甲賀市の大原財産区を訪ねる

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20150218ohhara5.jpg■総合地球環境学研究所のプロジェクトで、甲賀市にある大原財産区の事務所を訪問しました。いろいろお話しをお聞かせいただいたあとは、大原ダムを見学しました。農業用のダムです。下流には、私たちのプロジェクトで調査を進めている小佐治という集落があります。古琵琶湖の湖底だったところが隆起してできた丘陵地帯に、降雨によりいくつもの谷筋が生まれました。いつの時代かはわかりませんが、小佐治の皆さんは、この谷筋に水田を作り農業をしてきました。いわゆる八津田です。そして、後背地の丘陵の森林の中にため池を作り、そのため池の水から灌漑していました。大きなため池が5つ、小さなため池は無数にあったと言います。水不足の時のために、小さな無数のため池に水を貯めてリスクを分散させていたのです。しかし、大原ダムができてからは、そのような灌漑に伴う苦労は無くなりました。無数にあった小さなため池は放棄されることになりました。生物多様性の観点からは、そのような無数にある小さなため池には意味があったと思うのですが…。このことについては、またこのブログの中で書くことにしたいと思います。

甲賀市の小佐治を訪問

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▪︎先週の水曜日(2月11日)、総合地球環境学研究所の奥田昇さんと一緒に、滋賀県甲賀市の小佐治集落にある「甲賀もちふる里館」を訪れました。奥田さんがリーダー、私がコアメンバーの1人として取り組んでいるプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」について相談をするためです。小佐治集落からは、環境保全部会の皆さん、小佐治集落の区長さんがご出席くださいました。小佐治集落は、滋賀県庁や滋賀県立琵琶湖博物館の支援のもと、「世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策」のための事業に取り組んでいます。そのような関係もあり、この日は、滋賀県庁農林水産部農村振興課の職員や琵琶湖博物館の学芸員の方たちもご参加くださいました。

20150213kosaji2.jpg ▪︎小佐治では、水田の内部に水田内水路を設けて、年間を通じて生き物が生息できる場所を提供しています。生き物が生息できるということは、安心・安全な農産物を生産している水田でもあるということの証明にもなります。現在、そのような水田では、メダカが繁殖して藻のなかで越冬していることが確認されています。小佐治も含めた甲賀市の農村地域の水田は、「ズリンコ」と土地の人びとが呼ぶ古琵琶湖層群の粘土でできています。きめが細かいため、水田から水を抜くことが難しい土質なのです。この湿田に苦労されてきました。小佐治では、そのような性質をもつ水田の内側に水路をつくり、塩ビのパイプ等を設置し、生き物の生息場所をつくってきたのです。その効果は生き物だけでなく、作付け面積が減るものの水田内の水位調整が容易になり湿田が解消することにもなりました。右の写真は、そのズリンコです。ズリンコのなかにあるのは、淡水貝の化石です。ここがかつて琵琶湖の底であったことがご理解いただけるとおもいます。

20150214kosaji3.jpg▪︎このような小佐治の生き物を賑わいを育む取り組みは、村の活性化にもつながっています。メダカが繁殖した水田で生産した米は、「めだかのいる田んぼの米」(メダカ米)として販売されています。販売されているのは、集落のなかに設けられた農村レストラン&直売所の「甲賀もちふる里館」です。さきほど「ズリンコ」について説明しました。たしかに「ズリンコ」は農作業が大変です。しかし、この粘土のなかにはケイ酸カリやマグネシウムが豊富に含まれており、稲やもち米が強く育つのです。小佐治では、そのような地域の環境特性を活かして、村づくりの活動にも取り組んでおられるのです。

▪︎さて、私たちの総合地球環境学研究所のプロジェクトでは、この小佐治の生き物のにぎわいづくりを通した村づくりの活動を、プロジェクトの研究調査を進めることのなかで応援させていただければと思っています。少しずつ相談を進めてきました。具体的な計画の詰めはこれからということになりますが、いよいよこの春から「超学際(トランスディシプリナリティ) 」的取り組みが始まります。

