地球研・日比国際ワークショッブ(7)
![]()
▪︎総合地球環境学研究所・奥田昇さんを代表とするプロジェクトの「日比国際ワークショップ」の2日目、さらに続きます。
▪︎野洲市の幸津川の大水口神社のあとは、同じく野洲市の須原に移動しました。ここでは、「せせらぎの郷 須原」という農業団体が組織され、「魚のゆりかご水田」の取り組みが行われています。「魚のゆりかご水田」に関しては、以前のエントリー「野洲市のゆりかご水田」をご覧ください。今回、須原の「せせらぎの郷 須原」を訪問したのには理由があります。私たちのプロジェクトが、この須原での取り組みに強い関心をもっていること同時に、フィリピンの共同研究者の皆さんに、日本の環境保全型の農業とコミュニテイビジネスとの関係について知っていただきたかったからです。私たちがフィリピンで比較研究を進める予定の農村では、アグロエコツーリズムと農産物のブランド化を進めようとしておられます。この須原での取り組みが大きなヒントになればとの思いから訪問することにしたのでした。
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
▪︎現場では、代表の堀彰男さんが、フリップボードを使って「魚のゆりかご水田」についてご説明くださいました。また、ワークショップに参加された方達は、「せせらぎの郷 須原」で生産した「魚のゆりかご水田米」や、食米から生産した吟醸純米酒「月夜のゆりかご」を購入させていただきました。「月夜のゆりかご」については、試飲もさせていただきました。ありがとうございました。こちらの「せせらぎの郷 須原」には、じつにたくさんの人びとがやってこられます。全国的にも高く評価されている取り組みです。公式サイトをお持ちですが、そこに「台湾・フィリピンより視察」という記事をアップしてくださいました。少しだけ、写真について説明します。中断の左。白く見えるものは、魚道を設置しやすいようにつくられたコンクリートの土台です。この土台をもとに、魚道を毎年設置するのです。トップの写真は、湖西の比良山系です。この日は大変天気が良く、くっきり比良山系が確認できました。
地球研・日比国際ワークショッブ(6)
![]()
![]()
![]()
▪︎総合地球環境学研究所・奥田昇さんを代表とするプロジェクトの「日比国際ワークショップ」の2日目です。1日目の宿泊、守山市にあるビジネスホテルでした。前日に続きこの日の天候もよく、ホテルの部屋からは、湖西の山々が実によくみえました。左の方(南側)には比叡山が、右の方(北側)にはまだ山頂に雪を残す比良山系がはっきりと見えました。本当は、ここで琵琶湖も見えればよいのですが、このホテルの部屋の高さからでは、琵琶湖の湖面は見えません。
▪︎2日目、私たちがまず向かったのは、野洲川河口近くにある、幸津川(さずかわ)の大水口神社です。境内には、明治29年の大洪水の際に、野洲川が決壊したことを伝える「川切れ100周年」の石碑が建てられています。横を見ると1本の筋が刻まれていました。明治29年の大洪水の際には、ここまで水位があがった…ということを示しているのです。現在、琵琶湖の水位は人工的にコントロールされています。また、かつては2匹の蛇がうねるような形をしていた野洲川の河口域(南流と北流)も、直線的な放水路につけかえられています。かつてのような水害はなくなりました。大水口神社の前、以前は田舟が通るクリーク(水路)でした。この地域は、水郷地帯だったのです。もちろん、現在では、クリークも埋め立てられ、周囲の水田も圃場整備が行われ、もはやかつての風景を想像することはなかなか難しい状況です。
小佐治での生き物調査
![]()
▪︎総合地球環境学研究所のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」のフィールドのひとつである、滋賀県甲賀市小佐治にいってきました。小佐治では、今年度、滋賀県庁農林水産部や滋賀県立琵琶湖博物館の支援で、集落の環境保全部会の皆様が「豊かな生きものを育む水田づくり」のブロジェクトに取り組むなかで、定期的に水田の生き物調査を実施されています。また、地域の子どもたちと水田の生き物の観察会も開催されています。昨年の夏から、私たち地球研のプロジェクトでも、この小佐治の活動に参加させていだたいています。
![]()
