台風24号と防災意識の変化

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◾️2018年、今年は台風に怯えています。この前、台風21号チェービー(8月28日〜9月5日)で近畿地方は大変な被害にあいました。私もその風の強さに驚きました。と言いますか、自宅にいて恐怖を感じました。幸いにも、自分自身には被害はありませんでたが、あちこちで傷跡を残しました。台風21号の被害をテレビニュースで見ましたが、「本当にこれは現実のことなのか、ハリウッドの映画の中のシーンのようだ」と思うほどでした。そのような傷跡がまだ癒えていないにも関わらず、次の台風24号チャーミー(9月21日〜)が本日(9月30日)から明日にかけて、今度は近畿地方だけでなく南から順番に、日本列島全体に襲いかかっています。画像は、「Yahoo Japan! 天気・災害」のものです。

◾️予報によると、21号もそうでしたが、今回の24号も琵琶湖を通過していきます。私は、琵琶湖が見えるところに住んでいるので、非常に心配しています。私の住んでいるところは、いわゆる新興住宅地と呼ばれところですが、さらに山沿いの方にある中山間地域の農村地域では、避難が始まっています。土砂崩れが心配されるからだと思います。台風はその東側の地域で強い風が吹くと言われています。今回の台風24号のコースでは、東側の中に伊勢湾や東海地域が入っています。ニュースに寄れば、伊勢湾台風(1959年)に匹敵する記録的な高潮になる恐れもあり厳重な警戒が必要だとのことです。大丈夫でしょうか。

◾️明日は、私は担当する授業はありませんが、3年生のゼミ生の18名うち、まずは4名の皆さんと卒論の調査・研究に関して面談をすることになっています。面談は11時から始まるのですが、さてどうなるでしょうね。心配だな…。明日、10月1日(月)の授業については、当日午前6時30分を目処に「授業休止の取扱基準」に基づき判断し、大学ホームページで連絡されることになっています。無理のないようにしたいと思います。

◾️ところで、前回の台風21号がやってきたときに、facebookで知り合いの方たちとコメント欄で以下のようなやり取りをしました。

Aさん : 21号は本当に窓ガラスにガムテープでも張った方が良いかもと真剣に考えました。子ども時分は窓や玄関扉に板を釘で打ち付けていましたからね。

脇田 : そうです、そうです!!昔は、そうしていましたよね。台風に対する緊張感がありましたよね。

Bさん : 父親が早く帰宅して異様に張り切ってました。雨戸閉めて釘で打ち付けて、ロウソクをアチコチに用意して、お握り準備して。。。台風襲来ってなんかドキドキワクワクするような変な気分でした。

Aさん : そうそうちょっと興奮気味でした。

◾️確かに、昔はそうでした。私が子どもの頃、昭和30年代の頃の話しです。社会のインフラも、住宅も、災害に対して脆弱でした。ですから、自分たちで守っていくしかありませんでした。台風に対して「敏感」でした。窓や雨戸に板を釘で打ち付けるとかしていました。当時は、ガラス窓のガラスも脆かったですし。床上浸水しそうだと予想すると、畳を2階に上げておくなど、そういう自助努力をしていました。また、あらかじめ土嚢を積むなどの地域の共助による対策もしていたように思います。台風を「受け止める」ことを前提にしていたのですね。その時には、みんなが力を合わせて頑張ることになります。家族や地域の団結力がより高まります。そのような時、子どもからすると、何か特別な時のように感じられたのではないかと思います。ところが、社会のインフラが強化されると、台風に対して「敏感」ではなくなってしまいます。堤防やポンプや排水路などで水害の発生を防ぐことができるようになります。建築物も強化されます。しかし近年のように、気候変動を背景として気候が極端になってくると、「敏感」ではなくなる=「鈍感」になったところに災害が襲いかかってきます。今年は、社会全体が台風の恐ろしさを実感して、少し「敏感」さが取り戻せたような気がします。あくまで印象でしかありませんが。