ビワマスのこと

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■「つながり再生モデル構築事業」(滋賀県琵琶湖環境部環境政策課)の関係で、野洲市にある家棟川の支流に調査にいってきました。先日、地元の「NPO法人家棟川流域観光船」の方たちとの協議のなかで、この支流にビワマスが産卵をするために遡上しているというお話しを、写真とともに伺っていたからです(写真下段右)。地元の皆さんの観察によれば、琵琶湖からやってきたビワマスたちは、家棟川の支流に入り上流に昇ろうとするのですが、河川の構造物が邪魔をして遡上できないようだというのです。また、大きな礫が河床にあって、産卵に適した砂利がないということもご指摘されていました。ということで、ビワマスが遡上し産卵できるようにするために、関係者が集まって現地を調査することになりました。

■この日の調査は、地元からは、「NPO法人家棟川流域観光船」の代表である北出さんと、野洲市環境基本計画の策定に市民として参加された方達3名の皆さんがご参加くださいました。研究者では、「つながり再生モデル構築事業」のモデル地域選定委員会でご一緒した、滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの佐藤さんが、今回の調査をアレンジしてくださいました。佐藤さん、ありがとうございました。そして、河川に魚道をどのように設置すればよいのかという技術的な点から、同じく選定委員会でご一緒した徳島大学の浜野龍夫先生(生物資源増殖学、地域生物応用学)もご参加くださいました。浜野さんは、ご自身で「私は、便利な水辺のおっちゃんなんですわ」とおっしゃいます。全国各地の河川の魚道設置に積極的にアドバイスし、それぞれの河川にあった魚道を提案をされてきたたくさんの実績をお持ちなのです。その他、行政からは、滋賀県琵琶湖政策課・流域政策局・南部土木事務所から4名の職員の皆さんが、野洲市からは環境課の皆さんが2名、そしてなんと驚いたことに、野洲市長の山仲さんもお忙しいなかご参加くださいました。

■調査は、冷たい雨が降るなかで実施されました。写真をご覧ください。地元の皆さんが困っておられるのは、トップの写真にあるような仮設の「落差工*」をビワマスが超えることができない…ということです。この落差工の手前までは、河川がすでに整備済みで、矢板をうってあるところから上流は未整備のままになっており、その整備の時期も未定なのだそうです。数十年間は整備される予定がない(必要性がない)とのことでした。ということで、現在の「落差工」の状況を確認し計測するために、浜野先生と佐藤さん、そして地元の市民のお1人が川のなかに胴長を着用して入っていかれました。あまり役に立たない環境社会学者の私は、橋の上から見学…。浜野先生からは、写真の中断左のような支流のさらに支流については、ビワマスが遡上しないような工夫をして、落差工に魚道を設置すれば、ビワマスは遡上させることができるというご意見をお聞かせいただけました。工事費もおそらくは600万円程度で済むとのことでした。浜野先生の言われる魚道とは、私たちが通常考える魚道とは異なります。河川の横に階段状の魚道がよく設置してありますが、日本の河川の魚達に不向きなものなのだそうです。こちらをご覧いただくと、浜野先生がご指導されている魚道がどのようなものであるのか、わかります。また、工事費が安く済むのかもわかります。

■こうやって、冷たい雨のなかで立場の異なる人たちが一緒に行動すること、言い換えれば、身体を使って「場を共有することは」とても大切なことだと思います。私たちは、調査のあとは、野洲市の図書館の一室を借りて協議を継続しました。異なる視点から、どうやって魚道を設置していくのか、知恵を出し合いました。生息調査を継続していく。工事費をどうやって捻出するのか。魚道の設置工事には市民参加で行う必要があること。野洲市全体の市民活動・まちづくりの文脈(環境再生型地域づくり)を背景にして、ビワマスの遡上・産卵や魚道設置を位置づける必要があることなど…いろいろ意見が出ました。意見を出すだけでなく、目標に向かってロードマップを作成していくことなども、全員で共有することになりました。

