「場づくり」・「土づくり」

▪︎以下の記事をFacebookに投稿しました。渡邉格さんの『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を再読しています。気になるところが、たくさんあります。例えば、「場をつくる」ということ。渡邉さん自身は、自然栽培と天然菌のことについて書いておられるのですが、人間の社会にも、教育や「地域づくり」や、自分が取り組んでいる実践的な研究プロジェクトにも当てはまることなんじゃないのかなと思い、facebookに投稿しました。

20160219kusarukeizai1.jpg『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を再読中。

この「場をつくる」ということを、「大津エンパワねっと」の活動でも学生たちに繰り返し言ってきた。「地域づくり」は「土づくり」=「場づくり」なんだと。あえて「土づくり」と表現してきたわけなんだけど、学生諸君にどれだけ理解してもらったのか、よくわからない…。

そもそも大学の教育だって「土づくり」なのだ。もっとも、そうは思ってはいるが、難しいところがある。今の大学は「煽り立てる」から。すぐに成果を求めるから。大学も新自由主義的市場経済の原理に振り回されているから。「土づくり」には「待つ」ことと「辛抱する」ことが大切だ。だから、いろんな意味で大変になるのだ。「待つ」ことと「辛抱する」ことは、「何もしない」こととはまったく違うのに。そこが難しい。

20160219kusarukeizai2.jpgさらには、現在取り組んでいる実践的な超学際的な研究プロジェクトも、「土づくり」=「場づくり」が大切なのに、「土づくり」よりもそこで育つ作物の方ばかりに気持ちが行ってしまっている(評価されたいという、すけべ虫が疼くので…)。しかし、作物は「土づくり」の後についてくるのだ。それを忘れてしまうと、化学肥料や農薬を使う農業と同じことをしてしまう。しかし、研究プロジェクトが置かれた環境は、短期的な成果を求めてくる。評価委員会のためにやっているわけではないのにね。そうすると、実践的も、超学際も、すべては口先だけの話しに終わってしまう。

悲しいことです。

もうひとつ、「場づくり」は、それを声高に叫んでも、誰も相手にしてはくれないということ。研究プロジェクト内部でも、フィールドでも。むしろ、総スカンを喰ってしまう。「場づくり」とは、人びとの相互作用が活性化して、内から創発的になんらかの「価値」を生み出していけるような「状況」を作っていくこと。自分がある意味、「触媒」のような存在になって消えていくこと、その意味で自ら「捨て石」になる部分がある。しかも、うまくいくかどうか…わからない。だから「賭け」でもあるのだ。だからだから、注意深く「待ち」、「辛抱する」ことが必要なのだ。

これは、なかなか大変なことです。

でも、あきらめずに、少ないけれど、「志しが共振し合う仲間」と共に、「土づくり」に励まねば、ね。

(本文続きます)

ひさしぶりの東京-「腐る経済」と「JEDI」-

20160211talmary.jpeg
■鳥取県には智頭町という自治体があります。岡山県と接する智頭町は、平成28年1月1日現在で、人口は7,523人、世帯数は2,746世帯です。小さな自治体です。とても厳しい状況に置かれています。総務大臣を務めたこともある増田寛也さんの「増田リポート」で有名になったのでご存知の方も多いと思いますが、増田さんが座長務める日本創成会議は「消滅可能性」自治体として896の自治体の名前を挙げました。そのリストの中に、この智頭町も含まれているのです。外部から「消滅可能性」自治体などと呼ばれると、普通だとしゅ〜んとしてしまうわけですが、この智頭町は違うのです。以下をお読みください。智頭町の町長さんのメッセージです。

私たちがやっている地域活性化の取り組み

産業の衰退や人口減少を嘆くだけでは何も始まりません。私たちの町は全国的にも珍しいチャレンジを通じて町の活性化に取り組んでいます。

●「森のようちえん」が全国的に注目されています
●日本で唯一の「疎開保険」で都市部からの疎開を受け入れています
●「森林セラピー」で現代のストレス社会をサポートしていきます
●田舎の家に泊まる「民泊」が体験できます

「森のようちえん」は園舎のない幼稚園です。自然環境の中で子どもを育てることで、子どもが持っている感覚や感性を信じ、引き出すことをコンセプトとしています。また、大きな自然災害などに遭われた場合に、1日3食7日分の宿泊施設を提供するという日本で唯一の町の取り組みが「疎開保険」です。さらに、ストレス軽減をおこなう「森林セラピー」や、古き良き田舎のありのままの生活を、実際に生活している住民の中に入って楽しんでいただく「民泊」があります。そして、私たちは日本で最も美しい村連合の一員として、日本の古き良き文化や景観を守っていく取り組みをしています。