恐ろしい台風21号

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◾️琵琶湖の南湖の西側に住んでいます。昼前から、風も雨も強くなってきました。自宅からは琵琶湖南湖の湖面が見えますが、白い波も確認できました。しだいに風雨が強くなってきました。午後、台風は関西を通過していき、日本海に抜けました。私が住んでいるところは、今回の台風21号の進路の東側にあたります。台風の東側の風には、台風の進行するスピードが加わるのでより強くなると聞いていますが、その通り、昼からは大人になってからの記憶では「こんなの初め」というような暴風雨で、非常に恐ろしい台風でした。

◾️閉められる雨戸はべて閉めましたが、強風で雨戸が大きな音を立てました。近くの比叡山麓や比良山麓の中山間地域では、「避難準備」が出ています。これまでも、避難しないといけなくなるかもしれない暴風雨はありましたが、これほどひどくなかったのではないかと思います。庭の草木が強風に煽られて、まるで踊り狂ったかのように揺れ動いていました。家の前の道路には、どこからか飛ばされてきた「月極駐車場」と書かれたトタンの看板が転がっていきました。そのような強風で、家も少し揺れるわけですね。本当に怖かった。SNS等で知りましたが、阪神間では停電も起こったようですね。何らかの被害を受けられたにしても、最小限の被害でありますように。

【追記】◾️テレビニュースを視ると、あたこちで大変なことになっていますね。関空では浸水し、連絡橋にタンカーが衝突しました。神戸や芦屋でも高潮による浸水被害も出ています。驚きました。

過剰虹

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◾️昨日は、午前中が東近江市の八日市、午後は瀬田キャンパスで事務的な作業を行いました。パソコンに向かって集中していたのでわからなかったのですが、夕立が降ったようでした。その夕立のおかげて、帰宅しようと校舎の外に出てみると、「きちんとした虹」が見えました。きちんとしたというのは、180°全て完璧に…という意味です。よく部分的に虹をみることはありますが、今回は完璧でした。しかも、これは過剰虹っていうでしょうか。二重の虹になっていました。なにか、良いことあるでしょうか。……って、自分の幸せばかり言っていてはいけませんね。世の中に幸せが満ち溢れますように。

寺院の掲示板

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■仏教寺院の入り口のあたりには、よく掲示板が設置されています。ときどき、その掲示板に掲示されている「言葉」をじっくり拝見しています。それぞれのお寺のご住職のお考えがよく伝わってきますし、言葉に対するセンスのようなものがキラリと光っているように思うからです。

■昨日は、龍谷大学社会学部の地域連携型教育プログラムである「大津エンバワねっと」の関連で、「大津エンパワねっとを進める会・中央」が、大津市の中央市民センターで開催されました。その帰り、浄土宗の乗念寺の前を通りかかったのですが、いつものように掲示板が気になりました。写真を撮らせていただきました。「素敵だ!!」と思いました。なんというんでしょうね。ちょっと、イケてますよね。字も個性的で素敵です。ご住職は、このトイレ清掃員のダリルさんの言葉をどこでお知りになったのでしょうね〜。

■ところで、こちらの乗念寺さん、開基は1588年(天正16年)。江戸時代以前からの歴史をもつお寺であることがわかります。知り合いの方からの情報だと、江戸時代、大津の街の中では浄土宗の本山的な存在だったそうです。ちなみに、こちらのお寺の木造聖観音立像は、重要文化財なのだそうです。

■こういうものをネットで発見しました。みなさん、気になっておられるのですね。
『こころにひびくお寺の掲示板のことば』

無線従事者免許証

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20180113ham2.jpg■昨日、研究室の引き出しの中を整理していると、昔の写真や諸々のものが「発掘」されることになりました。ああ、懐かしい。その中に、どういうわけか「無線従事者免許証」というのが混じっていました。本当は、自宅にあるはずなんですが…。

