世界農業遺産の現地調査(3)
■世界農業遺産現地調査の続きです。沖島の次は、野洲市で「魚のゆりかご水田」に取り組む「せせらぎの郷須原」を訪問しました。ここの「魚のゆりかご水田」には滋賀銀行中主支店の皆さんがボランティアとして関わっておられるようですが、今日はまず支店長さんが、次にJAレーク滋賀代表理事理事長さん、そして県会議員で地元の農家さんがスピーチをされました。その後、調査員のブスタマンテさんは、堰板で水位が上がった「魚のゆりかご水田」の水路を見学されました。この「せせらぎの郷須原」には、知り合いの女性がボランティアとして関わっておられて、その方とひさしぶりにゆっくりお話をすることができました。彼女は、この地域で生産される麦の茎を使って昔な懐かしいストローを生産されています。今日は、そのストローで、やはり地元で生産された麦を使った麦茶をいただきました。
■最後に、この地域の若者を代表して、女子高校生がスピーチをしました。通訳の方が同行されているのですが、彼女は英語でスピーチをされました。あえて英語でスピーチをしたことも含めて、彼女のこの地域に対する誇りの気持ちはブスタマンテさんにきちんと伝わったと思います。
■調査員ブスタマンテさんは、現地調査の最後に、滋賀県立琵琶湖博物館を訪問されました。特にC展示室の「田んぼ」の展示を見学し、学芸員の方から説明を受けました。水田は、たくさんの生き物たちの生活の場にもなっていますが、この展示では、琵琶湖の周囲に広がっている水田に生息する生物のことについて解説してあります。小さなジオラマでは、世界農業遺産認定に向けて審査を受ける「琵琶湖システム」の四季の変化をわかりやすく伝えています。
■ブスタマンテさんには、全ての展示をゆっくり観覧していただきたかったのですが、残念ながらこの日は時間がありません。もし再来日され、滋賀をまた訪問してくださるのならば、ぜひじっくり時間をかけて楽しんでいただきたいと思います(かつて、この博物館に勤務していた者=私のおもいです)。
■展示を見学した後は、博物館のセミナー室で、調査員のブスタマンテさんから一日を振り返っての質問が行われました。ちょっと、はらはらするところもありましたが、最後は、なんとかご理解いただけたのではないかと思います。
■若い高校生からは、自分達ご取り組んできた環境学習に関する報告が、若い漁業者や農家からのスピーチもありました。若い漁業者の方は知り合いの若者です。もともとは大学院で建築を学んでおられたのですが、漁師の親方さんに弟子入りして独り立ちされました。スピーチでは、琵琶湖の水産業の6次産業化の必要性を語っておられました。そのことに調査員のブスタマンテさんも大いに共感されていました。うまくいけば、来月、ローマのFAO(国際連合食糧農業機関)で、「琵琶湖システム」も最終的な審査を受けることになります。楽しみです。
世界農業遺産の現地調査(2)
■世界農業遺産の現地調査の続きです。三和漁協でエリの視察ほをしたあと、琵琶湖汽船の高速船MEGMIで沖島に移動することになりました。船中でも3人の方が、調査員のブスタマンテさんにプレゼンテーションを行いました。
■まず最初に、水源の森の大切さを伝える活動をされている「巨木と水源の郷を守る会」の小松明美さん。そして、モンドリ漁やカバタ、ヨシ帯保全等の取組を針江地区で取り組まれている「針江有機米生産グループ」の石津文雄さん。最後は、食文化・食品学を専門とし、「しがの食文化研究会」の代表を務めておられる滋賀大学名誉教授の堀越昌子さん。船内では、滋賀県の食材で作った美味しい「魚治」さんのお弁当もいただきました。しかも、ひとつひとつの料理について、堀越先生が丁寧に解説をしてくださいました。とても、美味しかったです。
■途中、沖の白石にも立ち寄りました。以前、沖の白石を間近に見たのは、随分、昔のことになります。確か、比良山系が雪で白くなっている真冬の時期に、浜大津から長浜に向かう琵琶湖汽船の「雪見船」に乗船した時かと思います。この沖の白石、大岩1つ・小岩3つで形成されています。この辺りの水深は約80mですし、岩礁が水面から約20m飛び出しているので、全長では役100もの岩が湖底から伸びているということになります。なぜ、このような角のような岩が残っているのか、とても不思議です。この沖の白石だけでなく、多景島や沖島も含めて、火成岩という固い岩石からできていると聞いたことがあります。きちんと調べて理解しないと…。