私たちを好きになって頂き、応援していただく仲間を増やすには「来ていただくこと」が大事だと考えました。

私たちの魅力は「来て、体験していただくこと」によってお伝えできると考えました。だからこそ、従来型の返礼品ではない、新しい「体験型のふるさと納税」を作りました。私たちの町の寺谷町長自らがガイドをするデラックスツアーを筆頭に、民泊体験、森林セラピーなど、智頭町を知っていただき、好きになっていただけるようなツアーを4つご用しました。ふるさと納税の税収は、さらなる町の魅力づくりに役立てていきます。町の持続可能な自主運営は、一般財源の確保が重要です。このふるさと納税によって、私たちのよりよい町の運営を応援していただけたら、これほど嬉しい事はありません。

■とてもユニークな過疎対策の取り組みですね。うちの学生を連れてこの智頭町にも行ってみたいという気持ちにもなります。ところで、どうして智頭町のことを調べてみたのかというと、実は、鳥取県の智頭町で不思議なパン屋を経営されているご夫婦、渡邉格(いたる)さんと麻里子が東京に来られる、そして青山ブックセンターでトークショーを開催されるということを、その青山ブックセンターに勤務している作田祥介くんに教えてもらったからです。渡邉格さんと麻里子さんは、「タルマーリー」という天然酵母菌のパン屋さんを経営されています(お店の名前は、格・いたるの「タル」と、麻里子の「マーリー」から取ったとのこと)。さらに、渡邉格さんは、「タルマーリー」の経営が軌道に乗るまでのことを、『腐る経済』という本に書いておられます。これが非常に面白い本なのです。ということで、一昨日、東京まで行ってまいりました。

■この本の中には、あの『資本論』のマルクスや、「金本位制」ならぬ「菌本位制」などという言葉も登場します。渡邉格さんは、工業的に生産されたイースト菌ではなくて、それぞれの地域の環境の中にある天然の菌を使ってパンを作っておられます。これは非常に大変な作業なのです。その大変な作業を渡邉さんは、これまた大変苦労しながらやってこられます。しかし、同時に、そのことをとても楽しんでもおられるようにも見えます。資本主義の現代社会の中では、人はお金のために仕方なしに働くことになってしまいます。渡邉さんご夫妻は、仕事を楽しめる仕組みをご自分たちで作ってこられたのです。『腐る経済』の詳しい紹介はここではしませんが、是非、学生の皆さんにも読んでもらいたいなと思いました。30歳までなかなか思うように自分の人生を歩むことができなかった渡邉格さんが、パン屋として自分の生きる道を見出し、麻里子さんという良き伴侶に巡り合い、そして天然の菌でパン作りを始める…そのような格さんの若き日の人生の格闘もこの本には書かれています。この点も、学生の皆さんには興味深いのではないかと思います。

■ご夫妻の経営哲学である「腐る経済」のためには、そして目指しておられる地域内循環のためには、小規模だけど多様な生業をもつ方たちによる相補的なネットワークが必要になります。私には、過疎地域である(素晴らしい環境が残されている)智頭町で、町長が展開されているような過疎対策と、渡邊さんご夫妻の考え方がうまく繋がっているようにも思えました。東京から地方に移住して「腐る経済」を展開していくためには、人との出会い、ネットワークの形成と適切な規模の範囲での拡大…といったことが必要になります。そのあたりのことも、知りたいと思いました。

20160211tamimasa.jpg
■一昨日は、午前中が大学での会議(学長会)、午後からは遺伝子組換え実験に関する会議と、いつものように会議の連続する日だったのですが、その後は15時台の新幹線に飛び乗り、前述の通り東京に向かいました。このタイミングで、是非、「タルマーリー」の渡邉さんご夫妻のお話しを聞いておきたい、聞いておくべきだと「直感的」に判断したからです。何かこの後に、面白い展開になりそうな気がしています。そうなったらいいなと思います。こうやって、「こうなったらいいのにな〜」と心の中で念じていると、いつか面白い出来事の方からやってきたりするのです。

