第32回地球研地域連携セミナー(滋賀)「びわ湖の水草 市民がはじめる環境自治」
■以下のセミナーに参加します。今回は、特定非営利活動法人「琵琶故知新」の立場から参加します。みなさんのお話をお聞かせいただいた上で、最後の総括のところで少し私自身もお話をさせていただきます。これまで市民グループ「水草は宝の山」(水宝山)の活動を中心に、ネットワークづくりに取り組んできましたが、今回は、総合地球環境学研究所のご支援のもとで、このようなセミナーが開催できることになりました。
■このセミナーの【事例5】では、本学農学部の玉井鉄宗(たまい・てっしゅう)先生が、「水草堆肥の農学的評価」というタイトルで報告をしてくださいます。現在、私は、玉井先生をはじめとする農学部の先生方と一緒に、この「水草堆肥」の課題に取り組む研究プロジェクト(龍谷大学 食と農の総合研究所)を始めようとしています。また、いつかそのことを報告できるかと思います。
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2020年2月8日(土)13:30-16:30(開場 12:30)
[会場]コラボしが21 中会議室2(3F)(滋賀県大津市打出浜2-1)
[主催]総合地球環境学研究所
[共催]特定非営利活動法人 琵琶故知新
[後援]滋賀県、大津市、たねやグループ、NPO法人国際ボランティア学生協会(IVUSA)、滋賀SDGs×イノベーションハブ、水宝山、近江ディアイ株式会社、三井物産環境基金、その他
[概要]
びわ湖は長い時間をかけて独自の生態系と文化をはぐくんできました。その豊かな自然は、私たちの生活にたくさんの恵みをもたらしています。一方で、経済発展に伴う人間活動の影響もあり、水質をはじめ湖の環境は大きく変わりました。
近年では、南湖における水草の大量繁茂により、湖岸の景観の悪化や悪臭の発生などの問題が起こっています。自治体が水草の除去を行う一方で、急激な水草の大量繁茂の原因は完全には解明されていません。
しかしながら、このような状況の中で、市民が主体となり漂着した水草の清掃活動や堆肥化(循環利用)を進めるための仕組みづくりが始まっています。
本セミナーでは、このような地域ではじまった「小さな循環」を地域全体の「大きな循環」に広げていくことを目指して、市民・企業・行政の活動事例を報告していただくとともに、ワークショップを行います。一人ひとりが主体的かつ持続的に取り組めるような、望ましい環境自治のあり方を共に考えましょう。
[参加]
入場無料・要事前申込(定員40名※先着)
[申込方法]
お名前(フリガナ)・電話番号をご記入の上、メール・FAXのいずれかにてお申し込みください。
申込・問い合わせ先
総合地球環境学研究所 広報室
メールE-mail
Tel:075-707-2128 FAX:075-707-2106
2020年2月3日(月)までにお申し込みください。
高島市の棚田を視察
■再来年に高島市で開催される「全国棚田(千枚田)サミット」のアドバイザーとしてお手伝いをしていることは、以前の投稿でもお知らせしましたが、私としては「棚田サミット」だけでなく、龍谷大学と高島市の地域連携がもっと進んでいくと良いなあと思っています。そのため、龍谷大学の教員の皆さんと高島市役所の担当者の皆さんと一緒にいろいろ相談を始めることにしました。昨日は、社会学部コミュニティマネジメント学科教員の坂本清彦先生と一緒に、高島市にある棚田の集落、鵜川と畑を訪問しました。高島市役所の職員さんにご案内をいただきました。ありがとうございました。対照的に棚田を拝見させていただいたように思います。
■鵜川は、高島市の一番南に位置する集落です。Googleマップの画像をご覧いただければわかりますが、琵琶湖の湖岸近くに位置しています。鵜川の辺りは、山が琵琶湖にまで迫っています。その山の裾野の傾斜に棚田が築かれています。これから色々調べてみたいと思いますが、石垣でしっかり支えられた棚田です。その棚田の低い方にはJR湖西線が走っています。私がいる時も、特急サンダーバードや普通列車が通過していきました。鵜川は、JR北小松と近江高島駅の間にあります。
