琵琶湖の水草問題に取り組むプロジェクト(その4)

■今日は、水草問題プロジェクトの関連で、滋賀県庁琵琶湖環境部自然保護課の中井克樹さんに教えを請うために伺いました。中井さんの「本業」は、滋賀県立琵琶湖博物館の専門学芸員です。私もかつて滋賀県立琵琶湖博物館に勤務していましたので、かつての同僚ということになります。中井さんは学芸員として勤務されていますが、外来生物の問題で全国的に活躍されています。ということで、滋賀県庁の琵琶湖環境部自然保護課の仕事も兼務されています。この日は、中井さんに、水草に混じってくる外来植物の取り扱いについて相談に行きました。

■沈水植物である水草と、オオバナミズキンバイやナガエツルノゲイトウのような外来水性植物は生息している場所が違うので、通常は混じることは考えられませんが、漂着する水草の中に混じっている可能性、そのリスクを見極めなければならないというのが中井さんのご意見でした。実際のところ、混入した外来植物を取り除くことは不可能です。水草は乾燥させると最後は分解していきますが、外来植物であるオオバナミズキンバイは種も作りますし、水草と比較してかなり丈夫です。またオオバナミズキンバイとナガエツルノゲイトウは乾燥しても普通に陸上で増えていきます。水中ほどの増え方ではありませんが、それでも増えます。ただし、通常から気をつけておいて引っこ抜いて適切に処理すれば問題は無くなります。もっとも、これらの外来水性植物が農地に入ると、根が深くのびて太くなってしまうようです。中井さんのお話しでは、ナガエツルノゲイトウは地下茎が生姜のように延びてしまうのだそうです。それらが、農地を耕す際に細かく切れて水路に入って流れていくと、小河川や琵琶湖での外来植物が繁殖してしまう可能性があります。なかなか難しいですね。しかし、水路や河川、琵琶湖とは離れていて、例えば学校・幼稚園・保育園などの花壇、公園の花壇、街路樹の根本の花壇のように、しっかり関係者が管理して引っこ抜くのであれば、それほどの心配は無くなります。中井さんからそのようなアドバイスをいただき、少し安心しました。

■関係者と今立ち上げようとしているプロジェクトでは、琵琶湖の有効利用されていない水草問題を、南湖に繁茂する水草と、浜に漂着する水草に分けて考えています。前者は、滋賀県によって刈り取りの努力がなされています。後者は、腐敗して悪臭を発生させます。迷惑問題です。その浜に漂着する水草を腐敗しないように引き上げて、乾燥させ、地域の関係者の協働により、学校・幼稚園・保育園などの花壇、公園の花壇、街路樹の根本の花壇等で有効利用することができればなあと思うわけです。漂着した水草を有効利用することは、地域社会の中に「小さな循環」の仕組みを作り上げるとにもなります。このような地域社会内部での小さな循環は、物質循環的にも理にかなっています。それだけでなく、身近な自然環境である砂浜や琵琶湖の環境に関心を持つことや、環境教育や地域住民の琵琶湖への関心の喚起にも繋がるのではないかと思います。漂着した水草の有効利用に加えて、そのような「小さな循環」の仕組みの中には、たくさんの社会的な意味が発生してきます。

■プロジェクトでは、浜に打ち上げられた水草の地域社会内での有効利用に関する「小さな循環」仕組みとともに、県が刈り取っている南湖の湖底に生えている水草をどのように有効利用していくのかという「大きな循環」の仕組みも必要だと考えています。「大きな循環」の仕組みについては、まだ具体的なアイデアはありませんが、琵琶湖の環境問題のために何か取り組みたいとお考えの様々な企業の方達から、また水草をこういう風にしたらみんなで楽しみながら有効利用できるのにといった消費者目線からのアイデアをお持ちの個人まで、様々な立場の方達、通常ではかなかなか出会うことのない方達が、このプロジェクトの中で出会い、それぞれの方達の持ち味が活かされる横の連携が生まれたら素敵だな〜と思っています。

