告を行いました。3つのグループの報告を聞いて、まちを歩き、地元の方達からお話しをうかがい、それぞれ素敵な「気づき」や「発見」をしてきているなあと思いました。次回は、今日の成果を、パワーポイントにまとめる作業に入ります。大津市の総合計画の策定に対して、有意義な提案ができるでしょうか。学生たちの頑張りに期待したいと思います。

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■「学生会議」のあとは、親睦を深めるために石山のイタリアンレストランで交流会をもちました。政策調整部の部長さん、企画調整課の課長さんも駆けつけてくださいました。じつに賑やかに盛り上がりました。学生たちも、ものおじせず、自分の考えをちゃんと話していました(少なくとも、そう見えました(^^;;)。交流会の最後には、市役所の課長さんにサプライズケーキ。この日は、お誕生日だったのです。おめでとうございます!!

【追記】■社会学部のホームページにも掲載されました。記事を作成してくださいました、龍谷大学エクステンションセンター瀬田(REC瀬田)の水野さん、ありがとうございました。
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第2回「おおつ未来まちづくり学生会議」を開催しました

マザーレイクフォーラム 第4回「びわコミ会議」

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■滋賀県の琵琶湖総合保全計画「マザーレイク21計画」のなかには、「マザーレイクフォーラム」が設けられています。この「マザーレイクフォーラム」のなかの「びわコミ会議」には、一般の県民、NPOの関係者、事業者、農林漁業関係者、学識経験者、行政(県、市、町)関係者など、様々な立場の人びとが参加し、琵琶湖を守りたいという共通の「思い」と「課題」によってゆるやかに「つながり」を形成しながら、計画の進行管理を行っています。①琵琶湖流域の生態系の現状を確認し合い、②自らの暮らしと湖の関わりを振り返り、③今後の取り組みの方向性を話し合い、④相互のつながりを築きながら、それぞれの取り組みを、さらに強みをいかしたものへと高めていく「場」にしていくことが目指されています。詳しくは、以下の記事をお読みいただければと思いますが、昨日は、第4回の「びわコミ会議」が開催されました。愛知県や大阪府など、県外からの参加者も多数いらっしゃいました。これは、すごいこことですね〜。

マザーレイク21計画学術フォーラム
マザーレイクフォーラム・びわコミ会議(第3回)

■トップの写真は、午後からの第2部のときのものです。午前中に引き続き、午後からも、滋賀県民であれば知らない人はいないミュージシャン・タレント・プロデューサーの川本勇さんと、琵琶湖環境科学研究センターの研究員である佐藤祐一さんのお2人の進行で進められました。午後は、「びわ湖のこれから話さへん?」がおこなわれました。9つのテーマに参加者がわかれて話し合うものです。「簡単な自己紹介」、「テーマに撮っての話し合い」、「キーセンテンスにまとめる」(話し合いの内容を簡単な文章にする)の順番で進められました。

■私のグループのテーマは「教えて!あなたのまちのタカラモノ」でした。このテーマ設定については、参加している総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態系システムの健全性」の代表である京都大学研究センターの奥田昇さんたたちと相談をしてきめました。昨日の私は、このテーマ・グループのファシリテーター役でした。トップの写真は、9つのテーマの担当者がならんでテーマの趣旨を説明しているところです。オレンジ色のTシャツが奥田さんです。

■私たちのグループの人数は9人。話し合いをするには、ちょうどよい人数でした。大変盛り上がりました。「教えて!あなたのまちのタカラモノ」ということですので、それぞれがお住まいになっている、あるいは活動されている地域のタカラモノについて、自由にいろいろお話しいただいたのですが、途中から、こういうタカラモノをどうやってみつけていくのか…という話しになりました。そのさいのキーワードが、「五感」です。知識として自然環境を知るだけではなく、自然環境は「五感」で体感してこそ深い理解ができる…というこですね。ある参加者の方は、小学生の頃京都にお住まいでしたが、夏休みのキャンプで滋賀県にやってきて川に入り、鮎を手でつかんだときの手の感触が忘れられない、今でも大切な記憶として覚えているとおっしゃるのです。そのような「五感」で自然環境を感じとることを、ご自身のお子さんにも遊びのなかでさせているということでした。素敵なお話しです。

