西の湖(近江八幡市)の葦地(よしじ)を見学

20241101nishinoko_yoshi1.jpg
▪️1993年、淡海環境保全事業財団が設立されました。2012年には、公益財団法人に移行しました。設立から、昨年で30年を迎えました。そのタイミングで「淡海ヨシのみらいを考える会議」が設立されました。私はこの会議のメンバーです。10月25日(金)に、さまざまな職業の方達、しかし琵琶湖のヨシ群落に強い関心をお持ちの皆様と一緒に、「現地見学会」に参加させていただきました。午前中は、公益財団法人・淡海環境保全財団の「ヨシ苗育成センター」を訪問して、財団の職員の方から、ヨシ苗育成事業、ヨシ紙事業、ヨシ腐葉土事業に関して丁寧な説明を受けました。午後からは、見学の場所を近江八幡市にある西の湖の円山に移しました。特定非営利活動法人「まるよし」の皆さんが活動されている葦地(よしじ)を訪問し、「まるよし」の代表である宮尾陽介さんに解説していただきました。

▪️トップの写真、刈り取ったヨシを乾燥させるためにヨシの束を寄せ合わせて立てます。これを「丸立て」というようです。ヨシ刈は冬に行われますので、季節外れの風景になるのですが、この場所が近々ヨシをテーマにしたイベントを「まるよし」さんで開催するとのことで、そのために「丸立て」を用意されたようです。ちなみに、この円山のヨシは大阪で開催される万博に運ばれ使われるとのことでした。円山には、ヨシ業者さんがおられます。産業としてヨシを栽培して、刈り取り、ヨシの商品を製造・販売されているのです(下の2枚の写真は、そのようなヨシ業者さんの作業場を撮ったものです。)。そして、それらのヨシを栽培する葦地は個人の所有地なのです。公有水面のヨシ群落は開発や土木工事により減少してしまったのとは異なり、ヨシ産業が存在し、ヨシを刈り取る土地も私有地であるため、このあたりのヨシ群落は残っていると言えるのかもしれません。ただし、かつてのようにたくさんのヨシ業者さんがいるわけではありません。中国から安価なヨシが輸入されることで、たくさんおられたヨシ業者さんの数もずいぶん減っています。

▪️ヨシについては、以下の短い説明が役に立つかもしれません。特に、「過大に評価されてきた水質浄化機能」に関しては注文していただきたいと思います。ヨシと言えば、「水質浄化」と多くの皆さんが思い込んでこられたように思いますが、そうではないことを専門家が指摘しています。では、ヨシ群落にはどのような機能があるのかということなのですが、「湖国の原風景を象徴する景観の形成、環境教育の場」、「鳥類・魚類などの生殖・繁殖の場」、「ヨシ産業や暮らしを支えてきた資源の供給」の3つが挙げられています。
「琵琶湖ハンドブック三訂版」7-7 ヨシ
20241101nishinoko_yoshi2.jpg20241101nishinoko_yoshi3.jpg

20241101nishinoko_yoshi4.jpg
20241101nishinoko_yoshi6.jpg▪️さて、特定非営利活動法人「まるよし」の宮尾さんからは、次のようなお話をお聞かせいただきました。上の写真ですが、真ん中に水路があり左右にヨシ群落が広がっています。左は、毎年きちんとヨシの刈り取り、火入れ等の作業がきちんと行われているヨシ群落です。右の方は、ヨシを刈り取る人が不足することで(高齢化で作業が大変になってこられた)、ヨシ刈ができなくなっていたヨシ群落です。宮尾さんたち「まるよし」では、3年前からこの土地でヨシ刈を始められました。まだ、左のヨシ群落のようにはなっていません。所々にオギが生えています。宮尾さんによれば、ヨシ刈が行われずに、そのまま腐って堆積していくとそこは水気のない乾いた土地になっていきます。そのような場所にオギが生えてくるとのことでした。宮尾さんたちが取り組んでいるヨシ群落も、きちんと管理をしていくことで、右のようなヨシ群落に少しずつ戻っていくのかもしれません。

▪️最後の写真は、宮尾さんがヨシ群落に渡っているところです。ヨシ群落には橋がかかっていません。この船を使って対岸のヨシ群落に移動するのだそうです。今後とも、宮尾さんには、特定非営利活動法人「まるよし」の活動状況や、円山や西の湖の周囲のヨシ群落の保全や利用等についていろいろ教えていただきたいなと思ってお願いしています。「まるよし」さんでは、ヨシの活用に力を入れておられます。現在は、岐阜県の業者さんや研究者とも連携して、ヨシを使った建築資材(ボード)の商品化に取り組まれています。琵琶湖のヨシ、現代的な文脈の中で、再び積極的に活用されるようなアイデアをもっと考えていかなければなりません。

カテゴリ

管理者用