■短い時間でしたが、中井さんからはいろいろご教示をいただくとともに、私たちのプロジェクトの考えに共感していただくことができました。ありがとうございました。私たちのプロジェクトは、始まったばかりのヨチヨチ歩きの状況ですが、何か希望が少しずつ見えてきました。琵琶湖のことをいろいろ心配されてはいても、通常ではかなかなか出会うことのない方達が、このプロジェクトの中で出会い、それぞれの方達の持ち味が活かされる横の連携が生まれたら素敵やな〜と思っています。

伊香立学区自治連合会50周年記念事業「結ぼう伊香立、つなごう未来へ!〜2017 香の里オータムフェスティバル〜」

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■日曜日、大津市の伊香立学区自治連合会50周年記念事業「結ぼう伊香立、つなごう未来へ!〜2017 香の里オータムフェスティバル〜」を見学させていただきました。こちらの伊香立とは、不思議なご縁で結ばれています。

■昨年、大津市都市計画マスタープラン関連のシンポジウムでちょっと講演をさせてもらったところ、伊香立の皆さんから、学区の研修会でも講演をして欲しいとご依頼をいただきました。というわけで、今年の1月に伊香立でお話しをさせていただきました。その時のことは、「大津市伊香立で研修会」をお読みください。その後は、伊香立の地域づくりに関して聞き取りをさせていただくこともできました。その聞き取りをもとに、公益財団法人滋賀県人権センターの『じんけん』という冊子に「『人口減少社会』時代における共助の力」という短い文章を掲載していただきました。この文章の中で、伊香立の地域づくりの取り組みについて紹介させていただくことができました。あちこちでお読みいただいているようで、「読みましたよ」と声をかけていただくことが度々あります。伊香立の皆さんにもお読みいただけたようで、とても喜んでいただけました。ありがたいことですね。

■さて、「結ぼう伊香立、つなごう未来へ!〜2017 香の里オータムフェスティバル〜」ですが、会場の伊香立公園の運動場には、ステージが組み立てられ、その周りではたくさんの飲食のテントも張られていました。そして学区の皆さんを中心に、2500名以上の方達がお集まりになっていました。なぜ、これだけの皆さんが集まられたのかといえば、伊香立学区自治連合会50周年記念事業の一環として、ギネス世界記録「最も長いおにぎりの列」(Longest line of rice balls)が挑戦するためです。おにぎりを握るために用意されたのは、地元の小中学生の皆さんが地域の水田で育てたお米です。約180キロだったそうです。

■参加された皆さんは、1人100グラムのお米で1個のおにぎりを握ります。ギネスにはルールがあるらしく直径10センチ以下になるように丸く握ることになっています。そうやって厳密に作られたおにぎりを隙間ができないように細心の注意を払いながら並べていくのです。伊香立公園は大きく立派な公園ですが、それでも2500人もの人たちが一度におにぎりを握るスペースはありません。そこで、学区内の自治会ごとに順番に握って、長机を並べた長い長い台の上に並べていったのです。並べられたおにぎりを、ギネス世界記録の公式認定員の方が厳密に一つ一つおにぎりをチェックして審査されました。その審査の過程を同じように証人として同行される方達もおられました。テープが張られ、地域の方達は審査中は近寄ることもできませんでした。非常に厳密なのです。そのような審査の結果、並べられたおにぎりの長さは132.24mであることがわかりました。ギネス世界記録が樹立しました。素晴らしい!!
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■このギネス記録に挑戦するイベントが始まる時に、1人のお若い女性が挨拶に来てくださいました。社会学部の地域連携型教育プログム「大津エンパワねっと」を修了し、社会学部を卒業後は、滋賀県庁に勤務されているKさんです。伊香立は、Kさんの地元なのです。この日、2500人の参加者の1人としておにぎりを握られたようです。

■ところで、今年の1月に伊香立に講演した時に、すでにおにぎりでギネス記録に挑戦しようという企画が生まれつつありました。その企画を膨らませながら、今回のイベントに成長していったとのことでした。しかも、私が伊香立でお話しさせていただいたことが、ヒントになっているということもお聞かせいただきました。研究者としては、とても嬉しいことですね。ありがたいことです。これからも、伊香立の地域づくりに注目していきたいと思います。伊香立の皆さま、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
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21km走

