朽木の炭焼き

20210708kutsuki.jpg■今日は、朝早くから大雨の中レンタカーを借りて高島市の朽木へ行ってきました。高島市の中山間地域で炭焼きを復活させた、あるいはこれから復活させようとされている集落の活動に関して、聞き取り調査を行ってきました。朽木の市場、麻生、雲洞谷(うとだに)、それから今津にある「たかしま市民協働交流センター」に行き、この交流センターの運営を受託されている特定非営利活動法人コミュニティねっとわーく高島の職員の方たちにお話を伺いました。その時、こんな本があることを教えてくださいました。早速、市内の書店で購入しました。

■朽木の小川(こがわ)にお住まいの榊ご夫妻が出版された『聞き書き 朽木小川 しこぶちさんと奥山暮らし歳時記』です。文章は榊治子さんが、写真は榊始さんが担当されています。朽木の小川は、朽木の中でも一番南にある針畑川沿いにある集落です。榊さんご夫妻は、集落外から移住されてきました。朽木には、このような移住された方たちが、それぞれの集落や地域の中でいろいろ活躍されている、大切な役割を果たしておられるようです。

動画「2分(とすこし)で解説 びわ湖の日とMLGs」


■本日、琵琶湖保全再生課水政策係から以下のようなメールが届きました。

石けん運動、そしてマザーレイクフォーラムが担ってきた、自分たちの環境は自分たちで守ろうとする“自治”と、県民と行政が協力しながらそれを達成しようとする“連携”の精神を受け継ぐべく、きたる令和3年7月1日「びわ湖の日」40周年に、新たな取組がはじまります。それが『マザーレイクゴールズ(MLGs)』です。

令和3年(2021年)7月1日は「びわ湖の日」40周年。
びわ湖の日と、その精神を受け継ぐ新たな取り組みマザーレイクゴールズ(MLGs)について解説します。

MLGsへの賛同はこちらから簡単にできます!
https://s-kantan.jp/pref-shiga-u/offer/userLoginDispNon.action?tempSeq=9485

MLGsについての詳細は、「マザーレイクゴールズ(MLGs)アジェンダ(素案)」をご覧ください。
https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/bosyuu/317517.html

#琵琶湖
#滋賀県
#SDGs
#MLGs
#マザーレイク
#マザーレイクゴールズ
#びわ湖の日

■ということで、私もMLGsへ賛同いたしました。

真野浜での袋詰め作業

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20210607manohama3.jpg■真野浜(大津市今堅田)に漂着したヨシ屑を、この浜で民宿を経営する山田英二さんが集めて乾かしておられます。大雨が降ると、しばらくした後、浜に大量に漂着するのです。昨日は、それを山田さんと一緒に袋詰めしました。全部で31袋になりました。山田さんが集めた量の3/5ほどは袋詰めできたかな。こうやって、地道に浜の清掃をされている山田さんのおかげで、この浜は美しく保たれているのです。内田樹さんは「誰もやりたがらないけれど、誰かがやらないとみんなが困るタイプの仕事」のことを「雪かき仕事」と言っていたけれど、山田さんのやっている浜の清掃は、この「雪かき仕事」なのだと思います。

■この真野浜の清掃には、山田さんの経験的な知恵やノウハウがあちこちに活かされています。浜に漂着するヨシ屑は、濡れたままだとどうしても砂がついてしまいます。そこで、水に浸からないところまで熊手で引き上げて、まずは乾燥させるのです。そうすると余分砂が落ちます。引き上げた際には、プラスチックゴミなども分別しておきます。熊手のちょっとした使い方のようです。もっとも、以前と比較してプラスチックゴミは随分減ったようです。マナーが向上したのか、その辺りの理由ははっきりはわかりません。ただ、事実として、真野浜に打ち上げられるプラゴミはかなり減っているのです。それから、以前はルアーだとか釣り糸だとかも結構打ち上げられていたようですが、最近は、そのような釣り関係のゴミも少なくなったそうです。だから、今は分別もやりやすい。釣り針のついたルアーは危険ですしね。
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■ヨシ屑をゴミ袋に詰める際にもいろいろ工夫されています。引越し作業の際、養生に使われるプラスチック段ボールを、ゴミ袋の中に2枚入れて丸く立てると、ゴミ袋が自立します。どんどんヨシ屑を入れることができます。また、ヨシ屑は先が尖っているのでゴミ袋にそのまま入れると穴があいてしまいます。しかし、この方法だと上からぎゅっと押しても穴が開きません。ヨシ屑でいっぱいになったら、プラスチック段ボールをスポッと袋から抜き取るのです。これはとても優れたアイデアだと思います。フランスの人類学者、レヴィ=ストロースがいうところの「ブリコラージュ」的な、現場という文脈に根ざした知恵や工夫のように思うのです。