▪︎ところで、ビワマスってご存知でしょうか。ビワマスは、琵琶湖の固有種です。琵琶湖にしか生息していません。ビワマスは、琵琶湖の周囲の河川で生まれた仔魚は、琵琶湖の深いとろこにいって4〜5年かけて40〜50cm前後まで成長します。そして産卵期になると、生まれた河川に遡上していくのです。この産卵期のビワマス、大雨のときに黒く群れをなして河川を遡上することから、アメノウオともよばれています。しかし、そのような群れをなして遡上することは、この野洲市のあたりではあまり見られなくなってきました。河川改修などによる生息環境の悪化などで、生息数が年々減少しているからです。現在は環境省のレッドリストに準絶滅危惧種(NT)として指定されています。 今回、家棟川支流でこの準絶滅危惧種のビワマスの産卵が確認されたことから、家棟川をはじめとする身近な河川にもっと多くの皆さんの関心が向かっていけばよいなあと思っています。そして、流域管理を柱にした、環境再生型のまちづくりが展開していけばよいなと思っています。

*落差工:洪水防止や農業用水確保のために、急勾配の河川の勾配を緩やかにする構造物のことです。落差を河川のなかに設置して、階段状の段差をつけて流れを緩やかにします。そのことで流速を調整するのです。

【追記】▪︎12月18日の京都新聞に、この日の調査の記事が掲載されました。
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地球研「奥田プロジェクト」

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■昨日のお仕事。1つ前のエントリーにも書いたように、総合地球環境学研究所でのミーティングでした。「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」。奥田昇さんをリーダーとするプロジェクトのミーティングです。機能は、リーダーの奥田さん、そして副リーダーの谷内茂雄さん(京都大学生態学研究センター)、そして私の3名のミーティングです。いろいろ事務的なこともやらねばなりません。とりあえず、地球研で3時間半ほどミーティングと事務作業を行いました。

■写真は、研究所内にある奥田プロジェクトの場所です。地球研にはプロジェクトごとの部屋がありません。大きなスペースを簡単に仕切ってあるだけです。プロジェクト間のコミュニケーションを活発にしていくため、このような建物のデザインになっているようです。私も、来年度からは定期的にこちらに出かけてプロジェクトの仕事を進めたいと思っています。まだ机が空いていますが、これから順番に埋まっていく予定です。ポスドクの方たちなど、これから順番に雇用されていきますので。現在は、まだリーダーの奥田さんと事務的な仕事を担当される方が2名。広さのわりには人が少ないのです。まあ、そのうちに、賑やかになってくるではないかと思います。

コアメンバー会議

20141121okudapro.jpg ■昨日は、京都大学生態学研究センターで、研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」のコアメンバー会議が開催されました。生態学研究センターから総合地球環境学研究所に異動したリーダーの奥田さん、センターの谷内さん大薗さん、滋賀県立大学の伴さんと、プロジェクトの進捗状況を相互に確認し、これからの研究先駆略等について議論を行いました。いろいろ難題が山積なのですが、とにかく前進しなくてはいけません。

■総合地球環境学研究所の研究プロジェクトのシステムは、以下のようになっています。地球研のサイトからの引用です

地球研では、既存の学問分野で区分せず、「研究プロジェクト方式」によって総合的な研究を展開しています。

研究プロジェクトはIS(インキュベーション研究 Incubation Study/個別連携プロジェクトのみに設定)、FS(予備研究 Feasibility Study)、PR(プレリサーチ Pre-Research)、FR(フルリサーチ Full Research)という段階を経て、研究内容を練り上げていきます。

国内外の研究者などで構成される「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」による評価を各対象年度に実施し、評価結果を研究内容の改善につなげています。研究の進捗状況や今後の計画について発表し、相互の批評とコメントを受け研究内容を深める「研究プロジェクト発表会」を年に1回開催しています。
CR(終了プロジェクト Completed Research)は、社会への成果発信や次世代の研究プロジェクト立ち上げなど、さらなる展開を図っています。

