琵琶湖の全層循環(深呼吸)
▪️「”びわ湖の深呼吸” 全層循環を5年連続で確認」というNHKの記事を読みました。今年も、「琵琶湖の深呼吸」=「全層循環」が確認されました。よかった、よかった。安心しました。おそらく、滋賀県民の多くの皆さんが同様の気持ちになっておられるのではないかと思います。
▪️ このタイミングで「『深呼吸』が止まる時代 湖は」という新聞記事も読みました。小さな記事だけど、気になりました。琵琶湖は、「富栄養化」の時代から「気候変動」の時代に移行してきたという記事です。富栄養化では、陸地からのりんや窒素の流入が問題になりました。その背景には、人びとの暮らしや生業が存在していました。全国的に知られる滋賀県の県民運動「石けん運動」は、琵琶湖に流入するりんの48%が家庭の洗濯排水からということが事の始まりでした。今、合成洗剤は無りんですけど、当時の洗剤にはりんが洗浄助剤として入っていたのです。「石けん運動」は、もともとは、合成洗剤一般に含まれる合成界面活性剤を問題視する消費者運動だったんですが…。
▪️そのことは別にして、「石けん運動」では、琵琶湖の周りに住んでいる人たちの努力で琵琶湖を良い方向に変えられるという実感が生まれたと思うんですよね。もっといえば、「石けん運動」の担い手であった女性たちが、社会を変えていけるという実感を持てたんですよね。女性たちが、エンパワーメントされました。でも、実際のところは、下水道の急速な普及が琵琶湖の水質に関しては決定的に大きな影響を持ったように思います。ちょと、脇道にそれてしまいました。
▪️さて、その「石けん運動」では、富栄養化が問題視されました(もうひとつは界面活性剤)。ところが問題が気候変動になると、琵琶湖の周りに住んでいる人たちの努力では、なんともならない状況が生まれてきます。困りますね。そのひとつは、琵琶湖の深呼吸、全層循環の問題です。冬になって湖面の酸素を含んだ水が冷やされて湖底に沈み、湖底に酸素を供給するのです。今年は、全層循環が起こりましたが、2019・2020年は起こりませんでした。やばかったです。全層循環が起きないと、琵琶湖の湖底に酸素が供給されず、湖底の生物は死に、底泥からりんや有害な物質が溶け出してくることが心配されます。でもね、温暖化は、琵琶湖の周りに住んでいる人たちの努力だけではなんともならないんです。
▪️以下は、記事からの引用です。
温暖化では別の懸念もある。琵琶湖では10年代から外来の植物プランクトン「ミクラステリアス・ハーディ」が目立つようになった。大型で突起が多く、動物プランクトンのえさになりにくい。もし温暖化で増えるような、動物プランクトンが減り、それを食べる魚も減るシナリオが考えられる。
▪️さて、どうしたものでしょう。この記事に出てくるのは、知り合いの京大生態学研究センターの中野伸一さん。中野さんは、どう考えているのかな。気になります。