■さてさて、なぜこういう環境ボランティア活動を行なったのかというと、一番は山田さんのお手伝いということなのですが、同時に、市民団体「水草は宝の山(水宝山)」やNPO法人「琵琶故知新」で取り組もうと思っている活動「マイビーチプロジェクト」の基盤を作りたいからでもあります。もちろん山田さんも、仲間です。山田さんは「水宝山」の代表であり、「琵琶故知新」の理事でもあります。

■コロナ禍でいろいろ予定していた活動ができなくなっているのですが、それでもできる範囲で、そのような活動の基盤をできるだけ固めておきたいと思っています。この真野浜のことを、マイビーチと捉えて世話をする人たちのネットワークができたらと思っているのです。今のところ、「水宝山」や「琵琶故知新」の関係者ということになりますが、もう少し地域にネットワークが拡大できたらなあと思っています。実は、最近、山田さんの清掃活動に刺激を受けたのか、自主的に清掃をする人が現れているようなのです。そういう方達と一緒に活動できたらいいなと思います。

■ところで、回収したヨシ屑はどうなるのか。一般家庭ゴミとして回収され焼却されます。これは、山田さん個人が出しているゴミということで一般家庭ゴミになるのです。もし、市民団体やNPO法人としての活動ということになると、別の申請をしなくてはなりません。ちょっとハードルが高くなります。昔は、こういう木や竹、そしてヨシ屑は燃料として使えたはずなのですが、今はゴミとして処分することになります。でも、もし、このヨシ屑を再利用することが出来たら、何かアイデアはないでしょうか。こういうとをfacebookで書いていたら、早速、ある実践的な研究者から「ありますよ」とお返事をいただきました。相談をしてみようと思います。ヨシ屑をさらに細かくチップにして再利用するのです。

■山田さんが清掃活動をされているので、真野浜は水泳シーズン以外でも、とても気持ちの良い場所になっています。今日は中学生や家族連れがピクニックに来ていました。みんな美しい風景を満喫されていました。近くにこういうビーチがあることの幸せを、みんなで大切に守っていきたいね…と思います。ところで、蝶の絵、これはうちの庭の世話をしてくださっている庭師さんのお兄様、画家をされているのですが、そのお兄様が描かれたものです。昨日、山田さんに教えてもらいました。これは「はらぺこあおむし」に出てくる蝶々かな。
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Chamtine Wanicafe高島ワニカフェ


■滋賀県の高島市にすてきなカフェがあります。「高島わにカフェ」という名前です。素敵な岡野将広さん・純子さんご夫婦が経営されています。これまでも何度か、この「高島わにカフェ」のことを投稿しました。今回は、「高島わにカフェ」と高島市の有機農家との「つながり」に関する動画を紹介したいと思います。「【干し野菜で本格スパイスカレーづくり】レシピドキュメンタリー!つくると食べるを繋ぐ「高島ワニカフェ」」というタイトルの動画です。

■前編と後編にわかれています。前編は、材料の干し野菜をつくっておられる水口淳さん・水口良子さんご夫妻が経営されている「みなくちファーム」さんが、どのような考え(思想)をもっておられるのか、どのような農地や環境で農業をされているのか…、ドライカレーの材料である干し野菜の背景がわかるようになっています。とても面白いです。「みなくちファーム」さんと「高島わにカフェ」さんが、強い絆をもっておられることも伝わってきます。後編は、「みなくちファーム」さんの干し野菜を使ったドライカレーの作り方がわかります。個性豊かな、こだわりを持って仕事をしている人たちのつながり。そのつながり(信頼関係)が醸されてできてくる物語のようなものも一緒に味わえると思います。