■多くの皆さんは、棚田が生み出す曲線が構成する「棚田の風景」に魅力を感じておられるのではないかと思います。鵜川の棚田の場合は、「棚田の風景」というよりも「棚田からの風景」が素晴らしいと思います。もちろん、あくまで個人的な評価にしか過ぎないのですが、「琵琶湖・列車・棚田」の組み合わせが素敵だなあと思うのです。対岸には近江八幡市の沖島、彦根、そして長浜の街を確認できます。景色の良い時、棚田の一番上に登って、そこからその風景を眺めながら美味しいお弁当を食べることができたらなあと、妄想しました。
■鵜川には、「うかわファームマート」という直売所があります。せっかく鵜川にやってきたのだからと、いろいろ購入させていただきました。鵜川の棚田で生産された環境こだわり米のコシヒカリ。それから、トートバックも購入しました。「UKAWA TANADA PROJECT」と印刷してあります。「鵜川棚田プロジェクト」です。棚田を再生・保全するための取り組みです。よくみると、そこには石垣の棚田と湖西線と山がデザインされています。素敵ですね。私は、「山→棚田→列車→琵琶湖」という風景を眺めましたが、これは「琵琶湖→棚田→列車→山」です。琵琶湖側から棚田を眺めているわけです。これも素敵です。大津から高島に向かう船から、この鵜川の棚田を眺めてみたいものです。
■「うかわファームマート」では、柑橘類も購入しました。どうして棚田で柑橘類?…と思われるかもしれません。鵜川では、全国の棚田の農村と同じく、後継者不足・高齢化に悩んでおられます。そのような問題を少しでも緩和するために、「棚田のオーナー制度」を実施されています。地域外から、オーナー登録をされた方たちが農作業に関わっておられるのです。もちろん、それだけでは不十分なので、ボランティアの皆さんも農作業を手伝っておられるとお聞きしました。もっとも、この「棚田のオーナー制度」だけでも、全ての棚田を耕作することはできません。不耕作の棚田は荒れていきます。一部、そのような棚田もありました。しかし興味深く思ったことは、鵜川では、棚田が荒れてしまわないように、柑橘類を中心に果樹が植えられていることでした。あえていえば、不耕作地の有効利用ということでしょうか。直売所「うかわファームマート」で売られていた柑橘類も、この棚田で生産されたものかもしれません(未確認)。日当たりの良い棚田ですから、柑橘類等の果樹もよく実るのではないでしょうか。
■上のGoogleマップの小さな画像をご覧ください。青い丸で囲んだところが鵜川です。昨日は、もうひとつの棚田の集落も訪問しました。畑という集落です。「日本棚田百選」にも選ばれている集落です。滋賀県で選ばれているのは畑だけです。緑の丸で囲んだところが畑になります。一番下Googleマップの画像をご覧いただくとよくわかりますが、かなりの高低差(おそらく130mほど…)のある尾根筋に棚田が作られています。全体としては、周りが山に囲まれた地形かなと思います。鵜川の方は石垣の棚田でしたが、畑の棚田は少し違います。もちろん、一部に石垣もありますが、縁が丸い地形の棚田が順番に連なっています。同行してくださった坂本清彦先生は、「日本昔話に出てくるような棚田だ」とおっしゃいました。まさに、昔話の絵本などに登場する柔らかな雰囲気の棚田です。素敵です。
■こんな山の中にある棚田ですが、JR高島駅からだと車で15分ほどの距離です。近いですね。この棚田の集落から車と電車を使えば、京都駅までだと1時間半かからずに到着することができます。1時間半といえば、東京だと普通の通勤時間かもしれません。通勤は大変だとは思いますが、大阪駅までだと2時間をきるほどの時間で到着できます。そうなんです。高島市は、都会に近い場所にあるのです。地図を見ていただくとわかりますが、この畑の集落の山側には、横谷トンネルがあります。このトンネルを抜けると、そこは旧朽木村の村井という場所になります。ここには国道367線が走っています。福井県の小浜市や京都市の北部までは車だとそれほど時間がかかりません。まだ、聞き取りをしているわけではありませんが、何かかいものをするときも、小浜や京都に向かわれるのではないかと想像しています。