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20171112run6.jpg■今年度は国内長期研究員ということで、授業と会議の類がありません。若い学生の皆さんとお話しをする時間が全くありません。特に、それが寂しいとか、そんなことは全く感じていませんでしたが、昨日は、偶然に学生の皆さんとお話しをさせていただくことになりました。先週の金曜日は、来年度、「大津エンパワねっと」を再び担当するということもあって、国内長期研究員ではありますが、担当者の打ち合わせの会議に出席しました。その会議が終わった後、「大津エンパワねっと」も含めた社会学部の社会共生実習を履修する学生さんたちが使用する社会共生実習支援室に立ち寄りました。龍谷大学瀬田キャンパスの6号館にあります。

■たまたま、私が支援室に入った時に、コミュニティマネジメント学科の笠井先生が授業をされていました。笠井先生が学生の皆さんに私を紹介してくださったこともあり、少しの時間ですが、いろいろ学生の皆さんとお話しすることができました。なんだか、新鮮な気持ちになりました。どうしてこの部屋に立ち寄ったかというと、来年からの「大津エンパワねっと」の授業に備えて、少し「現場の空気」を吸っておきたいと思ったからでした。「大津エンバワねっと」は始まってから10年ほどの年月がたちました。いろいろ考え直さないといけないことがあります。地域の皆さんと相談しながら、新しい「大津エンパワねっと」に脱皮したいと思います。

■午後からは帰宅しました。練習が足りていないので、走ることにしました。この日は、アップダウンのあるコースで21kmを走ることにしました。ハーフマラソンの距離ということになります。とはいっても、LSD(Long Slow Distance)トレーニングなので、ゆっくり目のスピードで走りました。上り坂など、「トホホなスピード」でした。トホホなところがあっても、「いつかこんなアップダウンのある丘陵地のコースを走ることができたらいいなぁ…」と思っていたので、とても満足しました。おごと温泉駅から仰木、伊香立まで登り、伊香立中学のあたりから一気に下り、そのまま琵琶湖大橋を渡って帰ってくる往復。その後は、堅田。…と地名を並べても全然わかりませんよね。アプリの画像で緑の線が高度です。一番ピークは9kmのあたり、そこから琵琶湖に向かって一気に下ります。その先は、琵琶湖大橋。ちょっとだけ高くなっていますが、これは琵琶湖大橋の一番高いところ。こういうのって面白いですね。この日は、ランニングの後に、ちょっと疲れが残ってしまいました。練習が足りていません。

「びわ100」の打ち上げ。

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■先週の金曜日のことになりますが、「びわ湖チャリティー100km歩行大会」に参加(完歩)した滋賀県庁農政水産部の職員の皆さんから、来年は「リベンジするぞ(今年は完歩できなかったけれど…)」とか「来年こそは参加するぞ」という職員の皆さんまで含めて「打上げ」が行われました‼︎ 場所は、大津駅前のいつもの居酒屋「利やん」の別館です。この農政水産課の皆さんとは世界農業遺産申請の作業のアドバイザーをさせていただいていることから、親しくさせていただいています。ということで、昨年も「びわ湖チャリティー100km歩行大会」に職員の皆さんと参加しました。

■苦しい100kmを歩き通した「仲間」ということで、宴会はものすごく盛り上がりました。あまりに声が大きいので、前に座っておられた方との会話ができないくらい。「びわ100」のことではありましたが、いろいろ別の案件でも相談をさせていただきました。ありがとうございました。あれだけ苦しんだのに、おそらく来年もこの皆さんと一緒に琵琶湖の湖岸を苦しみながら歩いていることでしょう。

■打ち上げの後ですが、「利やん」の別館から本館へ移動しました。マスターにお礼を言うためです。そうすると、琵琶湖汽船の社長さんがおられました。時々、「利やん」でお会いするのです。社長さんとは、琵琶湖の水草問題のプロジェクトのことでいろいろお話市をさせていただきました。気合いを入れていただきました!気合いをいただきすぎたせいか、帰りの電車(最終)で乗り過ごしてしまいました。気がついて降りたのは、湖西線のタクシーも無い駅。仕方がないので家に電話をして迎えに来てもらうことになりました。ちなみに、今回が「初犯」です。2度目は、許されないだろうな。