■「MEGUMI」を降りて 沖島に上陸しました。ちょうどその時、沖島の前を環境学習戦「うみのこ」が通過しました。滋賀県の全ての小学校5年生が、この「うみのこ」に乗船し、琵琶湖の環境学習を行います。沖島では、ブスタマンテさんの来島を、島の小学生の皆さんが歓迎してくれました。ブスタマンテさんは、子どもたちのひとりひとりの前で立ち止まり、お名前と年齢を聞いておられました。お子さんがとってもお好きな方のようです。
■その後、ブスタマンテさんは、沖島漁業協同組合女性部である「湖島婦貴の会」(ことぶきのかい)の皆さんから歓迎を受け、漁業協同組合長や沖島の水産業に島外から新規参入された(漁師に弟子入りした)若者から話を丁寧に聞かれていました。船でいただいたお弁当でお腹はかなりいっぱいでしたが、沖島のお母さんたちの湖魚料理でさらに胃袋は満足しました。
世界農業遺産の現地調査(1)
■6月16日(木)の朝から、世界農業遺産に申請中の「琵琶湖システム」に関する現地調査が行われました。世界農業遺産とは、「社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、景観、農業生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システムを国連食糧農業機関(FAO)が認定する仕組みです」。
■ この日は、FAOの調査員であるパトリシア・ブスタマンテさんがブラジルからお越しになりました。まず、近江今津にある「今津サンブリッジホテル」での「琵琶湖システム」の概要説明からスタートしました。三日月大造滋賀県知事自ら「琵琶湖システム」についてご説明されました。ブスタマンテさんからは、「琵琶湖システム」を丁寧に視察されながら、あらかじめ提出されていた質問や疑問点を、1日かけて確認されていきました。トップの写真は、「今津サンブリッジホテル」からみた琵琶湖です。あいにくの曇り空でしたが、窓からは水墨画のような素晴らしい風景を眺めることができました。
■世界農業遺産の概要説明の後は、まずは三和漁協に行きました。調査員のブスタマンテさんはエリ漁を視察され、組合長から説明を受けられました。私たち同行者は、組合の事務所で先ほどまでセリをやっていた場所で、今日、水揚げされたアユを見せていただきました。ところで、なぜエリを視察されたのかについても、少し紹介しておきましょう。「琵琶湖システム」の公式サイトでは、次のように説明しています。
湖辺の水田やヨシ帯に向かう湖魚の生態、琵琶湖の水流などを巧みに利用しながら発展し、人々に湖の幸をもたらしてきているのが「エリ漁」です。「エリ漁」は、伝統的な「待ちの漁法」の代表格で、水産資源の保全に配慮する社会的な仕組みとともに、現代に受け継がれてきています。
また、多様な主体による水源林の保全や、琵琶湖の環境に配慮した農業など、水質や生態系を守る人々の取組、森・水田・湖のつながりは、世界的に貴重なものです。
伝統的な知識を受け継ぐ、こうした「琵琶湖と共生する農林水産業」は、千年以上の歴史を有するもので、「森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす『琵琶湖システム』」として、2019年2月に「日本農業遺産」に認定され、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」の候補としても認められました。
JR西日本の「懐鉄」(懐かしい列車)
■うーん…ずいぶん迷いました。150円なので、大津駅だけでもと買ってしまいました。JR西日本が発売している「懐かしい列車の入場券」=「懐鉄」です。JR西日本のいろんな駅で、廃止になったさまざまな列車の写真が掲載された入場券、発売されているのです。大津駅は急行「きたぐに」です。
■「きたぐに」は、大阪駅と新潟駅の間を東海道本線・北陸本線・信越本線経由で運転していた夜行急行列車です。定期運転は、2012年3月17日で運行終了しました。今は、関西から新潟に行く場合も、東京を経由して新幹線で移動されるのではないかと思います。昔は、一般にはどんな人たちが、どういう目的で利用していたのでしょうね。関西の人が新潟に出張して朝から仕事があるとした時に、前泊が必要なるのではないかと思います。体力は要りますが、こういう夜行急行列車があると電車の中で睡眠をとって、新潟に到着したらすぐに仕事を始められるので、便利といえば便利ですよね。実際のところはどうだったのか、わかりませんが。