■もうじき、上記の説明にある「研究プロジェクト発表会」が開催されます。この「研究プロジェクト発表会」の評価により、「FS(予備研究 Feasibility Study)」の段階から「PR(プレリサーチ Pre-Research)」に進むことができます。関門があるのです。私たちの研究プロジェクトは、昨年、この関門をなんとか突破することができました。来年からは「FR(フルリサーチ Full Research)」に進みます。関門を突破できなかった「FS(予備研究 Feasibility Study)」の段階にある研究プロジェクトはやり直し、または中止になります。最後まで到達するのはなかなか厳しいのです。今年は、この関門がさらに厳しくなっているようです。ただし、「PR(プレリサーチ Pre-Research)」に進んだからといっても「研究プロジェクト発表会」や「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」の厳しい評価を受けなければなりません。11月26日から28日にかけて、今年の「研究プロジェクト発表会」が開催されます。

超・早起き

■こんな投稿をfacebookにしました。

朝早くからの出勤が続き、昨晩は早く帰宅したこともあって、なんと21時半に眠ってしまった。そして、自然に目が覚めてしまったのが3時半。まあ、6時間ほど眠っている計算にはなるが、これでよいのか…。

仕方がないのでメールをチェック。メールで研究仲間の教えてくれた論文を、ネットで探して読み、日記のような身辺雑記のようなブログを書き、熱いシャワー浴び、新聞を読み、朝飯を作って食べ…7時前に家を出る。

研究仲間は、私の「階層化された流域管理」、それから「Future Earth」や「IPBES(intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services)」にも関係する論文だよと興奮した感じのメールで教えてくれた。私も早朝からちょっと興奮する。

ここに、さらに、ランニングが追加されれるような暮らしになれば良いのだが。

■昨日は、学部の教授会と研究科長の選挙でした。早く仕事が終りました。ということで、いつもよりも早めの帰宅となりました。ウイークデーにはめったにないことなのですが、妻と一緒に夕食をとることができました。また、ここ最近、朝早くに出かけることが多いものですから、身体がだんだん「朝方」になってしまっています。ということで、超・早朝の起床となったわけです。

■facebookの投稿のなかにある論文とはCashという研究者の論文です。以前、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト(「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」)で出版した『流域環境学』(京大学術出版会)のなかで(514頁)、研究仲間である谷内さん(京都大学生態学研究センター)が、Cashたち(2006)による” Scale and cross-scale dynamics : governance and information in a multilevel world. Ecology and Society. 11(8)(online)”を引用しています。彼らの考え方が、私がプジェクトのなかで提案した「階層化された流域管理」の考え方にかなり似ているからです。今日、谷内さんからメールでいただいた情報は、この論文よりももう少し前の Cashたち(2003)の論文 “Knowledge systems for sustainable development. PNAS.100(14) (online)” についてです。谷内さんは、丁寧に重要なポイントまで整理して私にメールを送ってくれました。この2003年の論文は、「階層化された流域管理」とかなり共通する考えたをもっているだけでなく、私たちがこれから本格的に取り組む総合地球環境学研究所のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」、さらにはIPBES (intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services=生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム、谷内さんはこのIPBESのなかにあるひとつのワーキンググループのメンバーです)、総合地球環境学研究所が関わっているFuture Earth(持続可能な地球環境についての国際協働研究イニシアティブ)とも大いに関係しているというのです。谷内さんのおかけで、朝から頭の中が興奮し、気持ちがたかぶってきました。

■以下に、『流域環境学』(514頁)の谷内さんの記述を引用します(「階層化された流域管理」の考え方そのものは、『流域環境学』の「『階層化された流域管理』とは何か」(47-68)をご覧ください)。

Resilience Alliance の機関誌(online journal)でもある Ecology and Society は、20006年に”Scale and Cross-scale Dynamics” という特集を組み、重層的な資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスにおいて生涯となる、スケールに関わる3つの課題(scale challenge)として、無知(ignorance)不適合(mismatch)多元性(plurality)を挙げる。無知とは、重要なスケールやスケール間の相互作用を認識できないこと、不適合とは、例えば、人間による生物資源管理の制度のスケールと資源の生物地理的な分布・移動のスケールが一致せず、ずれていること、多元性とは、関係主体の問題認識が異なること、あるいは、関係主体すべてに最適な唯一の管理スケールがあると仮定すること(による失敗)を意味する。本書の事例に即していえば、かつての環境保全における、びわ湖とその内湖や流入河川との間の連続性の認識の欠如が、無知に相当する。琵琶湖流域の河川管理の主体が、国と県、さらにその中で、異なる行政担当ごとに分割されていることや、流域の現象を総体として対象とする学問がないことが不適合に相当する。また流域の階層性による農業濁水問題に対する問題認識の違い、「状況の定義のズレ」が、多元性に相当する。