■この「無線従事者免許証」の中を見ると、資格が「電話級アマチュア無線技士」になっています。現在の「第四級アマチュア無線技士」に対応する資格です。免許証の番号の前にある「 FXN」ですが、「F」は免許を発給された地域のことで中国地方を示しています。発給したのは、当時であれば、中国電波管理局でしょうかね。ちなみに、私は当時、広島市内の中学校に通っていました。次の「X」は発給した年です。昭和48年を示しています。「N」は「電話級アマチュア無線技士」ということです。この免許が交付された時、私は15歳の中学3年生でした。確か、電波工学と電波法規の試験を受けました。アラ還となった今と、この当時を比較すると、同一人物とはなかなか思えませんね。念のために白く塗りつぶしていますが、氏名のところは手書きの文字ですし、免許の端には少し茶色い染みが浮かび変色しています。45年前ですから…。

■さて、この免許証の交付を受けて、実際にアマチュア無線局を開局したのかといえば、結局、開局には至りませんでした。当時は中学生で、とても開局するだけのお金を用意できなかったのです。大人になったら開局するぞ…と思っていましたが、実際に大人になるとアマチュア無線に関心を失ってしまいました。私の子どもの頃、アマチュア無線は大ブームだったんですけどね。少年向けの雑誌には、必ずと言って良いほどアマチュア無線の通信講座の広告が出ていました。私は、『子供の科学』や『初歩のラジオ』といった雑誌を通してアマチュア無線に関心を持つようになりました。おそらく、今でも開局しようと思えばできるのでしょうが、そのような気持ちは湧いてきません。ただし、あえていえば、今やアマチュアの世界にしか残っていないモールス通信(CW)には、ちょっと関心があるかもしれません。

■この免許を眺めていると、頭の中に急に、数式が浮かんできました。f=1/2π√LC。インピーダンスという言葉も浮かんできました。しかし、なんの数式だったか思い出すことができません。悲しいですね…。

■ところで、これとほぼ同様の投稿をfacebookにしたところ、いろいろ反応がありました。もちろん反応の多くは、「私、アマチュア無線をやっていました」というものです。びっくりしました。「やっていました」ですから、今はやっとおられないわけです。ブームが去ったといえば、それまでですが、調べてみると、アマチュア無線をしている人は随分減っているようですね。無線の技術やテクニックそのもの、そしてアマチュア無線のコンテスト等に強い関心を持っている方達は別にして、他者とのコミュニケーションを楽しみにされていた方達は、インターネットが普及し、SNSも当たり前の世界になり、スマートフォンで簡単に扱えるようになる時代に移っていく中で、免許の更新やそれに伴う費用を支払ってまで強い関心を持ってアマチュア無線に取り組むことができなくなったのではないか…というのがネット上で見られる意見のようですね。

三井寺秋のライトアップ2017

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■知人から招待券になる葉書をいただき、「三井寺 秋のライツアップ2017」に行ってきました。ライトアップは、今日で最後。間に合いました。
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のんびりゆこう

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■我が家のトイレの日めくりです。「いきつくところ」には、何も持っていけません。「いきつくところ」の手前では、「死」をきちんと生き切ることが必要になります。そのためには、「いきつくところ」をしっかり意識して、そこに向かって日々を「大切に生きる」ことが大切なのかなと思うわけです。「大切に生きる」と「のんびり」は矛盾しないとは思うけれど、具体的に実践するのはなかなか難しいなあと思います。

「横山ホットブラザーズ」を無形文化財に指定 大阪市


■上方漫才の「横山ホットブラザーズ」の皆さんが、大阪市の無形文化財に指定されました。おめでとうございます。本当に、めでたい。大阪市の無形文化財には「上方漫才部門」があり、これまでには、「夢路いとし・喜味こいし」のお2人だけでしたが、今回は2組目ということになりますね。「横山ホットブラザーズ」のお3人、横山アキラさん(84)横山マコト(82)さん、横山セツオ(71)。こんなご高齢だと知りませんでした。舞台の上で、観客の皆さんを喜ばせることが、皆さんのお元気の素なのでしょうかね。大変有名ですが、「お~ま~え~は~あ~ほ~か」のノコギリ芸、何度見てみ笑ってしまいます。このお笑いの生命力、すごいことだと思います。だからこそ、「無形文化財」なのだと思います。