「大津市協働提案制度 テーマ型提案事業」の中間報告会

■昨日は、「大津市協働提案制度 テーマ型提案事業」の中間報告会でした。全部で、8つの協働提案事業の中間報告をお聞かせいただきました。事業の実施形態の内訳ですが、実行委員会形式が1つ、共済が3つ、補助が3つ、人的・物的支援が1つでした。人口減少社会が到来し、これからはますます協働が求められることになるように思います。昨日の発表会の後にお話しさせていただいたことです。メモとして残しておきます。

【発見を活かす】
■協働事業の途中で様々な発見や気づきがあったことと思いますが、それを事業計画の見直しや来年度の事業に活かして行って欲しいと思いました。

【仲間を増やす】
■事業のサービスの受け手であった方達が、途中から、その事業に参加・参画していくような方法を見つけ出してください。

【協働の深化】
■事業形態は違うけれど、協働により事業を進捗させていく際に課題や障害が発生します。それらを乗り越えるときに、協働は深化していくのではないでしょうか。限れられた予算の持つ価値を、協働を深化させ、汗と知恵によって何倍もの価値にしていけたら素敵だなと思います。これからの時代、協働を進めていくことは、行政職員にとって大変必要とされる能力になるはずです。そのような協働を市民と一緒に、どのようにデザインして育んでいくのか、とてもやりがいのあることだと思います。

【成果の見える化】
■事業の成果ができるだけ、多くの人にも理解できるように、具体的な根拠をあげて自己評価していただきたいとも思いました。
「大きな志しの元で」。事業にはそれぞれ取り組みの目的があるわけですが、それらの目的を、さらに大きな志しの元に位置付け直してみると良いのではないかと思います。自分たちは何のために取り組んでいるのかが、より明確になります。

故・舩橋晴俊先生のコメント

20171108yachi.jpg■昨日は、総合地球環境学研究所のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」の研究仲間である京大生態学研究センターの谷内茂雄さんの研究室を訪問しました。研究プロジェクトの屋台骨の論理の枠組みを再確認するとともに、ちょっとネックになっていると思われるところをどのようにカバーするのか…そんなことでディスカッションするために伺いましたて。谷内さんは生態学者、数理生態学者ですが、時々、こうやってお互いにディスカッションをしています。この日のディスカッションは、先日、プロジェクトの会議に提案した、プロジェクトの成果をまとめる和書の目次構成に従って行いました。

■ディスカッションのポイントのひとつは、谷内さんと一緒に取り組んだ地球研のプロジェクトの成果『流域環境学-流域ガバナンスの理論と実践-』(京都大学術出版会)の時代から継続していることでもあります。それは流域のもつ階層性、階層間のギャッブ、空間スケール間に発生する問題群です。『流域環境学』では農業濁水を通して、そのような問題について取り組みましたが、今回は生物多様性ということになります。この空間スケールの問題、スケールミスマッチは生態学的にも重要な問題のようです。

■谷内さんとディスカッションしていた時、ふと以前、以前のプロジェクトで実施したコメントワークショプのことを思い出しましたた。以前のプロジェクト「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」のコメントワークショップは、もう11年前のことなります。このワークショップに、コメンテータのお一人として法政大学の故・舩橋晴俊先生にご出席いただきました。舩橋先生のご専門は、私と同じ環境社会学です。舩橋先生にコメンテータをお願いをしたのは、舩橋先生のご研究からいろいろヒントをいただていたからです。先生からは、私たちの研究プロジェクトの持つ研究の実践性、問題解決志向性、文理連携のあり方や意味をきちんとご理解いただいた上で評価していただきました。ありがたかったです。その上で、舩橋先生の環境制御システム論から鋭いご指摘もいただきました。そのご指摘に、その時は、必ずしもきちんと答えられていなかったように思います。

