研究倫理教育の現状と課題

▪︎明日、上智大学で「CITI Japan プロジェクト 研究倫理教育責任者・関係者連絡会議『研究倫理教育の現状と課題:これからの日本のあり方を考える』」が開催されます。この会議の開催趣旨は以下の通りです。明日、この会議に、研究部の職員の方たちと一緒に出席します。4月からの仕事を少し前倒しで取り組ませていただく…ような感じでしょうか。

 2014年8月,「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(新ガイドライン)」(文部科学省)が発表されました.その中でとりわけ重要な役割を担うのが「研究倫理教育 責任者(RIO)」です.新ガイドラインでは,大学を含む各研究機関の部局毎にRIOの設置, そして組織を挙げた定期的な研究倫理教育を義務づけています.

 研究活動とは,「人類が未踏の領域に果敢に挑戦して新たな知識を生み出す行為」によって生み出さ れる,「人類が共有するかけがえのない資産」です(日本学術会議「科学者の行動規範」より).新ガ イドラインによれば,責任ある研究活動とは,ひとりひとりの研究者,研究者コミュニティ,そして それらを支える研究機関によって成立するものであり,RIOの活動は,それらすべてに大きく影響 することが想定されます.ただし日本では,RIOに関する取組の歴史が浅いため,RIOにどのよ うな役割が求められ,またどのような取組を進めていくことが望ましいのかという点には不明な点が 多く,大きな課題となっています.

「研究倫理教育責任者・関係者連絡会議」では,文部科学省,新ガイドラインの実装において重要 な役割を担う機関(日本学術振興会,科学技術振興機構),現場で研究倫理教育を担うRIO関係者の 皆様,また研究倫理教材を作成している皆様の間の情報共有,交換を通じて,日本の研究倫理教育の 活性化を目指します.

▪︎理化学研究所の例の問題もあってか、社会一般にも研究者倫理の問題が広く知られるようになりました。勤務する龍谷大学でも、すでに「「研究活動における不正行為の防止及び対応に関する規程」を制定しています。今回の連絡会議では、そのような規定だけではなく、規定にもとづき大学教員や研究者がきちんと研究活動をしていくために置かれる「研究倫理教育 責任者(RIO)」がテーマになります。3つの大学、東京医科歯科大学、筑波大学、京都大学の「研究倫理教育の取組例」について講演がおこなわれます。また、韓国での取り組みについても講演が行われます。そのあとは、「研究倫理コミュニティの創成に向けて」というテーマでグループディスカッションになります。明日は、全国から600人を超える大学関係者が参加されます。各大学から数名ずつでしょうから、この問題に対する全国の大学の関心の強さを窺い知ることができますね。おそらく会場はかなり混乱するでしょう。はたして、グループディスカッションが可能なのかな…若干の不安がありますが、勉強してまいります。

▪︎今回の連絡会議を主催するのは、「CITI Japan プロジェクト」です。「CITI」とは、「Collaborative Institutional Training Initiative」のことです。詳しくは、こちらのサイトをご覧いただきたいと思います。このサイトのなかで、「CITI」に関する動画がアップされていましたので、貼り付けておくことにします。

「地域エンパワねっとⅡ」のオリエンテーション

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▪︎昨日は、地域連携型教育プログラム「大津エンパワねっと」コースの「地域エンパワねっとⅡ」を履修する7期生の学生のためのオリエンテーションが開催されました。2年生の後期が「地域エンパワねっとⅠ」、3年生の前期が「地域エンパワねっとⅡ」になります。この日のオリエンテーションは、「地域エンパワねっとⅠ」の振り返りを各自が行い、その結果を、他の活動チームの人たちに聞いてもらうことから始まりました。そのあとは、チームごとにわかれて、4月から始まる「地域エンパワねっとⅡ」の活動内容に関して議論し、チーム内で共有することになりました。着実に進んでいるチームあれば、まだ思いだけが空回りしているチームもあります。いずれにせよ、この春休みのあいだに地域の皆さんとよく相談をして、4月から着実に活動を積み重ねていけるようにしてほしいと思います。