▪︎今回は、冬なので、どれほどの生き物がみつかるのかな…と心配していましたが、夏と比較すると生き物の影は薄いですが、トンボの幼虫であるヤゴ、ゲンゴロウ、マツモムシ等の水性昆虫、そしてメダカ、ドジョウ等の魚たちが多数確認できました。それから、私は初めて見ましたが、アカガエルの卵も多数確認することができました。アカガエルは、早春に卵を産みます。水田周辺の森林に生息しています。そして、春先に冬眠を一時中断して繁殖のため池や沼などに産卵するようです。この小佐治では、土質が細かく水田が割れてしまわないように、水を張ってある水田が多く、田んぼのなかにもアカガエルが産卵にやってきます。
![]()
▪︎左は水田の水たまりに産卵されたアカガエルの卵です。そばに寄ってみると、右のような感じです。なんといいますか、こんな飲み物がありましたよね。なんといったかな…。バジルシードという飲み物かな。それから、タピオカ…って感じもしますね。もちろん、これらの卵は、観察したあとは、必ず水田に返しています。午前中の観察会のあとは、地球研の私たちのプロジェクトのコラボレーションの内容に関して、地元の環境保全部会の皆さんと話し合いを行いました。なんとか、見通しがたってほっとしました。詳しくは、またいずれご説明することになろうかと思いますが、生き物のにぎわい作り(生物多様性の保全)の活動と営農やコミュニティビジネスとの関係、流域の水質や栄養循環との関係、コミュニティ形成等との関係について研究上の関心をもちつつ、小佐治の皆さんとの連携していく予定です。
総合地球環境学研究所にて
![]()
![]()
▪︎「総合地球環境学研究所」のことについては、このブログで何度もエントリーしてきましたが、参加している地球研のプロジエクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」が、4月より、いよいよフルリサーチの段階に進みます。地球研では、以下のような仕組みになっています。
地球研では、既存の学問分野で区分せず、「研究プロジェクト方式」によって総合的な研究を展開しています。
研究プロジェクトはIS(インキュベーション研究 Incubation Study)、FS(予備研究 Feasibility Study)、PR(プレリサーチ Pre-Research)、FR(フルリサーチ Full Research)という段階を経て、研究内容を練り上げていきます。
国内外の研究者などで構成される「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」による評価を各対象年度に実施し、評価結果を研究内容の改善につなげています。研究の進捗状況や今後の計画について発表し、相互の批評とコメントを受け研究内容を深める「研究プロジェクト発表会」を年に1回開催しています。
CR(終了プロジェクト Completed Research)は、社会への成果発信や次世代の研究プロジェクト立ち上げなど、さらなる展開を図っています。
▪︎「段階を経て、研究内容を練り上げ」、「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」による評価を毎年受けることが、義務付けられています。これがこの研究所の特徴なのですが、フルリサーチの段階に進むまでには、たくさんのプロジェクトが評価を獲得できずに脱落していきます。プロジェクトが取りやめになります。非常に厳しい評価制度になっています。私たちは、なんとかフルリサーチまで進むことができましたが、フルリサーチを進んだ後も、毎年厳しい評価を受け続けなければなりません。今日も、実は、その評価委員会が開催されています。リーダーの奥田昇さんが頑張っているはずです。数日前、プロジェクトのコアメンバーの皆さんが集まって「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」の評価を受けるための「作戦会議」を開催しました。会議のあとは、その翌日に滋賀県の甲賀市の農村で行う調査の準備をしなければなりませんでした(まだ、本格的な調査の前段階あたりなのですが、農村のリーダーの皆さんと相談をしながら、少しずつ前進しています)。そうやっているうちにすっかり晩になってしまいました。写真は、その時のものです。