人間の進化と共同養育

20170601oriori.jpg ■朝日新聞の鷲田清一さんのコラム「折々のことば」、5月26日は、京都大学総長で霊長類学者、ゴリラの研究で有名な山極寿一さんのことばでした。「赤ちゃんの声はいつでも世界の関心の中心になるような力をもっている」。ああ、初孫が生まれてなおのことですが、本当にその通りだと思います。そのことを、「現在進行形」で実感しています。引用されている山極さんのこのエッセーをきちんと読んだわけではありませが、ここからわかることは、人間は、周りの人びとが「よってたかって赤ちゃんをあやす」ような、「共同養育」の仕組みを進化の過程で作り上げてきたということです。しかし、現代社会の育児環境との間には大きなギャップがあります。

■このことについては、以下の動画をご覧いただければと思います。YouTubeで見つけました。これって、法律的にはどうなんだろう…。そのうちに、見られなくなると思います。NHKスペシャル「ママたちが非常事態!? 最新科学で迫る にっぽんの子育て」です。以下は、番組内容のメモです。

・女性が母親になる時、脳の30箇所以上が肥大し、子育ての能力が高まっていることが、アメリカの研究からわかってきた。
・ところが日本では母親たちに非常事態。出産後の鬱の発症は、一般に比較して5倍。7割の母親が子育てで孤立を感じている。
・不安や孤独感。子育てがうまくいかないのは、自分のせいではないかという苦しみ、助け合いたい夫に対してイライラが止まらない。育児中の母親のストレスは、ほぼ一日中。救いを求めて繋がりあう「ママ友」とは、日本だけの特異な現象。
・ママたちの不安と孤独は、人類700万年の進化にさかのぼる深いわけがある。
・1人の育児中の女性。仕事で忙しい夫。毎日遅くまで帰ってこない。妻は自信がない。1人だと不安ばかり。不安と孤独に耐えられず、薬にも頼るうように。「何の地獄かと思った」。子どものことで自分が落ち込んだり、自信がなくなったりするんだと驚いた。
・このように孤立を感じている女性は7割。なぜ不安なのか。最新の科学では、次のことがわかってきた。女性の卵巣の中で分泌されるエストロゲンは、妊娠中分泌量が増えるが、子供を産むと急激に減少する。すると神経細胞の働き方が代わり、強い孤独や不安を感じやすくなる。なぜか。

・京大、松沢哲郎教授。チンパンジーの研究者。チンパンジーは子どもが生まれてから5年間、つきっきりで世話をする。だから、チンパンジーの母親は孤独感に苦しまない。ポイントは、チンパンジーと人間の共通の祖先から別れたのは700万年前にさかのぼる。
・松沢さん、調査に向かう。アフリカ・カメルーン。ユニークな部族。ジャングルの中の小さな集落。森を移動する人=バカ族。太古の人類の生活を今も維持。
・歯の生え方で年齢をみて家族構成を調べると、ある女性には11人の子どもがいた。互いに年齢が近い。たくさんの子どもを次々に生んでいる。これはチンパンジーとは違う、人間の大きな特徴。チンパンジーは子どもの世話にかかりきりの5年間、妊娠をしない。人間は毎年でも子どもを産めるように変化した。人間は多くの子孫を残し繁栄している。しかし、育児をしながらでも、次々に出産できる仕組みが必要だ。太古の時代に作った仕組みがバカ族には残っている。生後3ヶ月の赤ちゃんを残して森に仕事をしに行く。別の女性が育児や授乳を行う。他人に任せるのは動物の中でも人間だけ。共同で養育するという独自の子育て術を編み出した。「共同養育」。

・出産直後にエストロゲンが減少するのは、共同養育を母に促すためそうなっているのではないか。不安や孤独を感じれば、仲間と一緒に子育てをしたくなる。松沢さん、「人間は進化の過程で共同で保育をするようにできていて、必要な時は子供を預けられるにできているのに、現在は誰も助けてくれるわけではない。そういう風には人間は作られていない」。今も、共同養育の本能が。ところが、8割が核家族。欧米と比較しても、夫が育児や家事に参加する時間も極端に短い。ベビーシッターのような共同養育の現代版とも言えるサービスも、日本ではほとんど利用されていない。