▪︎私の7期生の指導は、このオリエンテーションで最後になります。4月から、私の担当は8期生になります。8期生から「大津エンパワねっと」の「新カリキュラム」がスタートします。「地域エンパワねっとⅠ・Ⅱ」の履修するセメスターも半期早まり、「地域エンパワねっとⅠ」は2年生の前期から始まるこにとなります。半年早まることで、「地域エンパワねっと」の活動もずいぶん変わってくるのではないかと思っています。私は7期生の指導からは抜けますが、かわりにH先生が7期生の担当をしてくださいます。よろしくお願いいたします。

▪︎ところで、この日は、東京から視察の皆さんがお越しになりました。東洋大学社会学部の教職員の皆さんです。東洋大学社会学部でも、龍谷大学の「大津エンパワねっと」のような取り組みを始めたいという思いがおありになるようで、そのために視察に来られたのです。関東方面でも、少しは注目されているのかな…。この「大津エンパワねっと」、企画を練りはじめたのは2007年の1月でしたから、来年になるといよいよ10目になります。その次の年には、10期生も生まれます。そう考えると、ちょっと感慨深いものがあります。

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▪︎この日のオリエンテーションで、7期生の指導は最後だったことから、最後に、挨拶をさせていただきました。私は4月から8期生の指導に移ります。私の気持ちが、ちゃんと伝わったかな。7期生の皆さんの、9月の発表を楽しみにしています!!

2015年度前記開講「地域エンパワねっとⅠ」履修説明会

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▪︎本日の昼休み、地域連携型教育プログラム「大津エンパワねっと」コースの「地域エンパワねっとⅠ」の履修説明会が開催されました。およそ50人程の1年生が集まりました。通常、履修説明会は7月に開催されるのですが、カリキュラム改革が行われ、来年度のエンパワ8期生の「地域エンパワねっとⅠ」は、現在の2年「後期」から2年「前期」へと前倒しになりました。そのようなこともあり、この時期に履修説明会を開催したのです。昼休みで昼食を食べながらの説明会でしたが、ちゃんと聞いてくれているのかな…ちょっと不安。

地域エンパワねっとⅠ(7期生)

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■「大津エンパワネット」コース「地域エンパワねっとⅠ」(8期生)。

■後期・金曜日の1・2限は、「地域エンパワねっとⅠ」の授業です。今回は、12月の全体授業でした。先月の全体授業のあと、各学生チームは、地域に出て、地域の皆さんからお話しを伺い、資料も集め、自分たちでミーティングをし、担当教員(私ともう1人)の指導も何度も受けてきました。このようなプロセスのかなで、3年生の前期に履修する「地域エンパワねっとⅡ」で構想していく活動の、その前提となる「課題」を「発見」していくのです。うまく「発見」できたか…というと、それが簡単にはいきません。地域社会の文脈に位置づけたとき、実現可能で、なおかつ価値や意味のある「課題」である必要があります。学生たちは、真剣に悩んでいます。「それで、いいのだ!!」…と思っています。

■とはいえ、来月の1月18日(日)には、「地域エンパワねっとⅠ」の報告会が開催されます。そのときまでに、自分たちはもちろんのこと、地域の皆さんも納得できるような「課題」をきちんと「発見」し、「課題」の「解決」に向けた活動が提案できなければなりません。学生たちは、焦っています。「それで、いいのだ!!」…と思っています。焦るぐらいならば、報告会に向けてきちんと作業工程(ロードマップ)を作って、少しずつ前進してほしいと思います。

来年度の仕事

■そろそろ来年度からの仕事の様子がはっきりしてきました。

■大学教員の仕事は、教育、研究、学内行政、地域貢献(連携)…およそ4つ分野に分かれると思います。龍谷大学に勤務して11年目になりますが、その間で、一番大変だったのは学内行政でした。学生生活主任、研究主任、社会学研究科専攻主任、研究科長…と学部や大学院の仕事が7年も続いてきました。研究科長については、再任で2期連続4年になります。その間、大学院社会学研究科の「東アジアプロジェクト」(国際化)や「カリキュラム改革」(高度専門職業人教育な向けて)等、大学院の改革を微力ながら進めてまいりました。学生生活主任や研究主任のときも、いろいろ難題がありました。心身とも疲れ果てたこともありました。連続して学内行政の仕事をやってくると、「精神の金属疲労」をおこしそうな状態になってきます。しかし、この学内行政の仕事も、しばらくお休みさせていただける雰囲気になってきました。安心しました。とはいえ、来年3月末までの残りの期間、まだ難題が残っていますし、これからも難題が発生するかもしれません。まだ、気を抜けません。