▪︎黒いシルエットの建物は、地球研です。丘の斜面に建設された不思議な形をした建物です。帰りは、畏友でもある京都大学生態学研究センターの谷内茂雄さんと一緒でした。谷内さんとは、長年にわたり流域管理に関する研究プロジェクトを一緒に取り組んできました。いずれも、文理融合を基盤にした学際的な流域管理に関する研究プロジェクトです。今回の地球研のプロジエクトのばあいは、さらに地域住民の皆さんや行政の皆さんとも協働・共創(Co-design/co-production)しながら進める「超学際研究(trans-disciplinary)」的研究になります。
▪︎この日、谷内さんとは、叡山電鉄で京都の街中まで出かけて、夕食を一緒にとりました。谷内さんは、「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)」の報告書作成のメンバーです。昨年の10月にはオランダで第1回目の会議が開催され、来月はアルゼンチンで第2回目の会議が開催されるそうです。谷内さんからは、そのようなIPBESの動向や、環境科学分野の国際的な動向などをいろいろ教えてもらいながら、これからのプロジェクトの方向性に関して意見交換をしました。総合地球環境学研究所は、「Future Earth」のアジアの拠点になっています。「Future Earth」とは、持続可能な社会への転換のためには、科学者と社会の様々なステークホルダーとが超学際的連携・協働を行うための国際的な枠組みです。詳しくは、このパンフレットをお読みいただきたいと思いますが、私たちはこのような国際的な動向を視野にいれながらプロジェクトに取り組んでいます。
甲賀市の大原財産区を訪ねる
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
■総合地球環境学研究所のプロジェクトで、甲賀市にある大原財産区の事務所を訪問しました。いろいろお話しをお聞かせいただいたあとは、大原ダムを見学しました。農業用のダムです。下流には、私たちのプロジェクトで調査を進めている小佐治という集落があります。古琵琶湖の湖底だったところが隆起してできた丘陵地帯に、降雨によりいくつもの谷筋が生まれました。いつの時代かはわかりませんが、小佐治の皆さんは、この谷筋に水田を作り農業をしてきました。いわゆる八津田です。そして、後背地の丘陵の森林の中にため池を作り、そのため池の水から灌漑していました。大きなため池が5つ、小さなため池は無数にあったと言います。水不足の時のために、小さな無数のため池に水を貯めてリスクを分散させていたのです。しかし、大原ダムができてからは、そのような灌漑に伴う苦労は無くなりました。無数にあった小さなため池は放棄されることになりました。生物多様性の観点からは、そのような無数にある小さなため池には意味があったと思うのですが…。このことについては、またこのブログの中で書くことにしたいと思います。
甲賀市の小佐治を訪問
![]()
▪︎先週の水曜日(2月11日)、総合地球環境学研究所の奥田昇さんと一緒に、滋賀県甲賀市の小佐治集落にある「甲賀もちふる里館」を訪れました。奥田さんがリーダー、私がコアメンバーの1人として取り組んでいるプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」について相談をするためです。小佐治集落からは、環境保全部会の皆さん、小佐治集落の区長さんがご出席くださいました。小佐治集落は、滋賀県庁や滋賀県立琵琶湖博物館の支援のもと、「世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策」のための事業に取り組んでいます。そのような関係もあり、この日は、滋賀県庁農林水産部農村振興課の職員や琵琶湖博物館の学芸員の方たちもご参加くださいました。
▪︎小佐治では、水田の内部に水田内水路を設けて、年間を通じて生き物が生息できる場所を提供しています。生き物が生息できるということは、安心・安全な農産物を生産している水田でもあるということの証明にもなります。現在、そのような水田では、メダカが繁殖して藻のなかで越冬していることが確認されています。小佐治も含めた甲賀市の農村地域の水田は、「ズリンコ」と土地の人びとが呼ぶ古琵琶湖層群の粘土でできています。きめが細かいため、水田から水を抜くことが難しい土質なのです。この湿田に苦労されてきました。小佐治では、そのような性質をもつ水田の内側に水路をつくり、塩ビのパイプ等を設置し、生き物の生息場所をつくってきたのです。その効果は生き物だけでなく、作付け面積が減るものの水田内の水位調整が容易になり湿田が解消することにもなりました。右の写真は、そのズリンコです。ズリンコのなかにあるのは、淡水貝の化石です。ここがかつて琵琶湖の底であったことがご理解いただけるとおもいます。