■「高島わにカフェ」の岡野さんご夫妻は、生産者と消費者の2つの輪をつなぐカフェを目指しておられます。店名にある「わに」の本当の意味は、こういうカフェの経営理念を表現したものなのです。これから、どのような動画をYouTubeにアップされていくのか、楽しみにしています。このスパイスカレー以外にも、お味噌の動画もあります。有機農業に取り組む堀田金一郎が生産される大豆を使った味噌に関する動画です。大豆の収穫って、とても繊細であることがわかります。

湖北のゆりかご水田


■今朝、滋賀県庁の農政水産部農政課世界農業遺産推進係の皆さんがfacebookに投稿されていました。滋賀県の湖北、長浜市延勝寺の「魚のゆりかご水田」の様子です。投稿の写真では、塩ビ管を使った魚道が設置されています。私自身は、以前、長浜市の早崎で見せていただきたましたが、おそらくそれと同じ原理の魚道だと思います。

■圃場整備等、水田の田面と排水路の水面との間に大きな落差が生まれました。かつてのように、水田に魚が遡上できなくなりました。フナやナマズなどの琵琶湖の淡水魚に配慮するため、滋賀県の湖岸のあちこちの地域で、この「魚のゆりかご水田」のプロジェクトが取り組まれています。魚が遡上するために、排水路に魚道を設置して排水路の水位自体を少しずつ高くする方法と、この投稿のように排水路から水田に魚道を設置する方法とがあります。「魚のゆりかご水田」プロジェクトに取り組むそれぞれの集落の営農やむらづくりの状況や事情に応じて、このような2魚道を柔軟に使い分けることが大切かなと個人的には思います。

■私が早崎で見学させていただいた時は、魚が遡上しやすいように塩ビのパイプの中に小さな階段をつけてみてはどうかというアイデアが出ていました。その後、どうなりましたかね。それぞれの農家の皆さんが、集落の営農の状況に合わせて工夫されています。滋賀県庁が中心となって取り組んできたプロジェクトですが、それぞれの集落の事情に応じて、技術的なことはもちろん、その他運用方法等についても、いろんな工夫をしていくことが大切かと思います。

■さて、このTwitterの投稿者は「世界農業遺産推進係」となっています。そうです。このような「魚のゆりかご水田プロジェクト」も含めて、「森・里・湖に育まれる漁業と農業が織りなす『琵琶湖システム』」は、2019年2月に「日本農業遺産」に認定され、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」の候補としても認められました。 ところが、世界的なコロナ感染拡大(パンデミック)により、世界農業遺産の審査が進んでいません。コロナ禍が収束した段階で審査が始まるものと思っています。

今年最後の「わさいな〜仰木」

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20201228wasainaohgi3.jpg■週一回、仰木(大津市)の直売所「わさいな〜仰木」に新鮮な野菜を買い求めに通っています。自宅から歩いて30分くらいでしょうか。歩いて行けないわけではありませんが、帰りは野菜を持って帰らねばならないので、車で出かけることになります。昨日は、オープンの時刻に到着しました。いつもだと、オープン前から行列ができているのですが、今日はすんなり中に入ることができました。

■昨日は、無農薬のハクサイ、ダイコン、キントキニンジン、レンコン、サトイモ、サツマイモ、トウガラシ、卵、カボチャプリン、オハギ。野菜に加えて、甘いものも買ってしまいました…。私、甘辛両党ですかね。野菜やスイーツの他にも、この直売所では、パンやお弁当やお寿司も販売されています。ところで、我が家で購入したレンコンは、尾崎考さんが栽培されたものです。尾崎さんは、大阪から仰木の集落に移住して就農されている方です。我が家は尾崎さんが生産された米を大切に味わって楽しんでいます。他にも里芋なども購入してきました。今回は、レンコンです。使われなくなった棚田を、レンコン畑にして栽培されているようです。昨日、直売所におられた方のお話では、よくあるレンコン畑とは違って腰までつかるような深い棚田ではなく、水田を利用しているので、農作業がなかなか大変なようです。正月のお節料理に使うのでまだいただいていませんが、尾崎さんがネットで発信している情報によれば、尾崎さんの自信作のようです。楽しみです。ひとつ前の投稿では、「街の専門店は、豊かな気持ちで暮らすためのインフラだと思います。大切にしないといけませんね」と書きました。同じような意味で、近くの農村は、豊かな気持ちで暮らすためのインフラなのだと思います。大津市は、生産者と消費者が隣接して暮らしている地域が多いのに、農産物を通した交流がどこでもあるわけではありません。私の場合は、この直売所「わさいな〜仰木」のような生産者と消費者をつなぐ仕組みがあるおかけで、食卓が豊かになります。幸せですね。

