大津駅リニューアルのこと

20160601ohtsustation.png ■2004年に龍谷大学で働くようになってから13年目になりますが、その間、大津駅や大津駅前に関して良い評判を聞いたことがありません。県庁所在地の駅なのに、賑わいが全くないからです。「これが、県庁所在地の駅なのか!!」、というようなことがよく言われてきました。大津駅前は滋賀県庁を始めとする官庁街ですので、現在の大津駅は、このエリアに通勤する方たちが朝夕に利用する駅…というイメージが強いかもしれません。

■湖西線が開通するまでは、江若鉄道という私鉄が走っていましたが、1969年に全線が廃止になりました。江若鉄道は、大津市の浜大津駅から滋賀県高島郡今津町(現高島市)の近江今津駅までを結んでいました。大阪や京都に出るとき、湖西にお住まいの皆さんは、まずこの江若鉄道に乗って浜大津までやってきて、そこで京阪電車の京津線に乗り換えたり、あるいは少し離れていますが、大津駅まで歩いて国鉄に乗り換えていました。浜大津駅から大津駅に至る寺町通りや商店街は、多くの人が行き交っていたといいます。今からは考えられないほど、多くの人が街中を歩いていたのです。しかし、湖西線が開通すると、大阪や京都に出るのに浜大津を経由する必要がなくなりました。浜大津駅と大津駅は、公共交通機関の結節点ではなく通過点になってしまったのです。そして、モータリゼーション、郊外型大規模店舗の増加等、全国の地方都市と同じような事情から、中心市街地は空洞化していきました。

■そのような大津駅の周辺が、少しずつ変化しようとしています。昨日は、大津市の「都市計画審議会」や「都市計画マスタープラン案策定専門部会」の仕事をさせていただいていることから、大津駅のリニューアルに関連して、都市計画の専門家や市役所の皆さんと楽しくディスカッションをする時間を持ことができました。すでに昨年末にプレスリリースされていますが、大津駅のある駅ビルはこの秋にリニューアルされることになっています。レストランや屋外テラス、カプセルホテルなどがオープンします。「『通りすがる駅』から『立ち寄る駅』に」ということをキャッチフレーズに、全国でカフェやレストランなどを展開する「バルニバービ」(大阪市西区)という会社が運営されます。新聞記事によれば、以下の通りです。

計画では2階と1階屋上を使って、バーベキュー(BBQ)のできる屋外テラス▽地元食材を取り入れた和食中心のレストラン▽音響やネット環境を整備したラウンジ▽3000円台のカプセルホテル(60室)−−を併せた施設を建設。レストランで外国人観光客向けの和食料理教室を開いたり、近隣住民と一緒にテラスで朝のラジオ体操を実施したりすることも検討しているという。1階には別の店舗が入る見込み。

17日に市役所で開かれた記者会見では、JR西の岩崎悟志・京都支社長がバルニバービについて、「京都府立植物園(京都市左京区)にガーデンダイニングを作るなど、行政とも連携しながら、多くの人が集まる居心地のいい店を作ってきた」と紹介。バルニバービの佐藤裕久社長は「大津を散策して、商店街の和菓子屋や静寂を残した寺社仏閣、琵琶湖など、観光インフラがたくさん眠っていることに気付いた。地域と連携しながら、まずは地元に愛される駅を目指したい」と抱負を語った。

■記事の中に出てくる「京都府立植物園」のガーデンダイニングに行ったことがあります。素敵な雰囲気のお店でした。バルニバービさんは、いろいろアイデアをお持ちのようですね。近隣住民とラジオ体操、いや〜面白いですね。私も、商店街のアーケードでラジオ体操をしたらどうだろう…と考えたことがありますので、駅ビルでのラジオ体操、興味があります。記事のなかで、佐藤社長は、大津には「観光インフラがたくさん眠って」いると述べておられます。その通りです。また、これが非常に重要なことだと思いますが、「地域と連携しながら、まずは地元に愛される駅を目指したい」という経営姿勢にも期待しています。「外からやってくる人たちに…」ではなく、「地元に愛される」という点は、とても大切だと思います。地域の志を持った方たちと連携していくこと中で、駅ビルという「点」が、他の「点」とつながっていく可能性が高まるからです。「点」と「点」が繋がり「線」を形成し、それが「面」になっていくためには、様々な志しを持った関係者の連携が必要です。「点」はそれぞれが責任を持つにしても、「線」や「面」の計画策定に多くの方たちが参加・参画することが必要です。そのような参加・参画があって(動員ではない…)初めて、それらの「線」や「面」を「自分たちのこと」・「自分たちのもの」として、責任を持って関わり支えていこうとする人びとが生まれてくるのだと思います。特定の方たちが計画して作ったものを与えられても、おそらく、そこにはちゃんとした連携は生まれません。

■さて昨日の話しの続きです。昨日は、駅ビルのリニューアルの話しの次に、駅から琵琶湖まで伸びていく中央大通りの話しになりました。大津市では、この中央大通りに沿って人が動いていくことを期待されています。中央大通りの歩道は大変立派です。かなり歩道の幅にゆとりがあるのです。例えば、この歩道に「オープンカフェ」が並ぶと、歩道は楽しみの「場」に変化していきます。大津市でも、いろいろお考えのようです。中心市街地の移動については、電動アシスト付きのレンタサイクルが利用できないかも検討されています。連休中は、その社会実証実験にも取りくまれました。昨日は、それに加えて、中心市街地を循環する公共交通機関についてもいろいろお話しをお聞かせいただきました。LRTが全国的に注目されていますが、大津の場合は導入するにもいろいろ課題があるようです。LRTが無理にしても、「街を楽しむ」ための公共交通機関が持って整備されてほしいなと思います。移動を「楽しむ」という視点も大切かと思います。

■「中央大通り」という名前についても話題になりました。端的に言えば、もっとオシャレなネーミング、印象に残るネーミングはないものだろうか、というわけです。名前を公募にしてはどうか…とか、その他にも様々なアイデアが出てきました(もちろん無責任にではありますが、いろいろ放談して楽しませていただきました)。また、スイスのレマン湖とジュネーブをイメージしながら、琵琶湖に隣接する大津の街の持つ可能性を再評価してみてはという意見もお聞かせいただきました。そういえば、大津市で毎年秋に市民の力で開催されている「大津ジャズフェスティバル」は、「世界一美しいジャズフェスティバル」を目指して運営されています。念頭にあるのはレマン湖の辺りで開催されている「モントルー・ジャズ・フェスティバル」ではないかと思います。京都や大阪と比較するのではなく、大津にしかないロケーションを意識した時、視野は世界に広がるのです。素敵ですね〜。いろんな方たちと、未来の夢を語り合っていると、身体の中から、何か力が湧いてくるような気持ちになります。楽しいひと時でした。

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