■舩橋先生のご研究は、「環境制御システム論」という独自の社会システム論的アプローチからのものでした。常に、問題解決を志向されていた。批判的な分析だけではなく(このような研究はよくありますが…)、解決に至る道筋をきちんと示そうとされていた。私は、舩橋先生に指導を受けたわけではありませんが、そのような先生の研究の姿勢に、常に強く共感していました。

■昨日は、谷内さんの研究室に残っていたこのコメントワークショップの報告書を1部いただき、舩橋先生のコメントを再読しました。もし舩橋先生がご健在だったら、生物多様性に注目した現在のプロジェクトをどのように評価されるだろうか…そのようなことを想像しながら読み直してみました。あれから11年が経っているわけですが、「道 ぼちぼち歩む 自分の人生かみしめながら」だな〜、やっぱり…と思ってしまいます。

琵琶湖の水草問題に取り組むプロジェクト(その3)

■昨日は、時間を見つけて走りました。一昨日は、時間もあり余裕を持ってのランでした。結果として、自分でも納得がいくランができました。調子が良かったのです。しかし昨日は時間がないのでと飛ばしすぎて、最後は「自滅」してしまいました。6km程度でランを中止することになりました。まあ、こんなこともありますよね。

■ランの後、大津の街に出かけました。昨日の夕方ですが、琵琶湖南湖の水草問題に取り組もうという有志の皆さんに、大津市内の某所⁈にお集まりいただきました。水草は砂浜に打ち寄せられて水に使ったままになっていると、腐敗して悪臭を発します。市役所には、「なんとかしろ」との苦情の電話がかかってくるそうです。市役所も、人を派遣してその水草を除去して焼却処分しています。もちろん、必要な費用の出所は税金です。悪臭がしないようにするためには、水際に漂着した水草を水から取り出して乾燥させる必要があります。手間もかかるのです。

■県庁は3億円程の費用を使って南湖の水草を刈り取っています。こちらが「琵琶湖の環境問題」の1つだとすれば、打ち上げられ悪臭を発する水草の問題は「琵琶湖の迷惑問題」になります。そのまま水際に放置すれば悪臭問題になってしまうわけですが、それをなんとか資源として有効利用できないか…。昨日の夕方お集まりいただいた皆さんの思いはその点にあ利ました。

■水草が打ち上げられる砂浜の直近にお住まいの方、そこで会社を経営されている方、本業のお仕事のなかで水草や草木の剪定したものを使い肥料にして配布されている公益財団法人の方…。皆さん、水草で困っておられたり、なんとかしなくちゃと考えておられたりしている方達。「餅は餅屋」と言いますが、いろんな現場のプロの知恵と力、加えてそこに地域の皆さんの協力があると、打ち上げられた水草の有効利用ができそうな感じがしてきました。水分を含んだ水草は重いです。それを簡単に除去する道具が、現場の知恵の中から発明されています。水草と草木の剪定したものを使うと良い肥料ができるのだそうです。ただし、発酵させるのに少し技術がいります。また、水草に混じっているゴミを取り除かねばならなりません。そこには手間もかかります。水草に混じっているオオバナミズキンバイ等の外来植物が混じっている場合の扱いをどうするのか、ということもあります。

■多額のお金をかけるのではなく、複数の現場の知恵と人びとがつながることのなかで、小さな資源利用の仕組みを立ち上げ、関わってくださる皆さんの、現場での発見によって少しずつ改良しながら成長させていければ素敵だなと思います。

YouTube動画「罠師・片桐邦雄 2017」

■少し前のことになりますが、東近江市の若い皆さんが取り組んでおられる「SHARE WILD PROJECT」ことを紹介しました(「SHARE WILD PROJECT」という試み)。「SHARE WILD PROJECT」の活動について知ることで、獣害防止のもとで駆除されて、そのあとは廃棄されたままになっている鹿の命、そして命を大切に「いただく」ことの大切な意味を考えることになりました。

20171107katagiri.png■そのようなことと関連する動画を見つけました。動画の説明は、「2017年10月25日に静岡市民文化会館で行われた「片桐邦雄・罠猟の極意と山や川の現在」講演会用に作成した紹介動画」となっています。片桐邦雄さんは、静岡県で現役の罠猟師で、ご自身で野性獣の肉を調理して出すお店も経営されているようです。動画の内容は、罠で獣を捉えるところがあります。人によっては、見ることが辛いかもしれせんが、片桐さんは非常に大切なことを述べておられます。YouTubeの動画は埋め込むことができないようになっていました。以下をクリックしてご覧いただければと思います。