■「わさいな〜仰木」からは、比良山系の山々がよく見えます。昨日、山頂のあたりは白くなっていました。今年最後の「わさいな〜仰木」を楽しみました。
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『流域ガバナンス 地域の「しあわせ」と流域の「健全性」』(京都大学学術出版会)

20201210watarshedgovernance.jpg■ずっと編集に取り組んできた例の本、出版されるのは月末だそうです。これで、気持ちがスッキリしました。次の仕事に頭と気持ちを切り替えることができます。

■この本は、総合地球環境学研究所(大学共同利用機関法人人間文化機構)の文理融合型プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態システムの健全性」の成果をまとめたものです。プロジェクトに参加した人たちが各自の成果を学術論文にまとめ、その論文をもとに原稿を執筆した…わけですが、そのような論文を束ねただけの本ではありません。全体を貫き通す研究プロジェクトの考え方を強く意識して編集しています。

■ですから、通常の論文集ではありません。文理融合を志向する上での困難、地域と連携していく超学際的研究を目指す上での困難、そのような困難にも愚直に取り組んだことがわかるように工夫しています。また、プロジェクトの進捗の際に何があったのかが垣間見えるような工夫もしています。個々には、素晴らしい成果が出ているわけですが、全体としての評価については、いろいろご意見をいただかねばなりません。私自身は、「どうだすごいだろ〜」と胸を張るようなつもりでこの本を編集していません(そのような本は、世の中にたくさんありますけど、少なくとも私は違います)。正直にプロジェクトのことを書いています。この本が、個別のディシプリンの壁を越えて、環境科学の新たな地平を切り開いていこうとする方たち、特に若い研究者の方たちや、地域社会で環境問題に実践的に取り組む方達にぜひ読んでいただきたいと思って編集しました。そのような願いも、本書とともに読者に届けば幸いです。

■以下は、目次です。

はじめに

序 地球環境の中の流域問題と流域ガバナンスのアポリア
 序-1 流域への注目と2つの研究戦略
  (1)教育映画 “Powers of Ten”
  (2)空間スケール
  (3)水平志向の研究戦略
  (4)垂直志向の研究戦略
  (5)先行するプロジェクトについて
 序-2 学際研究・文理融合研究から超学際的研究へ
  はじめに
  (1)文理融合による2つの先行プロジェクト(1997-2006年度)
  (2)超学際的アプローチによる流域ガバナンス研究の展開(2014-2019年度)

第1章 流域ガバナンス研究の考え方
 第1章解説
 1-1 文理融合型研究プロジェクトの「残された課題」
  (1)相似的関係にある2つのアポリア
  (2)研究プロジェクト「地球環境情報収集の方法の確立」
  (3)研究プロジェクト「琵琶湖―淀川水系における流域管理モデルの構築」
  (4)残された課題
 1-2 流域における生物多様性と栄養循環
  (1)なぜ、生物多様性は必要か?
  (2)生物多様性とは何か?
  (3)流域の生物群集の固有性と階層性
  (4)生物多様性の恩恵
  (5)生物多様性と栄養循環
 1-3 流域における地域の「しあわせ」と生物多様性
  (1)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
  (2)経済的利益の向こうに見え隠れすること
  (3)農家にとっての「意味」
  (4)集落の「しあわせ」
 1-4 「4つの歯車」仮説 垂直志向の研究戦略の展開
  (1)「鳥の目」と「欠如モデル」
  (2)経済的手法と人口減少社会
  (3)「ブリコラージュ」と超学際
  (4)「4つの歯車」仮説
  (5)協働の本質
 1-5 2つの流域を比較することの意味
  (1)シラン・サンタローサ流域
  (2)流域を比較することの意味
  (3)「虫の目」による修正
  (4)本書の構成