■さて、せっかく東京に行くのだからと、しばらくお会いしていない方たちにも会っていただくことにしました。トークショーが終わった時には21時を過ぎていましたが、快くやってきてくださいました。建築家の玉井一匡さんと写真家の村田賢比古さんです。お2人とは、建築家の秋山東一さんをリーダーとする「JEDI」という活動で仲良くさせていただいてきた方たちです。「JEDI」とは「Japan Earth Divers Institute」のことです(活動の内容は、リンク先にある秋山さんの関連エントリーをご覧ください)。もちろん、「Star Wars」 の「 JEDI」 のことを強く意識しています。この活動の中では、私が一番若手になるのでないかと思います。2005年から始まったこの活動、2011年の3.11までは、けっこう活発に行われていました。私も、関西から参加させていただいていました。諸般の事情から、3.11以降、活動が停滞しています。そのため、親しくしたいただいた皆さんにも、なかなかお会いすることができません。今回は、玉井さんと村田さんに、無理を言って会っていただきました。ありがとうございました。写真のような笑顔の再会になりました。こうやって会ってくださる友人がいることを、とても幸せに思っています。お2人は、お酒を召し上がらないので、青山プックセンターの近くの定食屋さんで定食をいただきながら(私だけビールをいただきながら)、いろいろお話しをさせていただきました。短いですが、楽しい時間を過ごすことができました。心のなかもリフレッシュしました。

■今回の渡邉ご夫妻のトークショーのことを教えてくれた青山ブックセンターの作田くんとも、じっくり話しをしたかったのですが、今回はできませんでした。作田くんとの出会いも、少し不思議なものがありました。当初、私の心算では、一昨日の10日の晩に作田くんと一緒に酒を飲むつもりにしていました。そして翌日11日に、玉井さんや村田さんとお会いする予定にしていました。ところが、11日、大学で開催するシンポジウムに裏方としていなければならないことが判明したのです。そのシンポジウムのことは、次にエントリーしようと思います。

仕事とは「自分」を役立てること

20160130matuurayataro.jpg ▪︎龍谷大ミュージアム前館長である文学部の入澤崇先生のtwittwerで、雑誌『暮らしの手帳』の編集者である松浦弥太郎さんの著書、『松浦弥太郎の仕事術』(朝日文庫)のことを知りました。興味が出てきたので、さっそくKindleでダウンロードして読んでみました。入澤先生のツイートは、この松浦さんのこの著書の「1.仕事とは『自分』を役立てること」に書かれていることを引用したものでした。

「自分はなにがしたいのか?」ではなく、「自分は社会でどう役立てるのか?」を考える。最終的には、その仕事を通じて人を幸せにしていくことを目標にする。これさえ忘れなければ、よき仕事選びができます。毎日の働きかたが変わります。

▪︎これと近い松浦さんの指摘として、以下のものもみつけました。

人との関係の中で、どのように「自分」をいかしていくかを考えなければ、何をしても仕事にならない。逆にいえば、どんなささやかなことでも、自分を社会で役立てる方法が見つかれば、仕事になる。

▪︎私は、年に数回、多くても5回程度ですが、学外で講演をします。落語の大御所とは異なり、話すネタは「地域づくり」に限られているので、同じような話しが多くなるのですが、最近の講演のなでは、「人の幸せには2種類ある」ということをお話しさせていただきました。「幸せ」のひとつは、人と関係のく、「自分の中だけで完結する幸せ」です。どちらかといえば、自分さえよければ…といった幸せかもしれません。個人的な消費による多幸感・高揚感などはこちらに入るのではないかと思います。お金があれば、モノやサービスを通して買うことができる幸せです。グローバリゼーションとともに市場原理が地球の隅々まで広がる現代社会、個人化が一層進む現代社会では、煽られるようにこちらの幸せを人びとは求めます。求めるというか、そう仕向けられるのです。

▪︎もうひとつは、「人と人の間にある幸せ」です。松浦さんの指摘は、この後者の幸せと重なるのではないかと思います。後者の幸せを実感した人は、最後は、感謝の気持ちで仕事ができるようになるはずです。しかし、こちらの「人と人の間にある幸せ」の方は、気がつくのに少し時間がかかるかもしれません。それに気がつくのには、なにか心がけが必要かもしれません。松浦さんは、そのヒントを与えてくれているのです。自分は世の中に活かされている、活かしていただいていることに感謝したい…、もしそのように働くことができたら本当に幸せですよね。松浦さんは、多くの人びとが歩むキャリアとは、かなり異なるキャリアを歩んでこられました。高校を中退してアメリカに渡る…ところから始まります。かなり厳しい状況から、いろんな方たちに助けられながら、力をあわせながら生きてこられました。現在、松浦さんは、エッセイストであり、古籍商であり、「暮しの手帖」前編集長でもあります。この本に書かれていることは、そのような松浦さんのこれまでの生き方であり経験知なのでしょう。これから卒業していく4年生や就職活動を始める3年生にも、この松浦さんの本を読んでもらいたいなと思いました。