■教育に関しては、社会学部の看板であある地域連携型教育プログラムになっている「大津エンパワねっと」を最初からずっと担当してきました。「大津エンパワねっと」は社会学部4学科から1名ずつ教員をだしあい、共同運営しています。この教育プログラムは、文部科学省の現代GPの助成金を受けることで2007年度から始まりましたが(助成金申請作業は2006年度末から)、それ以来ずっと8年間、社会学科の教員としてこのプログラムに関わり続けてきました。他の学科は担当教員が変わっていますが、社会学科は私がやり続けてきました。この「大津エンパワねっと」についても、そろそろ別の教員に担当を替わっていただけるように、教務委員の方にお願いをしているところです。もちろん、学科にお願いしたいことは、時々お休みをいただける体制をつくっていただきたいということです。

■私のばあいは、教育と研究と地域貢献(連携)が、かなり重なりあっている部分があります。けしてシステマティックな仕組みがあるわけではありませんが、滋賀県庁の仕事、大津市役所の仕事も、それからゼミで行っている「北船路米づくり研究会」の活動や様々な実習の内容も、自分の研究テーマと重なりあっている部分があるからです。そのようななかで、来年度からは、自分自身の研究成果をまとめる仕事や、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」等、研究に時間とエネルギーを集中することができそうです。ということで、来年度の講義の時間割も、できるだけ時間が分散しないように組みました。

■果たして思惑通りに進むのか、まだ不透明なところがありますが、気力が身体に満ちてくるように気持ちになります。

11月の全体授業「地域エンパワねっとⅠ」

20141114empower.jpg■今日は、地域連携型教育プログラム「大津エンパワねっと」コースの「地域エンパワねっとⅠ」の全体授業の日でした。それぞれ、地域に出て活動をして(まち歩き、地域の皆さんへのヒアリング、地域の会合への参加、資料収集…)、グループでこれからの活動方針やテーマについて話しあった結果を発表してもらいました。私が担当している中央地区(中央学区をはじめとする中心市街地エリア)のグループは、非常に悩みながらも、ぼんやりと自分たちが取り組むべきテーマが見えてきているのかな…という状況になりました(う〜ん…微妙ですけど)。以下は、私のメモです。メモですので、正確ではありません。すみません。私のコメントのようなものも一部含まれています。まだまだ学生たちの「課題探し」は、微妙な状況である…ということです。

■C01チーム「おでん」。まち歩きをして、気になるお店を何軒かみつけた。特色ねあるお店と、なにか一緒になにかできないかと思った。先輩の活動についても調べてみた。4期生「どんぐり」、5期生「わいるどもんきー」、6期生の「こけし。。「まちづくりカフェ」を手段として取り組んで来た先輩たちの活動に注目している。これを継承してみるのがよいのでは…と思っている。グループで話し合い、先生からもアドバイスをもらった。マンション住民の皆さんと元からお住まいの住民の方たちとの交流が少ないという話しも気になっている。これは、5期生「パズル」、6期生「メロン」の問題意識でもある。新しく来られた方たちに、「地元愛」を深めてほしいと思う。深めることで両者の交流の場が増えるのではないかと思う。先輩チームから、そして自治連合会の方から話しを聞いてみる。先輩からは、活動していたときの「つまづき」について教えてもらおうと思う。先輩はひとつのマンション自治会とだけ活動をしていたが、自分たちは、先輩の活動を継承しつつも、さらに一緒に活動できるマンション自治会を増やしていきたい。

