映画「ビバ・マエストロ!」

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▪️お世話になっている友人の雨森鼎さんから教えていただいたドュメンタリー映画「ビバ・マエストロ! 指揮者ドゥダメルの挑戦」を鑑賞してきました。映画館は京都の烏丸御池にある「アップリンク京都」です。映画の概要ですが、こちらの通りです

▪️ドゥダメルさんはまだ45歳ですが、世界的な指揮者として高い評価を獲得しています。そのあたりまでは知っていましたが、彼が母国ベネズエラの政治的対立の狭間で苦悩していたことなど、まったくわかっていませんでした。1981年生まれのドゥダメルさんは、ベネズエラの「エル・システマ」と呼ばれる、子供たちに無料でクラシック音楽を教える社会運動の中で音楽家に成長しました。そのベネズエラ、かつては親米政権だったのですが、 1998年に当選したチャベス大統領は反米・左派社会主義の立場で、石油産業の国有化、資産の強制収用、貧困層向けの社会政策を進めました。このチャベス大統領が急死すると2013年に反米・権威主義的社会主義のマドゥロ大統領が誕生します。

▪️このあたりから、ベネズエラの社会・経済状況はどんどん悪化していきます。石油価格の急落と経済政策の失敗によって猛烈なインフレが起こり経済は破綻してしまいます。反政府のデモが起こるわけですが、そのようなデモに対して政府は猛烈な鎮圧を行い、国内は混乱することになります。ちなみに、今年の正月に、アメリカ軍によって連れ去られたのが、このマドゥロ大統領(夫妻)です。

▪️ドゥダメルさんが育った「エル・システマ」が始まるのは1975年ですから、新米・反米に関わらず、ずっと国から強力な財政的支援を受けてきたわけです。そのあたり、政治と音楽の微妙な関係が垣間見えます。マドゥロ大統領と対立する反政府団体や人権団体からは、マドゥロ独裁政権のプロパガンダに加担していると厳しく批判を受けました。そのあたりのことについては、以下をお読みください。

ベネズエラ独裁政権のプロパガンダ「エル・システマ」に協力してきたクラシック音楽界
100万人の子どもを育てた音楽教育の国で、なぜ軍事介入が起きたのか?「簡単に語らないで」音楽家の想い

▪️ずっとドゥダメルさんは政治的発言を控えていたのですが、2017年に「エル・システマ」の若者がデモに参加した際に死亡してしまったことを契機に、ドゥダメルさんはマドゥロ大統領を批判するのです。そのため、マドゥロ大統領からは報復を受けることになります。ドゥダメルさんが指揮をするはずだったベネズエラの国立オーケストラのツアーが中止になりました。

▪️ドゥダメルさんは、「エル・システマ」の音楽活動で貧困層のベネズエラの子どもたちを救いたいと強く願っています。そして、ご自身は音楽家であって政治家ではありませんから、音楽が持つ可能性や価値を強く信じているわけです。だから、なんとか「エル・システマ」をマドゥロ政権の報復からも、マドゥロ政権に反対する団体からの批判からも切り離そうとされました。距離感の取り方に苦労されてきたのだと思います。映画のタイトルにある「挑戦」と言うのは、そういうことも含めてなのだと思います。

▪️そのような政治的な背景が見え隠れしながら、ドゥダメルさんが指揮をする練習風景、リハーサル風景が映画の中でたくさん登場しました。また、彼の子どもたちや若い音楽家たちとの交流風景も素敵でした。人柄もよく伝わってきました。映画の中ではさまざまな作品が演奏されました。印象深かったのは、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の第1楽章の冒頭部分です。そして同じくベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の第4楽章です。ベネズエラのオーケストラがドゥダメルさんの指揮のもとドイツで演奏するのですが、とても感動的でした。

▪️また、チャイコフスキーの交響曲第4番、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲、そうそうベネズエラの子どもたちともドボルザークの交響曲第9番「新世界」の第4楽章を演奏されていました。プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』も演奏されていました。それから初めて聴きましたが、メキシコの現代作曲家であるアルトゥーロ・マルケスさんの『ダンソン第2番』『ダンソン第9番』も演奏されていました。作曲家ご本人も映画に登場されていました。あまり映画を鑑賞することはないのですが、雨森さんに教えていただき、すぐにチケットを予約しました。映画館に行けて本当に良かったと思っています。ちなみに、チケット代金はシニア割引でした。はい、嬉しかったです。

▪️こちらは、映画の予告編です。

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