青山ブックセンター「パン・発酵・移住の話を聞こう。」

20160126watanabeitaru.png
■facebookのお「友達」のお一人が教えてくださまいました。『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済』」という本です。ずいぶん、変わったタイトルですよね。「腐る経済」。なにか不思議とてもです。普通の感覚だと、経済という仕組みは腐っては困ると思うからです。しかし、この「腐る」/「腐らない」という視点が重要なのです。普通は、腐らない方が価値があると思いますよね。しかし、筆者である渡邉格さんは、腐ることが大切だと考えます。渡邉さんご自身、随分、いろいろ悩んで生きてこられているように思います。今の社会に合わずに…というか、今の社会がおかしいと考えて、その行き着いた先が「腐る経済」なのです。ご自身の経験に基づいた洞察から、「腐る」ことこそが大切なのだという考えに至られたのです。

■以下は、amazonにあったこの本の紹介です。

どうしてこんなに働かされ続けるのか? なぜ給料が上がらないのか? 自分は何になりたいのか?――人生どん底の著者を田舎に導いたのは、天然菌とマルクスだった。講談社+ミシマ社三島邦弘コラボレーションによる、とても不思議なビジネス書ここに刊行。「この世に存在するものはすべて腐り土に帰る。なのにお金だけは腐らないのはなぜ?」–150年前、カール・マルクスが「資本論」であきらかにした資本主義の病理は、その後なんら改善されないどころかいまや終わりの始まりが。リーマン・ショック以降、世界経済の不全は、ヨーロッパや日本ほか新興国など地球上を覆い尽くした。
「この世界のあらたな仕組み」を、岡山駅から2時間以上、蒜山高原の麓の古い街道筋の美しい集落の勝山で、築百年超の古民家に棲む天然酵母と自然栽培の小麦でパンを作るパン職人・渡邉格が実践している。パンを武器に日本の辺境から静かな革命「腐る経済」が始まっている。

【著者・渡邉格(わたなべ いたる)から読者のみなさんに】
まっとうに働いて、はやく一人前になりたい――。回り道して30歳ではじめて社会に出た僕が抱いたのは、ほんのささやかな願いでした。ところが、僕が飛び込んだパンの世界には、多くの矛盾がありました。過酷な長時間労働、添加物を使っているのに「無添加な」パン……。効率や利潤をひたすら追求する資本主義経済のなかで、パン屋で働くパン職人は、経済の矛盾を一身に背負わされていたのです。
僕は妻とふたり、「そうではない」パン屋を営むために、田舎で店を開きました。それから5年半、見えてきたひとつのかたちが、「腐る経済」です。この世でお金だけが「腐らない」。そのお金が、社会と人の暮らしを振り回しています。「職」(労働力)も「食」(商品)も安さばかりが追求され、その結果、2つの「しょく(職・食)」はどんどんおかしくなっています。そんな社会を、僕らは子どもに残したくはない。僕らは、子どもに残したい社会をつくるために、田舎でパンをつくり、そこから見えてきたことをこの本に記しました。いまの働き方に疑問や矛盾を感じている人に、そして、パンを食べるすべての人に、手にとってもらいたい一冊です。

■どうですか。面白そうでしょう。私は、この本をkindleで購入し、iPadで一気に読みました。この本の著者である渡邉格さんとパートナーの渡邉麻里子さんは、「タルマリー」というカフェを経営されています。渡邉格さん。お名前は「いたる」とお読みするようです。「いたる」さんの「タル」と、麻里子さんの「マリ」を合わせて「タルマリー」というのだそうです。本を読んでいて思いましたが、ご夫婦の信頼関係と行動力は素晴らしいものがあります。麻里子さんは、格さんの「腐る経済学」の熱烈な支持者のようです。二人の中から生まれてきた思想なのかな。それはともかく、この本を読むと、お二人で支えあっていることがよくわかります。さて、「タルマリー」では、天然酵母によるパンや地ビール、そして薪で焼くピザを販売されています(岡山県真庭市から、2015年には鳥取県智頭町に移転)。天然酵母にこだわる背景にある、渡邉さんの「腐る経済」の思想を、「菌本位制」と「地域内循環」というキーワードで説明されています。非常に刺激的です。どう生きていくのか、よく考えている暇も余裕もないまま、人生の選択を迫られしまっている学生の皆さんにも、ぜひ読んでみてほしいと思います。渡邉さんや麻里子さんの生き方から勇気をもらえるかもしれません。