片桐邦雄・罠猟の極意と山や川の現在

琵琶湖の水草問題に取り組むプロジェクト(その2)

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■先月の22日に「びわ100」を完歩しました。その余韻にまだ浸っている翌日の朝、台風の被害のニュースを確認しました。ご近所でも、庭に置いてあった物置が飛ばされるような事故もおきていました。今回の台風、風がものすごく強かったですよね。facebookでも、大津市・真野浜で民宿を経営されている山田さんの投稿を読んでびっくりしました。大量の水草が浜に打ち上げられている状況を報告されていたからです。

■ということで、その日の午前中に真野浜を訪問し、山田さんにお会いしてきました。山田さんのお話しでは、大津市が、この水草の撤去に協力するとのことでした。しかし、市の作業が始まるのは少し先になるからと、まずは経営されている民宿のエリアから熊手で水草を集める作業をされていました。かなり陸地の方まで水草が打ち上げられていました。それだけ台風の風が強かったということですね。民宿のある敷地の松の木も一部折れてしまっていました。

■私が訪問した時、山田さんがお一人で、熊手を使いながら水草を集めておられました。その際、混じっているブラスチックを除いておられました。水草の塊に、ヨシ(葦)が混じって絡まっていると、塊になって、重く、作業がしにくいとのことでした。通常、台風がきたあとは、まずは水草が打ち上げられるわけですが(今回は、半端ではない量の水草が打ち上げられています)、この数日後、河川から琵琶湖に流れ込んだプラスチックゴミが打ち上げられてくるのだそうです。問題は水草だけではないのですね(以前と比較して、プラゴミは随分減ってきているそうです)。

■以前の投稿にも書きましたが、琵琶湖から浜まで一体のものとして考えることが、浜の保全という視点からは合理的かと思うのですが、法律上はそうなっていません。琵琶湖の中は滋賀県、水際は大津市、その先の陸地側の浜は地主さんと、その責任を負うべき範囲が区切られているからです。今日、山田さんとは、そのような所有に関わる法律的な制度とは別に、もっとこの浜が多くの人に「自分たちの浜」として利活用されたらいいな、活用しているから「自分たちの浜」として大切に保全しようと思う人が増えたらいいのにね…という話しになりました。公有・私有と制度的に区分された琵琶湖から浜へと続く一帯の場所の上に、「みんなの浜」という感覚が醸成されると素敵ですね。あえて言えば、小さな「コモンズの創造」ということになります。

20171104mizukusa4.jpg■以上の琵琶湖の南湖の水草問題ですが、正確には、「刈り取った/流れ着いた水草を有効利用できていない問題」といった方がより正確かもしれません。南湖の水草の異常繁茂しないように、経験的かつ科学的に適切と考えられる範囲に抑えることが重要になるのでしょうが、湖の中の環境を人間の意図通りにコントロールすることは大変困難なことです。天候(日照)、河川から流入する水量、湖水の透明度、それから生態系の微妙なバランス…いろんなことが関連しているからです。

■今すぐできることは、「刈り取った/流れ着いた水草を有効利用できていない」状況を変えていくことではないでしょうか。流れ着いた水草については、地域社会の中に、水草有効利用のための「小さな社会的な仕組み」を作っていくことが大切なるでしょう。真野浜で民宿を経営されている山田さんも、近所の家庭菜園やガーデニング、学校・幼稚園・保育園の花壇等で、流れ着いた水草が土壌改良剤として利用してもらえないかと常々考えておられます。現状は焼却処分にされています。ちょっとした工夫で、みんなで協力して少しずつ汗をかくことで、小さな顔の見える信頼関係のネットワークが生まれ、そのネットワークを土台とした「小さな社会的な仕組み」が動くことで、水草が有効利用されていくことが望ましいと思います。