■畑を訪問した後は、「公益社団法人びわ湖高島観光協会」と「たかしま市民協働交流センター」を訪問しました。観光協会の方は時間的余裕がありませんでしたが、交流センターではじっくりお話をお聞かせいただくことができました。ありがとうございました。棚田とも少し関連してくるのですが、「炭焼き」をテーマに、いろいろワクワクする地域づくりの取り組みができそうな予感がしてきました。意欲のある龍谷大学の学生の皆さんと一緒に、素敵な地域づくりの経験ができるのではないかなと思っています。関心のある学生の皆さんは、私に連絡をいただければと思います。
■今回の視察の目的は、あくまで再来年開催される「棚田サミット」に合わせて、棚田のある集落を視察することにありました。集落の皆さんに丁寧にお話を伺うことはできませんでした。そのような聞き取りについては、これからの地域連携の中で取り組むプロジェクトの中で時間をかけてできればと思っています。
【追記】■上にアップしたGoogleのマップの画像、いつ頃に撮影されたものかはわかりませんが、棚田のなかに緑色の部分が確認できます。おそらく、このうちの多くは不耕作地ではないかと思います。きちんと確認したわけではありませんが、鵜川も畑にもそのような不耕作地を確認いたしました。ここからも、平地でも不耕作地が増えています。ましてや棚田であれば、その維持がいかに大変であるか想像できるのではないかと思います。
「琵琶故知新」の法人登記
■設立の準備を進めてきた特定非営利法人「琵琶故知新」、先日、事務局の藤澤栄一さんのところに、滋賀県庁から認証書が届きました。そこで、藤澤さんと一緒に、26日の午前中、大津市にある法務局で法人登記をすませました。何も問題の指摘がなければ、ぎりぎり令和元年の設立ということになります。そのことは、正月明けにもわかるようです。この日、藤澤さんから、NPOの名刺を渡されました。いよいよですね。年末のドタバタでまたまたメニエール病のめまいがしているのですが、無理のない範囲で頑張ります。みなさん、私たちの「びわぽいんと」の活動にご賛同ください。また、応援してください。よろしくお願いします。
■「びわぽいんと」は、市民団体「水草は宝の山」(水宝山)のメンバーで琵琶湖汽船社長である川戸良幸さんが報告されたアイデアから生まれました(川戸さんは、「琵琶故知新」の副理事に就任されます)。この「水宝山」から、今回の「びわぽいんと」のような新しいアイデアが、また出てくれば良いなあと思っています。
第30回地球研地域連携セミナー「『楽しさ』がつなぐ森里川湖 ~身近な環境 守る楽しみ つながる喜び~」
■明日は、総合地球環境学研究所が主宰する地域連携セミナーで、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの佐藤祐一さんと一緒に、進行役を勤めます。最近は、そういう仕事をモデレーターっていうんですね。会場は、滋賀県立琵琶湖博物館で開催です。メニエールとか諸々で身体の調子は今ひとつですが、会場全体で盛り上がることができるように頑張りたいと思います。これで、地球研の地域連携セミナーのお手伝いは3回目になります。あと1回、来年の2月にも大津で開催されますが、そちらにも参加します。ただ、その時は、新しく設立するNPOの理事長の立場で参加します。ところで、明日の基調講演ですが、兵庫県立人と自然の博物館主任研究員の三橋弘宗さんです。市民と一緒に小さな自然再生に取り組まれています。また、地域の皆さんからも地域での活動の報告があります。ユニークなお話を伺えることも楽しみにしています。
【概 要】
近年、身近な水辺環境の豊かさを守ろうとする取組みが各地で進められています。かつては水質汚染や開発による自然の急激な改変などを背景として、「環境を守らなければならない」という意識が人びとの行動を駆り立てる原動力となっていました。
