遠藤 芳英さんの投稿

▪️世界農業遺産の国際シンポジウムが東京で開催されたときに、私は滋賀県の琵琶湖システムのことについて滋賀県庁の職員の方と一緒に報告を行いました。その時に大変お世話になった方が、FAO(国際連合食糧農業期間)に勤務されていた遠藤芳英さんです。現在、遠藤さんはFAOを退職されて日本に帰国されていますが、facebookでつながっています。今回の遠藤さんの投稿は、すべての方達に公開になっているのでここに転載させていただきます。

ホルムズ海峡閉鎖で、肥料、特に窒素系肥料の供給への影響が懸念されてます。サウジ、カタールなどは圧倒的な天然ガス価格の安さで窒素肥料を製造・輸出しており、その供給に支障が発生するとのの懸念です。IFPRIという国際的な農業研究所の報道によると、ある試算では、肥料供給の3分の1に影響が及ぶとのこと。
The Iran war: Potential food security impacts

アメリカでも、農業団体が肥料価格への影響を懸念しており、トランプ大統領に対策を要請する書簡を送ったようです。
トランプ大統領に対策を要請する書簡
肥料や農業で使われる石油関連商品の費用高騰が、農家経営を圧迫するため、トランプ大統領に対策を要請してます。                          
こうした肥料供給の不安定化は、特に肥料の大輸入国のインドやブラジルに影響するといわれており、世界の食料供給にもその余波がくると言われてます。日本も再び食品価格の上昇に見舞われるという嬉しくない予想が太宗です。早く事態の鎮静してもらいたいものです。イタリアから帰国以来、食品価格の高騰ぶりには驚きの連続です。

▪️この遠藤さんの投稿を拝読する少しまえに、「中東情勢混乱でロシアはクーデター懸念、カタールのLNG生産停止は世界に影響」という「Forbes Japan」記事を読んでいました。前半の「ロシアはクーデター懸念」についてはここでは横に置いておいて、後半の「カタールのLNG生産停止は世界に影響」に注目しました。自分の無知を恥じないといけません。というのも、天然ガス(LNG)と肥料の関係について何も知らなかったからです。カタールの豊富な天然ガスから肥料(特に窒素肥料)が生産できるのは、天然ガスの主成分である「メタン」が、肥料の核となる「アンモニア」の原料になるからなのだそうです。

▪️天然ガスを高温のスチームと反応させることで、メタンに含まれる水素を取り出すのです。天然ガスをエネルギー源として使うわけではないのです。「水素の供給源」として利用しているのです。取り出した水素と、空気中から取り出した窒素を高温・高圧下で反応させ、アンモニアを合成し、合成されたアンモニアをさらに天然ガスの処理過程で発生する二酸化炭素と反応させて、窒素肥料の一種である尿素を生産するのです。天然ガスの巨大なガス田の近くに大規模な化学プラントを建設して、採掘から肥料製造までを効率的に行い、カタールは世界有数の肥料輸出拠点となっているそうなのです。中東の戦争が、世界中の食糧問題に直結しているのですね。無知は恥ずかしいを通り越して、恐ろしいことなのだと思うようなりました。

▪️もちろん、天然ガスだけでなく原油が不足すると、ガソリンだけの問題ではありません。原油から精製されるナフサは、プラスチック、合成繊維、ゴムなどの主原料です。身の回りを見回してみてください。あらゆるところにプラスチックが使用されています。ペットボトル、食品容器、レジ袋、家電やスマートフォンの筐体、自動車の部品…。それから、ポリエステルやナイロンといった合成繊維が作れなくなるので、衣類の供給が激減します。洗剤、化粧品、塗料、接着剤なども石油由来の成分に依存しているので、供給がストップします。

▪️医療現場で使用される注射器、点滴袋、カテーテルなどはすべてプラスチックです。防護服、マスク、手袋などもナフサを使っています。ナフサは多くの薬の「成分(原薬)」を作るための原料になります。ナフサが製造できないと医療が崩壊してしまいます。これらの医療関係の製品の値段が高騰すると医療費は大変なことになります。

▪️さきほど、天然ガスから尿素が生産されるということを書きましたが、もちろんガソリンが高騰し不足すると、農業機械が動かせなくなります。漁船もう動きません。農産物や水産物を輸送することもできなくなります。流通の関係でいえば、輸送するさいの道路はアスファルトでできていますが、あれは原油の残渣からできているそうなので、道路も大変なことになります。こうやってみていくと、あらゆるものが不足し、値段が極端に高くなるわけです。経済的に弱い立場にある人たちが一番、その被害を受けることになります。

▪️おそくらくは、天然ガスや原油が日本に届かないことで、もっと様々な問題がドミノ倒しのように発生していくはずです。そのことをもっと世界の多くの人びとと共有していかねばなりません。そもそも、これほど石油に依存する社会システムがいかにいかに危ういものであるのかということも含めて、このような戦争でリアルになりつつある世界の状況を理解する必要があるように思います。

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