琵琶湖の全層循環

■琵琶湖の湖水は、冬になると表層が冷えて水温が下がっていきます。湖岸近くの浅いところの湖水も水温が下がります。低温・高密度になるのです。低温・高密度になると、琵琶湖の真ん中の湖水は湖底に向かって沈んでいきます。冬以外の季節では、深度の変化とともに水温が変化する層が生まれますが、冬になるとその水温躍層が次第に深くなっていきます。湖岸近くの浅いところの湖水も低温・高密度になり、湖底の斜面沿いに沈んでいきます。そのようになると、酸素を含んだ水が底の方に沈むことにもなります。そして琵琶湖全体で湖水が混じり合い、水温と酸素の濃度が同じになります。これを、全循環、全層循環と呼びます。一般には、「琵琶湖の深呼吸」と言われる現象です。

■冬になると、多くの滋賀県民の皆さんが、この全層循環「琵琶湖の深呼吸」に注目されます。ところが、昨年は、観測史上初めて全層循環が起こりませんでした。全層循環が起こらないと、琵琶湖の底の方に酸素が行き渡らないことになります。結果として、水質や生態系に影響を与えることにもなります。そのようなこともあり、例年以上に「琵琶湖の深呼吸」のことを心配されているのではないかと思います。この全層循環のついては、「琵琶湖の全循環と『低酸素化』」という専門家の解説をお読みくいただければと思います。

■さて、先日のことになりますが、NHKの夕方のローカルニュース番組で、「全層循環が起きる条件を指標化」(01月30日18時08分)というニュースが報道されました。そのニュースの中では、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの建物の中にある国立環境科学研究センターの中田聡史さんが次のような説明をされていました。

びわ湖では通常、1月から3月の間に湖面近くの水が沈んで湖底の水と混ざり合う「全層循環」と呼ばれる現象が毎年起きていますが、去年、観測史上初めて確認されませんでした。
このため全層循環が起きる条件を解明しようと、大津市にある国立環境研究所はスーパーコンピューターを用いて、過去6年分のびわ湖の気温や風速などのデータを解析しました。
その結果、びわ湖全体にたまった熱のエネルギー量が指標となることが分かりました。
数値が1000PJ(ペタジュール)という単位を下回ると、全層循環は起きていましたが、去年は一度も下回っていなかったということです。
また、去年の気象条件を分析すると、9月から3月までの7か月間の気温がこれまでより高く、さらに湖面を吹く風速が秒速4メートルほど弱かったことがわかったということです。

■この解説を読むと、琵琶湖の全層循環が起きるかどうかは、気象条件や温暖化の問題とつながっていることがわかります。毎年のように大規模な台風が列島に襲いかかり、甚大な被害が発生しています。感覚的にも、地球温暖化の問題を日常生活から遠く離れたところの問題ではなく、身近な問題として捉えるようなってきているように思います。琵琶湖もそのような温暖化の影響を強く受けつつあるのです。今から43年前、琵琶湖の富栄養化の進行とともに赤潮が発生し、大きな社会問題となりました。その時、富栄養化を促進させるリンを含んだ合成洗剤を条例によって規制し、「合成洗剤を使用せず石鹸を使おう」という県民運動=石けん運動が展開しました。もちろん、その後の下水道の急速な普及が富栄養化を抑制していくことになるわけですが、条例や県民運動のような取り組みも、社会の意識、政策の方向性を変えていくとともに、一定の効果を生み出しました。あの時は、温暖化と比較するとローカルな環境問題であるわけですが、この「琵琶湖の深呼吸」に関しては、私たちは何ができるのでしょうか。滋賀県では、温暖化につながる二酸化炭素の排出を抑える低炭素社会づくりに取り組んでいます。環境と経済の両立を目指して2011年3月に「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」が制定されました。そのことに伴い、「事業者行動計画書制度」も定められています。このあたりのことは、私はあまりよくよかっていません。きちんと勉強しないといけないといけませんね。

■ところで、知り合いに老舗の鮒寿司屋さんの若主人がおられます。私がfacebookでこのNHKのニュースを取り上げたとろ、「自然相手のことだから…と言ってしまえば終わりですが、びわ湖の環境が死活問題の自分からすると不安で仕方ないです」とのコメントをいただきました。とても切実に感じておられます。

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