◉コラム1-1 湖沼をめぐる循環とガバナンス 2つの視点はなぜ重要か?
◉コラム1-2 環境トレーサビリティと流域の環境

第2章 野洲川流域における超学際的研究の展開
 第2章解説
 2-1 琵琶湖と野洲川流域――インフラ型流域社会の特徴
  (1)琵琶湖の固有性と多様性
  (2)野洲川流域の風土と文化
  (3)変貌する琵琶湖と流域管理
  (4)インフラ型流域社会
  (5)流域の新たな課題
  (6)流域管理から流域ガバナンスへ
 2-2 上流の森を保全する多様な主体の「緩やかなつながり」
  (1)大原の概要
  (2)森林保全を担う主体の多様化
  (3)上流の森林地域でのフィールドワーク
 2-3 圃場整備と少子高齢化――「地域の環境ものさし」によるアクションリサーチ
  (1)小佐治地区の地理的特徴
  (2)圃場整備と生態系基盤の変容
  (3)小佐治地区の環境保全活動
  (4)アクションリサーチと「地域の環境ものさし」
  (5)「地域の環境ものさし」が地域にもたらしたもの
 2-4 魚と人と水田――「魚のゆりかご水田」
  (1)須原地区の地理的特徴
  (2)琵琶湖に生息する魚
  (3)琵琶湖総合開発による人や魚の変化
  (4)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
  (5)「魚のゆりかご水田」5つの恵み
  (6)経験知と科学知
  (7)「魚のゆりかご水田」プロジェクトの課題
  (8)経験知と科学知で人と人、人と自然をつなぐ
 2-5 在来魚がにぎわう内湖の再生に向けて
  (1)内湖と人の関わり
  (2)志那の内湖
  (3)内湖を残す
  (4)内湖の保全・利用をめぐる関係性と生きものへの配慮
  (5)次世代に残す魅力あるまちづくりに向けて
 2-6 南湖の水草問題をめぐる重層的なアプローチ
  (1)水草問題の経緯と現状、滋賀県の対策
  (2)水草が植物成長に及ぼす効果
  (3)水草利用と環境保全
  (4)水草問題の多面性
  (5)水草問題から新しい環境自治へ

◉コラム2-1 水田における栄養循環調査――田越し灌漑と冬季湛水は水質保全に貢献するか?
◉コラム2-2 「鮒の母田回帰」を確かめる――ストロンチウム安定同位体比による分析

第3章 流域の対話を促進するために
 第3章解説
 3-1 流域の栄養循環と生物多様性との関係
  (1)「鳥の目」から見た栄養循環の特性と流域ガバナンス
  (2)野洲川流域の栄養物質の動態と人間活動
  (3)安定同位体を用いたリン酸の発生源解析
  (4)懸濁態リンの流出と発生源
  (5)野洲川流域の栄養循環と生物多様性の関係
  (6)川の中の栄養物質の動き――川の水質浄化作用
  (7)生物多様性と栄養循環のかかわり
 3-2 信頼関係がつむぐ主観的幸福感――野洲川流域アンケート調査に対するマルチレベル分析
  (1)主観的幸福感に関するこれまでの研究成果
  (2)野洲川流域アンケート調査――「幸福な個人」と「幸福な地域」
  (3)信頼の二面性――「きずな」と「しがらみ」
  (4)「しがらみ」を緩和する一般的信頼
  (5)流域全体の「しあわせ」の醸成に向けて
 3-3 流域の栄養循環と地域のしあわせを生物多様性でつなぐ
  はじめに
  (1)「4つの歯車」仮説
  (2)「4つの歯車」仮説の実態:野洲川流域を対象として
  (3)超学際的研究におけるツールとしての意義

◉コラム3-1 リンはどこからやってくるのか? リン酸酸素安定同位体比による分析
◉コラム3-2 流域からの地下水経由による琵琶湖へのリン供給
◉コラム3-3 産業連関分析からひもとく経済活動が引き起こすリンの流れ