・本能的な共同養育の欲求と、それがかなわない日本の育児環境の溝が、ママ友と繋がりたい衝動に駆り立てている。
・進化の過程で獲得してできたものは、簡単には変わらない。母親たちを支えてきてくれた環境が、崩壊している。これは人類の危機。

・孤立した中で、「私って母親失格」と思う人が多くなっている。出産後、子どもの夜泣きに苦しむ。夜泣きがひどいのは自分のせいと思う人も少なくない。胎児の時の睡眠時間は、昼も夜も浅い眠りと深い眠りを繰り返す。昼よりも夜の方に目覚めていることが多い。胎児は活動することで母親の血液から多くの酸素を奪う。そこで母体に負担をかけないように、夜間に目を覚ます睡眠リズムになっている。ところが、生まれた後もしばらく変わらない。それが夜泣きの原因。母体を守る仕組みが、出産後に母親を苦しめていた。
・人間の生まれた時の脳は大人の1/3程度。それはなぜか。人類が2足歩行を始めた700万年前にさかのぼる。2足歩行で骨盤の形が変わり、産道が狭くなった。胎児は、この産道を通り抜けて出てくれるように脳が未熟で小さいうちに生まれてこなくてはならなくなった。人間の脳は10年かけてゆっくり発達していく。


・2歳から始まるイヤイヤ期。自分の欲求を制御できない。このイヤイヤ行動にも訳がある。「我慢する力」がない。目先の欲求に我慢ができない。イヤイヤ期の子どもの脳は、前頭前野が未発達。この前頭前野は抑制機能を担っている。表層の前頭前野が発達していないと、抑制できない。前頭前野の発達には時間がかかる。人間はゆっくり脳を発達させることで、どんな環境でも適応できるようになっている。こういうことを知ることで、気持ちが楽になる。

・母親は、子育てができて当然と思うことが間違い。アフリカ・カメルーンのバカ族。幼い子どもの時から子育てを手伝う。そうした経験が、母親になるための準備になっている。

・日本での実験。出産を経験していない女子大生たち。3ヶ月に渡り、週に1回2時間、赤ちゃんの世話を体験する。すると、泣いている赤ちゃんを見た時の脳に大きな変化が現れた。育児に関わる脳の働きが活発になり、赤ちゃんに親しみを感じやすくなっていた。女子学生たちの脳に、「母性」を生む活動が現れた状態。
・母性は決して生まれつきのものではなく、色々な体験をする中でスイッチが入り、自分が妊娠し出産することによって本格的に母性が活動を始める。
・出産前に赤ちゃんと触れ合う機会がない現代社会のママたちは戸惑っても当然なのだ。
・経験が大事。母性は経験の中で育ってくる。

・夫に対してイライラする。驚くデータ。子育て家庭の離婚件数か一番多いのは、0〜2歳のとき。
・夫の行動にストレスを感じている。育児に不慣れな夫にイライラが収まらない。出産後は夫婦の会話も減り、夫は妻の変化に戸惑い。子どもを産むと一変する。
・出産後に分泌されるホルモンが原因。出産時、脳下垂体から大量にオキシトシンが分泌される。オキシトシンは筋肉を収縮させる。出産の時に子宮を収縮させる。授乳でも乳腺を収縮させる母乳を出す。オキシトシンが脳にも影響して、愛情が湧いてくる。ネズミの実験。オキシトシンが分泌していると激しい攻撃。オキシトシンには、愛情を深めるだけでなく攻撃性も高める働きがある。

・育児中の子どもの感情は、天秤に例えられる。相手から少しでも快いものが与えられると、それがオキシトシンの働きかけで強められ愛情が深まり、逆に少しでも不快なストレスが与えられると攻撃的になる。こうして、オキシトシンの多い育児中の母親の感情は、少しの快や不快で大きく揺れ動くことになる。夫が育児に非協力的だと攻撃的になる。

