「琵琶湖の深呼吸」のその後のこと

20190327lakebiwa.png◾️3月14日に、「琵琶湖がまだ深呼吸をしていない…」をエントリーしました。そのエントリーの冒頭にも書きましたが、もう一度、「全層循環」に関して説明しておきます。

「琵琶湖の深呼吸」とも呼ばれる琵琶湖の「全層循環」がまだ今年は起きていません。真冬、湖面に近い琵琶湖の水は水温が下がっていきます。水温が下がると密度が高くなり重くなって琵琶湖の湖底に向かって沈んでいきます。湖面に近い水は酸素をたくさん含んでいるので、湖底に向かって沈む水は、湖底に酸素を運ぶことにもなります。すると湖底の水は上昇を初めて、琵琶湖の湖水が混じり合うのです。だから、湖底に生きる生物や水質にとって非常に重要な意味を持っていることが理解できます。

◾️実はその後も、「全層循環」は完了していません。なぜ、今年はまだ完了していないのか。NHKの報道では、以下のように説明されています。

県の琵琶湖環境科学研究センターは週1回、水深が最も深い地点がある北湖で、湖水の酸素濃度や温度を調査していて、26日は高島市今津町の沖合の水深90メートルの7地点に機械を沈めて測定しました。

その結果、半数を超える4つの地点では酸素の濃度が平均で1リットルあたりおよそ4ミリグラムと低く、ことしは全層循環が完了していないことが分かりました。

去年の夏以降、気温が平年より高かったことで湖面の温度が下がりきらず、水が混ざりにくくなったと考えられ、これまでで最も遅く「全層循環」を確認した12年前より遅れています。

◾️知り合いの琵琶湖の環境政策に関わる県職員の方が、facebookに以下のようにコメントされていました。「昨年の冬は寒かったために、比較的早い時期に全層循環が完了した。しかし、昨年の夏は猛暑だった。例年と比較して、湖面と湖底の水温の差が大きくなってしまいまった。さらに今年は暖冬だったために、琵琶湖の上層の水が湖底と同じ水温まで下がりきらず、未だに完全に混ざりきっていない」ということのようです。これからはますます暖かくなるので、「全層循環」が起こるのかどうか、心配になりますね。

◾️滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの研究員である佐藤祐一さんが、『指標でみる過去と現在 びわ湖と暮らし 2018』という資料の13頁で「底層の溶存酸素濃度」という記事を書いておられます。琵琶湖の北湖、今津沖中央の底層の溶存酸素の年度最低値がグラフで示されています。年によって変動しています。その変動の理由に関しては、次のように解説してあります。「台風の襲来が無い年や、植物プランクトンが大量に増殖して有機物の供給が増える年があることなどが考えられます。また今後、温暖化に伴い貧酸素化が進行することも危惧されます」。「全層循環」が琵琶湖の湖底に酸素を供給する上で重要な機能を持っているわけですが、それれだけでなく様々な要因が湖底の溶存酸素に関連しているらしいことがわかります。

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