Cash らは、これらのスケールに関する諸問題を克服する制度的仕組みとして、異なる階層の制度間の調整(institutional interplay)、異なる階層間の協働マネジメント(co-managemanet)、階層間調整期間の設置(boundary or bridging organization) を検討し、多層にわたる資源管理・環境管理問題には、協働的な多層感マネジメントの構築が有効であるとする。

20141120haruki.jpeg■さて、投稿のなかで、私はランニングのことにもふれています。以前から、小説家の村上春樹さんの長編小説の執筆とランニングとの関係が気になっています。早く起きて仕事をして、走って、9時には眠るというライフスタイル。村上さんは、『走ることについて語るときに僕の語ること』のなかで「『基礎体力』の強化は、より大柄な創造に向かうためには欠くことのできないものごとのひとつ」と書いています。そうなのです。研究を進めるためには、同時に、ランニングが必要なのだ…ということです(^^;;。そのランニングですが、春のフルマラソン後の故障を理由に、中断してからずいぶん時間が経過してしまいました。今年の春の「篠山ABCマラソン」の後、脛の痛み、肋骨のヒビ…いった故障からの回復を待っているあいだに季節は夏に突入し、仕事もさらに忙しくなり、とうとう「ランニングしたい/しなくちゃ」モードが身体のなかから消えてしまいました。これではいけません。2つ前のエントリー「来年度の仕事」にも書いたように、仕事のベクトルが研究に強く向かっていることを強く感じる今だからこそ、また走らねばなりません。頭と身体が分離してしまっていては、良い仕事はできません。そういう例(人)を見てきましたので、自分自身は、このあたりでもう一度ランニングのモードをきちんと復活させて頭と身体の関係をチューニングしておこうと思います。

「つながり再生モデル構築事業」第4回協議会

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■昨日は、たいへん忙しい一日でした。朝から、兵庫県にある老母の生活介護にでかけました。まあ、たいしたことはしていませんが、母親が求めるものの買い物や、生協への食料品の宅配注文など、いつもの仕事をすませて瀬田キャンパスに向かいました。昼食をとる時間もなく、大阪から乗った新快速電車のなかでオニギリをたべ、4限の3年生ゼミへ。ゼミのあとは、来年に備えて大学院社会学研究科のいろんな仕事をすませ、晩は、草津市に出かけました。

■草津市の湖岸に近い農村にいきました。「つながり再生モデル構築事業」の第4回協議会が、草津市志那町にある「志那会館」で開催されたからです。平湖・柳平湖の暮らしと内湖の「つながり再生」に向けて、地元の志那町の皆さん、滋賀県庁琵琶湖環境部琵琶湖政策課の皆さんと話し合いを進めました。昨晩は、草津市役所からも職員の方が3名参加されました。

■この日は、「つながり再生」に向けて、地域の方達一人一人から素晴らしい意見が出され、少しずつ盛り上がってきました。先日、交流会ということで、この事業のもうひとつのモデル事業である「NPO法人家棟川流域観光船」を訪問し、皆さん良い刺激を受け止められたようです(3つめのモデル事業は、高島市の松ノ木内湖です)。個人的な意見ですが、将来は、内湖や内湖の魚たちと結びついたコミユニティビジネスが始まればと思います。今、頭のなかでは、いろんなアイデアが醸し出されています。ちょっと、ウフフ…といった感じなのです。今晩の協議会のことを早速facebookにアップしたとろこ、いつも「いいね!」をくださる草津市の市議会議員の方がコメントをくださいました。この事業に強い関心をもってくださったようです。「近いうちに、南草津で懇親会をしましょう!!」ということになりました。いろいろ「ご縁」が広がっていきます。

総合地球環境学研究所での研究会議(その2)