しかし近年は、「楽しみながら身近な環境を守りたい」という気持ちや、身近な環境がよくなったと実感できる充足感を期待して活動に参加する人たちが増えてきました。
キーワードは「楽しさ」です。本セミナーは、琵琶湖に流入する最長の河川である野洲川流域を中心とした地域で、楽しみながら活動を進めている団体が発表し互いに交流しあい、これからの時代の環境を守る「新たな形」について模索します。
入場無料・申込不要
【プログラム】
13:30-13:40 挨拶・趣旨説明
13:40-14:10 基調講演
三橋 弘宗 兵庫県立 人と自然の博物館 主任研究員 兼 兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 講師
14:10-14:30 話題提供
岩田 智也 山梨大学 准教授
14:30-15:25 地域の活動紹介
地域1 甲賀木の駅・大久保里山再生委員会・SATOYAMA+中島 教芳
地域2 小佐治環境保全部会 橋本 勉 小佐治環境保全部会 代表
地域3 湖南流域環境保全協議会
地域4 杣川と親しむ会・滋賀県立甲南高等学校
休憩(15分)
15:40-16:30 総合討論
〈モデレーター〉
脇田 健一 龍谷大学 教授
佐藤 祐一 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 専門研究員
16:30 閉会
「全国棚田(千枚田)サミット」高島市実行委員会・第3回準備会
■昨晩は、再来年に高島市で開催される「全国棚田(千枚田)サミット」高島市実行委員会の第3回目の準備会が、高島市役所で開催されました。私もアドバイザーとして参加させていただきました。会の前半は、実行委員会や運営委員会といった組織体制に関して様々な説明が事務局から行われ了承されました。また、滋賀県の職員の方も出席されており、今年度に成立した棚田振興法の説明が行われました。
■会の後半ですが、それまでの少し堅い雰囲気の会議とは打って変わって楽しい雰囲気のなかで、参加者の皆さんとフリートークを行いました。事前に、市役所の方に、第1回、第2回の準備会で出た課題、地域資源、取り組み等を示した地図を用意していただくようにお願いをしていました。その地図を前に、2グループにわかれてフリートークを行ったのです。こういう形で、これまでの議論の中身を「見える化」すると、関心も高まるし、話も弾みます。
■高島市は、平成の大合併により、新旭町、マキノ町、今津町、朽木村、安曇川町、高島町が合併してできた自治体です。市の面積も滋賀県では二番目に広い自治体です。全市から人があつまると、必ずしもお互いに顔見知りというわけではないのです。しかし、地図を前に話を始めると、私のいたグループでは、前回の準備会で話題になった炭焼きの話、そしてそれに加えて薪の話で盛り上がることになりました。高島市内で炭焼きを復活させようと取り組みをされている団体が複数あっても、人のつながりがなければ、お互いにその存在に気がつくことはありません。知り合いになれば、お互いにいろいろ協力しあえることがあるのに、もったいない。集落やそれぞれの団体に閉じた形で活動をするよりも、もっとオープンにしたほうが、相互に補い合うような連携のネットワークが生まれる可能性が高まります。この準備会は、そのようなことに気がついていただく集まりになりました。
■もちろん、炭や薪は、自分自身で使ってもよいのですが、小さなビジネスにしていくためには、買ってもらわねばなりません。買って使ってもらわなければお金も生まれません。ただし、小さなビジネスは、赤字にはならないけれど、大儲けもできない、そこそこ利益があがって、活動自体が楽しい、知り合いができて楽しい、やりがいがある、充実感がある…そのような活動である必要があります。市内の商工業の現場で、あえて地元の炭や薪を使っていただくことで、何か付加価値のついた商品や製品を生み出すことができるかもしれません。地域の壁、団体間の壁、業種間の壁、セクターの壁を超えるような関係が、これから開催される予定の実行委員会で生まれれば良いなと思っています。お金が生まれることは大切なことですが、加えて大切なことは、「楽しさ」「面白さ」さらには「共感」かなと思っています。棚田サミットを契機に、地域の中にそのような動きが生まれてくると、素敵だなと思っています。その結果として、地域の中で、資源やお金が循環するようになって欲しいなと思います。
