「魚のゆりかご水田プロジェクト」、「生みの親」「名付け親」「育ての親」

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■滋賀県農政水産部農村振興課で、「魚のゆりかご水田プロジェクト」の「名付け親」で「生みの親」Kさん、そして「育ての親」Tさんのお2人にお会いすることができた。本当に嬉しい‼︎ すでに退職されていると思っていましたが、現役の職員さんでした。「生みの親」のKさんと担当者の職員の方からは、「魚のゆりかご水田プロジェクト」での現状や課題について、いろいろお話しを伺いました。勉強になりました。集落内外の社会関係資本のあり方、集落内のリーダーの交代、プロジェクトのマンネリ化…様々な要因が、現状や課題の背景には存在しているようですね。

■「育ての親」のTさんは、水郷地帯のご出身でした。昔話しを聞かせてくださいました。もちろん、圃場整備事業のため、そのような水郷地帯はすでに存在していません。現在、年齢は50歳過ぎとのことでしたが、水郷地帯のクリークそして水田で、フナやコイそしてナマズをつかまえることはもちろん、家に隣接する洗い場「セド」でボテジャコを遊びで釣っていた経験をお持ちであることがわかりました。昭和40年代のことですね。おばあさんは網でボテジャコをすくって晩御飯のおかずによくされていたとか…しっかりと「魚つかみ」や「おかず取り」の経験をお持ちでした。一方、「生みの親」のKさんは、別の地域で同じように「魚つかみ」や「おかず取り」を経験されていたわけですが、水郷地帯の方とは内容に違いがありました。魚種についても。面白いですね。Kさんは、母方のご実家が内湖のそばだったというお話しもしてくださいました。

■「魚のゆりかご水田」というプロジェクト名の起源については、私が知る限り複数の説があって、中には疑問に思うものもあったのですが、今回はお話しを伺ったご当人が「生みの親」だったというで、とても驚きました。気持ち的にスッキリしました。公務員の仕事は、一人の「個人」の仕事ではなく、組織の中で与えられた「役割」が仕事をしているので、事業が動いてもそれは誰が発案したものなのかは分かりにくいわけです。それは仕方がありませんね。

■ところで、Kさんからは以下の論文を教えていただきました。いろいろ参考になりますが、魚のゆりかご水田の「実施水田面積拡大のため」ということを前提にされている点が、私などの問題意識とは異なっています。プロジェクトを実施されている滋賀県庁の皆さん、もちろんこのような問題意識を共有されていることと思います。ただし私自身は、その辺りの根本の問いの立て方が違っています。「何のため」の、「誰のため」の「魚のゆりかご水田」プロジェクトのなのか、その辺りのことをもう一度深く考えていく必要があるように思うのです。

「魚のゆりかご水田プロジェクト実施地域の類型化と実施水田面積拡大のための方策と考察」(中西悠・井出慎司、土木学会論文集 G(環境),Vol.70,No.6(環境システム研究論文集 第 42 巻),II_151-II_158, 2014.)

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