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■総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の全体会議、2日めです。午前中、朝一番に、友人でもある秋田県立大学の谷口吉光さんが、報告をされました(写真左)。秋田県立大学では、八郎湖の環境問題やガバナンスに関する研究を企画され、科研に申請されました。採択されれば、私たちの研究プロジェクトとマッチングファンド方式で取り組んでいかれることになります。

■谷口さんの報告のあとは、京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんが、IPBES(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services /「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)のなかのWGの1人としてオランダの会議に出席したことを報告するはずだったのですが、谷内さんはIPBESの報告書の執筆に忙しく、かわりにプロジェクトリーダーの奥田さんが説明をしました。IPBESの一連の報告書は、多様な空間スケール、多様なステークホルダー、多様な価値に配慮した内容になる予定らしく、過去にこのブログでお知らせてしたFuture Earthに呼応したものになるはずです。私たちの研究プロジェクトの理念を支持するものです。こういった世界のトレンドを常にきちんとおさえる必要があります。

■私たちの研究プロジェクトでは、滋賀県の野洲川を中心に研究を進めますが、同時に、国内の湖沼、宍道湖、八郎湖(八郎潟)、印旛沼との比較研究も進めます(国外ではフィリピンのラグナ湖)。今日のワークショップでは、自然科学的な観点からの比較だけでなく、それぞれの湖沼の環境ガバナンスがどのように変遷してきたのか、そのあたりの比較研究も進めることになりました。まだ詳しくは書くことができませんが、それぞれの湖沼を専門に取り組んで研究者たちがディスカッションするなかで、大変興味深いことが浮かび上がってきました。研究プロジェクト内の社会科学系の研究者による「人間・社会班」(ちょっとヒドいネーミングですが…)では、来年度中に、この国内湖沼の環境ガバナンスの比較研究を論文にまとめることにしました。若い優秀な研究者が参加してくれているので、このあたりは非常にフットワークが良く、頼もしい限りです。その若い研究者Oさんは、最初から海外のジャーナル(査読付きの学術雑誌)に投稿しようといってくれました。さすがですね。今回も、自然科学と社会科学の研究者が集まって取り組む研究プロジェクトの、その面白さというか妙味を今回も味わうことができました(まあ、個人的な特殊体質かもしれませんが…)。

■とはいえ、私のいる社会科学系の班は、まだまだマンパワーが不足しています。その一方で、いろいろ「宿題」は増えるばかり…。疲れました。体制づくりもいろいろ考えなければなりません。さらに3人ほど、流域管理に強い関心のある熱心な若手・中堅研究者が必要だ…と思いつつも、なかなか難しいのが現状です。研究費が欲しいから参加したい…という人はいるでしょうが、そういう人は…困ります。自分の研究分野の殻のなかに閉じこもらず、そして自然科学の研究者と積極的・生産的なコミュニケーションすることを厭わず、研究プロジェクト全体のミッションに貢献できる熱意のある人でないと困るからです。いろいろ手を尽くして頑張ってみます。

【追記】■昨日は、帰宅して夕食をとると、9時には眠ってしまいました。月曜日、ちょっとお休みをいただきたいところですが、そういうわけにはいきません…ちょっとトホホな気持ち。学内のいろいろ仕事が溜まったいます…。

総合地球環境学研究所での研究会議(その1)

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■今日と明日は、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の全体会議です。研究プロジェクトは複数のグルーブで役割分担をしており、それぞれのグループのリーダー(コアメンバー)が報告をしました。私は、社会科学系のグループのリーダーとして報告をしました。ディスカッションでは、いくつかの「宿題」をいただきましたが、グループ内の優秀な若手のメンバーの協力もあり、なんとか「宿題」として与えられた壁を超えることができそうです。

■今年度の秋からは、予備研究(FS)からプレリサーチ(PR)、来年度からはいよいよフルリサーチ(FR)の5年間が始まります!! プロジェクトの予算がドンとつき、いろんなメンバーを誘って本格的に研究に取り組むことができます。精神的なプレッシャーはかなりありますが、地域社会との連携、他分野との連携をより深め、良い成果を出せるように頑張ります。