■若い頃のは、この「きたぐに」はもちろんのこと、鉄道には関心がなかったのですが、夜行寝台に乗って大阪から新潟に行った記憶があります。学生時代に所属していた、学生オーケストラ、関西学院交響楽団でソビエト連邦に演奏旅行に出かけたのですが、行きも帰りも、新潟から旅客機に乗りました。1979年のことになります。新潟空港からソ連のまずはハバロフスクに飛びました。その後は、モスクワ、レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)、バルト三国のラトビアの首都リガ等で演奏をしました。でも、ソ連への入出国は新潟からでした。その時に、「きたぐに」に乗っているのではないかと思います。でも、「つるぎ」という特急も走っていたようで、どっちなんだろうな〜思うのですが、今となってはよくわかりません。
■ところで、この「懐鉄」の「きたぐに」の入場券の話題をfacebookにも投稿したのですが、ある方から以下のようなコメントをいただきました。
少年時代、大津で過ごしました。長浜の先生が、「終電は『きたぐに』やねん。」と、言われてたのを思い出しました(笑)
■こちらのブログの記事では、かつては大津発0:12の「きたぐに」に乗車すると、長浜には1:15に到着していたようです。大津で遅くまで飲んでいても、長浜まで帰ることができたわけで。今だと、大津発の最終の長浜行きの電車は大津発22:41です。長浜には23:41に着きます。飲兵衛にとっては、1時間以上遅くまで呑めるので、昔の方が良かったですかね。
蜂蜜スイーツの差し入れ
■火曜日4限(15:15~16:45)は、3回生のゼミ「社会学演習IA」です。今日は、ゼミの開始時に、嬉しいことがありました。うちのゼミは男子ばかりなのですが、そのうちの1人の学生さんが、お菓子を作ってきてくれたのです。
■先日、瀬田キャンパスにある「Steamコモンズ」で開催された「Market Place」で蜂蜜が販売され、その蜂蜜を、遊びに来てくれたゼミ生にプレゼントしました。彼はスイーツ作りが趣味とその場で教えてくれたものですから、ぜひ龍大の蜂蜜を使ってスイーツ作って欲しかったのです。まあ、そのようなこともあって、今日は、その龍大の蜂蜜をつかってお菓子を作ってきてくれたのです。非常にしっとりして美味しかったです!! ありがとう。しかもみんなに食べてもらおうと、爪楊枝まで持参してくれていました。やるな〜。
■秋には、農学部の古本先生と先生の研究室のゼミ生のコラボで、社会学部の教員である私や私が指導で関わっている学生とで、「蜂蜜とジャム」のイベントを開催します。その時に、ぜひまた蜂蜜を使ったスイーツを提供もらいたいなあと思っています。また、相談をしてみます。
研究会議
■まだ議論を通して企画の屋台骨をしっかりさせているところなので、詳しくは説明できませんが、現在、農学部と先端理工学部の教員の皆さん、そして社会学部の私で、2022年度のJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の「共創の場形成支援プログラム」に応募する準備を進めています。
■私は文理融合型の研究プロジェクトの経験を積んできたので、今回のようにいろんなディシプリンの研究者が集まる広い意味での環境系のプロジェクトは得意な方なのかもしれません。今朝、開かれた研究会議では、自ら申し出て、企画の骨格を示す概略図を用意してきました。いわゆる「ぽんち絵」というやつです。もっとも、基本の核となるアイデアは農学部のお2人の教員のものなのですが、そのアイデアやその意図をうまく汲み取り、他のディシプリンの方法や考え方も連携させた形でまとめました。
■今日はこの図を基本に、議論を行いました。私としては、うまくいったのではないかと思っています。今回の企画には、私が理事長をしている特定非営利活動法人「琵琶故知新」も参加させていただき、「琵琶故知新」が発案した「びわぽいんと」も今回の企画の中で大切な役割を果たすことになっています。全体のグランドデザインを概略図を元に関係者全体で共有した上で、細かな企画の詰めを行なっていく予定です。
