岸由ニさんの本

20131127kishi.jpg ■amazonから、岸由ニさんの本が2冊届きました。『「流域地図の」作り方』(2013年)と『奇跡の自然』(2012年)です。前者の「まえがき」には、こう書いてあります。「地球という生命圏のリアルな姿をすっかり忘れた産業文明の私たちが、大地の凸凹と循環する水とのにぎわう生きものたちでできている生命圏を再発見し、その聞きに足元から付き合いなおし、温暖化や生物多様性危機で大変貌していく地域に再適応していくために必要な足元の大地の凸凹性を再獲得するための入門書」。再適応し再獲得するためのとっかかりの方法が「流域地図」なのです。もし、流域環境学について考える実習のような授業があるのならば、学生と一緒に取り組んでみたいと思いますし、現在、流域環境学の大きなプロジェクトにも取組み始めたところなので(大学共同利用機関法人人間文化機構「総合地球環境学研究所」のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態システムの健全性」)、流域にお住まいの皆さんと一緒にやってみたいなとも思いました。

■もう1冊、『奇跡の自然』は、サブタイトルが「三浦半島小網代の谷を『流域思考』で守る」…になっています。小網代の谷とは、神奈川県の三浦半島の、浦の川理由行きと河口干潟からなるコンパクトな流域です。1980年代ゴルフ場開発計画がこの地域に浮上しましたが、市民運動によって守られました。岸さんは、「まえがき」にはこう書いておられます。「森と干潟と海をつなぐ小網代流域生態系の、ダイヤモンドの原石のような奇跡的な価値を感じていただき、また、四半世紀をすでに大きく超えた小網代保全の歴史と工夫と、なお未来につづく多様な課題を知っていただけたら」。第三部は、養老孟司さんとの対談にもなっています。

■まだ、届いたばかりで2冊とも「まえがき」しか読んでいませんが、ちょっとワクワクしています。岸さんとは面識がある…というわけではありません。40歳になった頃、私は、日本学術振興会「未来開拓学術研究推進事業」「アジア地域の環境保全」のなかの、流域管理をテーマにしたプロジェクトに参加しました。京都大学生態学研究センターの和田英太郎先生を代表とするプロジェクトです。このプロジェクトに参加して以来、私は、住民参加・参画をベースにした文理融合的な「流域管理論」、そして最近ではトランス ・ディシプリナリーと呼ぶような「流域環境学」の構築を目指して研究に取り組んでいます。私が「流域管理論」や「流域環境学」に取り組み始めた当時、岸由ニさんには、プロジェクトに対して直接的にいろいろご意見やアドバイスをいただきました(ご本人はお忘れでしょうが)。「めっちゃ、面白い人や!」とも思いました。プロジェクトを進めることは非常に大変でしたが、お話しをさせていただき、元気が出てきたことを記憶しています。

■今回も、岸さんの本から元気とともに、これから取り組む「流域環境学」のプロジェクトにつながるヒントをいただこうと思います。

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