■来月の10日の晩になりますが、東京の青山ブックセンターで、渡邉格さんとパートナーの麻里子さんが、「タルマリー」についてお話しをされるそうです。夜の19時から21時までの2時間です。東京は遠いわけですが、とても気になっています。このイベントが開催されることを、尼崎出身・東京在住の若い友人が教えてくれました。

■以下のリンクは、このイベントの紹介です。
パン・発酵・移住の話を聞こう。~鳥取県智頭町 自家製天然酵母のパンとビール、タルマーリーの挑戦~

20160127fukakusa.jpg【追記】 ■今日は深草キャンパスで終日研究部の仕事でした。他部署を回って意見をいただき、資料を読み込むうちに昼休みになりました。昼食は生協の学生食堂です。「ご飯SS」、「豚汁」、「ローストチキンソテー」、「ごぼうサラダ」、「鉄分たっぷり和え」、「白菜胡麻和え」。全部で717kcal。カロリーは少し多めですね。野菜量は225gと、1食にしてはしっかり摂れました。塩分は6.1gと多めですね〜…。野菜をたくさん食べようと和え物にすると、味付けで塩分を摂ってしまうようです。一番高いのは金額。738円。学食としては、高い。これは失敗です。

『現代フィリピンを知るための61章』

20160119philippines.jpg■先月のことになりますが、京都の岩倉にある総合地球環境学研究所で、私が参加している研究プロジェクトのメンバーを対象に、フィリピンの「ラグナ湖・シラン-サンタローザ流域」に関するワークショップを開催しました。そのワークショップでファシリテーターをさせていただきましたが、なかなか良い成果が出たように思います。しかし、そのときに思ったことは、もっとフィリピンのことを勉強しないといけないということです。フィリピンを専門的に研究しているわけではありませんし、これからも専門とする予定はありませんが、プロジェクトの調査地である以上、最低限しっておくべきフィールドの「常識」のようなものがあると思います。ぜひ自然科学分野のメンバーの皆さんにも、フィリピンの社会・文化・歴史について関心をもっていただきたいなあと思いました。関心をもってもらうことで、おそらくは研究プロジェクトの自然科学的な分野においても、ある種の深みのようなものが出てくるのではないかと思います。ということで、『現代フィリピンを知るための61章』という本を紹介します。

■出版社は明石書店です。明石書店では、この本を次のように紹介しています。「わが国との500年に及ぶ交流の歴史をもち、いっそうその絆を深めるフィリピン。本書は、歴史、政治、経済、社会の仕組み、そして多様な文化や人々の暮らしを、最新のトピックスを交え紹介する。より深く知りたい人のために、巻末に詳細な読書ガイドを付す」。少しずつですが、フィリピンのことについて勉強をしています。この本は、フィリピンに関して幅広い多様な知識を得ることができます。私のような初心者には有益な本かと思います。私たちの研究プロジェクトのメンバーが調査している「ラグナ湖・シラン-サンタローザ流域」の環境問題の背景には、この国固有のどのような事情があるのかが、おおざっぱに理解できると思います。最後には、文献情報ガイドもついています。ちなみに、この本は明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズのなかの1冊です。シリーズですので、フィリピンだけでなく、世界の様々な国についても出版されています。以下は、目次です。研究プロジェクトの自然科学の分野のメンバーの皆さんにも、「II 社会と文化を読み解く」、「III 政治を分解する」、「IV 経済の実態を知る」のあたりをぜひ読んでいただければと思います。巻末のフィリピンを知るための文献・情報ガイドでは、入門的なものから専門的なものまで、150冊の文献が紹介されています。これは、なかなか便利です。あわせて、中公新書の『物語 フィリピンの歴史―「盗まれた楽園」と抵抗の500年』も初心者には有益かと思います。