■私たちのグループには、中学1年生(男子)と高校3年生(女子)の参加もありました。今年の「びわコミ会議」には、たくさんの小中学生の皆さんが参加されていました。これはとても画期的なことだと思います。そのうちのお2人が、私たちのグループのテーマに関心をもってくれたというわけです(じつに、しっかりした受け答えをされる方たちで、これも驚きました)。お2人に共通しているのは、ご両親が、積極的にお子さんたちを小さいときから自然環境のなかに連れ出しておられるということでした。自然環境と楽しみながら関わっていくことを、知らず知らずのうちに、ご両親から「刷り込まれている」のです。ご両親がまず楽しまれていることが重要です。親が楽しんでいることを、そばで子どもが感じ取る。大切だなと思います。もっとも、自分自身は環境をテーマに仕事をしていますが、自分の子どもたちには、そういうことをあまりしてやれなかったな〜…と反省したりもしました。ということで、私たちのグループのキーセンテンスは、以下のものになりました。

五感て発見!
世代で発見!
親・子の「環境循環」

■最後の「環境循環」には少し説明がいりますね。親に「五感」で自然環境を感じ取ることを教えてもらってきた(刷り込まれた)子どもは、自分が親になり、そして子どもができたとき、再び、自分の子どもに「五感」で自然環境を感じ取るような子育てをしていくのだ!!…ということですね。そういう循環(世代を超えた連鎖)が生まれるといいな〜という思いを表現しています。話し合いのあとは、前・滋賀県知事である嘉田由紀子さんも参加されて、和気あいあいとした雰囲気のなかで、9つのグループのキーセンテンスを発表し合い、会場の参加者からの意見もふまえて全体で「びわ湖との約束」という形にまとめました。なかなか充実した「びわコミ会議」になりました。

【追記】
■昨日、「びわコミ会議」に参加されたある方が、facebookでメッセージを送ってくださいました。残念ながら、お話しをしている時間もなかったのですが、そのメッセージにはこう書いてありました。「昨日の午前中、琵琶湖がきれいになってもみんなが笑顔にならないなら意味が無い、という趣旨のことを言いましたが、そういう意味も含めた(指標の総合的な)評価が大切だと思っています」。とても大切なことを書かれていますね。「みんなが笑顔にならないなら意味が無い」という部分。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、そうやって頑張って琵琶湖を守っていく…というのとは、違うんですね。琵琶湖と人びとの関係、琵琶湖をめぐる人びとの関係、この2つの関係が交叉するところに、持続可能な社会の「幸せ」があるのだと思うのです。そして、交叉する地点ごとの「幸せの物差し」をみつけることができないといけないと思うのです。

ソーシャル・ツーリズム

■ネットで、こんな記事を読みました。「注目が高まる日本のソーシャル・ツーリズム」。ソーシャル・プロデューサー/産官学民連携コンサルタントの渡邉賢一による記事です。(一般社団法人元気ジャパン 代表理事。国際電信電話、朝日新聞社、内閣官房 地域活性化統合事務局に勤務後、産官学民連携事業の創出を通じて社会課題を解決するソーシャル・プロデューサーとして独立。内閣官房 地域活性化伝道師、経済産業省クールジャパン事業フランス展開総合プロデューサー(2011)、文部科学省 優秀理数学生育成事業 企画評価委員、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所 研究員)。以下は、その記事ですが、ぜひ上記リンク先で直接にお読みいただければと思います。

長崎県五島列島の島体験ツーリズムからみえる事

東京から飛行機で約4時間、人口約7万人の長崎県五島列島には年間20万人強の観光客が訪れます。北側から中通島、若松島、奈留島、久賀島、福江島を中心に約140の島々からなり西海国立公園に指定されています。東シナ海に面し、新鮮な魚介類に恵まれた豊かな食文化と共に、7世紀頃の遣唐使の歴史、15世紀頃のポルトガルとのキリスト教伝来の文化、そして手つかずの大自然、温かい島民の人柄などに惚れ込んだ五島ファンが国内外にいます。しかし近年の地球温暖化による漁獲高の減少や漁師や農民の高齢化、若年層の減少、過疎化、廃校の増加など社会的課題が噴出し、島内では行政と民間が連携しながら社会的課題解決に向けて様々な取り組みが行われています。