■以前、高島市の中山間地域では、炭焼きや薪づくりが、生活や生業の一部でした。冬の農閑期の仕事でした。昨晩、お聞きしたことですが、昔は、自分の持っている山に炭焼き窯を作り、周りの樹を切って炭焼きをしていたそうです。炭の材料になる樹がなくなったら、次の場所に移動します。もちろん移動は自分の山の範囲です。今まで使っていた窯は、放棄されます。新しいところに移動して、新しい窯を作ります。そうやって20年ほど移動していると、最初の窯の場所に戻ってきます。すると、そこにはまた炭焼きにちょうど良い太さに樹が成長しているのです。かつての窯は朽ち果てていますが、窯の後だともう一度窯を作ることは容易なのだそうです。こうやって、自分の山をローテーションで使いながら、炭を生産して自家消費とともに出荷されていたのです。
■「こんな炭焼き作業を、現代社会でできるわけがない…」と思われるでしょう。確かに、昔のようにはできないかもしれません。ただ、このような炭を欲しいという人が、もし地域の中にいれば…話は変わってきます。実際、楽しみで自分たちで炭焼きをしているグループがあります。あえて、炭焼きを経験してみたいという人がこの世の中にはおられるのです。自分で使う炭を自分で作ってみたい。そのことを楽しみたいという人たちに出会うことができれば…。私は、高島市であればそれが可能だと思っています。炭ではなく薪の話になりますが、薪と共に薪ストーブの販売、ストーブの設置と掃除をする小さな商店を経営されている若者がいると聞きました。高島市は、別荘が多い地域です。ニーズがあるのだと思います。面白いところに、目をつけられたなあと思います。別荘以外でも、もしストーブが静かな地域のブームになると、面白い展開になってくるなと思います。
■高島市って、都会とは違った意味で、とても「リッチ」です。素晴らしい。それはお金の力だけで生み出されるものではありません。人のつながりの中で、生み出されてくるものだと思います。まあ、そんなわけでして、昨日のフリートークの場は、そのような「妄想」を掻き立てられる大変刺激的な場でもありました。今後が楽しみだ〜。このような地域に関心のある大学関係者や学生の皆さんはおられませんか。連絡をください。地域の皆さんたちと一緒に、何か素敵なことを生み出せるように思っています。
【追記1】■次回からは、準備委員会ではなく、実行委員会がスタートするわけですが、できれば具体的な作業部会も開催するなどして、皆さんとグループワークなフリーディスカッションをしてみたいなと思っています。その時は、地域や団体の代表や役職者の皆さんだけでなく、女性、若い世代の方達、それから高島市に転入されてきた人たちにもご参加いただきたいと思います。
真野浜で水草の清掃
■16日(水)のことになりますが、先週末の台風で、真野浜(大津市)に漂着した水草を取り除く作業を、山田英二さんと2人で楽しみました。山田さんは、けして「大変だ」とはおっしゃいません。「浜を綺麗にすることが楽しい」とおっしゃいます。いつも浜の清掃活動を楽しんでおられる山田さんから、この日、私もその楽しさを学びました。
◼︎水曜日は2限に「地域再生の社会学」という講義があり、午後からは、隔週で教授会等の会議が入ります。しかし、今日は会議が無い週なので、講義が終わった後すぐに帰宅し、「マイ熊手」を持って真野浜に車で出かけました。山田さんがfacebookに投稿された動画で、真野浜にものすごい量の水草が漂着しているのかわかっていました。山田さんお1人だと1週間はかかるとのことでした。ということで、市民団体「水草は宝の山」(水宝山)のメンバーとして駆けつけることにしたのです(もちろん、山田さんもメンバーです。しかも、象徴的な存在。)