・これもひとえに、自分の子どもを守るための戦略。自分が信頼できそうにない人がいたら、そういう人が自分の子どもに接近してきたら守る、攻撃する。
・オキシトシンを、攻撃ではなく愛情に向かわせるにはどうしたら良いのか。母親がリラックスできるのは授乳している時。それから、夫が妻と向き合って会話をする時。会話しているお父さんはお母さんの方を向いて育児の悩みを真面目に聞いてあげていた。気持ちに寄り添って聞いていた。具体的な解決法やアドバイスがなくても話が受け入れられてリラックスしていた。

・すごいと母親を認めてあげるお父さん。そういう人が身近にいてくれるとき、母親はリラックスする。いろんな人に認められると楽になる。
・科学的な知見に基づく子育てに対する理解が社会に浸透していない。正しくみんなが理解できる仕組みを作っていく。

■番組のなかには「母性」という言葉が登場します。この言葉がもつイデオロギー性に警戒感を持つ方たちも多くおられると思います。私自身は、社会学を勉強してきたわけですが、このような人類進化やその進化の過程で獲得した身体のメカニズム、非常に関心があります。そのことを理解した上で、どのように現代版の「共同養育」の仕組みを作っていけば良いのを考えないといけないと思うわけです。番組中では、「母親たちを支えてきてくれた環境が、崩壊している。これは人類の危機」との指摘もありました。私もそうだと思います。では、どうしたらその危機を乗り越えていくことができるのか、乗り越えていくための仕組みとはどのようなものなのか、そのことを様々な人びとと一緒に具体的に考えていく必要があるんだと思います。

■私は、この番組を視て、「共同養育」とは「子育てを家族の外に向かって開いていく」ことではないのかなと思いました。それが社会の基盤になければならないとも思いました。子育ては、「私的」なこととして個人に(母親に)押し付けるのではなく、夫婦だけの問題でもなく、社会として支える仕組みが必要なのでしょう。もちろん、保育園の整備とか待機児童の解消とか…そういった問題も含まれますが、それだけではないでしょう。子育てが母親だけに押し付けられている状況の中で、母親の孤独や孤立をなくしていくための方策を考えていかなければなりません。夫の育児休暇、ワークライフバランス、「ママ友」のネットワーク、「ママ友」ネットワークを媒介とした「パパ友」ネットワーク、おばあちゃん・おじいちゃんの力、地域社会の中での子育てに関わる活動やイベント…様々なことが関連してきますね。

■しかし、現実には、厳しいものがあります。マタハラ(マタニティハラスメント)という言葉が話題になっています。満員電車の中で妊娠している女性に対して攻撃的な態度をとる人がいることも話題になりました。保育園や幼稚園を迷惑施設のように考える人たちがいます。電車等の中で泣く小さな子どもに対して不寛容であったり…。どうも現代の日本の社会は、「子育てを開く」のとは反対の方向に向かっているように思えます。アフリカのカメルーンのバカ族の皆さんの「共同養育」の仕組みを、現代の地域社会ではどのように再生していけば良いのでしょう。小さいことでも、何か試みとして地域社会の中から実践できないのでしょうか。私は孫が生まれたおじいさんですが、とても気になります。

■この動画と合わせて、以下の関連記事もお読みいただければと思います。山極寿一さんの講演録です。
ゴリラの社会に探る人間家族の起源

大災害時の大学対応 岩手県立大学総合政策学部「東日本大震災の危機対応記録」

■今から6年前、東日本大震災が発生した時、私は兵庫県の母親の家にいました。一人暮らしの母はすでに身体が弱っており、毎日ヘルパーさんに来ていただき、炊事や洗濯、そして母の身の回りの世話をしていただいていました。加えて、私自身も、ほぼ毎週母親のところに行っていました。ガソリンスタンドに灯油を買いに行き、屋外に設置された石油ファンヒーターのタンクに灯油を入れること、近くのスーパーで買い物をして来ること、神戸灘生協の個別配送の注文表を作成すること、このあたりが私の仕事でした。

■東日本大震災が発生した時、恐らくは買い物中だったように思います。母の家に帰ると、母がこう大きな声で言いました。「あんた、東北が大変なことになっているで」。母は視力をほとんど失っておりテレビを毎日「聞いて」過ごしていました。そのテレビには、岩手県の宮古市が津波に飲み込まれる様子が映されていました。言葉を失いました。翌日からは、岩手県の二戸市に行く予定でしたが、もちろんそのようなことは不可能になりました。