▪︎このような小佐治の生き物を賑わいを育む取り組みは、村の活性化にもつながっています。メダカが繁殖した水田で生産した米は、「めだかのいる田んぼの米」(メダカ米)として販売されています。販売されているのは、集落のなかに設けられた農村レストラン&直売所の「甲賀もちふる里館」です。さきほど「ズリンコ」について説明しました。たしかに「ズリンコ」は農作業が大変です。しかし、この粘土のなかにはケイ酸カリやマグネシウムが豊富に含まれており、稲やもち米が強く育つのです。小佐治では、そのような地域の環境特性を活かして、村づくりの活動にも取り組んでおられるのです。
▪︎さて、私たちの総合地球環境学研究所のプロジェクトでは、この小佐治の生き物のにぎわいづくりを通した村づくりの活動を、プロジェクトの研究調査を進めることのなかで応援させていただければと思っています。少しずつ相談を進めてきました。具体的な計画の詰めはこれからということになりますが、いよいよこの春から「超学際(トランスディシプリナリティ) 」的取り組みが始まります。
ビワマスのこと
■「つながり再生モデル構築事業」(滋賀県琵琶湖環境部環境政策課)の関係で、野洲市にある家棟川の支流に調査にいってきました。先日、地元の「NPO法人家棟川流域観光船」の方たちとの協議のなかで、この支流にビワマスが産卵をするために遡上しているというお話しを、写真とともに伺っていたからです(写真下段右)。地元の皆さんの観察によれば、琵琶湖からやってきたビワマスたちは、家棟川の支流に入り上流に昇ろうとするのですが、河川の構造物が邪魔をして遡上できないようだというのです。また、大きな礫が河床にあって、産卵に適した砂利がないということもご指摘されていました。ということで、ビワマスが遡上し産卵できるようにするために、関係者が集まって現地を調査することになりました。
■この日の調査は、地元からは、「NPO法人家棟川流域観光船」の代表である北出さんと、野洲市環境基本計画の策定に市民として参加された方達3名の皆さんがご参加くださいました。研究者では、「つながり再生モデル構築事業」のモデル地域選定委員会でご一緒した、滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターの佐藤さんが、今回の調査をアレンジしてくださいました。佐藤さん、ありがとうございました。そして、河川に魚道をどのように設置すればよいのかという技術的な点から、同じく選定委員会でご一緒した徳島大学の浜野龍夫先生(生物資源増殖学、地域生物応用学)もご参加くださいました。浜野さんは、ご自身で「私は、便利な水辺のおっちゃんなんですわ」とおっしゃいます。全国各地の河川の魚道設置に積極的にアドバイスし、それぞれの河川にあった魚道を提案をされてきたたくさんの実績をお持ちなのです。その他、行政からは、滋賀県琵琶湖政策課・流域政策局・南部土木事務所から4名の職員の皆さんが、野洲市からは環境課の皆さんが2名、そしてなんと驚いたことに、野洲市長の山仲さんもお忙しいなかご参加くださいました。
■調査は、冷たい雨が降るなかで実施されました。写真をご覧ください。地元の皆さんが困っておられるのは、トップの写真にあるような仮設の「落差工*」をビワマスが超えることができない…ということです。この落差工の手前までは、河川がすでに整備済みで、矢板をうってあるところから上流は未整備のままになっており、その整備の時期も未定なのだそうです。数十年間は整備される予定がない(必要性がない)とのことでした。ということで、現在の「落差工」の状況を確認し計測するために、浜野先生と佐藤さん、そして地元の市民のお1人が川のなかに胴長を着用して入っていかれました。あまり役に立たない環境社会学者の私は、橋の上から見学…。浜野先生からは、写真の中断左のような支流のさらに支流については、ビワマスが遡上しないような工夫をして、落差工に魚道を設置すれば、ビワマスは遡上させることができるというご意見をお聞かせいただけました。工事費もおそらくは600万円程度で済むとのことでした。浜野先生の言われる魚道とは、私たちが通常考える魚道とは異なります。河川の横に階段状の魚道がよく設置してありますが、日本の河川の魚達に不向きなものなのだそうです。こちらをご覧いただくと、浜野先生がご指導されている魚道がどのようなものであるのか、わかります。また、工事費が安く済むのかもわかります。