■一方、刈り取った水草。これは南湖に異常繁茂した水草を滋賀県が巨額の費用をかけて刈り取ったものです。しかし、巨額の費用をかけてもその一部しか刈り取ることができません。ちなみに刈り取った水草は、自然乾燥・発酵させて、希望者に無料配布されています。しかし、あまりそのことが知られていません。このような刈り取った水草の有効利用の場合は、地域社会の顔の見える信頼関係だけでは解決していくことが難しくなります。企業や様々な団体も参加する、「大きな社会的な仕組み」を構築して有効利用していく必要があるのではないでしょうか。その場合も、できれば、そのような社会的な仕組みの中で南湖の水草を刈り取るための費用が、少しでも生まれてくると良いのになあと思います。

■ところで、先日、ある企業の社長さんに、この水草問題のことをご相談をしてきました。大変力強いお言葉を頂いくことができました。様々なセクター、業界を超えたつながりの中で、水草が有効利用される仕組みが生まれ、そこに社会的な意味や物語が付加され、地域社会のなかで有効性感覚が醸成されていくこと…それが単なる夢ではなくて実現できるのではという気になってきました。大きな目標を共有させていただき、写真の青空のような気分になりました。

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■一昨日の話しになります。午前中は、大津市役所で「協働」と「オープンガバナンス」、この両方の問題を別々の部署の職員さんと相談をしました。大津市でこれまで取り組んできた「協働」に関する蓄積と、新しい概念である「オープンガバナンス」とは、多くのところで重なり合っているはずです。大津らしいオープンガバナンスの取り組みができるはずだ。これは楽しみになってきたな〜と思っています。「協働」と「オープンガバナンス」が、南湖の水草問題とどう関係しているのか、いつかこのブログでご報告ができるようになると思います。

■午後は、草津市へ移動しました。草津市の「アーバンデザインセンターびわこ・くさつ」で、総合地球環境学研究所のプロジェクト関連の座談会に参加しました。「びわこと暮らしに関する座談会」というワークショップです。これも水草問題関連のものです。「くさつ未来プロジェクト」の皆さん、滋賀県琵琶湖政策課、草津市環境課、草津未来研究所、守山市環境政策課の皆さんが参加されました。ファシリテーターは、加納圭さん(滋賀大学)と近藤康久さん(地球研)です。琵琶湖の良いところと困ったところという切り口から、最後は、水草問題についても皆さんと語り合いました。若いお母さんたちのパワーと発想の自由さに圧倒されました。琵琶湖南湖の水草の有効利用に関しても、おもしろいアイデアをいただきました。

■このような水草の問題は、広い意味で、地域内の資源循環システムをどのように構築していくのかという問題の一つになります。手探りですが、頑張って取り組んでいきます。

東京・千葉

■この2週間、ブログを全く更新できていません。ご覧くださっている皆さん、申し訳ありませんでした。おでんと「びわ100」の次は、東京・千葉に行って来た時のことです。
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■先月の24日、東京に行ってきました。東京駅について、まずしたこと。それは、丸の内の地下街にある「インデアンカレー」に行って昼食を摂ることでした。「インデアンカレー」は関西が本場。以前は、老母の介護のために大阪の街をよく通過していたこともあり、度々、「インデアンカレー」を楽しんでいましたが、老母が滋賀県の老人ホームに移ってからは、あまり大阪に行く用事がなくなり、ついでに「インデアンカレー」を楽しむチャンスもなくなってしまいまっていたのです。甘くて辛い「インデアンカレー」堪能しました。

■「インデアンカレー」の後は、丸ビルの中にある、日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館が協働で運営をおこなう公共貢献施設「インターメディアテク」を見学しました。この「インターメディアテク」には、東京大学が明治1877年の創学以来、「蓄積に蓄積を重ねてきた学術文化財」が常設されています。展示に用いられているケースやキャビネットは、その多くが教育研究の現場で実際に使われていたものなのだそうです。実際に見学した時の印象ですが、内部は「博物学」という言葉がぴったりの雰囲気でした。しかし、この施設の狙いは、「博物学の全盛期であった19世紀から高度情報化を実現した21世紀まで、三世紀にまたがる時代を架橋すること」にあるのだそうです。東京駅のあたりで時間があるときには、見学されることをお勧めします。