◼︎ところが、山田さんは長年にわたってこの真野浜で民宿を経営し、この真野浜を常に美しくキープされてきただけあって、すでにかなりの量の水草を処理されていました。とはいえ、次から次へと、切れた水草が漂着します。そのままにしておくと腐敗するので、陸側の乾燥した浜の方に熊手で移動させます。この際、ちょっとしたテクニックが必要です。できるだけ砂と水草が分離するようにして、なおかつ水草が乾燥しやすいように広げるのです。こうやって、少しずつ琵琶湖から水草を遠ざけていきます。そうするうちに、水草からは砂がパラパラと落ちるようになり、乾燥して重さも減ります。
◼︎それらの乾燥した水草は、近くの市民農園に軽トラックで運ばれます。そこでは、10数軒の市民の方達が、それぞれに家庭菜園を楽しんでおられます。市民の皆さんは、水草をまずは雑草を抑えるマルチシートの代わりに使用されます。マルチシートの役目を終えると、畑の中に漉き込みます。山田さんによれば、ちょっと砂がまじっているくらいが野菜を育てるには良いのだそうです。家庭菜園を楽しんでいる皆さんの経験知から、そのことがわかっています。というのも、もともとここは水田だったこともあり、土壌が粘土質なので、砂が入ることで土質が良くなる…ということのようです(その辺りの、農学的、科学的な理屈については、現在のところ私にはよくわかりませんが…)。ただし、真野浜の乾燥した砂には芝生が生えているのですが、それが乾燥させた水草に混じると畑で増えしまって困るので、できるだけ芝は混じらないようにしてほしいとの要望があるようです。なかなか難しいものです。
◼︎今は、畑で利用していますが、この水草を誰にでもできる技術でうまく肥料化して、幼稚園、保育園、小学校、それから市民センターの花壇や菜園で利用できるようになればと思っています。この肥料化や地域での水草を利用していく仕組みについては、龍谷大学農学部の教員の皆さんと共同研究を行っていくことになっています。この真野浜の水草を媒介に、多くの方達が繋がっていくと素敵だなと思っています。
一燈照隅万燈照国
■天台宗の最澄の言葉と聞いています。「一燈照隅万燈照国」(いっとうしょうぐうばんとうしょうこう)。「一隅を照らす光が集まれば、その光は国全体をも照らすことになる…」という意味なのだそうです。
■全国の様々な地域社会で取り組まれている「小さな自然再生」の実践も、この言葉と同様なのかもしれないと思っています。最澄の教えを単純化しているとのお叱りを受けるかもしれませんが、例えば、琵琶湖の周囲の一隅を照らす活動(小さな自然再生)も、たくさん集まれば琵琶湖全体を照らすことになるのではないか、琵琶湖のことを思う人の気持ちをうまくつなぐことができるのではないか、そのように思うのです。
■琵琶湖のまわりで実践されている「小さな自然再生」の活動が、うまくつながることで、琵琶湖の周りに環境保全の連帯が生まれるようにしていけないだろうか。そのような活動が、企業のCSR活動ともつなり、琵琶湖の周りの「小さな自然再生」を支える社会的仕組みを、多くの人の力で生み出すことはできないだろうか。
■そのような思いから、「小さな自然再生」の実践者、企業人、研究者、専門家…様々なお立場の方達が参加する市民グループ「水草は宝の山」(「水宝山」)でいろいろ議論をしてきました。グループの仲間である川戸良幸さん(琵琶湖汽船)のアイデアを核に、グループのメンバーで「びわぽいんと」という新しい社会的仕組みを構想してきました。もうじき、その「びわぽいんと」を運営するNPO法人も設立することができそうな段階になってきました。皆さんのご理解と応援が必要です。どうか、よろしくお願いいたします。
新大宮川の再生、原田先生との再会
■9月11日の投稿は「新大宮川の魚道を復活させよう!」でした。身近な河川の復活に関心を持つ方たちが多数集まり、大津市の坂本の町を流れる新大宮川の魚道を復活させました。私も含めて30人ほどの方たちが作業に取り組みました。その魚道の復活が、その後どのように川の生き物の状況を変えているのかが気になっていました。