■C02チーム「まりも」:まち歩きをしてみた。人が少ない。個々の商店は、店頭での商売以外にも、見えないところで商売をされていることや、シャッター降りていても、住宅としてお住まいのところもあることを知った。商店街の関係者にお話しを伺った。現在のお客さんは、地域になじみのある人たちだという。マンションの人たちは京都に出かける。イベントをして来客数は増えるが、その日限り。なんとかしたい。マンションの方たちにも親しんでいただける商店街にしたい。来年はアーケードが取り払われるかもしれない。それは商店街の発展でもあるかもしれないが、地域の思い出が消えていくことでもある。そのような街の記憶をどう考えたらよいのか。町家の保存についても、関係者に聞いた。空き家が増え、少しずつ取り壊されていっている。「エンパワ」の学生に、町家の保存に直接かかわることは難しいだろうとのことであった。ただし、からめていくことは可能とのことだった。いろいろチームで話しあったが、地域の人びとが商店街に愛着が持てるような活動がしたい。商店街の歴史、にぎわいの記憶。地域住民と一緒に、アーケードの改装について考えていけるような仕組みが。商店街の関係者からは、学生のアイデアがほしいといわれている。改装に関して、地域の方たち、新住民の方たちも関わることはできるのか。

■C03「A」:子どもが商店街にいないことに気がついた。子どもが地域を好きになるためには、街の中心にある商店街を好きになってもらうことが必要なのではと考えた。子どもの育成にかかわっている団体に相談した。一緒には活動できないが、協力できるといわれた。子どもと商店街をつなぐ活動。商店街の関係者は、最近になった引っ越して来た子育て世代に商店街に来てほしいといっている。昔は、「夜市」というイベントがよく開催され、子どもにも商店街は素敵な場所だった。商店街を子どもたちに知ってほしい。商店街のなかでの子育て教室、子どものあづかり活動。地域のニーズをさらに詳しくしりたい。

■C04「ぬりえ」:「鉄道」と「湖岸」をキーワードにまち歩きをした。反省点がある。地域の人たちに話しを聞いていないということ。「鉄道」、「湖」、「大津祭」をテーマにからめたいとおもっていたが、それは学生目線の考えでしかなかった。実際の、地域の人びとにとっての課題をみていない。私たちは、街中の青年層に興味をもった。一般に、青年層は、成長するにつれて地元への関心が低くなっていくが、この世代を対象にしたい。これから地元のために活動しようとする団体の方達と一緒に活動したい。まず話しを聞く。「大津発酵食の会」。地元の酒造会社、鮒寿司屋、漬物店の跡継ぎ世代による会。

■C05「みんと」:まち歩きをした。中央学区の「さよならの集い」の実行委員会に参加した。「子育連」の月例会にも参加した。どのような人がイベントに参加しているのか。宣伝方法。月例会等。イベントは開催しているが、中高生の参加率が低いらしい。関係者は、どうにかしたいといっている。そうするためには、地域の方達とのつながり。中高生を対象とした活動をしていきたい。中高生に地元を好きになってもらいたい。

■以上は、中央地区の5チームの報告です。この中央学区の報告に先立ち、瀬田東学区で取り組む報告もありました。メモはパソコンでとりました。最初は、きばってメモをとっていましたが、しだいに力つきでメモの分量が減ってしまっています…。写真は、今日の「エンパワ」の全体授業中に、各チームの報告を聞いてコメント(講評)をしているところです。エンパワ事務局の職員の方が撮ってくださいました。なんだか、柄の悪そうなおっさんが写っています。実態そのものかもしれませんが…。表情といい、肩の傾き方といい…。反省です。

大学広報の取材

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■大学の広報の一環として、来年、ある出版社から(今まところ、ある出版社にしときます…)龍谷大学を紹介するムック本が出版されるのだそうです。来年度は、農学部に国際学部が開学しますので、そのムック本の中身は、基本的にはこの2学部の内容を紹介するものになりますが、その片隅に、1ページほどらしいですが、「北船路米づくり研究会」のことが紹介されるとのことです。ということで、今日はその取材がありました。

■取材にこられたのは、ムック本の記事を書かれるライターさん、カメラマンさん、そして龍大の広報担当Sさん。取材対象は、「北船路米づくり研究会」・「地酒プロジェクト」の中心となって取り組んできたTさん。研究会が生まれた経緯については私が話しをしましたが(Tさんは研究会4期生で事の起こりを知らないものですから…)、研究会の活動の内容と「地酒プロジェクト」に関する質問についてTさんがきちんと説明してくれました。