第4章 シラン・サンタローサ流域における超学際的研究の展開
 第4章解説
 4-1 ラグナ湖流域における人口の急速な増加と開発――流域管理の課題
  (1)フィリピン開発の歴史と課題
  (2)シラン・サンタローサ流域における流域管理の課題
 4-2 シラン・サンタローサ流域におけるコミュニティが抱える課題――カルメン村を事例として
  (1)カルメン村の概要
  (2)周辺開発によるカルメン村の変容
  (3)開発影響下にあるカルメン村の将来
  (4)マリンディッグの泉の保全に関するアクションリサーチ
 4-3 シラン・サンタローサ流域における栄養負荷、栄養循環と生物多様性の現状
  (1)流域の土地利用と河川の栄養バランスの不均衡の関係
  (2)栄養螺旋長の計測による河川の栄養代謝機能の評価
  (3)栄養負荷と大型底生無脊椎動物の多様性の関係
  (4)シラン・サンタローサ流域における栄養循環と生物多様性、今後の展望
 4-4 サンタローサ流域における共通の関心(Boundary Object)――地下水問題
  (1)歴史的に豊富な地下水
  (2)地下水に関する問題と懸念
  (3)シラン・サンタローサ流域の地下水の窒素汚染の現状
  (4)バウンダリーオブジェクトとしての地下水
  (5)ワークショップによる調査活動のまとめ
 4-5 サンタローサ流域委員会の発展と地域の福祉
  (1)サンタローサ流域における流域管理に向けた協力・協働の歴史
  (2)サンタローサ流域委員会(SWMC)の設立(2017年)
  (3)サンタローサ流域委員会(SWMC)の制度分析
  (4)サンタローサ流域における参加型ステークホルダー分析
  (5)協力関係の強化にむけて――サンタローサ流域フォーラムの開催
  (6)サンタローサ流域の流域ガバナンスの今後

第5章 流域ガバナンス研究の超学際的発展にむけて
 5-1 垂直志向の研究戦略から明らかになったこと
  (1)第三のアプローチ
  (2)野洲川流域とシラン・サンタローサ流域の結果の差異は何によるのか?
  (3)未来の専門家の姿
 5-2 多様な流域のモザイクとしての地球
  (1)多様な流域のモザイクとしての地球――ユニバーサル型の地球環境問題の視点から
  (2)地球環境研究の文脈の中での私たちのプロジェクト
  (3)「ジャーナル共同体」からの越境

謝辞
索引
執筆者一覧

https://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=5156

『流域ガバナンス 地域の「しあわせ」と流域の「健全性」』(京都大学学術出版会)、責了。

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■一昨日の月曜日の出来事です。総合地球環境学研究所での研究成果をもとにした、『流域ガバナンス 地域の「しあわせ」と流域の「健全性」』(京都大学学術出版会)、責了(責任校了)しました。出版会の編集者に「これで責了、でよろしいでしょうか?」とメールで確認されてドキドキしましたが。

■普通の論文集ではないので、本の全体に一本太い筋(文理融合型プロジェクトの論理)を通す作業に疲れました。本当に。今日は、もう1人の編者である谷内茂雄さん(京都大学生態学研究センター)と、朝から夕方まで、ずっと龍谷大学で最後の編集作業を行っていました。そして、責了です。というわけで谷内さんと、とりあえずの慰労も兼ねて、一緒に夕食を摂りました。

■おそらく、私たち2人は、もうこんなしんどいことは、二度とできないと思います。しんどいこと…とは、難しいこの手の本の編集だけでなく、文理融合型の研究プロジェクト自体もです。7年間取り組みましたが、年齢的に、体力と気力が持ちません。二度とと書きましたが、谷内さんと私は、流域環境問題に関する文理融合型の研究プロジェクトに取り組むのは、これで三度目になります。ですから、四度目はないということですね。2人とも、研究者の人生のかなりの時間を、この手の文理融合型の流域研究プロジェクトに捧げてきました。

■今回のプロジェクトの最後では、谷内さんと、毎晩のようにzoomによる編集作業を続けました。これからはこのようなことをしなくても良いわけで、少しは体調が回復してくれるのではないかと思います。谷内さんも同じ気持ちだと思います。大袈裟に言っているのではなく、ホンマの話です。2人とも、ホンマに体調を崩しました。で、この仕事が解決したら(完全に終了したら)、2人の思い出の地?!岩手に、慰安旅行に行こうといっています。まあ、コロナで実際には今のところ行けませんけど。

■でも、歳を取れば取るほど、時間の経過はスピードを増してきます。facebookで知りましたが、最善寺というお寺の伝導掲示板には、このような法語が掲示してあったようです。「三十までは各駅停車、四十までは快速列車、五十までは急行列車、六十過ぎれは超特急」。残された時間を何に優先的に使っていくのか、いろいろ考えなければばなりません。