■以上の総合地球環境学研究所の研究プロジェクトは、滋賀県の野洲川流域を中心取り組むことから、龍谷大学の政策学部が中心となって取り組む「LORC」による「限界都市化に抗する持続可能な地方都市の『かたち』と地域政策実装化に関する研究」とも部分的に連関するところがあります。私は、この「LORC」にも参加しているので、両者の関係者の「出会い」があればなとも思っています。「LORC」の研究テーマの最後に「地域政策実装化」とありますが、地球のプロジェクトも、単なる科学的な研究ではなく、野洲川流域での新たな流域管理の方法を科学的な研究をもとに構想し、それらをモデル的に取り組む地域社会との連携実践を通して、将来的には「実装化」していくことを目指してるからです。

【関連ページ】生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性
【関連エントリー】 限界都市化に抗する持続可能な地方都市の「かたち」と地域政策実装化に関する研究

【追記】■晩は、京都四条で懇親会をもちました。朝9時から夕方17時までずっと会議でした。みなさん、お疲れさまでした。このあとは、多くの皆さんが二次会へ。私は、二次会の途中で奈良の自宅に戻りましたが、総合地球環境学研究所の施設に宿泊する皆さんは、深夜まで楽しまれたようです。個人的な考えですが、こういう懇親会は研究プロジェクトの凝集性を高めていくためには必要なことだと思います。
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研究会議の打合せ

20141106yachi1.jpg ■昨日は、朝1限の講義のあと、事務仕事や4年生の卒論指導、そして大学広報の取材対応(「北船路米づくり研究会」)。夕方からは、大津の中心市街地にある町家キャンパス「龍龍」に移動しました。月1回開催されている中央地区の皆さんと「大津エンパワねっとを進める会・中央」。進める会の最後に、地域の高齢者のサロン活動や、学区の運動会を手伝うために、卒業してからもやってくるエンパワ修了生のことが話題になりました。喜んでいただいています。

■そのあとは、引き続き「龍龍」に残り、京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんと今週末の土日に総合地球環境学研究所で開催される研究会議のためのミーティング。研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」に関するミーティングです。

■土日の研究会議で話す内容に関して、アウトラインを相談しました。そのさい、オランダで開催された「IPBES」(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services /「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)の会議に参加してきた谷内さんから、そこでの議論に関して、話し聞かせてもらいました(谷内さんは、IPBESの報告書の執筆者)。環境ガバナンスに関して、地球の裏側(南米)からやってきた研究者が、私たちの「階層化された流域管理」の考え方と似たような問題意識を持っていたと聞いて、ちょっと嬉しくなりました。このIBPESや以前にもこのブログでふれたFuture Earth等、世界のトレンドや動きをにらみつつ、プロジェクト進めていくことになります。そのあとは、「今日も一日ご苦労さん…」ということで、ちょっとだけいつもの店、大津駅前の居酒屋「利やん」です。いや、ほんまにちょっとだけ。急遽行くことになったものですから、ちょっとしたアテの他はひたすら呑み。食事は家に帰ってから。体に悪いです〜。

20141106yachi2.jpg■谷内さんの職場の宣伝になりますが、「データベースの構築と活用から見えてきた! 新しい生物多様性のサイエンス」という市民向けの講演会が「みやこメッセ」で開催されます。写真、クリックして拡大してみてください。市民向け…というには、少々内容は小難しいですけど、サイエンスが好きな方にはね面白い内容だと思います。

■谷内さんとは、ずいぶん長い付き合いです。15年程になるでしょうか。「利やん」では、ちょっと思い出話しにもなりました。最初の出会いである日本学術振興会の未来開拓学術研究推進事業のプロジェクトや、その後の総合地球環境学研究所の以前のプロジェクト。そして、そのときにお世話になったプロジェクトの秘書であるYさんや Kさんのこと。仕事がとろくて怒られたこと…いろいろあったなと…トホホ。ということで、お2人には、facebookでメッセージも送りました。台湾の大学教員であるYさんとはfacebook上で、ちょっとした同窓会になりました。便利な世の中になりましたね。「谷内さんと一緒に、台湾で癒されたい〜」と伝えると、大歓迎とのことでした。嬉しいな〜。「実現したらいいな台湾の温泉と美味しい料理」。

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