■上の写真・左は、研究室を出た廊下で個人ポートレートを撮影中のところです。Tさん、緊張しています。写真・右は、ライターさんと職員Sさんとの打合せ風景。Sさんには、おそらく2012年の第1回「かかし祭」の時から、様々な場面でお世話になっています。Sさん、いつもありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

【追記】■関連ページです。「米研」が、ポスターセッションで奨励賞・環びわ湖大学地域交流フェスタ2013

街の記憶を保存すること

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■社会学科の「社会調査入門」の授業は、火曜日の1限に開講されています。今日は、その「社会調査入門」の授業の1コマが、「大津エンパワねっと」の「大学と地域をつなぐ特別講義Ⅱ」にあてられました。ゲストは、大津市歴史博物館で学芸員をされている木津勝先生です。講義いただいた内容は、「街の記憶を保存すること」です。

■博物館は、実物資料を保存するとともに、これらの資料をもとに研究・展示・社会教育活動をおこなっていく研究機関です。そのような博物館の実物資料は、じつに様々な範囲におよびますが、木津先生が担当されているのは近現代の写真・古写真です。それらの写真を使って、様々な企画展を開催されてきました。今日は、そのような企画展を実施するなかで経験されたことを中心にお話しいただきました。以下は、先生が用意されたレジュメと実際のお話しをもとにしていますが、木津先生からいただいた刺激をもとに、自分なりの解釈や説明も加えています。特に、プライベート「記憶」とハプリックな「記憶」に関する部分がそうです。木津先生のお考えとずれているかしれません。

【事例1:ニコニコ動画】滋賀県の湖西地域には、JR(旧・国鉄)の湖西線が開通するまで、「江若鉄道」という私鉄が走っていました。1969年に全線が廃止されました。この「江若鉄道」が廃止になるさい、最後の姿を記録された方がおられます。今だとビデオカメラということになりますが、当時は8mmフィルムでした。博物館ではその貴重な8mmフィルムをもとにDVDを製作されました。「ありし日の江若鉄道」という企画展ではそのDVDを販売されました(私も持っています)。ところが、著作権法的に問題があるにもかかわらず、DVDを買った人が「ニコニコ動画」にこのDVDの内容をアップされたのだそうです。ニコニコ動画の特徴は、ユーザーが配信される動画にコメントを投稿できることにあります。「ありし日の江若鉄道」にも、これを視た方達からたくさんのコメントが寄せられました。過去の8mmを通して、多くの人びとがコメントの投稿を通して交流することになったのです。しかも、「江若鉄道」を知っている人だけでなく、廃止後に生まれた若い人たちも含めて、多くの方たちがコメントを寄せられたのです。通常であれば抗議することになるのでしょうが、木津先生はそのまま置いておいたのだそうです。プライベートな記録(8mm)が、「ニコニコ動画」というパブリックなネット空間のなかで、別の意味合いを帯びてくることになったわけですね。おそらく、木津先生のなかでは、この瞬間に何か閃かれるものがあったのかもしれまん。

【事例2:企画展「ありし日の江若鉄道」】企画展「ありし日の江若鉄道」では、思い出写真とコメント提供の事前募集をされました。写真とそれにまつわる思い出を募集されたのです。「参加型」の企画展です。そして展覧会の会場内には、「思い出目メモ」という壁に来館者が思い出した記憶を貼付けるコーナーも設けられました。そのような思い出は、博物館の公式サイトで読むことができます。以下のリンクをご覧ください。多くの人がもっているプライベートな断片的な「記憶」が、展示を通して「街の記憶」として形になっていったわけです。
第14回 企画展に寄せられた江若鉄道の思い出

20141028kioku.jpg 【事例3:大津百町大写真展】この企画展「ありし日の江若鉄道」のあと、木津先生は「大津百町代写真展」を担当されました。この写真展では、来館者の皆さんが、自分が知っている写真(風景や出来事の写真)にたくさんのコメントを残されました。この企画展でも、多くの人びとのなかに眠っているプライベートな断片的な「記憶」が引き出され、それらがパブリックな企画展という空間のなかで重なり合っていきました。1枚の写真資料に、多くの皆さんの「記憶」を重ね合わせていくことで、写真資料が厚みを帯びていきます。活かされていきます。通常の博物館の展示では、解説するのは博物館の側ですが、この写真展では、来館者から博物館側が教えてもらうこともありました。来館者の方が、写真が写っているその時代のその場所のことについてよくご存知だからです。このような「水平方向」のやり取りを積み重ねていくなかで、結果として、みんなで考えながら「街の記憶を保存していくこと」につながっていくのです。