■こうやって、冷たい雨のなかで立場の異なる人たちが一緒に行動すること、言い換えれば、身体を使って「場を共有することは」とても大切なことだと思います。私たちは、調査のあとは、野洲市の図書館の一室を借りて協議を継続しました。異なる視点から、どうやって魚道を設置していくのか、知恵を出し合いました。生息調査を継続していく。工事費をどうやって捻出するのか。魚道の設置工事には市民参加で行う必要があること。野洲市全体の市民活動・まちづくりの文脈(環境再生型地域づくり)を背景にして、ビワマスの遡上・産卵や魚道設置を位置づける必要があることなど…いろいろ意見が出ました。意見を出すだけでなく、目標に向かってロードマップを作成していくことなども、全員で共有することになりました。
▪︎ところで、ビワマスってご存知でしょうか。ビワマスは、琵琶湖の固有種です。琵琶湖にしか生息していません。ビワマスは、琵琶湖の周囲の河川で生まれた仔魚は、琵琶湖の深いとろこにいって4〜5年かけて40〜50cm前後まで成長します。そして産卵期になると、生まれた河川に遡上していくのです。この産卵期のビワマス、大雨のときに黒く群れをなして河川を遡上することから、アメノウオともよばれています。しかし、そのような群れをなして遡上することは、この野洲市のあたりではあまり見られなくなってきました。河川改修などによる生息環境の悪化などで、生息数が年々減少しているからです。現在は環境省のレッドリストに準絶滅危惧種(NT)として指定されています。 今回、家棟川支流でこの準絶滅危惧種のビワマスの産卵が確認されたことから、家棟川をはじめとする身近な河川にもっと多くの皆さんの関心が向かっていけばよいなあと思っています。そして、流域管理を柱にした、環境再生型のまちづくりが展開していけばよいなと思っています。
*落差工:洪水防止や農業用水確保のために、急勾配の河川の勾配を緩やかにする構造物のことです。落差を河川のなかに設置して、階段状の段差をつけて流れを緩やかにします。そのことで流速を調整するのです。
地球研「奥田プロジェクト」
![]()
■昨日のお仕事。1つ前のエントリーにも書いたように、総合地球環境学研究所でのミーティングでした。「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」。奥田昇さんをリーダーとするプロジェクトのミーティングです。機能は、リーダーの奥田さん、そして副リーダーの谷内茂雄さん(京都大学生態学研究センター)、そして私の3名のミーティングです。いろいろ事務的なこともやらねばなりません。とりあえず、地球研で3時間半ほどミーティングと事務作業を行いました。
■写真は、研究所内にある奥田プロジェクトの場所です。地球研にはプロジェクトごとの部屋がありません。大きなスペースを簡単に仕切ってあるだけです。プロジェクト間のコミュニケーションを活発にしていくため、このような建物のデザインになっているようです。私も、来年度からは定期的にこちらに出かけてプロジェクトの仕事を進めたいと思っています。まだ机が空いていますが、これから順番に埋まっていく予定です。ポスドクの方たちなど、これから順番に雇用されていきますので。現在は、まだリーダーの奥田さんと事務的な仕事を担当される方が2名。広さのわりには人が少ないのです。まあ、そのうちに、賑やかになってくるではないかと思います。
コアメンバー会議
■昨日は、京都大学生態学研究センターで、研究プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」のコアメンバー会議が開催されました。生態学研究センターから総合地球環境学研究所に異動したリーダーの奥田さん、センターの谷内さん大薗さん、滋賀県立大学の伴さんと、プロジェクトの進捗状況を相互に確認し、これからの研究先駆略等について議論を行いました。いろいろ難題が山積なのですが、とにかく前進しなくてはいけません。
■総合地球環境学研究所の研究プロジェクトのシステムは、以下のようになっています。地球研のサイトからの引用です。
地球研では、既存の学問分野で区分せず、「研究プロジェクト方式」によって総合的な研究を展開しています。
研究プロジェクトはIS(インキュベーション研究 Incubation Study/個別連携プロジェクトのみに設定)、FS(予備研究 Feasibility Study)、PR(プレリサーチ Pre-Research)、FR(フルリサーチ Full Research)という段階を経て、研究内容を練り上げていきます。
