広報龍谷「巻頭特集| 学長対談「これからの日本と大学」

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■龍谷大学の広報誌「広報龍谷」の巻頭特集| 学長対談は、鷲田清一さん(大谷大学教授・前大阪大学総長)「これからの日本と大学」です。以下は、自分用のメモのようなものです。どうか、リンクを貼った対談の方を直接お読みください。

鷲田「原発事故の後、残念ながら政府の公表するデータや発言がどんどん変わっていったり、科学者達の言うことが人によって全く違ったりするなかで、多くの人が専門家への不信感を増幅させた。これは大学に関わる者として、非常に由々しき事態だと思います。しかし、一方で、そのことによって市民達はいま、自分の生活を「自衛する」ということをはじめていますよね。」

鷲田「私学のいいところは、国立と違って、国の制度に縛られず、建学の精神に基づいて自由に特徴ある教育ができるところです。建学の精神の背景になるのは、やっぱりその大学の持つ世界観、人間観だと思うんです。生きるうえで、社会を運営していくうえで一番大事な価値って何か?私学にしばしば宗教系が多いというのは、やはり宗教をバックボーンとした人間観というものをしっかり持っているからなんですよね。」

鷲田「現場に立って、頭ではなく五感をつかって感じると、世の中には一筋縄にはいかない存在や出来事が存在するんだな、ということを理解せざるを得なくなりますよね。私達が学生だった頃は、街で暮らすなかでそういったことが経験できていたんです。」

鷲田「私が大阪大学の総長をさせていただいていたとき(2007?11年)、劇作家、看護師、コンテンポラリーダンサーなど、様々な職種の人を教員として呼んできて、正規の授業とは別に、本当に生きる力を身につけるための授業をやったんです。その人達の先導で、学校のすぐ近くの商店街の人達と協力して、一緒に映画祭をしたり、ケーキ屋さんを大学に招いてケーキの作り方を教えてもらったり。ところが学内でものすごい反対がありましてね。大阪大学が相手にするのは世界ですよ、そんなちまちましたことをやるなんて、って。でも今の学生というのは、見ず知らずの人といろいろ折衝して一から事業を立ち上げて、妥協したり、議論したりしながら一つのことを全部自分達で積み上げていくというトレーニングを全然していない。でもそういう経験が、彼らにとって本当に揉まれて生きる力を養成するんですよね。大阪大学ではその授業が本当にうまくいきまして、今では名物授業になっています。」

赤松「鷲田先生は著作のなかで、問題に直面したときにすぐ結論を出さず、それが立体的に見えてくるまで自分のなかで見極めることを『知性に肺活量をつける』という言葉で表現されていましたが、大学は、細切れの知識ではなく、そんな連結性のあるハイブリッドな知性や豊かな人間力をつける場所でありたいと思います。
 「ともにいかされているいのちに、深く目覚める」という浄土真宗の教えは、エゴイズムを超えた、普遍的な人間のありようを問い直すもの。この教えは、自己中心的な底なしの欲望を満たすことばかりを指向しながら、そのことによって苦悩を深めている現代において、時代を超えてまた人々の指針となり、あらゆる知性の源となるはずです。この教えのなかで学びの時間を過ごした龍谷大学の学生達は、批判精神を持って真理を見極め、真実に生きようとする姿勢がきっと身についていることでしょう。学生たちにとっては、厳しい時代ではありますが、必要以上に悲観することなく、自らの進むべき航路を切り開いていって欲しいですね。」

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