■ところで、なぜ東京に行ったのか…なんですが。もちろん、「インデアンカレー」ほ食べるためではありません。目的は、2つありました。ひとつめは、先日開催された研究集会「持続可能な暮らしを求めてー地方創生時代の地域コミュニティ・観光・地域資源管理を考える」でお会いした、日本獣医生命科学大学に桑原考史さんからいろいろご教示いただくことです。桑原さんからは、農業経済学分野の生物多様性と農業、環境保全型農業に関する研究動向に関して有益な情報を提供していただくことができました。どうしてこのような関心を持っているのかといえば、滋賀県で展開されている琵琶湖の「魚のゆりかご水田」プロジェクトを、もっと広い「野生動物と農業」という文脈の中に位置付けてみたいからなのです。近いうちに桑原さんを、滋賀の「魚のゆりかご水田」の現場にご案内することになるだろうと思います。また、来月は、対馬に行く予定です。ツシマヤマネコと農業との関係に注目してお話しを伺ってくる予定です。これが、ひとつめの目的です。もうひとつの目的は、千葉の佐倉で開催されている国立歴史民俗博物館の企画展「『1968年』無数の問いの噴出の時代」をみることです。こちらは、歴史社会学的な関心からということになりますが、戦後の社会運動が1968年前後でどのように変化しているのか、そのあたりに強い関心を持ったのです。

20171104tokyo5.jpg■桑原さんから、彼の勤務先である日本獣医生命科学大学でいろいろご教示いただいた後、千葉県に向かいました。せっかく東京に出張したのだからと、晩は、大学オーケストラ時代の後輩と、32年ぶりに会うことにしたのです。小木曽亜土くんです。私が4年生の時の1年生。小木曽くんはホルンを吹いていました。私は楽器の演奏をやめてしまいましたが、小木曽くんは、今でも市民オーケストラで活躍されています。fbで数年前にネット上の再会をしていましたから、今の様子は分かっていました。今は貫禄のあるナイスミドルです。しかし、学生時代はとても細身のおしゃれな学生でした。小木曽くんとは、学生時代の昔話しをしたのはもちろんのことですが、彼の会社のこと、仕事のこと、ご家庭のこと、いろいろお話しを聞かせていただきました。考えてみれば、現役時代、小木曽くんとあまり話しをした記憶がありません。オーケストラということで人数も多いし…。小木曽くんの人柄を知ったのは、むしろfbで再会してからのことかもしれません。彼と再会した場所は、小木曽くん行きつけの市原市のお店です。以前から、小木曽くんのfbにしばしば登場しているお店で、このお店で小木曽くんとぜひとも飲みたかったのです。想像していた通りの素敵なお店でした。今度は、小木曽くんを関西で迎えなければと思っています。

20171104tokyo6.png■大学時代の後輩と32年ぶりに再会した翌日は、千葉県佐倉市にある国立大歴史民俗博物館の企画展「『1968年』-無数の問いの噴出の時代-」を観てきました。企画展の背後には、1960年代後半は「日本の社会運動が、それまでの組織的な問題設定・問題解決の方式から、『個』の主体性を重視する特徴を強く顕し始める転換期」との問題意識があるようです。企画展の前半では、北九州小倉の山田弾薬庫、神戸港第六突堤、湊川高校の「あらかべ」、兵高全学共同闘争会議関連の資料が展示されていました。いずれも自分が少年時代を過ごした地方都市に関係していました。ちなみに「兵高」とは、兵庫県立兵庫高等学校のことです。私の母校になります。そして、湊川高高校は母校と同じ校舎の定時制高校です。戦後日本社会という歴史的な括りが今でも通用するのかどうか私にはよくわからないのですが、今、自分が生きている「現在」までの「来し方」を知る上でとても優れた企画展のように思いました。限られた時間で、大量の展示資料の一つ一つを確認していくことはできませんでした。というわけで、図録を購入。企画展を反芻しながらじっくり読もうと思っています。まあ、こういう企画に心惹かれるのは、自分自身の人生がすでに「歴史化」しているからだろうな…と思っています。

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