国内外の研究者などで構成される「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」による評価を各対象年度に実施し、評価結果を研究内容の改善につなげています。研究の進捗状況や今後の計画について発表し、相互の批評とコメントを受け研究内容を深める「研究プロジェクト発表会」を年に1回開催しています。
CR(終了プロジェクト Completed Research)は、社会への成果発信や次世代の研究プロジェクト立ち上げなど、さらなる展開を図っています。
■もうじき、上記の説明にある「研究プロジェクト発表会」が開催されます。この「研究プロジェクト発表会」の評価により、「FS(予備研究 Feasibility Study)」の段階から「PR(プレリサーチ Pre-Research)」に進むことができます。関門があるのです。私たちの研究プロジェクトは、昨年、この関門をなんとか突破することができました。来年からは「FR(フルリサーチ Full Research)」に進みます。関門を突破できなかった「FS(予備研究 Feasibility Study)」の段階にある研究プロジェクトはやり直し、または中止になります。最後まで到達するのはなかなか厳しいのです。今年は、この関門がさらに厳しくなっているようです。ただし、「PR(プレリサーチ Pre-Research)」に進んだからといっても「研究プロジェクト発表会」や「研究プロジェクト評価委員会(PEC)」の厳しい評価を受けなければなりません。11月26日から28日にかけて、今年の「研究プロジェクト発表会」が開催されます。
超・早起き
■こんな投稿をfacebookにしました。
朝早くからの出勤が続き、昨晩は早く帰宅したこともあって、なんと21時半に眠ってしまった。そして、自然に目が覚めてしまったのが3時半。まあ、6時間ほど眠っている計算にはなるが、これでよいのか…。
仕方がないのでメールをチェック。メールで研究仲間の教えてくれた論文を、ネットで探して読み、日記のような身辺雑記のようなブログを書き、熱いシャワー浴び、新聞を読み、朝飯を作って食べ…7時前に家を出る。
研究仲間は、私の「階層化された流域管理」、それから「Future Earth」や「IPBES(intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services)」にも関係する論文だよと興奮した感じのメールで教えてくれた。私も早朝からちょっと興奮する。
ここに、さらに、ランニングが追加されれるような暮らしになれば良いのだが。
■昨日は、学部の教授会と研究科長の選挙でした。早く仕事が終りました。ということで、いつもよりも早めの帰宅となりました。ウイークデーにはめったにないことなのですが、妻と一緒に夕食をとることができました。また、ここ最近、朝早くに出かけることが多いものですから、身体がだんだん「朝方」になってしまっています。ということで、超・早朝の起床となったわけです。
■facebookの投稿のなかにある論文とはCashという研究者の論文です。以前、総合地球環境学研究所の研究プロジェクト(「琵琶湖-淀川水系における流域管理モデルの構築」)で出版した『流域環境学』(京大学術出版会)のなかで(514頁)、研究仲間である谷内さん(京都大学生態学研究センター)が、Cashたち(2006)による” Scale and cross-scale dynamics : governance and information in a multilevel world. Ecology and Society. 11(8)(online)”を引用しています。彼らの考え方が、私がプジェクトのなかで提案した「階層化された流域管理」の考え方にかなり似ているからです。今日、谷内さんからメールでいただいた情報は、この論文よりももう少し前の Cashたち(2003)の論文 “Knowledge systems for sustainable development. PNAS.100(14) (online)” についてです。谷内さんは、丁寧に重要なポイントまで整理して私にメールを送ってくれました。