認知症の母を3年間撮り続けた写真集『DIARY 母と庭の肖像』山崎弘義さんインタビュー

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▪︎このブログで、写真家・山崎弘義さんの写真集『DIARY 母と庭の肖像』を紹介しました。「『母と庭の肖像』(山崎弘義・著、大隅書店)」というエントリーです。今日は、ご紹介するのは、その山崎さんと山崎さんの写真集をとりあけだ「認知症ONLINE」というネットの記事です。以下は、その記事からの引用です。

葛藤の連続
写真の横には、山崎さんが当時記していた日記の一文が並びます。ある日の日記にはこう記されています。

ヘルパーTさんの連絡ノートに書かれていた言葉。“トイレも自分で行かれ、家の中動き回っています。足腰丈夫になるため、よい事と思います。”今の私はそれについていけない。」

当時、家中をあちこち歩きまわる母を骨折させてはいけないと追いかけ、ティッシュペーパーを食べようとするのを止め、精神的にも、肉体的にも休めない日々が続いていた山崎さん。「ある日、喘息が出たのをきっかけに、母の足腰が一気に弱まったんです。正直、ホッとした部分もありました」本来、求めるべき親の健康を心から願えない自分自信に罪悪感があったといいます。また、別の日の日記にはこうあります。

母の行動にもついていけなくなる。3度ほど無理やり母を抱えてトイレに連れて行ったら、母は「邪険にするなよ」と泣きそうに言う。

淡々と語られる日記の一文から、当時の山崎さんの追い詰められた精神状態、それに呼応するように具合を悪くする母・いくさんの様子が伝わってきます。「在宅介護を続けようか迷う瞬間はあった」という山崎さん。それでも在宅介護を続けたのは、母・いくさんにとって山崎さんが一人息子であり、父の介護で苦労を共にした同志であり、唯一無二の存在だったことを実感していたからだといいます。

▪︎「親の健康を心から願えない自分自信に罪悪感があった」という部分、現在、介護をされている多くの皆さんは、この山崎さんのお気持ちが痛いほどよくわかるのではないかと思います。お母様から「邪険にするなよ」と泣きそうに言われたときの、とても辛い気持ちも…。インタビューで山崎さんは、「日々のやりきれない想いを、作品として消化させた」とおっしゃっています。ああ、なるほどと思いました。お母様の写真を撮ることで、意識のうえでは、息子-母親関係とは異なる関係にスライドしていくのかもしれません。いったんはスライドさせることで、介護の現場で渦巻くマイナスのスパイラルに巻き込まれず、なんかと「本来」の息子-母親関係を維持することができたのかもしれません。また、山崎さんは、「父の介護で苦労を共にした同志であり、唯一無二の存在だったことを実感していた」とも語っておられます。介護の現場で渦巻くマイナスのスパイラルに沈んでいきそうなご自身を、在宅介護にお母様と一緒に協力して取り組んだという経験を思い出すことで、なんとか「軌道修正」できたのではないか…と想像するのです。皆さんも、ぜひ、『DIARY 母と庭の肖像』をご覧ください。

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