「地方創生のファクターX寛容と幸福の地方論」

20251105kanyo.jpg▪️朝日新聞の「連載 8がけ社会」の記事に関する情報が、朝、メールで届きました。さっそく拝見すると、「「仕事がないから故郷に戻らない」は本当か 全国調査で見えた答え」という興味深い報告書のことがニュースになっていました。「LIFULL HOME’S 総研」による「地方創生のファクターX 寛容と幸福の地方論」という報告書をもとにした記事でした。大学に行き、授業のあと、大学の図書館にある朝日新聞のデータベースで記事の全体を読んでみました。

▪️地方からの若者転出に関して、地方には仕事がないからということが理由にあげられますが、「LIFULL HOME’S 総研」の島原万丈さんたちは、県民所得も低いなど経済関連の指標はいずれも高くなくても、Uターンする割合が高いのは、なぜなのかを探っておられます。経済指標だけでは説明できない状況を、さまざまなデータを分析することで、Uターン意向を左右する要因を探られました。その結果、浮かび上がってきたのが「寛容」です。

▪️「寛容」とはなにか。島原さんは、次のように説明されています。

言い換えれば他の可能性を認めるということ。「こうでなければいけない」と決めつけない。物事の解釈に幅を持ち、そうじゃない可能性を考える。その「余白」が大事なんです。

例えば、女性はこうじゃなきゃいけないとか、若者はこうなんだって決めるから社会が不寛容になってくる。そういうことが嫌で故郷に戻らない人は多かった。今だって地方で自分たちのライフスタイルにモヤモヤしている人たちはいる。だから報告書を出したとき、「寛容性」という言葉にしたことで納得する人がたくさんいました。

▪️この「寛容性」に関わる話ですが、「東北地方の若い女性が東京に転出するのは、女性たちが生まれ育ってきた地域が、個々人の生き方に関して上の世代の価値観を押し付けてくるから」ということをXで読んだことがあります。そのことと、島原さんたちが指摘する「寛容性」の問題は重なっていると思います。「地方創生のファクターX 寛容と幸福の地方論」の概要ですが、以下の通りです。

地方創生をテーマにした今回の調査研究では、47都道府県の在住者へのアンケート調査を実施し、各都道府県の「寛容性」の気風を測定しました。同時に東京圏に住む各道府県出身の若者の意識調査も実施し、分析の結果、各地域の「寛容性」と地域からの人口流出意向・東京圏からのUターン意向の間に密接な関係があることが分かり、地域の「寛容性」がこれまでの地方創生政策が見落としていたファクターXであるという結論に至りました。地方創生の重要な指標として「寛容性」に注目することを提案します。

また、近年さまざまなシーンで注目度が高く、今後の地方創生議論の中でも不可欠になると思われる「幸福度(Wellbeing)」の実態についても都道府県別に把握し、今後の議論の材料として発表いたします。  2021.09.15

▪️報告書のなかでは、「問題は若者の転出が多いことではなく、外の世界で新しい技術や知識を学んだ優秀な若者が戻って来ないことにある。あるいは、生まれ故郷にこだわらず自分の能力を発揮する場所を探している若者が、その地域を選んでくれないということにある」という指摘がなされていました。大切なご指摘かと思います。この報告書のテーマともかかわることで、卒業論文を執筆しようと考えている学生さん2人に、さっそくこの新聞記事と報告書のことをメールでお知らせしました。

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