廃校を利用した田園ミュージアム構想の挑戦と共感

福江島で企業組合五島列島ファンクラブを運営する濱口孝さんは、日本の田舎が直面する課題に向き合う中で、田舎が本来持っている価値こそが現代人にとっての学びの要素であり、それを体験型ツーリズムを通じて伝えてゆくことこそが地域の活性化に繋がると考え、半泊地区の500m四方の小さな集落に「半泊大丈夫村」を開村しました。目の前は海、湧き水が豊富に沸き出し、田畑、山林も豊かです。田園ミュージアム構想の元で、廃校となった旧半泊分校をビジターセンターとしてリノベーションし、パーマカルチャーの理論に基づき箱庭のようなコンパクトなエリアにおいて循環型地域システムを実現化しました。来訪者は、この村が挑戦する里山再生のメカニズムや、生ゴミを堆肥化した野菜作り、田舎だからこそ発信できる癒し空間などを体験学習できるプログラムに参加する事が出来ます。このエリアはキリシタン文化の歴史を感じられる貴重な郷土遺産が数多く残り、地域探索を通じた歴史文化学習も盛んです。濱口氏は同地区に暮らす5世帯9名の挑戦を掲げ、九州商船と連携した「島くらしスクール」という体験型旅行商品を開発し、基盤づくりを強化しています。スタッフの目標は、半泊大丈夫村モデルの普及と里山里海町村の“つながり”活性化です。こうした意義込みに対する評価は高く、長崎県はモデル廃校活用事例として注目し、全国からも数多くの人々が訪れています。特に五島列島が抱える社会的課題と同じような課題を抱える全国各地からの視察体験を目的としたソーシャル・ツーリストは後を絶たず、その解決方法を探求するための学びの場としての観光資源化が進んでいます。

外国人留学生が五島にインターンシップする理由

こうしたソーシャル・ツーリズムの進展は何も国内に留まっている訳ではありません。社会的課題先進国である日本は、各国に先駆けて解決をしてゆかないといけないため、自ずと先導的な事例が数多く蓄積されています。この事例の数々が実は海外から注目されている新たな日本の資源なのです。実際に欧米諸国も日本と同様に高齢化や地方の過疎化が進みつつありますし、東アジアや東南アジア諸国でも環境保全や循環型都市開発への需要が高まってきています。日本にはこうした課題解決のヒントが数多くあります。特に社会課題の最前線ともいわれる限界集落や地方の農山漁村には、その過酷な現実と向き合いながらも未来型思考で解決をしてゆこうとしている優秀で熱意のある方々が切り開いてきたフロンティア事例が数多くあります。実際に五島列島の事例においても、この廃校にインターンシップとして働いているのは長崎に留学する韓国人と中国人の学生達です。半泊大丈夫村に関わろうと彼らが思い立った理由は、まさに母国で社会課題化し始めた環境対応型まちづくりの先進事例を体験するためだといいます。プロジェクトに関わる中で、外国人ならではの発想を活かし、インバウンド観光に繋げる企画づくりを進めています。

島内に設置された100台のEVレンタカーによるエコアイランド構想

五島の社会的課題解決の事例は他にもあります。五島を舞台に長崎県では「長崎EV&ITSプロジェクト」を推進しています。未来型ドライブシステムの導入と、ICT を活用した次世代電力網(スマートグリッド)を連携させた五島エコアイランド構想の実現化を目指し、島内に100台のEVカーと充電インフラ設備を整備しました。今後もその数は増えてゆく予定です。まさに“エネルギーの地産地消”モデルとしても産官学民が連携して事業を実施しています。島では他にも潮力発電や洋上風力発電など総合的にエコエネルギーについて推進をしてゆきます。こうした先進的な地域づくりを体験したいというニーズも高まってきています。実際にどのように行われているのか、そのスキームや狙いはどこにあるのか。そしてプロジェクトから学べる事は何なのか。そうした社会的な情報交換の機会創出の場を求めて五島列島に訪問する方々が顕在化してきているようです。

成功事例を蓄積しソーシャル・ツーリズムの産業化を

社会的課題先進国である日本が、そのソリューションを地域資源として活用し、新産業化してゆける可能性は十分にあります。「ソーシャル・ツーリズム=社会的課題解決に関する情報交換や実体験、プロジェクト・ベース・ラーニングを目的としたツーリズム」と定義するとします。そうした場合、まずは各地域で自主的かつ先進的に行われている成功事例を整理し蓄積してゆく事がはじめに必要ではないかと思います。そうして社会的課題解決のパターンを類型化し、学びのエッセンスを抽出する事が第二段階です。その後に地域の新しい産業スキームとして産官学民で連携しながら仕組み化してゆきます。住民や行政、民間企業、教育機関、メディア等との合意形成がスキーム構築では大変に重要になってきます。営利主義ではなくしっかりとステークホルダーの理解を得た上で持続可能なシステムを構築してゆく事が肝心だと思います。各地の事業は現在進行形のものが殆どであると思いますので、プロジェクトベースで物事を押し進めてゆく事が基本となります。現在、五島のように各地で先進的な事例が顕在化してきています。いよいよ今年はソーシャル・ツーリズム元年になるのではないかと期待をしています。

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