■昨日、午前中は、大津市仰木の里自治連合会・大津市役所・龍子大学RECで取り組んでいる「学生まちづくりLABO」の会議でした。そして昼からは、総合地球環境学研究所の「地域連携セミナー」の打ち合わせで滋賀県琵琶湖環境科学研究センターに出かけ、研究員の佐藤祐一さんと色々相談をしました。その際、佐藤さんから、「先日の魚道復活の後、魚道をアユが俎上しているようですよ」と教えてもらいました。昨日は、たまたま車での移動でしたので、帰宅途中、新大宮川に立ち寄ってみることにしました。
■写真をご覧いただくとわかりますが、たしかにアユが俎上できるだけの十分な水量が復活した魚道を流れています。嬉しかったです。復活させた魚道のすぐ下流のところには、たくさんの魚影が確認できました。このことをfacebookに投稿したところ、今回の川の再生のキーパーソンである山本克也さんからコメントが入りました。再生した魚道の上流までアユが俎上していることも教えていただきました。
「脇田先生、これアユですよ。それと、アユの群れは、再生した魚道の上流に上がっています」。
「橋のすぐ上流に結構います。しかも、例年のものより、大きいと思います」。
「同じくらいのサイズのカワムツもいるのですが、アユはクネクネと泳ぎ、横腹が白いです。カワムツは、筋があって直線的に泳ぎます。アユはナワバリ意識が強いためだと思いますが、アユがいるとカワムツは追いやられて近くにはほとんど見あたりません」。
■滋賀県では、毎年、夏の終わりから秋にかけてたくさんのアユが琵琶湖から川に入って産卵します。今回、泥で埋まった魚道を復活させたことで、アユの産卵する範囲が以前と比較して広がったようですね。自分たちの作業がこうやって琵琶湖の生き物のためになっていることを、実際に自分の眼で確認すること、見守り続けること、とても重要ですね。眼で見て、確認して、私自身、とても嬉しいと感じることができました。こうやって身近な河川の「世話」を継続することで、琵琶湖の生態系に寄与できていることに、何か達成感というか満足感も覚えます。
■さて、昨日は、いったん車で帰宅して、それから再び大津の街中に出かけました。社会学部で取り組んでいる「社会共生実習」の「大津エンバワねっと」に関する地域の皆さんとの会議が開催されたからです。「大津エンバワねっとを進める会」です。この会議の後ですが、大津駅前のいつもの居酒屋「利やん」に行きました。3年前に社会学部を退職された原田達先生とお会いする約束になっていたからです。原田先生とは、半年ぶりの再会になりました。先生も、「利やん」には時々お越しになっているようなのですが、私がお店に行くタイミングとなかなか合いませんでした。昨日は、最近の大学のことから、ランニングのこと、世界情勢、特に東アジアの情勢のことまで、様々なお話をさせていただくことができました。原田先生、ありがとうございました。ご退職後、原田先生は本格的にランニングに取り組んでこられました。退職後に、フルマラソンも自己記録を更新されました。すごいです。お店に現れた先生のスタイルは、真面目にランニングに取り組んでおられる人のそれでした。かっこいい。頭もスキンヘッドにされ、少しヒゲもはやされたお姿は、なかなかワイルドです。刺激をいただきました。
ヨシ群落保全に関するヒアリング(2)
◼︎昨日は、滋賀県庁の職員の皆さんや淡海環境保全財団の職員の方と一緒に、1日かけて伊庭内湖(東近江市)、西の湖(近江八幡市)、下物半島(草津市)で、ヨシ群落の保全や活用に取り組む団体にお話を伺いました。8月7日に行ったヒアリングの第2回目です。今回も、いろいろ勉強することができました。
◼︎ヨシ群落の保全とはいっても、その背景は実に様々。ヨシ群落の保全の活動そのものは氷山の一角で、地域の歴史、地域住民組織のあり方、そのような組織と共にある地域文化(村の精神)、ヨシ群落の存在する土地が公有か私有か、キーパーソンや地域リーダーのタイプ、地域で起きた様々な出来事、その時々の政策や施策。細かなことで言えば、ヨシ刈りボランティアの方たちの車を駐車できるスペースがあるかないか……。実にたくさんの要因が複雑に絡み合った中で、ヨシ群落の保全活動が取り組まれています。