【事例4:オールドオーツ『物語の誕生』】「大津百町大写真展「大津百町第博覧会」等とともに開催された「オールドオーツ『物語の誕生』では、家庭にあるアルバムの写真から、インタビュアーが当時の思い出を聞く…という形で展示用のパネルが作成されました。通常であれば、家庭用のアルバムの写真は、プライベートな領域に属するものです。それをあえて博物館の展覧会というはパブリックな空間に展示することにより、多くの人びとの共感を生み出します。あるいは、自分のなかに眠っていた記憶を呼び戻すことにもつながっていきます。また、写真資料は見る人によって、受け取る意味が違ってきます。それは、写真がたくさんの情報量をもっているからです。見る人によって写真から得られる情報は、じつに様々なのです。家庭に眠っていた写真がパブリックな空間である写真展で写真資料となり、多くの人びとがかかわることのなかで、写真資料のもっている多様な情報が引き出されていくのです。この点は、事例3と同様です。

【事例5:証言VTRでたどる百町むかしがたり(いまきいとき隊)】街の高齢者の方たちから当時の聞取り、文章やコメント文字ではなく、その方の生の声と表情までを記録することを目指した活動です。文字では伝わらないことまで、動画は伝えることができます。今日の授業で拝見した動画では、以下のようなエピソードを登場された方たちが話されていました。かつて浜大津港に停泊していた観光船「玻璃丸」の周りで泳いだという記憶です。もちろん、法律的には遊泳禁止だったのですが、当時の子ども達は泳いだというのです。泳ぎながら、船から出る油に頭をつっこんでしまいべとべとになったとか、泳ぎの達者の人たちが観光船の船底を潜ってくぐったとか…。

■木津先生が5つの事例で示された「記憶」は、大文字の「歴史」のなかでは語られることがありません。小さな断片的なエピソードばかりです。しかし、この街に暮らす人びとにとっては、それらはとても大切なものなのです。写真、そして動画を通して、多くの人びとの内に眠っている「記憶」(プライベートな「記憶」)が、ハプリックな空間のなかで少しずつ「つながり」ながら(パブリックな「記憶」群)、「街の記憶を保存すること」につながっていくのです。以上の「街の記憶論」については、もっときちんと整理し、別のエントリーで自分の考えをまとめてみたいと思っています。

「大津エンパワねっと」・7期生

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■本日の1・2限は、「大津エンパワねっと」7期生の第4回目「地域デビューのふりかえり&チームづくり」です。先々週は中欧地区(中央小学校区を中心としたと中心市街地のエリア)、先週は瀬田東学区で、学生たちが地域の方達からお話しを伺い、まち歩きをする、「地域デビュー」が実施されました。今日の授業の目的は、そのときの経験や印象を、ワールドカフェ方式で振り返り、最終的には「チームづくり」をすることにあります。いよいよ、7期生の活動が始まります。

■ワールドカフェについては、大変有名な方法なのでここでは説明しません。写真をご覧いただけばわかりますが、模造紙に地域デビューの経験から思うことを書きながら、全体で共有しているのです。下段の右側は、今日のめたに来てくれた、エンパワの先輩たちチーム「こけし」の6期生の皆さんです。後輩を応援してくれてありがとう。