この2003年の論文は、「階層化された流域管理」とかなり共通する考えたをもっているだけでなく、私たちがこれから本格的に取り組む総合地球環境学研究所のプロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会─生態システムの健全性」、さらにはIPBES (intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services=生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム、谷内さんはこのIPBESのなかにあるひとつのワーキンググループのメンバーです)、総合地球環境学研究所が関わっているFuture Earth(持続可能な地球環境についての国際協働研究イニシアティブ)とも大いに関係しているというのです。谷内さんのおかけで、朝から頭の中が興奮し、気持ちがたかぶってきました。
■以下に、『流域環境学』(514頁)の谷内さんの記述を引用します(「階層化された流域管理」の考え方そのものは、『流域環境学』の「『階層化された流域管理』とは何か」(47-68)をご覧ください)。
Resilience Alliance の機関誌(online journal)でもある Ecology and Society は、20006年に”Scale and Cross-scale Dynamics” という特集を組み、重層的な資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスを今後の大きな課題として取り上げた。この中で Cash らは、資源管理・環境ガバナンスにおいて生涯となる、スケールに関わる3つの課題(scale challenge)として、無知(ignorance)、不適合(mismatch)、多元性(plurality)を挙げる。無知とは、重要なスケールやスケール間の相互作用を認識できないこと、不適合とは、例えば、人間による生物資源管理の制度のスケールと資源の生物地理的な分布・移動のスケールが一致せず、ずれていること、多元性とは、関係主体の問題認識が異なること、あるいは、関係主体すべてに最適な唯一の管理スケールがあると仮定すること(による失敗)を意味する。本書の事例に即していえば、かつての環境保全における、びわ湖とその内湖や流入河川との間の連続性の認識の欠如が、無知に相当する。琵琶湖流域の河川管理の主体が、国と県、さらにその中で、異なる行政担当ごとに分割されていることや、流域の現象を総体として対象とする学問がないことが不適合に相当する。また流域の階層性による農業濁水問題に対する問題認識の違い、「状況の定義のズレ」が、多元性に相当する。
Cash らは、これらのスケールに関する諸問題を克服する制度的仕組みとして、異なる階層の制度間の調整(institutional interplay)、異なる階層間の協働マネジメント(co-managemanet)、階層間調整期間の設置(boundary or bridging organization) を検討し、多層にわたる資源管理・環境管理問題には、協働的な多層感マネジメントの構築が有効であるとする。
■さて、投稿のなかで、私はランニングのことにもふれています。以前から、小説家の村上春樹さんの長編小説の執筆とランニングとの関係が気になっています。早く起きて仕事をして、走って、9時には眠るというライフスタイル。村上さんは、『走ることについて語るときに僕の語ること』のなかで「『基礎体力』の強化は、より大柄な創造に向かうためには欠くことのできないものごとのひとつ」と書いています。そうなのです。研究を進めるためには、同時に、ランニングが必要なのだ…ということです(^^;;。そのランニングですが、春のフルマラソン後の故障を理由に、中断してからずいぶん時間が経過してしまいました。今年の春の「篠山ABCマラソン」の後、脛の痛み、肋骨のヒビ…いった故障からの回復を待っているあいだに季節は夏に突入し、仕事もさらに忙しくなり、とうとう「ランニングしたい/しなくちゃ」モードが身体のなかから消えてしまいました。これではいけません。2つ前のエントリー「来年度の仕事」にも書いたように、仕事のベクトルが研究に強く向かっていることを強く感じる今だからこそ、また走らねばなりません。頭と身体が分離してしまっていては、良い仕事はできません。そういう例(人)を見てきましたので、自分自身は、このあたりでもう一度ランニングのモードをきちんと復活させて頭と身体の関係をチューニングしておこうと思います。