【追記】
■聖書にこういう言葉があるそうです。「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」(ローマの信徒への手紙5:3-4)。とても自分自身に忍耐があったとは言えないけれど、この仕事の終了までなんとか辿り着けたこと、そしてこの7年の経験が、この言葉と重なりあうものであってほしい…と思います。あと母校関学のスクールモットー、Mastery for Service (マスタリー・フォー・サービス 奉仕のための鍛錬)は、「社会学をやっている自分が、なんでこんなプロジェクトをやっているのだろう…」と迷った時に、いつも自分を励ましてくれました。

■これからは大きなプロジェクトはせずに、コツコツと楽しみながら自分の研究を続けていければ、そして流域の保全に関する実践的な取り組みに関わっていければと思います。平安時代、人々から「阿弥陀丸」と呼ばれた念仏信仰(称名念仏・専修念仏)の先駆者、教信のことをイメージしながら、自分の立っている場所から、流域ガバナンスのことについて考え・発言し・行動していければと思います。少なくとも前期高齢者を終えるまでの期間は、そのようなことができる健康と体力も維持したいと思います。もう、なんだか退職するかのようなことを書いていますが、あと6年間、定年退職まで龍谷大学に勤務するつもりです。残された大学教員の時間を大切にして頑張りたいと思います。

「オーパル」さんを訪問

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20200929opal4.jpg■昨日の午前中、参加している市民団体「水草は宝の山」(水宝山)のメンバーの皆さんのところへ伺いました。この「水宝山」を母体して設立された非営利活動法人「琵琶故知新」の最近の活動状況について、事務局長の藤澤栄一さんと一緒にご説明するためです。

■まず最初に伺ったのは、湖西の琵琶湖畔にあるスポーツ・環境体験施設「オーパル」代表取締役の山脇秀錬さんです。「オーパル」について少しご紹介しますが、修学旅行等、学校向け琵琶湖体験学習 ・琵琶湖での活動を中心とした自然体験 ・カヌー(カヤック)、ウォーターボール、ウェイクボードなどのスクール ・ドラゴンボートの普及活動 ・子どもを対象としたレーシングカヌー教室などを事業として取り組んでおられます。

■さて、山脇さんには、まず「びわぽいんと」の進捗状況をご説明いたしました。「びわぽいんと」とは、facebookやこのブログでもご紹介してきましたが、琵琶湖の環境保全活動に取り組む諸団体がつながり支え合うための仕組みです。
オーパル
びわぽいんと

■「びわぽいんと」の進捗状況についてご説明したあと、「オーパル」に隣接する浜の様子を拝見させていただきました。今、琵琶湖の水位は低下しているわけですが、それなりの量の水草が漂着していました。また、浜に近いところにも水草が流れ着いていることが確認されました。それらの水草、腐敗すると大変臭くなります。しかし、水からあげて乾燥させれば、そのような悪臭はしません。しかも、土壌改良剤(水草堆肥)として利用することができます。

■今は「オーパル」さんだけで除去をされていますが、将来的には、このような水草の除去に環境ボランティアが参加することができないか、そして除去したのち乾燥させた水草を、地域の菜園の土壌改良剤として使えないか、そのあたりのことを「水宝山」や「琵琶故知新」としては活動の課題においています。活動のメインの浜は、堅田の真野浜になりますが、「オーパル」が管理されているこちらの浜についても、真野浜とは少し違ったスタイルで水草の有効利用を進めることができればと考えています。

■少し遠くを眺めると、東近江市からバスやってこれらた中学生の生徒さんたちが、「オーパル」のドラゴンボートに乗っておられるのが見えました。コロナ禍のために修学旅行に行けなかった代わりに、こうやって琵琶湖を楽しんでおられるようです。

【追記】■私は、琵琶湖の周囲にある個々の浜と、そこに隣接するコミュニティや地域の実情に応じて、漂着する水草の有効利用の仕組みがあって良いと思っています。また、そうでないといけないと思っています。そのような水草有効利用の仕組みを「小さな循環」と呼んでいます。外部から「小さな循環」を繋いで「大きな循環」にしてやろう…などとは思ってはいけません。「小さな循環」の中で参加される皆さんにとっての参加することの「意味」がきちんと担保されることが非常に重要だからです。「小さな循環」は小さいままで良いし、それが大切だと思うのです。その上で、異なる多様な「小さな循環」と緩やかにどう連帯していくかが問われることになります。