■以下は、チームが決定したあと、チーム名が発表されているときのものです。私が記憶している限りで、チーム名の由来書いてみました。
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■左は、チーム「おでん」。おでんのように、いろんな具がハーモニーを奏でながらひとつにまとまる…そんな意味のようです。いいですね〜。ぜひ、大津駅前のおでんの居酒屋「利やん」にいってほしいです。右は、写真では字がとんでいますが、チーム「ぬりえ」です。これからチームで協力して色を入れていく…という意味かな。でも、本当は「ぬ」という音の響きが好きなんだそうですが、「ぬ」だけではチーム名にならないので、「ぬりえ」に落ち着いたようです。不思議ですね、「ぬ」。
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■左は、チーム「A」エースですね。漫画「ONE PIECE」の登場人物からきています。右は、チーム「まりも」。なにか、森林系、自然系がみなさんお好きなようです。
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■左は、チーム「みんと」。それぞれの名字の頭文字を並べ替えて、意味が通るようにした…とのことです。爽やかなイメージです。右は、「ホッター」ではなくて、チーム「HOTARU」です。ホタルです。Uを書くスペースがなくなったので、スマイルになっています。横広がりのUです。そういえば、瀬田東の川には、ホタルが飛び交いますね。
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■左は、チーム「オレンジ」。名札の紐がオレンジだから…という、なんともわかりやすい理由ですが、オレンジのように明るくチームがまとまめば…との願いがこめられています。右は、チーム「FOUR」。なんでも、メンバーが好きなバンド名に由来しているらしいのですが、…私のようなオジさんには無理です。ベトナムのうどんかと思ってしまいます。
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■左は、チーム「ユー・ドゥー・フー」。湯豆腐です。マイクをもっている彼の大好物の料理らしいです。でも、なにかもっと深い意味がありそうな気もしますね。右は、チーム「CoCo」。紙をもっている彼のペットのハムスターの名前なんだそうです。

■来週からは、いよいよこのチームで活動が始まります。何をテーマに、どう焦点をあわせて活動していくのか、まずは街の皆さんの活動のお手伝いをしながらお話しを伺う、先輩から昨年の活動の内容を教えてもらう、さらには報告書や先輩たちのレポートやメッセージを丹念に読み込んでもらいたいと思います。そうした地道な努力が、あとで皆さんの活動をグッと盛り上げることになりますから。

町家キャンパス龍龍

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■龍谷大学社会学部では、「大津エンパワねっと」プログラム(2007年度文部科学省現代GP採択)の取り組みの拠点として、大津市中央地区に「町家キャンパス龍龍」を2009年度より開設しました。これまで主に社会学部の教育研究活動で利用してきましたが、本学教職員、学生、学外者の方も利用できるようになりました。教育研究活動や課外活動の場として、また地域連携の場として、是非ご使用ください。

町家キャンパス「龍龍」について

■学生の皆さんへ。「町家キャンパス」は、龍谷大学の所有物ではありません。ある方の善意でお借りしているものです。少し説明させてください。

■2007年、龍谷大学社会学部が提案した「大津エンパワねっと」は、文部科学省「現代GP」(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)のひとつとして採択されました。「大津エンパワねっと」の活動地域は、事前の調整もきちんと行ったうえで、瀬田キャンパスに隣接する瀬田東学区と、中心市街地の中央地区、この2箇所に決まっていました。「大津エンパワねっと」が「現代GP」に採択されたとき、私は、中央地区にある中央学区自治連合会の会長・Sさんのところに早速ご挨拶に伺いました。そのことをSさんにお伝えしたところ、満面の笑みで「せんせー、良かったな〜!!」ととても喜んでくださいました。ただし、中央地区は瀬田キャンパスから遠くにあるため、なんらかの拠点が必要だと考え、様々な可能性を検討していました。そうしたところ、それまでにもいろいろご支援くださっていた大津市役所都市計画部都市再生課の課長(当時)であったTさんから、「龍大が本気で中心市街地で活動をするのならば、紹介したい物件がある」といってくださいました。

■当時、大津市役所は、中心市街地に関する政策のあり方を大きく方向転換し、新たに、町家が多く残るこの地域の町並みを大切にしていく方向性を出されていました。そのことも関係して、Tさんは、ご自身の知人Fuが所有されている町家物件を紹介してくださったのです。簡単にいえば、市役所が所有者と龍大とのあいだで仲介してくださったのです。所有者のFさんは、「投資の関心から購入した物件だが、龍大が中心市街地の活性化のために活動しようというのであれば、お貸ししましょう」と快く応じていただきました。詳しいことは、もっといろいろあるのですが、学生の皆さんには、多くの皆さんのご支援・ご協力があって、この町家キャンパス「龍龍」が存在しているのだということを忘れずにいてほしいと思います。そのことを念頭に置きながら、町家キャンパス「龍龍」を利用していってほしいと思います。

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