はじめに
フィリピン全図

I 歴史を見直す
第1章 フィリピン人―未来へのアイデンティティ
第2章 ルーツ―源流を探る
第3章 マレー世界―海域を行き交うヒト・モノ
第4章 スペイン時代―植民地支配と住民の抵抗
第5章 フィリピン革命―国民国家の創出と社会変容
第6章 ホセ・リサール―国民英雄の遺産
第7章 アメリカ時代―「恩恵的同化」の呪縛
第8章 日本占領期―「トモダチ」の圧制
第9章 独立後の歩み―等身大の国へ
第10章 フィリピン民族博物館―独立100周年で開設

II 社会と文化を読み解く
第11章 親族組織と価値観―核家族を超えた空間と関係の広がり
第12章 教育―学歴・資格社会の光と影
第13章 国語の形成―多言語国家が抱える苦悩
第14章 フィリピン語―基礎はタガログ語
第15章 聖地バナハオ巡礼―精霊信仰とキリスト教
第16章 聖週間―民衆カトリシズム
第17章 新宗教―フィリピン生まれのキリスト教会
第18章 イスラーム―ムスリムってどんな人?
第19章 市民社会―世界に提示できるモデルのひとつ
第20章 女性の地位と役割―多様な「性」のはざまで
第21章 暮らしの断面―マニラと地方の距離は縮むか
第22章 干魚―作る人・売る人・食べる人
第23章 フィリピン文学―想像と創造のパレット
第24章 娯楽と社会批判―リノ・ブロッカ映画の志
第25章 食文化―何はともあれ食べてみよう
第26章 ジャーナリズム―ラジオが元気だ
第27章 警察と犯罪―その限りなく曖昧な境界線
第28章 「山下財宝」―黄金伝説の眩惑

III 政治を分解する
第29章 憲法―ナショナリズムとリベラリズム
第30章 歴代大統領―グロリア・アロヨで独立後10代目
第31章 議会―三つ巴の「ねじれ現象」
第32章 選挙―権益を賭けたギャンブル
第33章 官僚機構―有為な人材リクルートがカギ
第34章 地方政治―地方支配のメカニズム
第35章 国軍―文民統制の伝統
第36章 マルコス政治―開発独裁体制の功罪
第37章 ピープル・パワー革命―カトリシズムの意味世界
第38章 イメルダとコリー―欲望と怨念の回廊で出会った二人
第39章 共産主義勢力―第三の時代に入った左翼運動
第40章 少数民族―差別と搾取への抵抗
第41章 中国系移民―そのアイデンティティのゆくえ

IV 経済の実態を知る
第42章 国民経済―農業・農村開発と投資誘致
第43章 小口経済―庶民が支えるサリサリ・ストア
第44章 貿易・投資―ITが構造転換の推進力
第45章 日本の政府開発援助―両国にとっての意味と必要
第46章 ビジネス・エリート―ラム酒「タン」ドゥアイと「タン」ミゲル・ビール
第47章 東ASEAN成長地帯とミンダナオ開発―地域開発の柱として高まる期待
第48章 農地改革―インフラ構築が不可欠
第49章 地場産業―鍛冶屋から塩辛づくりまで
第50章 開発政策―環境問題との相克
第51章 自然・地理―頻発する災害

V 国際関係から見る
第52章 対米関係―引き続く過去?
第53章 フィリピンとASEAN―ミドルパワーとしての貢献
第54章 南シナ海紛争―スプラトリー諸島の帰属をめぐって
第55章 海外への出稼ぎと移住―フィリピン人によるグローバリゼーション
第56章 戦前の日比関係―近代日本の二面性とフィリピン
第57章 戦後の日比関係―深まる相互依存
第58章 日比人流―人の往来に見る新しい潮流
第59章 看護師・介護福祉士―どう乗り越える? 言葉の壁と人材流出問題
第60章 在日フィリピーノ―ニッポン暮らしもフィリピン流で
第61章 日本の教会のフィリピン人―フィリピン語のミサ