■このような「小さな循環」とは別に、「大きな循環」があっても良いと思います。毎年、滋賀県が刈り取り船で南湖の水草を刈り取っています。大量の水草を刈り取っています。それらの大量の水草は陸地で乾燥させ、無料で配布されていたと思います。税金を使って刈り取っているので、刈り取った水草をどういう仕組みで有効利用していくのか、そこには様々な制約条件があるのではないかと思います。理想を言えば、刈り取った水草から生まれた経済的価値を、刈り取りの費用に還元していくような社会的仕組みができて欲しいと思います。

サシバを通して人がつながる。サシバを通して地域環境を捉え直す。




■サシバという渡り鳥がいます。タカ目タカ科サシバ属に分類される猛禽類です。人の手の加わった里山環境を繁殖地として、南西諸島から東南アジアにかけて越冬する渡り鳥です。サシバからすれば、農薬や化学肥料等を使わず、人の手が適度に加わることで、様々な餌になる動物がたくさん生息していることが望ましいということになります。サシバがやってくるということは、それだけ餌が豊富にあるということになるのでしょうか。サシバは、多様な生物が織りなす里山の生態系の頂点にいるのです。そのような意味で、里山の指標となる生物でもあるのです。NPO法人オオタカ保護基金では、サシバの生息環境や食性を以下のように説明されています。

サシバの生息地の多くは、丘陵地に細長い水田(谷津田)が入り込んだ里山環境である。また,樹林の点在する農耕地や草地、低山帯の伐採地を伴う森林地帯にも生息する。

主な食物は、田畑や草地、周辺の森林に生息するカエル類、ヘビ類、トカゲ類、モグラ類、昆虫類である。サシバは、見晴らしのよい場所に止まって獲物をさがし、地上や樹上に飛び降りて、それらを捕まえる。2009年に栃木県市貝・茂木地域で行った、巣に運び込まれたエサ動物に関する調査結果を左に示す。サシバは、里山に生息する様々な小動物を餌にしていることから、里山生態系の指標種と言われている。

■以下は、このサシバについての日本自然保護協会の説明です。記事のタイトルからもわかるように、絶滅危惧種でもあります。
絶滅危惧種・サシバはどんな鳥?(前編)
絶滅危惧種・サシバはどんな鳥?(後編)

■この投稿にアップした動画は、沖縄県宮古島市伊良部島で琉球泡盛泡に関するものです。普通、泡盛の原料はタイ米が用いられるのですが、この動画のメーカー「宮の花」さんは国産米を使って蒸留されました。栃木県市貝町の米です。伊良部島はサシバが越冬地に向かう際の中継地であり、そして里山と谷津田が広がる栃木県市貝町はサシバの繁殖地です。絶滅危惧種であるサシバを守っていくためには、生息地の環境を保全しなければなりません。サシバを通して、繁殖地と越冬地の人々が連携されたわけですね。「サシバが舞う自然を守りたい人々の思いが」つながったわけです。加えて、市貝町の農家も、サシバの餌となる生き物が豊富に生息できるように、里山の管理や谷津田の営農に取り組むことになります。農家の皆さんは、サシバを通して地域環境を捉え直しておられるのではないかと思います。そうすることで、谷津田で生産された米の付加価値を高めることができます。加えて、そのような付加価値が、農家の収入にも結びつくものである必要があります。最後のところ、農家を支援する制度が市貝町ではどうなっているのでしょうね。よくわかっていません。時間を見て、確認をしてみたいと思います。

■ところで、宮古島伊良部町の「宮の花」さんが蒸留された泡盛「寒露の渡利」、ネットで予約をしました。宮古島はサシバが越冬地に向かう際の中継地です。たくさんのサシバが空を舞うのだそうです。そのことを都島の皆さんは、「寒露の渡り」と呼んでいます。泡盛のネーミングはそこからきています。予約した泡盛がいつ届くのかはわかりませんが、非常に楽しみにしています。皆さんも、ぜひご予約ください。

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