「株式会社 革靴をはいた猫」のこと

20190426uomi.png ■以前から、龍谷大学政策学部に在籍していた魚見航大さんという方のことを聞いていました。現在は、政策学部を卒業され、「株式会社 革靴をはいた猫」を経営されています。障がいのある若者と共に訪問型の靴磨きを行う会社を、2017年3月の卒業式を前に起業され、今は、京都市役所の近くに店舗も開店されています。この魚見さんのインタビュー記事を、公益財団法人「信頼資本財団」のホームページに見つけました。この記事を拝見して、ぜひ多くの知り合いの学生のみなさんにも読んでもらいたいなと思い、ブログで紹介することにいたしました。

インタビュー“与えられる存在”から“与え、分かち合う存在へ”

■このインタビュー記事を拝見すると、大学に入学した頃の魚見さんは、何かまちづくりや社会問題に積極的に関わろうとする学生ではなかったことがわかります。地域課題を解決するための政策学部教育プログラム「Ryu-SEI GAP」に参加することで、魚見さんは社会的課題に少しずつ関心を深めていかれたことがわかります。それも、いろんな経験や人との出会い、それは偶然と言ってしまえばそうなのでしょうが、そのような経験や出会いという偶然を自分を成長させることにつなげておられることがわかります。学内にある障害を持った若者が勤務されているカフェ「樹林」での経験もそうです。このカフェに関わりながら、次のような気づきがありました。「周りの人が頑張って障害のあるメンバーたちをサポートするだけでは彼らが生きていくうえで本質的な成長にはつながっていないのではないかと思いました。そのカフェでは就労支援B型といわれる一般就労が難しいメンバーが働いていましたが、彼らにもできることが多くあるように感じていました」。

■このカフェでの経験の後、魚見さんは、障害を持った若者たちと「靴磨き」を事業にしていきます。魚見さんの頭の中で、「靴磨き」と閃めいた訳ではありません。人との出会い、ちょっとした「つぶやき」に似た発言に刺激を受けて決断し、行動に移していったことに、とても関心しました。感性が柔軟で敏感な方だと思いました。その後の展開については、ぜひ、直接、インタビュー記事をお読みいただければと思います。魚見さんたちの企業について、こういったことも語っておられます。「大学の先生や経営者のなかで靴磨きでの起業に唯一賛同してくれた深尾先生に『起業したいです』と言ったら在学中に準備しなさいとのことだったので、起業する方法を調べてなんとか卒業式前日に登記できました」。深尾先生とは、一緒に仕事もすることがありますが、おそらくはご自身のお若い頃からの経験も踏まえて、魚見さんの背中を押されたのではないかと推察します。「唯一賛同してくれた」ということは、ほとんどの大人たちは「やめときなさい」、あるいはそれに近いことを言ったということになります。多くの方は、「まずは、きちんと就職をして、社会人になって社会を勉強してからでも遅くない…」というようなことをアドバイスされたのかなと想像します。本当に、人との出会いは大切ですね。

■インタビュー記事のタイトルは、「“与えられる存在”から“与え、分かち合う存在へ”」です。ここで存在というのは、同僚の職人さんである障害を持った若者たちのことを指しているのだと思います。魚見さんのような卒業生が、私の勤務する社会学部からも生まれて欲しいと思っています。

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