■私は龍谷大学に赴任する前、岩手県立大学総合政策学部に勤務していました。私が2004年に龍谷大学に異動した後も、2011年には半分ほどの教員が退職ないしは他大学に異動されていたように思います。知り合いの教員の方からは、学生の安否確認を必死になって取り組まれていることが伝わってきました。調べてみると、2016年3月に「「東日本大震災の危機対応記録 プロジェクト 報告書 東日本大震災時における岩手県立大学総合政策学部の 危機対応記録」が発行されており、PDFファイルでも読めるようになっていました。以下が、その目次です。「東日本大震災の危機対応記録」プロジェクトメンバーである、金子与止男、Tee Kian Heng、山田佳奈、島田直明、小井田伸雄、以上5名の先生方によって作成された報告書のようです。金子先生以外は、面識のある方達です。

目次
はじめに
第1章 東日本大震災時の危機対応の記録
第2章 総合政策学部における「教職員」の安否確認
第3章 総合政策学部における「学生」の安否確認作業の経緯と課題
1.在学生の安否確認はどのようにおこなわれたのか
2.安否未確認の学生数の推移
3.安否確認作業の「実施主体」としての学部地震災害対策本部の設置と役割
4.「入学予定者」の安否確認はどうあるべきなのか
第4章 学生に対する経済的措置に関する課題
1.岩手県立大学が発表した措置について
2.他大学の対応
3.他大学の経済支援措置を含め、見えた課題
おわりに
資料集目次

■東日本大震災のような大災害が関西で発生した場合、龍谷大学の教員としては自分はどう行動するのか。このことについては、いろいろ考えて来ましたが、一人だけではもちろん話しになりません。学部として、大学として、どのような対応して行くのか。私自身は、全く情報がありません。本学のどこかに、そのような情報があるのでしょうか。それも知りません。これでいいのだろうか…。ダメです。

■こ報告書の最後には、次のような課題も書かれています。

被災した新入学生としては、入学料が免除されても、生活費等の見込みがなけれ ば入学を躊躇すると思われる。在学生も、やはり授業料が免除されても、生活費等の見込 みがなければ退学を考えるかもしれない。生活費等の支援に関しては、今回のような大規 模災害では多くの団体が奨学金を出して、援助を行っているが、奨学金の申請や選考には 時間を要するため、奨学金が給付されるまでの期間の生活費等を確保する必要がある。よ って、入学を希望している被災地(災害救助法適用地域)の学生に対して、就学の機会を できる限り保証するという観点から、被災した学生が入学金と授業料が免除されるのみな らず生活費等の見込みが立つように、大学は経済的支援体制を整えておく必要がある。

【追記1】■災害と大学…で頭に浮かんでくるのは、内田樹さんのブログの以下の投稿です。「ばかばかしくてやってられるか」というタイプや、自分では目の前の状況に対して何もせず、「大学の瓦礫が片づいた頃にきれいな服を着て教員の仕事をするために現れ」、「震災経験から私たちは何を学ぶべきかとか、震災で傷ついた人々の心をどうやって癒したらよいのか、というようなことを教授会でしゃべる」ようなタイプの教員にだけはなりたくないものです。
「2005年01月18日 震災から10年」(1月17日)

【追記2】■学内にも、災害への対応策をきちんと考えておくことが必要だと思う教職員もおられるとは思いますが、私が知る限り、そのようなこときちんと検討してきたかどうか、よくわかりません。

・学生の安否確認
・教職員の安否確認
・地域への対応
・校舎や施設の確認
・授業の再開はどうするか
・成績はどうするのか
・定期試験をどうするか
・入試をどうするか
・学生への経済的支援はどうするのか
・学生のキャリア支援はどうするか
・災害に備えた様々な物の備蓄
・その他諸々

■それぞれ、被害の深刻度に応じて優先順位も異なりますし、考えればきりがありませんが、あらかじめそれなりの備えは必要だといつも思っています。ということを、3月11日にエントリーするだけでは、ダメですね。本当に。

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