フィリピンを知るための文献・情報ガイド

図表地図本

20160116books.jpg
■一緒に共同研究を進めている友人が、こんな本を勧めてくれました。彼の専門は、数理生態学や進化生態学なのですが、その様な専門とは別にいろんな分野の本を読んでいて私に紹介してくれます。読書の好みも、いろいろ重なるところがあり、彼のアドバイスはとても参考になります。今回は、この写真の本でした。『ニューステージ新地学図表―地学基礎+地学対応』、『ニューステージ新地学図表―地学基礎+地学対応』、そして『韓国歴史地図』です。3冊のうちの最初の2冊は、高校生向けの副読本といいますか、図説資料です。見ているだけで楽しいのです。友人が進めてくれた理由がわかりました。友人は、眠る前に、数ページをめくって少しずつ読んでいるのだそうです。彼の毎日の楽しみのようです。私自身は、高校の時に、この類の図説資料を「義務感」を伴って読んでいたように記憶しています。しかし、歳を取り、そのような「義務感」がなくなり、純粋の教養といいますか、学ぶ・知るためだけで読むと楽しいのです。不思議なものですね。もちろんのことですが、私たちの高校生の時とは比較にならないぐらいに、グラフィックデザイン的にも優れた内容になっていると思います。

■残りのもう1冊は、お隣の国、韓国の歴史地図本です韓国教員大学歴史教育科の教員の皆さんが執筆されているようです。Amazonでは、以下のように紹介されています。「カラー地図と図版で蘇る迫力ある歴史のリアリティ。古代国家の興亡、中世王朝の栄華、現代史の衝撃の事件が、ダイナミックに再現。朝鮮半島を舞台にした韓国史の一大絵巻」。友人も、こう言っていました。「知らなかったけれど、お隣の韓国は、いろんな国に攻められて大変な歴史だったんだね〜」。この本には「刊行にあたって」に以下のよう書かれていました。そうなんです、ここにも書いてあるように、歴史の事実が大迫力でありありと浮かび上がってくるのです。ぜひ、皆さんもお読みいただければと思います。

これまで私たちは歴史に接するとき、注意を時間軸にだけ傾けてきました。歴史を構成するもう一つの側面である空間については大した関心を払ってこなかったのである。今までの歴史は強いて言うなら年表に過ぎなかったと言える。本書は、そのような時間軸中心の歴史叙述を脱して、時間と空間を同等に扱うことで歴史的事件をありありと再現しようとしたものである。

20160116gakushoku.jpg【追記】■金曜日の昼食は、瀬田キャンパスの学生食堂でとりました。ライスS、だし巻き、アジフライ、きんぴらごぼう、ほうれん草おひたし、豚汁。これで744kcalです。野菜量は142g。もう少し、野菜を増やさないといけませんね。これに加えて、最後にほうじ茶を茶碗一杯飲むと、腹八分目になります。学生食堂で、いろいろ小さな小鉢に入ったおかずを食べることができます。おそらくはこれらに加えて、野菜サラダを食べれば良いのだと思います。ドレッシング抜きで、ですが。今のところ、体重にほとんど変化がありません。もっと、運動を取り入れなければなりません。徐々に体重が減ってくると、ワクワクしてくるんですけどね〜。そうそう、節酒だけはきちんと続いています。外では、お付き合いも兼ねて飲みますが、自宅ではもっぱらノンアルコールビールです。

長浜の雑誌『み〜な』

20160107mina.jpg
▪︎滋賀県の湖北地域とその周辺をテーマにした、『み〜な』という雑誌があります。この地域にお住まいの皆さんが、手弁当で企画・取材・原稿執筆を行い、地元企業からの支援を得ながら、「地域の知恵と汗の結集」によって発行されている雑誌です。昨晩は、この雑誌の編集にあたっている方と京都で少し呑みつつ 3時間程語り合いました。滋賀や、滋賀の地域社会の将来。多様性を相互に尊重し評価しあった上での共同性。そのような多様性と共同性の上に構想する「私たちの幸せ」。滋賀の「私たちの幸せ」を考えるための公共哲学。自分が生かされている…という「感謝の気持ち」。その基層にある真宗の精神。そんなこんなをいろいろ語り合いました。充実した時間でした。写真は、昨晩いただいた(購入させていただいた)『み〜な』の最新号と、一つ前の号です。私としては、最新号の「湖北用水史 争いから分かち合いへ」というテーマが気になり、最新号から読み始めました。(本文続く)

村上春樹『職業としての小説家』

20150911murakami.jpg■村上春樹のエッセイ集『職業としての小説家』が手元に届きました。じっくり、一気に読みたいところですが、電車の中で読むことになりそうです。