【追記】■今日、会議が終わった後、会議に参加した方から、こんな考えを聞かせていただきました。「社会学部が深草キャンパスに移転した後、瀬田キャンパスはどうしていくのか。瀬田キャンパスには、学部を超えた環境に関わる研究所が必要なんじゃないのか…」というご意見です。社会学部が移転しなくても、私は、琵琶湖のある滋賀県を中心的なフィールドにした環境系の研究所があってほしいと思っていました。もし、そのような研究所ができるのならば、深草キャンパスに移転しても、その研究所のプロジェクトに参加したいものです。細かなディシプリンに分割した形で研究をするのではなくて、ディシプリンや自分の専門性を超えてフィールドの現実と向き合うことが必要だとずっと思っていました。少なくとも「キャンパス単位」で考えていくことが必要なんだと思います。とはいえ、定年退職まで残された時間はわずかです。
庭のユリ
■鉢ではなく、庭に植えたユリが蕾を膨らませていました。今日は、そのうちの一つだけが開花しました。ユリの花、とても好きなので毎年楽しみにしています。自分の中では、ユリの花は遠い昔の記憶と結びついています。
■昔のことを思い出しながら近づいてみると、元気に蕾を膨らませている蕾に混じって、何やら汚れているような蕾も。むむむ!!! 害虫がついています。鳥の糞のようですが、明らかに害虫です。調べてみました。正しく同定できる能力はありませんが、ユリクビナガハムシという甲虫のようです。この昆虫、幼虫の段階では自分の出した糞を身にまとっているのです。そうか、ウンコでカモフラージュしているのか。すごいですね。申し訳ないけど、手で駆除させていただきました。ごめんな。
■ユリクビナガハムシ、こんな昆虫です。
川北くんのお祝い
■昨日は、午前中から大津駅前のいつもの居酒屋「利やん」に行きました。本来、土曜日、「利やん」はお休みなのですが、昨日はお店のご常連である川北くんの「還暦&定年退職」のお祝いのパーティが開催されました。長年に渡り、川北くんとこの「利やん」で交流してきたご常連が集まってきました。思い出になる会にしようと、みんなで餃子を包み、焼いて、そしてお好み焼きも焼いて、楽しい時間を過ごしました。都合がつかず参加できなかった皆様、残念でしたね。また、お店でお会いいたしましょう。昨日は、龍谷大学を64歳で早期退職された原田 達先生もご参加くださいました。ひさしぶりに原田先生ともお会いできました。先生がご退職されてから、もう6年も経ったんですね。時間が経つのは速い、速すぎるな〜。
■「利やん」は、私にとってとても大切な場所、「サードプレイス」です。職場でもある大学の役割からも、家庭における役割からも解放されて、1人の個人としてリラックスできる場所であり、いろんな人のつながりが生まれる大切な場所でもあります。詳しくは、以下の投稿をお読みください。
2015「びわ湖レイクサイドマラソン」/ サードプレイスとしての「利やん」
地域自治の現状と課題
■金曜2限は「社会共生実習」の「地域エンパワねっと・大津中央」です。来週は、10年にわたって中央学区自治連合会長をおつとめになった前自治連合会長・現顧問の安孫子邦夫さんにお話を伺うことになっています。あえてまとめれば、地域自治の現状と課題について伺うということになるでしょうか。ということで、学生の皆さんはお尋ねする内容を議論しました。最終的には、時間内でうまくまとまった…かな。
■この10年で中央学区の様子もいろいろ変化しました。同時に、長年にわたって自治連合会長をおつとめになってこられて、その途中でも中央学区の地域自治に関するお考えについても何か変化があったかもしれません。10年にわたる自治連合会長のご経験から、学生たちは学ばせていただきます。
「地域エンパワねっと・大津中央」では、大津市中央学区自治連合会会長を長年なさっておられた方への質問をみんなで出し合いました。来週、オンラインで対談する予定です!#龍谷大学 #社会共生実習 #地域エンパワねっと pic.twitter.com/rt3vgNOSIu
— 龍谷大学 社会共生実習|公式 (@r_coexistence) June 10, 2022