◼︎このヒアリング、まだ続きます。今月は、県内でも頑張って取り組んでおられる方たちからのヒアリングでしたが、琵琶湖の周りには、もっと小さな規模の活動を細々と続けている団体もあります。そういう団体にもお話を伺えればと思います。
◼︎ヨシ群落の活動に取り組むみなさんが「つながる」仕組み。取り組みを多くの皆さんに「しらせる」仕組み。取り組みを「ささえる」仕組み。この「つながる」「しらせる」「ささえる」ことがうまく連関したトータルな仕組みが動き始めるように、このような地道なヒアリングを続けていきます。
湖南流域環境保全協議会を訪問
◼︎今週の金曜日、午前中は4回生2人のゼミ生に卒論指導。キャンパスまで移動するのも面倒なので、瀬田駅側のスーパーマーケット内にあるフードコートでの指導にさせてもらいました。私のゼミは、全員、調査をして卒論を執筆することを約束しているので、春の段階から指導のピッチをあげてきました。本当は、学生の皆さんには、もっと早い段階から卒論に集中して欲しいのですが、6月末頃までは就職活動がありますし、そのあとは公務員試験だとか、教員採用試験だとか…。なかなか、思うようにいきませんね。
◼︎午後からは、草津市にある、滋賀県庁の南部合同庁舎に移動しました。こちらで湖南流域環境保全協議会の理事会が開催されました。この協議会は、南部地域(草津市、守山市、栗東市、野洲市)で地域の環境保全活動に取り組んでいる団体や個人の皆さんが参加され、以下を目的に運営されています。
琵琶湖の環境保全のために、河川流域ごとに上、中、下流の実情や課題を理解しあい、地域が一体となって河川流域ごとに身近な取り組みからスタートし、琵琶湖の保全について深い理解と共感に基づくパートナーシップのもとに、県民、事業者、行政などの主体的な取り組みの推進を図ります。
◼︎私は、湖南地域や野洲川流域の流域ガバナンスに関する総合地球環境学研究所のプロジェクトのコアメンバーで、流域の環境保全に取り組む地域や団体のネットワークがさらに拡大していくことをお手伝いできたらとの思いもあり、この協議会のメンバーではありませんが、協議会の皆さんに晩秋に開催する予定の「地域連携セミナー」(主催: 総合地球環境学研究所)ご参加いただきたく、そのことをお願いするために参加させていただいたのです。
◼︎この日の理事会は、湖南地域にたくさん見られる天井川とマンポがテーマでした。かつて氾濫を繰り返してきた河川の治水のために、堤防を築いてきました。しかし、山からの土砂がすぐに堆積するため、また堤防をかさ上げしなけれはなりません。それを繰り返すうちに、周囲の土地よりも川床がかなり高くなってしまっているのです。ところが、河川と直角に移動しようとすると、この高い堤防が障害になります。そこで、川床の下にトンネルを掘ってきました。このトンネルのことを、この地域ではマンポと呼んでいます。現在、湖南流域環境保全協議会の皆さんは、このマンポに注目されて、湖南地域の環境を深く理解しようと試みておられるのです。
◼︎地球研の「地域連携セミナー」のテーマは、天井川やマンポそのものではなありません。ただ、身近な自然環境との関係をもう一度見直そうという動きが、各地で見られています。かつて人びとは、生業を通して、あるいは生業の必要から、身近な環境の保全に関わってこられました。しかし、時代が移り変わるとともに、そのような身近な自然環境との関係が希薄化してきました。その背景には、高齢化や地域コミュニティにおける離農傾向など、様々な事情があるのですが、そのような状況の中でも、なんとか身近な自然環境との関係を取り戻して再評価していこうとする動きが見られるようになってきました。その際のキーワードは「楽しさ」ということになろうかと思います。一見すると、経済的な活動のように見えて、「楽しさ」が活動の潤滑油として機能しているように思うのです。次回の「地域連携セミナー」では、この「楽しさ」がキーワードになるのかなと思っています。