■ところで、このエッセイ集、ニュースを通しても話題になりました。紀伊国屋書店が、初版10万部のうちの9万部を買い切ったからです。全国66にある紀伊国屋の店舗や自社ネットで販売し、残りにいては、他の書店に卸すと聞いています。ネット販売が浸透し、全国で書店が減少しています。2000年に21,495あった全国の書店は、2005年には17,839、2010年には15,314、2014年の5月1日現在では13,943と、漸次減少してきています。書籍や雑誌の売り上げも減少しているようです。書籍の売り上げのピークは1996年でしたが、2013年には約31%減少しています。雑誌の売り上げのピークは97年でしたが、2013年には差書籍を上回る45.5%の減少となっています。書店が減っていくことと、書籍の売り上げが減少していくことは相関しているのではないかと思います。

▪︎そのようなこともあり、紀伊国屋は全国の書店を活性化するために、今回のような思い切った販売を行ったのでした。私自身は…、職業のせいもありますが、たくさんの書籍を購入する方だと思うのですが、そのほとんどはamazonを使っています。思いついたときに、簡単に本を注文できるので、こういうことになってしまっているのですが、結果として、街から書店が消えていくことに加担していた…ということにもなります。

■さて、このエッセイの内容ですが、以下の通りです。どのエッセイも、面白そうなタイトルですが、特に、「フィジカルな営み」とか、「物語」、「河合隼雄」というところが気になります。私自身は、村上春樹と河合隼雄の対談である『村上春樹、河合隼雄に会いにいく 』は非常に興味深く読みました。村上春樹は、河合隼雄のユング派心理学の考え方から、いろんなヒントを得ているように思います。村上が語る「デタッチメントからアタッチメント」という創作上の転換とも深く関係していると思います。言い方を換えると、村上春樹が自身の実践に関して語ったことを、河合隼雄が深いところでしっかりと受け止めた…という感じなんじゃないのかな~と思っています。

第一回 小説家は寛容な人種なのか
第二回 小説家になった頃
第三回 文学賞について
第四回 オリジナリティーについて
第五回 さて、何を書けばいいのか?
第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと
第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み
第八回 学校について
第九回 どんな人物を登場させようか?
第十回 誰のために書くのか?
第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア
第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出
あとがき

伊藤英夫展(一宮市三岸節子記念美術館)

20150814ito.png20150814kenkanokimoti.jpg
▪︎一宮市。名古屋市から岐阜市に向かう途中にあります。関西の人間は、濃尾平野の地理に詳しくないものですから…。なぜ、調べたのかというと、ここに「一宮市三岸節子記念美術館」があり、そこで、私が大好きな絵本、『けんかのきもち』の画家・伊藤秀男さんの展覧会が開催されているからです。今年の夏休みのプチ旅行に、行ってみようと思っています。ここだと近いし。

▪︎美術館の名前に、「三岸節子」という名前が入っています。三岸節子(1905〜1999)は、愛知県起町(後の尾西市。現・一宮市)出身の画家です。彼女を記念して開設された美術館です。特別展の「伊藤秀男展」と同時に、常設展では「三岸節子 鮮麗なる色彩」という展覧会が開催されています。お目当ては、特別展の「伊藤秀男展」でしたが、常設展の方も楽しみになってきました。

『東京百景』(又吉直樹)

20150731matayoshi.png ▪︎朝、大学にいってメールボックスを確認すると、本が届いていました。芥川賞受賞で最近話題の、お笑い芸人ピース・又吉直樹さんの『東京百景』という本です。これは、東京の様々な地名と、彼のそこでの体験や妄想・想像が織り込まれた不思議なエッセーのような内容です。でも、エッセーなんだろうか…という気もします。半分は、彼の頭や心のなかから浮かんだ想像された世界だからです。こういう、不思議なテイスト、嫌いではありません。というか、むしろ好きです。

▪︎この本は、facebookで交流のある卒業生から教えてもらいました。コミュニテイ・マネジメント学科の方です。素敵な本をご紹介くださり、Tさん、ありがとうございます。昨日は、この本を入手したことを、facebookにアップしました。すると、女性の方たちから、早速、反応がありました。「池尻大橋でオンオン泣きました」「 切なくて切なくて」とか、「出てすぐの時に読みました。文才はこの時から既に開花しております」といったコメントが寄せられました。私の印象にしかすぎませんが、又吉さんのファンは、圧倒的に女性が多いのでは…と思っています。

▪︎夏休みに読めること、楽しみにしています。

カテゴリ

管理者用